高等学校美術I/人物デッサン画

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

人物デッサン画[編集]

人物デッサンの描き方の一例を示します。

※ 美術2の範囲内です。教科書会社のwebサイトで確認できます。(ただし、高校によっては、美術2があっても鉛筆デッサンを扱いません。たとえば埼玉県の県立トップ高校の浦和(うらわ)高校では、人物デッサンは3年生の選択科目「美術III」に回されています[1]。)
※ 教科書本体では技法までは説明していないのですが、しかし教科書会社が公開している動画などで技法を説明します。内容はふつうの市販のデッサン技法書にあるようなことの概要です。
※ 高校レベルなので、本ページで紹介する人物デッサンとは、(学生服などの)服を来た人の(エンピツなどでの)写実画のことです。
ふつう、黒などの単色の線で、物の形を表し、陰影をつけることを「デッサン」と言います[2]
なお、美大などでは裸体の写実画のことを「人体デッサン」と言ったりします[3]。人間の体のつくりが人体の表面にどう表れるかを学ぶのが目的なので、裸体を観察しながら描く必要があるからです。
当然ですが、本ページでは、裸体の写実画は紹介しません。普通の高校の美術でも、裸体は扱いません。


ふつう、人物デッサン画では、黒以外の色は塗りません。

人物デッサン画は「写実画」とは異なります。


そもそも教育目的が、人物デッサン画の授業と、写実画の授業では、違います。

デッサンの基本的な目的は、自分がいかに先入観でものを観察していたりして[4]。 、ものを正確に見れてないか、などの見落としを実感するために行うものでもあります[5]

なので基本的には、デッサンでは、なるべく写実的に、実物そっくりに描くのが安全でしょう。

ただし、実際には、立体感を分かりやすくしたりするため等の理由で、少しだけアレンジを加えることもあります。


デッサンは、絵の修正を通して、自分の勘違いを修正する行為でもありますので、基本的には消しゴムも使います[6][7]

デッサン画の目的は、立体感および光と影の位置関係について、上述のように先入観と現実とのちがいの把握が、一般的な目的です。特に石膏(せっこう)デッサンなどで用いる石膏像は、立体感に専念しやすいように白色だけを使った像になっているほどであり、また、鼻の穴などの細部については美術の石膏像では省略された造形になっているほどです。


一方、絵の具などを用いる写実画の目的は、色彩の表現力などが目的です。


必要な道具(最低限の場合)
  • 普通の2B[8]くらいの黒エンピツ
  • 消しゴム(普通ので構いません[9][10]
  • 画用紙またはスケッチブック(これに描きます。説明は省略)

シャープペンシルだと、(画風にも寄りますが)影を塗れないので、エンピツを用意してください。また、シャープペンシルだと画用紙を痛めやすく、消しゴムで線を消しても、ヘコミが残るなどして、危険です。

消しゴムは、ハイライトをつける場合にも使います[11]


美術で使う消しゴムは、角が黒くなってきたら、ハサミなどで黒くなった部分を切ります[12]

※ 参考文献ではカッターナイフで消しゴムを切っている。ただ、高校生には少し危険だと思い、本wikiでは「ハサミ」にアレンジした。消しゴムを切れれば何でもいい。

※ なお、カッターやハサミをどうしても使う場合、多くの中学・高校で、美術室で事前に用意してあると思います[13]。なお、特に出典は無いのですが、社会常識として、多くの職場で、刃物を日常的に使う職場の場合、事前に職場で刃物を用意していることが多くあります。通勤のさいに刃物を持ち歩くと警察沙汰になることが多くあるので、なるべく常識として会社側が備品として仕事で使う刃物を用意しているのです。
※ 備品のカッターやハサミを美術室から借りた場合、使い終わったら、もとあった場所に返却しましょう[14]。これは美術以外の分野でも社会常識で、会社などで備品を借りる時でも常識です。

