高等学校生物/生物I/細胞とエネルギー

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高等学校生物 > 生物I > 細胞とエネルギー

代謝とATP[編集]

呼吸や消化など、生体内で行われる化学反応をまとめて代謝(たいしゃ、metabolism)という。

ATP[編集]

ATP
ADP

細胞内でのエネルギーのやりとりには、仲立ちとしてATPアデノシン三リン酸、adenosine triphosphate)が用いられる。 ATPの構造は、ADPアデノシン二リン酸)という物質にリン酸が結合した構造である。 ADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。

呼吸など異化(いか)の際に、ADPとリン酸からATPを合成している(「異化」については、のちの節で後述する。)。

ATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを高エネルギーリン酸結合といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。

しばしば、ATPは「エネルギーの通貨」に例えられる。

アデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。

分解されたADPは、再利用され、呼吸(こきゅう、respiration)によって再びATPに合成されることが可能である。

ATPのエネルギーの利用先は、生体物質の合成のほかにも、筋肉の収縮や、ホタルの発光などにも、ATPのエネルギーは用いられている。

Atpadp.jpg

異化(いか)と同化(どうか)[編集]

同化と異化。

代謝のうち、複雑な物質を分化してエネルギーを取り出すことを異化(いか、catabolism)という。呼吸は異化であり、有機物を分解して水と炭素にしている。

いっぽう、代謝のうち、合成する反応のことを同化(どうか、anabolism)という。同化の目的は、たとえばエネルギーを蓄えたり、あるいは体を構成する物質を生産するために行われる。例として、光合成における糖の合成は、同化である。 ふつう同化では、簡単な構造の物質を材料に、複雑な構造の物質が作られる。エネルギーが同化をするために必要である。したがって反応に用いたエネルギの一部は、合成した物質に吸収されている。

同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、呼吸などの異化を行って分解する必要がある。

同化のうち、二酸化炭素などの炭素無機物から有機物を合成することを炭酸同化という。多くの植物は、光合成による炭酸同化によって有機物を合成している。 同化のうち、タンパク質などの窒素化合物を合成することを窒素同化(nitrogen assimilation)という。

独立栄養生物と従属栄養生物[編集]

植物のように、外界から水H2Oや二酸化炭素CO2などの無機物および、光などのエネルギーだけを取り入れて、生存できる生物を独立栄養生物(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)という。 植物は、光合成によって無機物を炭酸同化できるのでも、独立栄養生物である。

一方、ウシなどの草食動物のように植物など他の独立栄養生物を食す必要のある生物や、ライオンやトラなどの肉食動物のように草食動物を食べる必要があったりと、ともかく他の独立栄養生物を直接的・間接的に食す必要のある生物を従属栄養生物(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)という。いわゆる動物は、肉食動物も草食動物も、ともに、多くの動物は従属栄養生物である。

従属栄養生物も炭酸同化や窒素同化などの同化を行っているが、それら従属栄養生物の行う同化のもとになる材料の物質は、有機物であって無機物でない。

発展:筋肉とクレアチンリン酸[編集]

酵素[編集]

酵素と活性化エネルギー。物質が化学反応をするときに超える必要のあるエネルギーのことを活性化エネルギー(かっせいかエネルギー)という。通常は安定な物質では、この活性化エネルギーがあるため、その物質は安定してられる。
酵素と最適pH

デンプン(starch)の分解には、硫酸水溶液などの強酸中で100℃以上の高温で分解するという方法がある。しかし、だ液(saliva)は常温付近でデンプンを分解してマルトース(maltose、麦芽糖のこと)に変える。 特定の化学反応を促進し、自身は反応の前後で変化しない物質を触媒(しょくばい、catalyst)という。 生物の細胞内や細胞外で触媒として作用し、生物現象を維持している物質を酵素(こうそ、enzyme)と呼ぶ。酵素はすべて有機物であり、酵素の本体はタンパク質である。先ほど説明した だ液にも、酵素がふくまれており、アミラーゼ(amylase)という酵素がだ液にふくまれている。

さて、例えば、過酸化水素水(H2O2)に二酸化マンガン(MnO2)を加えると、二酸化マンガンが触媒として作用し、水(H2O)と酸素(O2)が発生するが、 同様に、過酸化水素水に肝臓の細胞を加えると水と酸素が発生するのだが、この理由は細胞内に含まれるカタラーゼ(catalase)と呼ばれる酵素が触媒として作用して、過酸化水素を分解して水と酸素が発生するからである。


