高等学校物理/慣性力

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本節では、慣性力と遠心力を学習します。

復習:慣性の法則[編集]

 アイザック・ニュートンの運動の第1法則(慣性の法則)によれば、物体に外力がはたらかなければ、静止している物体は静止し続け、運動している物体は等速直線運動を続けます。等速直線運動をする電車の乗客が、進行方向に力を受けなくても電車と一緒に動き続けるのは、慣性のためです。

慣性力[編集]

 列車内の滑らかな床の上にスーツケースの物体が置かれています。この列車が水平方向に一定の加速度で動き始めても、物体には水平方向に力がはたらかないので、慣性の法則から、駅のホームから見た人がスーツケースを見ると、物体は静止したままです。

 一方、電車内の乗客からスーツケースを見ると、スーツケースは加速する方向とは反対の力がはたらいているように見えます。この力は、電車内の乗客が等加速度運動をしていることが原因となって現れる見かけの力で、慣性力とよばれます。慣性力には、作用・反作用の関係にある力が存在しません。

慣性系と非慣性系[編集]

 物体の運動方程式を立てる時、静止、もしくは等速直線運動をしている観測者の立場では、実際にはたらく力だけをもとに運動方程式を立てれば問題ありません。このような観測者の立場を慣性系といいます。一方、加速度運動をしている観測者の立場では、実際にはたらく力だけでは運動方程式が成り立ちませんから、実際にはたらく力のほかに慣性力も考慮して運動方程式を立てる必要があります。このような観測者の立場を非慣性系といいます。