さて学校で「練り消しゴム」を買わされる場合、おそらくカッターなど刃物を使わせたくないので、「校内の美術では練り消しを使え」という意味でしょうか。

なお、呼び方は「練り消しゴム」でも「練り消し」でも[15]、どちらでも良い。

教科書会社の光村書店のサイトでは「練りゴム」と呼んでいました。


生徒側は用意する必要は無いですが、

  • 画用紙を置くナナメ台(なお「イーゼル」という)

が必要です。美術室に置いてあります。それを使えば十分です。


生徒側がそろえるものとしては、できれば、さらに

  • 濃い鉛筆 3B~6Bなど
  • 薄い鉛筆 HまたはHBまたは2Hや3hなどのHなんとか など

があれば、さらに便利です。

※ 教科書会社の動画では、そこまで説明していない。おそらく、あまり費用の負担をさせたくないのだろう。


全部そろえるのは大変だし、持ち運びも不便だし、カネもかかるので、5教科用の鉛筆のほかの鉛筆としては、濃い鉛筆2本、うすい鉛筆2本、くらいの4~6本くらいもあれば、高校レベルとしては十分でしょう。

ある本では、「4Hから6Bまでの間で、濃さの異なる4~5本を用意する」とあります[16]

本格的にやるなら(授業レベルでは不要でしょうが)、筆箱を、普通の鉛筆の筆箱とは別にも用意したほうが良いかもしれません。

仕上げなどは、強い筆圧で書くのではなく、濃い鉛筆で書くようにしたほうが安全です。

強い筆圧で書いてしまうと、紙を痛めやすくなります。


  • (許可があれば)ティッシュなど

影をこする場合に、ティッシュ[17]や、綿棒またはガーゼなどを使います。価格がいちばん安いのがティッシュでしょうか。ただし、高校の授業レベルでは、ゴミ防止などの理由で、ティッシュ・綿棒。ガーゼなどの使用が禁止されるかもしれません。ガーゼは薬局などで購入した一般のもので大丈夫です[18]


なお、自分の指でこすっても大丈夫です[19]

こすらなくても問題ありません。ただし、教員などの提出された画用紙の持ち運びなどの際、勝手にこすれると思います。

筆圧[編集]

鉛筆デッサンでは、筆圧はかならず、弱く書かないといけません。

なぜなら、もし強い筆圧で書いてしまうと、画用紙をヘコませてしまうので、消しゴムで消しても、影などを塗る際にヘコみのせいで、ヘコミの部分だけ影がつかなくなってしまいます。特にシャープペンシルを使うと筆圧が強くなりやすいので、シャープペンシルは使わないのが安全です。

教科書会社の動画でも、鉛筆で書いています。なお、鉛筆をナナメに寝かすような角度で書いています。このほうが広い範囲を弱い力で安定的に描けるので、デッサンでは、よく使われる持ち方です。


作業の流れ[編集]

デッサンの完成品では目立たない線ですが、じつは、デッサンの描き始めの段階で、プロの美術家でも、線画のようなもので人体のシルエットのようなもの(「アタリ」という)を描いています[20][21]

※ なお、教科書会社のサイトでは「アタリ」という用語は用いていません。

アタリを取らない流儀もありますが(いきなり影を塗り始める方法もあったりする)、しかし美大受験デッサン(3時間ていど)や高校の授業時間内などの短時間で書く場合、アタリが必要になるでしょう。本ページ・本セクションでは、アタリを取る流儀で説明します。多くのデッサン入門書でも、アタリを取る流儀で説明しています。


アタリは、決して頭の中だけで構図を決めたままで終わりにするのではなく、実際に鉛筆でアタリの線を紙の上で書いて確認することまでが、「アタリ」です[22]