細胞外で働く酵素もある。 体外から摂取したデンプン(starch)やタンパク質(protein)は、そのままでは大きすぎて小腸の細胞に吸収できないため、 各消化器官から分泌される消化酵素によって、吸収しやすくなるように分解される。 デンプン(starch)は、唾液(だえき、saliva)に含まれるアミラーゼ(amylase)によって、マルトース(maltose)に分解される。 タンパク質(protein)は、胃液に含まれるペプシン(pepsin)によってペプトン(peptone)に、すい臓から分泌されるトリプシン(trypsin)によってさらに小さなアミノ酸(amino acids)に分解される。トリプシンはpH8付近が最適pH(optimum pH)である。

ヒトが持っている酵素の種類は数千種類といわれている。 酵素が作用する相手の物質のことを基質(きしつ)という。酵素はそれぞれ反応する相手の物質が決まっており、これを基質特異性という。二酸化マンガンや白金などの無機物質では、基質特異性は見られない。基質特異性の正体は、酵素を構成しているタンパク質の立体構造によるものである。酵素の各部のうち、その酵素が基質と結合する部位のことを活性部位あるいは活性中心という。酵素は活性部位で基質と結合する。 酵素は、酵素-基質複合体(こうそ-きしつ ふくごうたい)をつくって、基質に触媒としての働きをする。

酵素基質複合体の模式図

このように酵素は細胞内や細胞外で作用することにより、生命現象を維持している。

多くの酵素は、常温の付近で働く。 また、70℃程度以上の湯などで高温で熱してしまった酵素は、触媒の働きを失ってしまう。高温で働きを失った酵素を低温に冷ましても、もう触媒の働きは戻らない。このように、酵素が触媒の働きを失ってしまい戻らないことを失活(しっかつ)という。

これは、酵素のタンパク質が高温によって乱され、タンパク質の構造が崩れてしまったからである。酵素に限らず、タマゴや肉なども、高温で熱してしまうと、冷ましても常温にしても、もう働きは復活しない。この理由も、タマゴや肉のタンパク質が崩れてしまったからである。このようにタンパク質が熱で変わってしまうことを熱変性(ねつへんせい)という。

酵素の反応速度と温度

酵素が良く働く温度は、35℃~40℃くらいである場合が多い。酵素がもっとも良く温度のことを最適温度という。最適温度は酵素の種類ごとに違う。常温付近で、やや高めの温度が最適温度である。 いっぽう酸化マンガンなどの無機触媒では高温のほど反応速度が強く、無機触媒では最適温度は見られない。

酵素は、特定のpH(ペーハー、ピーエイチ)で良く働く。このpHのことを最適pHという。 たとえば、だ液にふくまれる酵素アミラーゼの最適pHは7付近である。だ液のpHは7である。胃液で働くペプシンの最適pHは2である。(ペプシンは、タンパク質を分解する酵素。) このように、酵素の最適pHは、その酵素が多く含まれる器官のpHに近い場合が多い。 すい液にふくまれる酵素リパーゼの最適pHは9であり、すい液のpHもややアルカリ性である。(リパーゼは脂肪を分解する酵素。)

実験として酵素濃度を一定にして、温度を一定にして、基質濃度を変えて実験すると、つぎのような結果が得られる。

酵素の基質濃度と反応速度

・基質濃度が低いとき、基質濃度に比例して反応速度が増える。

・基質濃度が高い場合、酵素の数以上に基質があっても酵素-基質複合体ができすに効果がないので、基質濃度が低いときは、あまり反応速度は変わらなず、反応速度はしだいに一定値になる。

酵素の数以上に基質があっても、酵素と結合できないので、基質が分解されない。

そのほか、活性部位に基質以外の物質が結合すると、基質が酵素に結合できなくなる場合がある。阻害物質が酵素の活性物質をめぐって基質と競争していると見なして、このような現象のことを競争的阻害という。

  • やや発展 : 非競争的阻害

阻害物質が活性物質以外の場所に結合しても、その結果、活性部位の構造が変わってしまう場合があり、そのため酵素-基質の結合を阻害する場合もある。このような、活性部位以外への阻害物質の結合による阻害を、非競争的阻害という。


