こちらを参照
3や12などの数(定数)や、
や
などの文字(変数)を掛けあわせてできる式を項(こう、term)という。
次のようなものが項である。





このように一つの項だけからできている式を単項式(たんこうしき、monomial)という。
- (※ 補足: 「多項式」とは?) ここでは「多項式」(たこうしき、polynomial)とは、項が2つ以上の式だと定義する。しかし実は、項が1つのものと複数のものを区別するより、まとめて扱った方が、様々な定理を記述する際に便利になる。そのため、高校数学以外では、項が1つのものも含めて「多項式」と定義する場合も多い。ところが、「多項式」とは文字をみれば、「項の多い式」という意味なので、項が1つでもよいと定義すると、定義と名前が一致しておらず、混乱の原因にもなる。そこで日本の高校教育では、「項が1つ以上の式」という概念については整式(せいしき)という用語を使っている。ここでいう「整」式とは、整理された式というような意味である。けっして、整数の式という意味ではない。なので、係数などは小数や分数でもよい。
※ あらためて「整式」を定義すると、次のような定義になる。
1つ以上の単項式を足しあわせてできる式を整式(せいしき)という。
以下は整式の例である。





単項式でも、項が1つしかない整式の一つであると考えることができるので、「整式」という概念を使うことにより、多項式と単項式との区別の必要がなくなる。
のように減法を含む式は、
と減法を加法に直すことができるので、
を項にもつ整式であると考えられる。すなわち、多項式の項とは、多項式を足し算の形に直したときの、一つ一つの足しあわさっている式のことである。たとえば
の項は
の3つである。
次の式のうち単項式であるものを答えよ。
- (1)

- (2)

- (3)

(1), (2) が単項式。 (3) は項が6つあるため単項式ではない。
上の全ての式は整式でもある。
+
の
と
のように、多項式の文字と指数がまったく同じである項を総称して同類項(どうるいこう、like terms)という。
同類項は分配法則
を使ってまとめることができる。たとえば
である。
と
は文字は同じであるが指数が異なるので、同類項ではない。
次の多項式の同類項を整理せよ。
-

-

-

-

-

-

という単項式は、3という数と
という文字に分けて考えることができる。数の部分を単項式の係数(けいすう、coefficient)という。
たとえば
という単項式の係数は -1 である。
という単項式は、256という数と
という文字に分けて考えることができるので、この単項式の係数は256である。一方、掛けあわせた文字の数を単項式の次数(じすう、degree)という。
は
という3つの文字を掛けあわせてできているので、この単項式の次数は3である。0という単項式の次数は
と一つに定まらないので、ここでは考えない。
単項式の係数と次数は、単に数と文字に分けて考えるのではなく、ある文字を変数として見たときに、残りの文字を定数として数と同じように扱うことがある。
たとえば
という単項式を、
だけが変数で、残りの文字
は定数と考えることもできる。
このとき
と分けられるので、この単項式の係数は
、変数は
で、次数は3であるといえる。
このことを
という単項式は、「
に着目すると、係数は
、次数は3である」などという場合がある。
あるいは
の
と
に着目すれば、
と分けられ、
と
に着目したときのこの単項式の係数は
、変数は
で、次数は2であるといえる。
慣習的には
などのアルファベットの最初の方の文字を定数を表すのに使い、
などのアルファベットの最後の方の文字を変数を表すのに用いるが、一般的にはこの限りでない。
多項式の次数とは、多項式の同類項をまとめたときに、もっとも次数の高い項の次数をいう。たとえば
では、もっとも次数の高い項は
であるので、この多項式の次数は3である。もし
(
は定数)であれば、すなわち多項式の
について着目すると、もっとも次数の高い項は
と
であるので、この多項式の次数は1である。このとき着目した文字を含まない項
は定数項(ていすうこう、constant term)として数と同じように扱われる。
次の多項式の
または
に着目したときの次数と定数項をそれぞれいえ。



に着目すると6次式、定数項は
。
に着目すると5次式、定数項は
。
に着目すると3次式、定数項は
。
に着目すると100次式、定数項は
。
に着目すると4次式、定数項は
。
に着目すると4次式。定数項は存在しない。
たとえば、

のように、次数の高い項から先に項をならべることを「降べき」(こうべき)という。
- ※ なお、次数の大小については、次数が大きいことを「次数が高い」と言ったりしてもよい。つまり、次数の大小については、高低で言い換えてもよい。
さて、式を使う目的によっては、次数のひくい項から先に書いたほうが便利な場合もある。
たとえば、
が 約0.01 のような1未満の小さい数の場合、式
の値を求めたいなら、文字
の次数の小さい項のほうが影響が高い。
なので、 目的によっては

