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高等学校美術I/作家・演者は鑑賞の時間が少ない件

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

芸術分野に携わるに当たって、作品に多く触れることはたびたび重要視されます。しかし、高校生が鑑賞を行う機会というものは、実はあまり多いものではありません。

美術部の説明だと分かりづらいので、吹奏楽部を例に説明します。吹奏楽分野で一番身近にある鑑賞の機会は、他校など外部の演奏会でしょう。自校も参加する合同コンサートなどがあれば、自然と他校の演奏を鑑賞すると思います。しかし、それ以外の日は普段の稽古(けいこ)で忙しく、鑑賞をできません。地域外だと、交通費も掛かってしまいますし。特に私立高校の場合は土曜授業を行っている学校も多く、土日日程の演奏会でも私立高校の出番は日曜日に設定されていたりします。実際に地域主催で1週間の地域交流の芸術イベントがあっても、学生を対象とする企画は土曜日・日曜日だけであることが多いです。学生さんは平日の月~金曜日には授業があるのです。

1990年代後半の社会批評の漫画『ゴーマニズム宣言』で、大学生の学生運動団体がデモ行進を平日の月~金曜に企画・実行したのでマンガ作者が批判したのですが、(作中では上述のような理由は説明されていませんが)上述のような教育事情の背景があります。児童福祉法などの規制により、大人たちは高校卒業以下の年齢の子供たちの学業を邪魔してはいけないのです。ですから、多くの団体や業界のイベントのスケジュール管理は、そういうのを考慮しています。例えばNHKテレビドラマの子供キャラの配役などは、声変わり前の小学生くらいの男子児童の役をドラマでは成人女性が演技しており、そういう法律的な背景もあります。民放はどうだか知りません。

余談ですが、民営のイベント会場やレンタル会議室などのレンタルをする際、土日祝日は料金が1.5~2倍とかなり割高になることが多いです。一方で公民館はどの市町村でも土日も平日も均一ですが、イベント内容に制限がつきますし基本的に地元民優先です。(例えば一企業の就職説明会とかには、公民館は使えないと思います。)公民館のレンタル料金を見ると、数千円とかの金額なので、ついつい会場レンタルの市場は安そうに誤解しますが、実は民間のイベント会場などの料金はじつは十万円以上とか普通に行きます。(一企業の就職説明会とかで外部イベント会場をレンタルする場合、民間の10万円以上の出費になり、かなり出費が痛い。)なので、土日にだけ高校で連れていかれる芸術鑑賞祭イベントを見さられる高校生は、実はとても優遇されているのです。(もし民間のレンタル会場だと、土日は2倍価格で20万円だったりするのが普通)

この10万円の相場も、あくまでオプションなしの価格であり、単なるビル内の広間をレンタルとして貸し出しているようなレンタルイベント会場での相場に過ぎません。もし、各国首脳の滞在先として挙げられるような東京都心の高級ホテルなどの広間をレンタルイベント会場として借りようとすると、編集者の予想とはなりますが、もう数百万円とか掛かると思います。


まあ、土日のレンタルはともかく高いので、かといって平日の朝9時~午後5時までだと学生は授業で、サラリーマンは仕事でいけないので、なので平日の夜中にレンタル、というナイト時間帯のレンタル会場の市場もあります。 ただし、平日の昼間よりも割増です。

高校受験の学校説明会でも、「ナイト説明会」とかあります。土日の昼間にこれない人のため(子どもが行けても母親が行けなかったりする)、ナイト説明会というのがあり、だいたい午後6時~8時くらいのイベントです。

このナイト説明会も、外部のイベント会場を借ります。防犯上の問題があるので、夜中に学校に部外者を入れたくありません。あくまで、受験生はまだ部外者です。

なお、このナイト説明会は、私立高校の説明会でも、公民館とか借りれたりします(なので、優遇されている)。


ともかく、小中高の子供は、児童福祉法とかで、学業に専念できるように、かなり優先的に配慮されています。


学校行事とは別に追加で美術館を見に行く「体験」とか、優先順位は低いでしょう(どうしても見に活きたければ行けばいいと思いますが)。学校の修学旅行かなんかで東京にでも行ったときに美術館やら博物館やらに行けば十分でしょう。そもそも高校あたりで「芸術鑑賞債」という国からの補助金の出るイベントがすでに平成時代からあり、普通に公立学校の生徒でも教員に引率されて見に行ってます。

そもそも自治体の公民館とかが何のためにあるのか理解しているのでしょうか。あと、東京都の人がイラストレーター就職などに有利なのは、単に家賃を掛けずに職場に勤務できるから低賃金でも就職しやすいというダンピング構造なのであって、鑑賞の「体験」とかは関係ないですねえ。

日本の公立小学校とかにも、年に1回、地元の劇団とか楽団とか来て体育館などで公演するのを、その小学校の低学年の生徒児童が体育館で見させられると思いますが。最近は自治体は財政難なので様子はもしかしたら違うのかもしれませんが、少なくとも昭和の時代の日本の小学校はそうでした。朝鮮学校とかの非・一条校はどうか知りません。

ほか、田舎の戦後設立の私立学校が、昭和時代の創設当初に普通科ではなく美術科とか音楽科とか作っても生徒が集まらずに、仕方なく平成時代に改革して進学校になって今や道州内でも有名な進学校・受験校になった悲哀とか、美術館の「体験」とか言ってる偽善者には分からんのでしょう。

参考になりそうな情報の出典ですが、ネット記事 大内 孝夫 著『日本人は「音楽大学」凋落の深刻さをわかってない 弱まる経済を補完する文化基盤の構築をどうする』東洋経済オンライン、2022/07/14 14:30 の情報でも、音楽高校(学科が普通科でなく音楽科の高校)が日本では減っていっており、普通科に併合されていっている現象が指摘されています。

ネットでは、美術や音楽など芸術がさかんに取り立てられますが、現実はきびしい状況です。