  • 補酵素

ある種の酵素には、基質以外にも他の物質が必要な場合もある。このような酵素に協力している物質が有機物の場合で、その有機物が酵素に結合する場合、その有機物のことを補酵素(ほこうそ)という。補酵素は一般に低分子(=分子の大きさが小さい)であり、また酵素と分離しやすい。そのため半透膜(セロハンなど)を使って、補酵素を分離することができる。また、熱に対して、補酵素は、比較的、強い。

補酵素の代表的な例として、呼吸に関わる脱水素酵素の補酵素NAD+がある。脱水素酵素は、基質から水素を取り除く。NADとは「ニコチン・アミドアデニン・ジヌクレオチド」のこと。 脱水素酵素とNADは別の物質である。脱水素酵素とのNADという両方の物質があることで、NADが水素を受容できるようになるって、NADに水素水が結合しNADHに変わる。

酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。

  • フィードバック調節

(執筆準備中)

カタラーゼの構造


光合成と呼吸[編集]

光合成(同化)[編集]

植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。 これを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。

光合成の仕組み[編集]

光合成のしくみ
(※ くわしくは生物IIで説明する。)


チラコイドは、葉緑体の中にある。

葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。

チラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。

吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。


次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。


(1):  光化学反応
光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。

この反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。

(2):  水の分解とNADPHの生成
1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、できた水素Hが、さらに水素イオンH+と電子e- に分解される。あまった酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。

この反応でのHの分解から発生したe- は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADP+という物質にe- は結合し、NADPHが生成する。

(3):  ATPの合成
2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。

(4):  二酸化炭素の固定
ストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。

生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。 このカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。


このカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。

(※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。)

初期の光合成研究の歴史[編集]

  • プリーストリーの実験(1772年ごろ)
プリーストリーの実験

密閉したガラス容器の中でろうそくを燃焼させたのち、植物(ミント)の新芽を入れて放置したびんと入れずに放置したびんを用意した。このびんにネズミを入れたり、ろうそくの火を入れたりしたとき、どのような影響を及ぼすか調べた。

植物を入れなかったびんでは、ネズミは死に、ろうそくの火はすぐに消えた。 一方で、植物を入れておいたほうのびんでは、ネズミに問題を及ぼさず、ろうそくも燃えた。

この実験から、生きている植物は、ろうそくの燃焼やねずみの生存に必要な気体、すなわち酸素を放出していることがわかる。

  • インゲンホウスの実験(1779年ごろ)

さきほどのプリーストリーの実験では、酸素を発生するには光が必要である。インゲンホウスは、プリーストリーの実験で、光を当てた場合と当てなかった場合とで実験を行い、光が必要なことを突き止めた。

  • ザックスの実験(1862年ごろ)

葉の一部を銀箔でおおって光を当たらなくすると、その部分ではデンプンが合成されないことを、ヨウ素デンプン反応の実験で突き止めた。

  • エンゲルマンの実験(1882年ごろ)

アオミドロの細胞にスポット光を当てると、葉緑体にスポット光を当てた時に、酸素を好む細菌が光の当たった場所に集まることを発見。

光合成は葉緑体で行われることを発見した。

科学史コラム 化学の黎明期を生きたプリーストリー
プリーストリーの実験器具。陶器の容器に水をいれ、ガラス瓶を逆さに立てて使った。ビールグラスやカップの受け皿など身近な用具を使ったものもある。

イギリスの自然哲学者であったプリーストリーは、気体の性質について調べる実験をしていた。当時、気体に関する知識は多くはなく、大気からはっきり区別されていた気体は、炭酸カルシウムを加熱分解すると発生する「固定空気」(二酸化炭素)程度のものであった。また、物質が燃焼するのは酸素と結合するためではなく、物質のなかの燃素(フロギストン)が大気に放出されるためと考えられていた。

彼は、密閉された容器の中では、動物が生きながらえることができないのと同様、植物は生育できないと考えて実験した。だが、ミントを水上置換の要領で空気を閉じ込めたガラスびんの中にいれたところ、予想に反して数カ月にわたって成長できることを観察した。さらに、このびんの中の気体を調べると、ろうそくを燃焼させることができ、またマウスが生育させても問題がないことがわかった。とくに長期間放置したびんの中では、ろうそくが勢い良く燃えた。