構図が紙からハミ出ないかなどの確認や、構図のとおりのポーズで本当にかっこいいかの確認なので、細かなデコボコは無視して、大まかなシルエットを描きます。


指などは、(時間の節約のためか、)決して1本1本は、描けません[23]。野球グローブや料理ミトンのように、指全体の大まかなシルエットを取るようになるでしょうか。


ただし、手足の長さや、胴体の長さや、首の長さや頭の長さは、なるべく正確にとる必要があります。

同様、手足の太さ、胴体の太さ、首の太さ、頭の太さも、正確にとる必要があります。


作品づくりの作業のほとんどを、(エンピツで)塗り、修正、塗りなおし などに配分すると、いいようです。

なお、ここでいう「塗り」は、黒エンピツで影などをつけることです。

※ 説明の都合上「塗る」と書きましたが、しかしサンズイ(部首の「シ」)がありますが、しかしデッサンでは水彩絵の具は使いません。水彩も油彩も、とにかく絵の具も塗料も、デッサンでは使いません。基本は黒色エンピツです。色エンピツも使いません。
※ 鉛筆デッサンの専門書でも、影つけのことを「塗る」と表現しています[24]

先に全身のバランスを押さえてから、あとで細部を作っていきます。

人物画のアタリ[編集]

人物デッサン画を描く場合、シャープペンシルは使わないようにするのが常識です。なぜならシャープペンシルを使うと、画用紙がヘコんでしまいます。

デッサン画を描く時、普通はグラファイト鉛筆(ごく普通の鉛筆です)を使います。

高校レベルのデッサンでは、消しゴムを使って何度も修正して消すので、普通の鉛筆で書かなければいけないでしょう。(一発書きは、決して教育目的ではありません。もし一発書き・短時間での描写が目的なら「クロッキー」などの別の用語で呼びます。)


まず、アタリを取ります。

アタリとは、うすく、輪郭のシルエットのようなものを描くことです。

美術デッサンのアタリでは、薄く描くため、鉛筆を寝かして描くのが普通です[25][26]

鉛筆を寝かせることで線がやや太くなりますが、美術デッサンとしては問題ありません。(ただし、マンガやアニメのアタリとしては不適。マンガ・アニメは本ページの範囲外なので、説明は深入りしない。)


美術デッサンの場合、アタリの段階では、あまり顔の目・鼻・口に深入りしません[27][28]

シルエットが大まかにとれていれば十分です。

服のシワは、アタリの段階では取らなくて大丈夫です。よほど大きなシワや、目立つカゲでない限り、アタリの段階では不要です。

上半身シャツや下半身ズボンの境目など、目立つなら、アタリでも描いても大丈夫でしょう[29][30]

目立つ服のシワや影の書き込みなど[編集]

アタリの段階では、服のシワなどは無視したので、

次に、本当にシワなどを書き込んでも問題ない程度には正確にアタリが取れているかの確認もこめて、

目立つシワや、目立つ大きな影などを、描いてみます [31]


ほか、手の指も、アタリの段階では省略したので、この段階では、

指も実際に見える指をすべてシルエットを書いてみて、問題ないことを確認します[32]

アタリとその後のこの調整の段階で、写真のように完全に正確に描くのは、プロでも無理です。プロですら、つじつま合わせをします[33]。ポーズやプロポーションなどの大きな流れが崩れてさえいけなれば、とりあえずは、つじつま合わせとしては、良いのです。

影をつけ始める[編集]

ある程度、全身のアタリを取ったり調整をしたら、次に、影になる部位をうすめに黒く塗りにいく。

本当に影を塗っても問題ないかを確認する必要もあるため、実際に影を塗ってみて、確認するしかない。

ただし、あとから修正するので、うすく塗っていく。


このカゲを描くさいに使うエンピツはもちろん、普通の黒エンピツでなければならない。

決して、色鉛筆用の特殊な黒エンピツを使ってはならない。

影を描くさい、鉛筆の先端部をすこし寝かして紙にコスつけることで[34]、うすく広く、影をつけられるので、このテクニックを使って影をつけていくのが良い。(シャープペンシルだと、これが不可能。無理やりシャープペンシルでやると、芯が折れる。)


また、なるべく始めは、全身の各部位にある影部をバランスよく、黒く塗っていく。

もし、影をもっと濃くしたい場合は、けっして強く描くのではなく、濃い鉛筆に持ち替えます[35]