のように、次数のひくい項から先に書く場合もある。
のように、次数の低い項から先に項をならべることを「昇べき」(しょうべき)という。
多項式に2つ以上の文字があるとき、特定の1つの文字に注目して並び変えると、使いやすくなることがある。
たとえば、
(例1)
の項を、xの次数が多い項から先に並びかえ、同類項をまとめると
(例2)
となる。
この(例2)のように、特定の文字だけに着目して、その文字の次数の高い順に並びかえると便利なこともしばしばある。
例2は、
について 降べき の順に並び変えた整式である。
着目してない文字については、並び換えのときは定数のように扱う。
いっぽう、
について、次数のひくい項から順に並べると、次のような式になる。
(例3)
このように、特定の文字の次数が低いものから順に並びかえると便利なこともしばしばある。
例3は、xについて 昇べき の順に並び変えた整式である。
たとえば、式

という式の右辺

の次数は、いくらであろうか。
aとxを等しく文字として扱うのであれば、
の次数は

より 1+1 =2 なので、この式の次数は2である。(項bは次数1なので、
の次数2よりも低いので無視する。)
しかし、もしこの式を、定数
を係数とする変数
についての一次関数とみるのであれば、一次式と思うのが合理的だろう。
このような場合、特定の文字だけに注目したその式の次数を考えるとよい。
たとえば、文字xだけに注目して、式
の次数を決めてみよう。
すると、文字xに注目した場合の式
の次数は1になる。
なぜなら
- 文字
に注目した場合の式
の次数は0である。
- 文字
に注目した場合の式
の次数は0である。
- 文字
に注目した場合の式
の次数は1である。
よって、文字
に注目した場合の項
の次数は、 0+1 なので、1である。
このように考える場合、必要に応じてどの文字に注目したかを明記して「文字◯◯に注目した次数」のように述べるとよい。
多項式の積は分配法則を使って計算することができる。

このように多項式の積で表された式を一つの多項式に繰り広げることを、多項式を展開(てんかい、expand)するという。
を
回掛けたものを
と書き、aのn乗(-じょう、a to the n-th power)という。ただし
と定義する。たとえば、





- ...
である。
を総称して
の累乗(るいじょう、exponentiation、冪乗、べきじょう、冪、べき)という。
の n を指数(しすう、exponent)という(a は底(てい、base)という)。ここでは自然数、すなわち正の整数の指数を考える。累乗は次のように考えることもできる。






累乗どうしを掛けあわせた積は、次のように計算することができる。

累乗どうしを割った商は、次のように計算することができる。

累乗の累乗は、次のように計算することができる。

積の累乗は、次のように計算することができる。

これらをあわせて指数法則(しすうほうそく、exponential law)という。
次の式を計算しなさい。






次の式を展開せよ。












まとめると、次のようになる。
展開の公式
|








|
次の式を展開しなさい。


















複雑な式の展開は、式の一部分を一つの文字において公式を使うとよい。
次の式を展開しなさい。



とおくと

とおくと

とおくと

因数分解の公式 1
|





|
次の式を因数分解しなさい。
-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

次の式を因数分解しなさい。
-

-

-

-

次の式を因数分解しなさい。
-

-

-

-


-
とおくと

- 最も次数の低い
に着目して整理すると

-
に着目して整理すると

a=b^2が成り立つとき、a=2となるようなb、すなわち
の具体的な値がどのようなものか、調べてみよう。
b=1
|
a=1
|
b=2
|
a=4
|
b=1.4
|
a=1.96
|
b=1.5
|
a=2.25
|
b=1.41
|
a=1.9881
|
b=1.42
|
a=2.0164
|
b=1.414
|
a=1.999396
|
b=1.415
|
a=2.002225
|
b=1.4142
|
a=1.99996164
|
b=1.4143
|
a=2.00024449
|
このように、bを様々に決めても、aはなかなか2にならない。
実は
は、分母分子共に整数の分数で表すことはできない。このように整数を分母分子に持つ分数で表せないような数を無理数という。例えば、円周率πは無理数である。それに対して、整数や循環小数など、分母分子共に整数の分数で表すことのできる数を有理数という。
有理数と無理数を合わせて実数という。どんな実数でも数直線上の点として表せる。また、どんな実数も、有限小数あるいは無限小数として表せる。
(下記の「無限小数」の節を参照)
が無理数であることの証明(発展)
が有理数であると仮定すると、互いに素な(1以外に公約数をもたない)整数 m, n を用いて、