また、ろうそくを燃やしたあとの空気の中でもミントは成長でき、10日後に、びんの中でふたたびろうそくを燃やすことができた。 一方で、空気を閉じ込めたガラスびんにキャベツの葉を切りとったものを入れて一晩おいておくと、翌朝そのびんのなかではろうそくを燃焼させることはできなかった。このことから、死んだ葉は、空気を「悪くする」と考えた。

これらのことから、プリーストリーは、植物が成長するときに、呼吸や燃焼で生じた「悪い」空気を元に戻し、「良い」空気を作ることができると考えた。現在の知識では、この「良い」空気とは酸素の割合の多い空気であることがわかるが、彼はそう考えなかった。のちに、酸化水銀の分解によって純粋な酸素を生成しておきながら、たんに「燃素がふくまれていない非常に良い空気」(脱フロギストン空気)と考え、独立した酸素という物質があるとは考えなかった。酸素を初めに正しく理解したのは同年代を生きたラヴォアジェであった。

光の強さと光合成速度[編集]

光合成速度と光の曲線

植物はCO2を吸収していなくても光合成をしている場合がある。なぜなら、植物は呼吸をしているので、呼吸によってCO2を排出している。

植物の呼吸による2の排出量である呼吸速度と、光合成によるCO2の吸収速度が、つりあった状態での光の強さのことを、補償点(ほしょうてん,compensation point)あるいは光補償点(ひかりほしょうてん)という。見かけの光合成速度がゼロになる点は、補償点である(光合成速度と呼吸速度が等しいため)。


真の光合成速度(photosynthetic rate)を求めるには、見かけの光合成速度(apparent photosunthetic rate)に、呼吸速度(respiration rate)を足し合わせなければならない。呼吸速度を測定するには、暗黒で測定すればよい。

実験による測定で、直接にO2量を測定して得られる測定値は、真の光合成速度から呼吸速度を差し引いた値である。

真の光合成速度 = 見かけの光合成速度 + 呼吸速度
測定値=見かけの光合成速度


光の強さが増すにつれて、光合成速度も大きくなる。

光が、ある一定値よりも強くなると、たとえ、それ以上に光が強くなっても、光合成速度が変わらない状態になる。この状態を光飽和(ひかりほうわ)といい、飽和した直後の光の強さのことを光飽和点(photic saturation point)という。


陽性植物と陰性植物の光合成速度。模式図。

日なたで成長しやすい植物を陽性植物(ようせいしょくぶつ、sun plant)という。アカマツ・クロマツソラマメススキ・カラマツ・カタクリ・トマトなどが陽性植物である。

森林内などの日かげで成長しやすい植物を陰性植物(いんせいしょくぶつ)という。ブナ・シイ・カシ・ドクダミ・カタバミ・モミ・アオキやシダ・コケ植物などが陰性植物である。 光合成速度と光について、補償点や光飽和点は図のようになる。

陽性植物は光飽和点が高い。

一般に、光の弱い状態では、陰性植物のほうが光合成速度が大きい。このため、日かげでも陰性植物は生活できる。いっぽう、光の強い状態では、陽性植物のほうが光合成速度が大きい。


同じ一本の木の中でも、日当たりの良い場所でつく葉と、日当たりの悪い場所でつく葉で、特性が異なる場合がある。ブナ・ヤツデなどが、そのような植物である。 日当たりの良い場所につく葉を陽葉(ようよう, sun leaf)といい、陽性植物と同じような補償点や光飽和点は高いという特性を現す。いっぽう、日当たりの悪い場所につく葉を陰葉(いんよう, shade leaf)といい、陰性植物と同じように補償点や光飽和点は低いという特性を現す。

陽性植物の樹木を陽樹(ようじゅ)といい、陽樹からなる森林を陽樹林(ようじゅりん)という。アカマツなどが陽樹である。陰性植物の樹木を陰樹(いんじゅ)といい、陰樹からなる森林を陰樹林(いんじゅりん)という。モミなどが陰樹である。