とにかく、実際に影部を黒く塗ってみて、もし違和感を感じた部分は、消しゴムで修正していきましょう。

影の大きさや位置を調整したり、場合によってはアタリで引いた線を引きなおします。

違和感を感じにくくなるまで、修正を繰り返します。


その後の調整[編集]

所要時間と書き方

その絵を作るのに投ずる時間によって、描き方は、変わってきます[36]

高校の場合、授業では4~6時間ていど、放課後に居残りをしても、せいぜいプラス3時間程度でしょうか。

国語・数学・英語・理科・社会など他の科目の勉強をす必要もあるし、絵の練習をするにしてもデッサン以外にも色々な練習があります。

(なお、美大受験でもデッサン受験をする場合は、時間の相場は3時間程度[37]のデッサンです)


授業の4時間ていどで仕上げる絵を描く場合、基本的には、週刊マンガ家やアニメーターのように、線画でアタリを取ることになるかと思います。

デッサンの専門書でも、1時間でデッサンを描く場合には、線画でアタリを取っています[38]。ただし美術のデッサンでは、決してアニメーターのように太さの細かい線で描く必要はありません。


後戻りをする時間が無い場合は、アタリ線を重視します。



各論[編集]

黒い服、白いYシャツの影を書く場合[編集]

黒い服[編集]

黒い服、制服の鉛筆デッサン。→黒いものに影つけするのが難しい。

対策案1:  濃く黒く見える部分を、「灰色だ」と思って描く。つまり、実物よりも薄い色として描く。
対策案2:  または、先に影になる部分を描いてから、そのあと、画用紙上での服の色を決める。つまり、あたかも、モデル役を「実物大の石膏デッサン人形」(デッサン用模型は白色であるのが通常)みたいな白色の人形だと思って描く。そして影を描き終わってから、服の色などを着色していく。
白いYシャツ[編集]

白いシャツの鉛筆デッサン。→紙も白いから、どう描くか混乱する。

対策案手順

1: とりあえず、Yシャツの輪郭線を、うすくエンピツで線を描いてしまおう[39]
2: 次にとりあえず、Yシャツで影になってて暗くなってて目立つ部分などは、エンピツで(うすく)灰色っぽく塗る[40]
3: そのあと、Yシャツの表現をどうするか、考えよう。

「うすく」と書いた理由は、黒色のズボンを、やや うすめ の灰色で描く場合、それと合わせるため、Yシャツの白色の輪郭や影の色を、調節する必要があるからですね。

法的な問題[編集]

※ 中高の美術の検定教科書には法的な話が無いですが、しかし実際に21世紀の中学の美術の教育現場では著作権などの指導もされています[41]


モデル生徒のプライバシーなどの問題[編集]

21世紀のネット普及以降の時代では、モデルになる生徒の側のプライバシーの都合のため、服を来た同級生をモデルにしたデッサンはしないかもしれません。なぜなら、ネットなどに同級生をモデルにした絵が転載されてしまうと、簡単には消せなくなってしまいます(消すには裁判などの手間が掛かる)。なお、デッサン画に限らず水彩などの写実画でも同様、人物を描く場合には権利問題はあります。

プライバシーや肖像権などの問題です。

就職活動や推薦入試などで学外の人に見せることになる場合もあるので、もし同級生などをモデルにしたデッサンだと、肖像権などの問題が発生するからです。

このように21世紀の現代では、モデルの生徒のプライバシーや肖像権なども考える必要があります。こういう権利的な問題を予防するため、現代の高校デッサンの授業では、代わりに美術用の石膏像の胸像のデッサンをすることになるかもしれません。いわゆる「石膏デッサン」です。

普通の高校では、いちいちモデル役の大人なんて雇いませんし、財政難の日本の公立高校では雇えません。


石膏デッサンだと、写実的な顔は石膏像では書けません。そもそも細部を省略しているのが石膏像です(立体感を把握するのが目的なので、細部の凹凸(おうとつ)は省略している)。