と表わすことができる。このとき、両辺を2乗して分母を払うと、
… (1)
よって m は2の倍数であり、整数 l を用いて
と表すことができる。これを (1) の式に代入して整理すると、

よって n も2の倍数であるが、これは m, n が2を公約数にもつことになり、互いに素と仮定したことに矛盾する。したがって
は無理数である(背理法)。
0.1 や 0.123456789 のように、ある位で終わる小数を有限小数という。
一方、
や
のように無限に続く小数を 無限小数(むげん しょうすう)という。
無限小数のうち、ある位より下から、ある配列の数字の繰り返しになっているものを 循環小数(じゅんかん しょうすう)という。例えば
や
や
などである。繰り返しの最小単位を循環節という。循環小数は循環節1つを用いて
、
、
のように循環節の最初と最後(循環節が一桁の場合はひとつだけ)の上に点をつけて表す。
全ての循環小数は分数に直せる。
(1)
と置くと、
(2)
である。(2)ー(1) より
、よって
である。
- 例題
実数 a について、a の数直線上での原点との距離を a の絶対値といい、
で表す。
絶対値
|
のとき 
のとき 
|
たとえば


である。
定義より
がいえる。また、
を任意の実数とするとき、それぞれに対応する数直線上の任意の2点
間の距離については、次のことがいえる。
- 2点
と
の間の距離を求めよ。
なので、よってPQ間の距離は 6 である。
今、2乗してaになる数bを考える。
のとき、
として終わりにしてはいけない。確かに
も条件を満たすが
も条件を満たす。よって
または
である。
- ※ 略式の記法で、
と
をまとめて
と書くこともある。
一般に正の数aについてa=b^2となるbは二つあり、その二つは絶対値が等しい。この二つのbをaの平方根という。aの平方根のうち、正であるものを
、負であるものを
と書く。
は『ルートa』と読む。
一方、負の数aについて考えてみても上手くbを見つけることはできない。実際のところ、負の数の平方根は実数で表すことはできない。
平方根
|
- 正の数aの平方根は
と である。
- 負の数aの平方根は実数の範囲では存在しない。
|
と
をまとめて
と書くこともある。
の平方根を求めよ。
それぞれのルートを計算し、
をつければよい。ただし、平方根のルールに従って、簡単化できるものは簡単化することが要求される。
例えば、
に対しては、
となる。
一般に、
である。
根号について、次の公式が成り立つ。
- 公式(1)の証明
まず、
とは、定義にもとづいて考えると、2乗すると ab になる数のうち、正のほうの数という意味である。
なので、公式「
」を証明するには、そのことを証明すればいい。
なので、まず、
を2乗すると、

となる。
ゆえに
は、まず条件「2乗するとabになる」を満たす。
そして、正の数の平方根は正なので、
も正である。よって
は、「2乗するとabになる」数のうちの正のほうである。
(証明おわり)
さらに、上の公式(1)により、次の公式が導かれる。
公式
|
のとき

|
計算せよ。
-

-

-

-

-

- まず、乗法公式
を利用して展開する。詳細は「乗法公式」のセクションを参照のこと。

分母に根号を含まない式にすることを、分母を有理化するという。有理化は、分母と分子に同じ数をかけてもよいことを利用して行う。
たとえば、
を有理化すると、
となる。
また、とくに
について、
のとき、
である。
たとえば、
とすると、
である。
分母を有理化せよ。
-
-

-
-

二重根号とは、根号が2重になっている式のことである。二重根号は常に外せるわけではなく、根号の中に含まれる式によって簡単にできるかどうかが決まる。一般に、根号内の式が、
の形に変形できる場合には、外側の根号を外すことができる。
を簡単にせよ。
が
の形にできるかを考える。
仮に、
(a,bは正の整数)の形にできるとすると、
となり、

を満たす整数a,bを探せばよい。この関係は、a=1,b=2(a,bを入れ換えても可。)によって満たされるので、
が成り立つ。
よって、
となる。
次の式を計算せよ。