樹木は、草など背丈の低い植物への日当たりをさえぎるので、地表ちかくでは陰性植物が育ちやすくなり、また、日当たりが悪いので地表ちかくでは陽性植物が育たなくなる。

森林が陽樹林の場合、新たな陽樹は芽生えなくなるが、新たな陰樹は芽生えることが出切る。このような仕組みのため、森林は、陽樹から陰樹へと移っていくことが多い。

  • まとめ

ひなたを好む陽生植物(sun plant)では、補償点や光飽和点は比較的高く、 弱い光でも生育できる陰生植物()では、補償点や光飽和点は比較的低い。 陽生植物にはクロマツソラマメススキなどがあり、 陰生植物にはブナコミヤマカタバミなどがある。 また、同じ植物でも、日当たりの良いところの葉(陽葉, sun leaf)は補償点や光飽和点は比較的高く、 日当たりの悪いところの葉(陰葉, shade leaf)は補償点や光飽和点は比較的低い。

(※ 詳しくは生物IIで学習する。)


光合成速度は、温度によっても変わる。多くの植物では30度ちかくで、もっとも光合成が活発であり、これは酵素の温度特性と似ている。このことから光合成には酵素が関わっていると考えられ、実際に酵素が光合成に関わっている。


空気中のCO2濃度が低下すると、光合成速度は低下する。

  • 限定要因(げんてい よういん)

光合成に必要なものは、光・温度・水・二酸化炭素という要因(よういん)である。どれかの要因を低下させた場合に光合成速度が低下する場合、その要因を限定要因(limiting factor)という。イギリスのフレデリック・ブラックマンは、光合成速度は、光の強さ、二酸化炭素濃度、温度のうち最も不足したもの(限定要因(limiting factor))によって決まるとする限定要因説()を唱えた。

光・温度・水・二酸化炭素のうち、どれが限定要因かは、どの程度に下げるかなどの実験条件によって異なる。

窒素同化と窒素固定[編集]

アミノ酸の一般的な構造。図中のRは、アミノ酸の種類によって、ことなる。
NH2やCOOHの部分の構造は、図のようになっている。

植物はタンパク質を持っており、タンパク質は多くのアミノ酸からなる。アミノ酸には窒素(ちっそ、化学式:N)が、ふくまれている。 アミノ酸には多くの種類がある。

植物は窒素(ちっそ)の吸収の仕方は、根から硝酸イオン(NO3-)やアンモニウムイオン(NH4+)などとして吸収する。では、そのアンモニウムイオンなどは、どこから来たのだろうか。

細菌類や菌類などが、死んだ動植物や排泄物などを分解した際に、アンモニウムイオンや硝酸イオンなどができる。

植物が、NO3-やNH4+など、窒素 N をふくんだ物質を吸収することを窒素同化(ちっそどうか)という。

アンモニウムイオンが亜硝酸菌(あしょうかきん)などの細菌の働きにより亜硝酸イオンに変わり、亜硝酸イオンから硝酸菌(しょうさんきん)などの働きにより硝酸イオンに変わる。

亜硝酸菌や硝酸菌など、硝化に関係した細菌を硝化菌(しょうかきん)という。

大気中にも窒素があるが、植物は直接には利用できない。微生物の中に、空気中の窒素を取り込むことができる生物もいる。マメ科植物の根に住む根粒菌(こんりゅうきん、Rhizobium)が、空気中の窒素を取り込むことができるこのような微生物が大気中の窒素を取り込む事を窒素固定(ちっそこてい、nitrogen fixation)という。ダイズの根に、根粒菌が住み着き、その結果、根にコブ状のものが、できる。ゲンゲの根にも根粒菌が住み着く。

窒素固定ができる生物には、ネンジュモなどのシアノバクテリア類(ラン藻類)、アゾトバクター、根粒菌などがある。

窒素固定のできる細菌を窒素固定細菌(nitrogen fixation bacteria)という。

ゲンゲの根粒


窒素分子の三重結合
黒丸は電子を表現している。窒素の場合、価電子が5つある。

窒素の分子 N2 (「エヌツー」と読む)は、すごく安定な分子である。窒素分子の結合では、三重結合(さんじゅうけつごう)をしているので、結合力が強いからである。三重結合について説明する。まず化学の周期表を見ると、窒素原子は左から4番目の周期表15族にある。窒素に限らず周期表15族の原子の電子軌道(これを価電子(かでんし)という)では、15族の一番外側の軌道には、電子が5つある。