なお、石膏デッサンの目的は、立体感の把握もあるので、デッサンの際には、描くだけでなく、加えて、時々いろんな角度で石膏像を観察しましょう[42]


なので、デッサンの単元とは別の授業で、写実的な顔を練習することになるかもしれません。たとえば別の単元で、芸能人・俳優などの写真を使って、模写をすることになるかもしれません。当然ですが、芸能人・俳優などは高校に呼べませんので、写真を模写するしかありません。

さらに小中学校の美術や図工などで同級生の顔の似顔絵を描かされたでしょうから、その経験も上乗せすることになるでしょう。

最終的に人物デッサンをする場合、石膏デッサンで身に着けた立体感の上に、写真模写で身に着けた表現力と、その他の美術の経験を載せることになるでしょうか。


高校美術の一般的な石膏像は、肩・首元から上くらいしか、ありません。それ以下は、石膏像では練習できません。必要なら、ご自身で工夫して、写真などで肩から下は練習してください。


あるいは、自分の顔のデッサンなら、自由に公開しても、他人に見せても(たとえば推薦入試などの自己アピールで見せたり)、権利的には自己責任なので問題ありません。ただし、もし問題が起きても自分で対処する必要ありますが。推薦入試や就職活動などの非公表の自己アピール以外の場所では、自分の顔のデッサンなどは決してネットなどでは公開しないのが安全です。


なお、模写で「個性が失われるのでは?」という不安がよくありますが、しかし、模写をしても個性は大丈夫です。模写をしても個性は失われないと欧米のデッサン技法書などでも述べられています[43]。そもそも、欧米のデッサン技法書でも「まったく独創的なものなどありません。人のすることはすべて、組み合わさりながら新しいものを次々につくっていくのです」と言われています[44]

また、もし自分の作品にそれほど奇抜さや斬新さが無くとも、それはそれで使い道によっては、才能の一種です。なぜなら「普通」な作品とは、世の中で一番数が多い層に向けてモノを作っていることになるからです[45]


もうひとつ、既存のジャンルや定番の表現手法を知らずに(あるいはそれらを無視して)全くの独自の発想で作品を作っても、観客にとっては作り手との共通認識が不足することになるので、そのため観客がその作品を理解できなくなってしまい、そのため単に奇異な絵としか観客の目には見えない作品になってしまう、という結果になりがちです[46]

わざとそういった理解困難な作品を書きたいなら別にそうすればよいでしょうが、しかし多くの絵描きの目指す方向性は違うだろうと思います。

自分初の独自性・個性は、多すぎてもダメなのです(なぜなら相手に伝わらなくなるので)。いっぽう、独自性・個性が少なすぎても、アートや作家としては問題でしょうが(ジャンルにも寄る。下請け仕事で絵を書く場合なら、少な目でも良い場合も多い)。ジャンルや仕事の種類などに合わせて、うまく、作品内における独自性・個性の分量を調整しましょう。

模写の販売は禁止[編集]

なお、俳優・有名人などの写真を模写で描いた場合でも、決して販売してはいけません。なぜなら、モデルの肖像権のほか、さらにカメラマンの著作権があるからです。

「絵を販売しよう」という高校生は少ないと思いますが、法律の勉強も兼ねて、念のため、解説します。


まず、検定教科書にある偉人の写真ですら、20世紀後半まで生きた偉人については著作権が2020年になっても残っている場合も多いので、注意する必要があります。


もっとも、販売しないなら、学習用に模写して、学内や関係者などにだけ公開する程度なら、さすがに大丈夫だと思います。日本の著作権法にも、例外規定として、学校教育などの教育目的では模倣が法的に許されているし、海外でもアメリカでは「フェアユース」などの概念もあります。