同じ大きさの量を=で結んだ式を方程式と呼ぶことを既に学習した。ここでは、異なった量の大きさの違いを表す記号を導入し、その性質についてまとめる。
ある数A,Bがあるとき、AがBより大きいことを
と表し、AがBより小さいことを
と表す。ここで、<と>のことを不等号と呼び、このような式を不等式と呼ぶ。また、
も似た意味の不等式であるが、それぞれAとBが等しい値である場合を含むものである。
なお、日本の教育においては、
の代わりに、不等号の下に等号を記した
を使うことが多い。
という不等式があるとき、xは7より大きい実数である。また、
の時には、xは7以上の実数である。
不等式では等式と同じように、両辺に演算をしても不等号の関係が変わらないことがある。例えば、両辺に同じ数を足しても、両辺の大小関係は変化しない。ただし、両辺に負の数をかけたときには、不等号の向きが変化することに注意が必要である。これは、負の数をかけると両辺の値は、0を中心に数直線を折り返した地点に移されることによる。
不等式の性質
|
1. ならば、 ,
|
2. , ならば、 ,
|
3. , ならば、 ,
|
が成り立つときには、
、
も成り立つ。また、
が成り立つ。
不等式の性質を使って

の両辺から3を引くと

よって

となる。
このように、不等式でも移項することができる。
グラフを用いて考えるとき、不等式はグラフ中の領域を表す。領域の境界は不等号を等号に置き換えた部分が対応する。これは、不等号が成立するかどうかがその線上で入れ替わることによっている。(詳しくは数学II 図形と方程式で学習する。)
,
,
のグラフ(正しくは「領域」)を描け。
のグラフ(領域)は次のようになる。ただし、境界は含まない。
1次不等式 y>x+1 が表すグラフ。
のグラフ(領域)は次のようになる。ただし、境界は含まない。
1次不等式 y<2x+1 が表すグラフ。
のグラフ(領域)は次のようになる。ただし、境界は含まない。
1次不等式 x<3 が表すグラフ。
次の不等式を解け。
-

-

-




いくつかの不等式を組み合わせたものを連立不等式といい、これらの不等式を同時に満たす
の値の範囲を求めることを、連立不等式を解くという。
次の連立不等式を解け。
(i)

(ii)

(i)
から 
……(1)
から 
……(2)
(1),(2)を同時に満たす
の値の範囲は

(ii)
から 
……(1)
から 
……(2)
(1),(2)を同時に満たす
の値の範囲は

絶対値を含む不等式について考えよう。
絶対値
は、数直線上で、原点
と点
の間の距離を表している。
したがって、
のとき


次の不等式を解け。
(i)

(ii)

(iii)

(iv)

(i)


(ii)


(iii)



(iv)



一般の二次方程式
(
,
,
は定数、
)の解
を求める公式について考える。


… (1)
ここで恒等式
と (1) の左辺を係数比較すると、

であるから、(1) の式は次のように変形できる(平方完成)。



のとき両辺の平方根をとると、




これが二次方程式の解の公式(にじほうていしきのかいのこうしき、quadratic formula; 二次公式)である。解の公式を二次方程式の一般形に代入すると、右辺は0になるはずである。

であることを用いると、


となり、確かに正しいことがわかる。
- (i)

- (ii)

- (iii)

- (iv)

- (v)

をそれぞれ解の公式か因数分解を用いて解きなさい。
結果の式に根号が現れない場合には、何らかの仕方で因数分解ができる。しかし、いずれの方法を使うにせよ、根号はできる限りの仕方で簡単化することが重要である。
(i)は簡単に因数分解できるので、解の公式を用いる必要はない。

より、

が答えとなる。(ii)では、因数分解が出来ないので、解の公式を用いる。因数分解ができるかどうかは実際に試行錯誤して見分けるしかない。

に、解の公式を用いると、a=5, b= 2, c=-1より、



となる。(iii),(iv)でも、因数分解は出来ないので、解の公式を用いる。答えは、
(iii)

(iv)

(v)

と因数分解できるので、答えは

となる。
全問を通じて、因数分解が可能な方程式に対しても、解の公式を使用しても構わない。
の解の公式
[編集]
二次方程式
について考える。
解の公式に b= 2b' を代入すると

よって、二次方程式
の解は

となる。

を上の解の公式を用いて解きなさい。
上の解の公式を用いると、a=3, b'= 3, c=-2より、


となる。
2次方程式
の解は
である。
この式の根号の中身だけ取り出したものを判別式と呼び、これを用いることで2次方程式の解の個数を簡単に判別できる。
の値によって次のようになる。
(1)
のとき、異なる2つの解
と
を持つ。
(2)
のとき、
であるので、2つの解は一致して、ただ1つの解
を持つ。これは2つの解が重なったものと考えて、重解という。
(3)
のとき、実数の範囲では解はない。
2次方程式
の解の個数は
の値で判定できる。
のタイプについては、
より、判別式の値として
を用いて良い。
次の2次方程式の解の個数を求めよ。
- (I)

- (II)

- (III)

(I)

だから、実数解はない。
(II)

だから、重解をもつ。
(III)

だから、異なる2つの実数の解をもつ。