ふつうの分子は、他の原子と結合して電子が補われて、最外軌道の電子数が周期表18族と同じ状態になると、ふつうの分子は安定する。このような状態を閉殻(へいかく)という。 たとえば炭素原子Cの場合、ほかの原子と最大4つまで結合できる。(たとえばメタンCH4 ) 窒素原子Nの場合、ほかの原子と最大3つまで結合できる(たとえばアンモニアNH3 )。窒素原子どうしの結合 N2では、この3つの結合までの力を、すべて相手の一個の原子につかっているので、とても強力な結合になっている。

多くの原子では周期表18族の価電子数は8個である。ただしヘリウムは価電子が2個である。18族の原子は、原子のままで安定しているので、分子にならない。そのため、常温でも18族原子は気体であるので、18族原子を希ガス原子(きガスげんし)ともいう。

(※ くわしくは化学Iを参照せよ。高等学校化学I/化学結合

窒素の場合、価電子は5つであり、周期表18族に不足しており、なので窒素分氏を反応させ別の原子と結合させるためには、多くのエネルギーが必要である。窒素固定細菌は酵素の働きによって、無機的に反応させるよりかは少ないエネルギーで反応させるが、それでも多くのエネルギーが必要であり、窒素固定細菌はATPを大量に消費している。

  • 周期表 (参考)
1 18
1
H
水素
2 13 14 15 16 17 2
He
ヘリウム
3
Li
リチウム
4
Be
ベリリウム
5
B
ホウ素
6
C
炭素
7
N
窒素
8
O
酸素
9
F
フッ素
10
Ne
ネオン
11
Na
ナトリウム
12
Mg
マグネシウム
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
Al
アルミニウム
14
Si
ケイ素
15
P
リン
16
S
硫黄
17
Cl
塩素
18
Ar
アルゴン
19
K
カリウム
20
Ca
カルシウム
21
Sc
スカンジウム
22
Ti
チタン
23
V
バナジウム
24
Cr
クロム
25
Mn
マンガン
26
Fe
27
Co
コバルト
28
Ni
ニッケル
29
Cu
30
Zn
亜鉛
31
Ga
ガリウム
32
Ge
ゲルマニウム
33
As
ヒ素
34
Se
セレン
35
Br
臭素
36
Kr
クリプトン
37
Rb
ルビジウム
38
Sr
ストロンチウム
39
Y
イットリウム
40
Zr
ジルコニウム
41
Nb
ニオブ
42
Mo
モリブデン
43
Tc
テクネチウム
44
Ru
ルテニウム
45
Rh
ロジウム
46
Pd
パラジウム
47
Ag
48
Cd
カドミウム
49
In
インジウム
50
Sn
スズ
51
Sb
アンチモン
52
Te
テルル
53
I
ヨウ素
54
Xe
キセノン
55
Cs
セシウム
56
Ba
バリウム
*1
ランタノイド
72
Hf
ハフニウム
73
Ta
タンタル
74
W
タングステン
75
Re
レニウム
76
Os
オスミウム
77
Ir
イリジウム
78
Pt
白金
79
Au
80
Hg
水銀
81
Tl
タリウム
82
Pb
83
Bi
ビスマス
84
Po
ポロニウム
85
At
アスタチン
86
Rn
ラドン
87
Fr
フランシウム
88
Ra
ラジウム
*2
アクチノイド
104
Rf
ラザホージウム
105
Db
ドブニウム
106
Sg
シーボーギウム
107
Bh
ボーリウム
108
Hs
ハッシウム
109
Mt
マイトネリウム
110
Ds
ダームスタチウム
111
Rg
レントゲニウム
112
Cn
コペルニシウム
 
*1 ランタノイド: 57
La
ランタン
58
Ce
セリウム
59
Pr
プラセオジム
60
Nd
ネオジム
61
Pm
プロメチウム
62
Sm
サマリウム
63
Eu
ユウロピウム
64
Gd
ガドリニウム
65
Tb
テルビウム
66
Dy
ジスプロシウム
67
Ho
ホルミウム
68
Er
エルビウム
69
Tm
ツリウム
70
Yb
イッテルビウム
71
Lu
ルテチウム
*2 アクチノイド: 89
Ac
アクチニウム
90
Th
トリウム
91
Pa
プロトアクチニウム
92
U
ウラン
93
Np
ネプツニウム
94
Pu
プルトニウム
95
Am
アメリシウム
96
Cm
キュリウム
97
Bk
バークリウム
98
Cf
カリホルニウム
99
Es
アインスタイニウム
100
Fm
フェルミウム
101
Md
メンデレビウム
102
No
ノーベリウム
103
Lr
ローレンシウム
 