しかし、有料で販売してしまうと、そういう例外規定を逸脱していて脱法的、あるいは単に違法な悪事として見なされ、損害賠償などを要求されかねません。

とにかく、法律がよく分からなけば、他人の写真などの模写については、権利者の許可が無い限りは、販売しなければ良いだけです。


人物画に限らず、たとえば過去の名画などの模写などをする授業もあるかもしれませんが、その場合も基本的には、手本にした作品の著作権がまだ切れていないものは、販売は禁止です。

また、模写した作品を公開する場合は、手本にした作品・作家の名前をきちんと紹介しましょう。引用のルールと同じようなものです。

もっとも、授業で模写をする場合は、美術教師から、手本にした作品名・作家名を明記するように指導されるでしょうから、教員の指示に従って明記すれば大丈夫でしょう。


このように、2020年以降の現代では、模写などの著作権や、デッサンモデルのプライバシーや肖像権などの権利問題にも、配慮して絵を描いたりする必要があります。


余談: 近代では模写の仕事があった

なお、中世や近代などの印刷技術が未熟だった時代は、ヨーロッパ各国で画学生が模写を販売していた時代もあります。中世・近代の当時はカラープリンタどころかカラー写真そのものが無かったので、模写の仕事に需要があったからです。

ですが、カラー写真の普及した20世紀後半以降・21世紀および今後の21世紀以降では事情が違います。もし現代で仕事などで模写が許可される場合は、「模写」と言う呼び名ではないかもしれず、たとえば「複製」依頼などと呼ばれるかもしれません。

ともかく、21世紀の現代では、学生レベルでは模写は販売しないのが安全です。

映像作品・小説イラストなどの模写の配慮事項[編集]
ネタバレ防止の必要性

デッサン画ではないですが、無料の公開であっても、マンガ絵・アニメ絵や小説などの挿し絵については、物語のネタバレなどになる危険もあるので、模写を公開するには、そういうのにも配慮が必要です。なので、どうしてもマンガ絵や小説挿し絵の模写を公開したい場合、なるべく序盤のほうだけ公開にするのが安全です。

実写映画などのワンシーンの模写も同様、序盤だけにするのが安全です。

また、基本的に他人の作品の模写なので、販売は禁止です。


二次創作の禁止[編集]

学校教育での創作活動では、基本的に二次創作は禁止です[47]。権利問題など、いろいろな事情があります。

※ 参考文献は文芸部での小説の二次創作禁止の話ですが、美術部でも似たようなものでしょう。部活でない美術の授業でも同じでしょう。

例外的に二次創作の認められる作品もあるかもしれませんが、少なくとも、著作権の切れてない作品については、二次創作は学校では基本的に禁止だと思ったほうが安全でしょう。

※ ただし、初音ミクとか情報科目や音楽の教科書でも紹介してるので、販売メーカーが二次創作を許可してるので、もしかしたら学校でも認められる可能性があるかもしれません。しかし、個別の作品・キャラクターに関する話題になるので、美術科目としては、これ以上は深入りしない。


原作者やその企業などが公式に許可していない限り、著作権の切れてない作品については、二次創作をしないのが学校でのルール・マナーです。

原作者が公式に許可している場合でも、ライセンス条件など公式サイトにあるので、ライセンス条件をきちんと読んで理解して、その上で二次創作をしましょう。

中学教育の振り返り[編集]

中学校で、多くの読者は、スケッチとは別の単元で、鉛筆と消しゴムだけで、写実的に見たものを書く単元があったと思います。体育館履きなどを書いたり、筆箱などを書いたり、あるいは利き腕でないほうの手を書いたり、・・・そういった単元です。

中学教育では、あの単元が、初歩的な鉛筆デッサンとして扱われています[48]

というか、中学でも「デッサン」という単語を使い、そういう絵を描けと課題を出しています。

ただし、中学の段階では、あまり細かいテクニックは教えていないと思いますが。

もちろん、中学でのデッサンの目的も、形をとらえる能力の向上が目的です[49]


正中線[編集]

主に人体で、体を左右に分ける垂直の仮想の線を正中線(せいちゅうせん)と言います。人間や生物を描くときは、この正中線を意識したり、実際に線で描いてみると、自分が描いている絵についての理解や意識が深まっていくと思います。