 1  常温で固体       金属元素       アルカリ金属
 1  常温で液体       半金属元素       アルカリ土類金属
 1  常温で気体       非金属元素       ハロゲン
          人工元素       希ガス
                遷移元素

呼吸(異化)[編集]

(※ 2015年からの新課程では用語の言い換えがあり、「好気呼吸」→「呼吸」、「嫌気呼吸」→「発酵」「解糖」と言い換え。「好気呼吸」および「嫌気呼吸」の用語は教科書では用いられないことになっている。しかし、古い文献では残っている。本記事は旧課程の生物Iの記事であり、また当分は習う必要があると判断し、当ページにて「嫌気呼吸」などの表記を記述する。)

われわれ人間の呼吸では、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解して、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。

なお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を呼吸基質(こきゅう きしつ)という。

人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を用いた呼吸を好気呼吸(こうきこきゅう)という。細胞での好気呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。

そのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。 微生物には、酸素を用いないで呼吸を行うものもあり、このような無酸素の呼吸を嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。

(※ 本章では嫌気呼吸を重点的に説明する。好気呼吸のしくみは複雑であるので、そのため生物IIで好気呼吸について説明されるだろう。)
(※ 範囲外 :) 「好気」・「嫌気」の概念の衛生への応用として重要なこととして、食品の保存などを目的に「微生物による腐敗を避けよう」と思い密封して空気遮断をしても、世界には嫌気生物が存在するので、殺菌・滅菌は密封だけでは完全には出来ないということになる。これはつまり、缶詰(かんづめ)は、腐敗を避けきれないということであろう。

好気呼吸[編集]

まずは、好気呼吸について整理しよう。 われわれ人間の肺呼吸は、細胞での好気呼吸のために、酸素を身体各部の細胞に血管などを用いて送り込んでいるのである。魚類の「えら呼吸」も、酸素を細胞に送り込んでいるので、細胞での好気呼吸のためである。植物の呼吸もしており酸素を取り入れており、植物の呼吸は好気呼吸である。なお、光合成は呼吸ではない。 人間・魚類の呼吸も植物の呼吸も、これらの呼吸は、細胞では、どれもミトコンドリアが酸素を使ってグルコースなどを分解する反応である。

嫌気呼吸[編集]

嫌気呼吸とは[編集]

さて、細菌やカビなどの一部の微生物には 、必ずしも酸素を使わなくてもグルコースなどの炭水化物を分解できる生物がいる。酵母菌や乳酸菌は、そのような菌である。酵母菌によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵などの発酵は、これらの菌が生存のために栄養から必要なエネルギーを得るために化学反応を行った結果であり、酵母菌や乳酸菌の発酵では酸素を用いていない。

このような、酸素を使わないでグルコースなどの炭水化物を分解する活動も呼吸にふくめる場合がある。これらの菌などがおこなう無酸素の化学反応でグルコースなどの炭水化物を分解することを嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。

そのため、酸素が少ない環境、あるいは酸素が無い環境でも、栄養があれば、嫌気呼吸をする菌は生きられる。

微生物による腐敗も、その微生物の嫌気呼吸である場合が普通である。

発酵(はっこう)と腐敗(ふはい)の区別は、ある微生物の呼吸の結果の生産物が、人間によって健康的な生産物の場合が発酵で、有害な生産物の場合が腐敗(ふはい)である。つまり発酵と腐敗の分類は、人間の都合による。

微生物の種類によって、嫌気呼吸の生産物の方法は違うが、基本的にはATPを生産している。

嫌気呼吸による、このような酸素を用いない分解では、ミトコンドリアを用いていない。微生物は細胞質基質で嫌気呼吸を行っている。

酵母菌は、嫌気呼吸と好気呼吸の両方の呼吸ができる。そのため、アルコール発酵をさせる場合には、酸素の無い環境に置く。酵母菌はミトコンドリアを持っており、酵母菌の好気呼吸はミトコンドリアによるものである。

乳酸菌と酢酸菌は原核生物であり、ミトコンドリアを持たない。

アルコール発酵[編集]

酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。

解糖系  (C6H12O6) → 2C3H4O3 + 4H + 2ATP
それ以降  2C3H4O3 + 4H→2C2H5OH + 2CO2

まとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。

C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2 + 2ATP

グルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。

解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。)

乳酸発酵[編集]

乳酸発酵(にゅうさんはっこう)とは、乳酸菌が行う嫌気呼吸である。

まずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。

C6H12O6 → 2C3H6O3 + 2ATP

酢酸発酵[編集]

酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。

C2H5OH + O2 → CH3COOH + H2O

酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。

酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。

筋肉と乳酸[編集]

筋肉では、はげしい運動などをして酸素の供給が追いつかなくなると、グルコースやグリコーゲンなどを解糖をして、エネルギーを得る。筋肉での解糖のときに、乳酸(にゅうさん、lactate)ができる。 反応のしくみは、乳酸発酵と、ほぼ同じである。

呼吸商[編集]

呼吸で使われる基質は通常はグルコースだが、グルコースが不足した場合などに脂肪やタンパク質やグルコース以外の炭水化物などの栄養が基質として使われる場合がある。

なおデンプンやグリコーゲンなどは、呼吸の過程で、グルコースへと分解される。

呼吸によって排出されるCO2と使用される酸素O2の、体積(または分子数)の比率 CO2/O2呼吸商(こきゅうしょう、respiration quotient)といい、RQであらわす。呼吸基質によって、呼吸商は異なる。気体の体積は圧力によって変化するので、測定するときは同温・同圧でなければならない。同温・同圧で測定した場合、気体の体積比は分子数の比になるので(物理法則により、気体の体積は、分子数が同じなら、原子・分子の種類によらず、分子数1モルの気体は0℃および1気圧では22.4L(リットル)である。モルとは分子数の単位であり6.02×1023個のこと)、よって化学反応式から理論的に呼吸商を算出でき、その理論値と実験地は、ほぼ一致する。

呼吸商の値は、おおむね、次の値である。

  • 炭水化物 RQ = 1.0

化学式 C6H12O66O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O

よって RQ = CO2/O2 = 6÷6 = 1 より RQ = 1.0

  • 脂肪 RQ = 約0.7

トリアシルリセロールの場合、

2C55H110O6 + 77O2 + → 55CO2 + 110H2O

よって RQ = CO2/O2 = 55÷77 ≒ 0.7 より RQ = 0.7

トリステアリンの場合、

2C57H110O6 + 163O2 + → 114CO2 + 110H2O

よって RQ = CO2/O2 = 114÷163 ≒ 0.7 より RQ = 0.7


  • タンパク質 RQ = 0.8

ロイシン C6H13O2N の場合、

2C6H13O2N + 15O212CO2 + 10HO2O 2NHO3

よって RQ = CO2/O2 = 12÷15 = 0.8


測定実験の結果の呼吸商が0.8だからと言って、必ずしも気質がタンパク質とは限らない。なぜなら炭水化物(RQ=1)と脂肪(RQ=0.7)の両方が基質に使われている場合、呼吸商が0.7~1.0の中間のある値を取る場合があるからである。

発展:好気呼吸の仕組み[編集]

解糖系とクエン酸回路。

好気呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。

  • 解糖系

1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。

グルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。

フルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。

グリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子e-とプロトンH+が生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。

  • クエン酸回路

ピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。 アセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。

クエン酸(C6)→ケトグルタル酸(C5)→コハク酸(C4)→フマル酸(C4)→リンゴ酸(C4)→オキサロ酢酸(C4)→クエン酸

と変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。) このクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。

C2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。

クエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。 コハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)

  • 電子伝達系(Electron transport chain)

ミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子e-と水素イオンH+が分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、H+が、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このH+ATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。 これらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。

電子e-は、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。

好気呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。

※ 電子伝達系で生産されるATPの個数が、解糖系やクエン酸回路のATPの個数(2分子)と比べて、(電子伝達系では)桁違いに多い(34分子)。なので1990年代の昔の高校では、検定教科書には書かれてない仮説だが、教師が授業で、生物進化の歴史において好気呼吸の生物が増えた理由として、好気呼吸の電子伝達系のATP生産数が多いため効率が良かったからかもしれない、という仮説を生物1で紹介する授業が、よくあったようである。