  1. ^ 『教科・科目の指導 - 埼玉県立浦和高等学校』
  2. ^ 下濱晶子『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.125
  3. ^ スージー・ホッジ『美術ってなあに? ”なぜ?”から始まるアートの世界』、2017年9月30日 初版発行、河出書房、P24
  4. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P12 ※ 寝そべって逆さまになった顔のクロッキー
  5. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、巻頭『はじめに』
  6. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P17 ※ 『修正』の書き手をえがいたイラストでは、消しゴムを使っている
  7. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P3
  8. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P61 ※ 卵のデッサンの輪郭線で2B使用
  9. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P8
  10. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P9
  11. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P58
  12. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P59
  13. ^ 山崎正明『中学校美術 指導スキル大全』、明治図書、2022年5月初版第1刷刊、P101
  14. ^ 山崎正明『中学校美術 指導スキル大全』、明治図書、2022年5月初版第1刷刊、P101
  15. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P8
  16. ^ 『鉛筆デッサンの基本』、遊友出版、2004年8月20日 発行、P14
  17. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P8
  18. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P33
  19. ^ バート・ドットソン 著『デッサンの55の秘訣』、田辺晴美 訳、マール社、2018年2月20日 第2刷 発行、P66
  20. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  21. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P130
  22. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  23. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92 ※ 文章では説明してないが、掲載の絵を見ると、アタリでは指の1本1本は描いていない
  24. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P37
  25. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P130
  26. ^ 『シリーズ芸美 石膏デッサンの基礎』、アトリエ出版社、1997年9月20日初版発行、P55
  27. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  28. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P130
  29. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  30. ^ アトリエ・ハイデ編『デッサンの基本』、ナツメ社、2009年7月7日 初版 発行、P130
  31. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  32. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92
  33. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P93
  34. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P37
  35. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版発行、P37
  36. ^ 『鉛筆デッサンの基本』、遊友出版、2004年8月20日 発行、P91
  37. ^ 『鉛筆デッサンの基本』、遊友出版、2004年8月20日 発行、P91
  38. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P27
  39. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92 ※ 白い上着を着た女性のデッサンで、似たような対策でアタリを攻略してる
  40. ^ 浅井琢磨 監修『基礎を知り、表現を磨く 人物デッサンの教科書』、池田書店、2018年4月25日 発行、P92 ※ 白い上着を着た女性のデッサンで、似たような対策で影を攻略してる
  41. ^ 中川一史 ほか編著『GIGAスクール構想 取り組み事例 ガイドブック』、翔泳社、2022年2月15日 初版 第1刷 発行、P118
  42. ^ 上田耕造 著『イチバン親切なデッサンの教科書』、新星出版社、2018年4月15日 初版、P85
  43. ^ バート・ドットソン 著『デッサンの55の秘訣』、田辺晴美 訳、マール社、2018年2月20日 第2刷 発行、P57
  44. ^ バート・ドットソン 著『デッサンの55の秘訣』、田辺晴美 訳、マール社、2018年2月20日 第2刷 発行、P210
  45. ^ 成富ミヲリ『絵はすぐには上手くならない』、彩流社、2015年11月10日 初版 第二刷発行、P34
  46. ^ 室井康夫 著『アニメ私塾流 最高の絵と人生の描き方 添削解説80例付き』、エクスカレッジ、2019年12月17日 初版 第1刷発行、P68
  47. ^ 田中拓也 著『部活でスキルアップ 文芸部 活躍のポイント』、メイツ出版、2023年5月30日 第1版 第1刷発行、P31
  48. ^ 山崎正明 著『美術の授業がもっとうまくなる50の技』、明治図書、2020年11月 初版 第4刷 刊、P31およびP13、
  49. ^ 山崎正明 著『美術の授業がもっとうまくなる50の技』、明治図書、2020年11月 初版 第4刷 刊、P31