高等学校 地学基礎/大気と海洋

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大気圏の構造[編集]

大気圏の構造について、大気圏は地表から順に、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏の4つに分けられる。

  • 対流圏

地表から約10kmの高度までを対流圏(たいりゅうけん)という。

対流圏では、高度が100m高くなるごとに気温が約 0.65 ℃ 下がる。なお、対流圏での この気温低下の度合いの事を気温減率(きおん げんりつ)という。

対流圏と成層圏の境界のことを対流圏界面(けんかいめん)という。対流圏界面のことを単に「圏界面」と省略する場合もよくある。対流圏界面の高度は、場所や地方によって異なる。


一般の雲は対流圏までしか上昇せず、対流圏界面のあたりで上限になり、それ以上の高度には、ほとんど上昇しない。(※ 参考文献: 東京書籍などの教科書)

積乱雲

積乱雲(いわゆる入道雲)が上空で横に広がる場合があるのも、圏界面に達したので横に広がると考えられている(第一学習社の見解, 雲の写真のページ)。

また、降雨などの天気の現象は、ほとんどが、この対流圏にある雲の影響である。

また、ほかの圏と比較して対流圏は水分が多く、大気中のほとんどの水分は対流圏であると言われている。


対流圏では、その名のとおり、対流が起きていると考えられており、太陽光で熱せられた地面や海面の熱が対流の原因であるとされている。


  • 成層圏

対流圏界面から高度 約50km までを成層圏(せいそうけん)という。

成層圏にはオゾン層が存在する。

なお、オゾン層の化学式は O3 である。オゾン層は酸素(元素記号: O )がもとになっている。


右図のグラフを見ると高度20km以上の上空では高度が上がるにつれて温度が上がるが、これはオゾン層の影響であると考えられている。

オゾン層は紫外線のエネルギーを吸収し、大気をあたためている。

なお、高度 約50km で気温は約0℃になる。

さて、いまさっき説明したようにオゾン層は紫外線を吸収するので、地上の生命はオゾン層によって紫外線の害から守られている。

紫外線には、生物のDNAを損傷する作用がある。


なお、ラジオゾンデが飛ぶ高度は一般的に、成層圏である。


  • 中間圏
夜光雲(国際宇宙ステーションからの撮影)
中央より、やや右上のほうにある白い水平のスジが夜光雲

高度 約50km 〜 80km が中間圏である。

中間圏の気温については対流圏と同様に、高度が高くなるにつれて気温が下がる。

しかし、中間圏の気温減率は、対流圏ほど大きくはない。


中間圏では、夜光雲(やこううん)という特殊なうすい雲が観測される場合もある。


  • 熱圏
アラスカでのオーロラ

高度 約80km以上から数百kmが熱圏である。


オーロラは熱圏の高度100kmのあたりで観測される。なお、一般にオーロラは北極または南極に近い高緯度地方で観測され、また、両極でほぼ同時にオーロラは発生する(※ 時発生についての参考文献: 実教出版の教科書)。

オーロラは、太陽風などによって地球に流れ込んできた 電荷(でんか)を帯びた微粒子が、極地方の磁力線にとらえれれて、その微粒子が地球大気の酸素分子や窒素分子などに衝突する事により発光現象が起きていると考えられている。


流星が見られる高度も熱圏である。

高度が上がるにつれて熱圏は温度が上昇していくが、この理由としては、太陽からのX線や紫外線を吸収しているためだと考えられている。


地表からの電波をよく反射する電離層(でんりそう)は、熱圏にある。

電離層として複数の層があり、下から順にD層、E層、F1層、F2層 である。

これらすべての電離層をまとめて電離圏(でんりけん)という。それぞれの層は、反射しやすい電波の波長が異なる。


無線による遠距離通信(漁業無線など)では、電離層・電離圏の影響が強く表れるとされている。


熱圏よりも上空は外気圏といい、宇宙空間に通じている。


地球の熱収支[編集]

地学「地球のエネルギー収支」を見てください。

大気と海水の運動[編集]

海洋[編集]

海水の塩分[編集]

大洋の年平均表面塩分濃度

海水の主成分は塩化ナトリウム(NaCl)であり、そのほか塩化マグネシウム(MgCL2)などの塩類が溶けている。海水1kgあたりの、すべての塩類の量を塩分(えんぶん)という。塩分の単位はgや%(パーセント)、‰(パーミル)で表す。 海水の塩分は、3.3%〜3.8%であり(つまり33g〜38g)、およそ平均で3.5%(つまり35g)である。

地域によって、海面付近での塩分の濃度は異なる。赤道付近では降雨が多いので、雨で海水がうすめられ、塩分が低くなる。いっぽう、緯度30°付近の亜熱帯では、蒸発が多いので、塩分が高くなる。

海水の温度[編集]

海水の層構造(模式図)
表層温度は一例であり地域や季節によって異なる。

海水温は、季節や地域によって異なるが、地域によって温度が違うのは表面付近の数百メートルの範囲だけである。海水の深さ数千メートルの深部では、世界のどの地域でも、水温は約2℃である。なお、表層の温度と、地域についての関係は、一般に、赤道付近の低緯度ほど、表層の水温は高温である。

海水の表面付近は風や波で混ぜられるので、鉛直方向の温度差が少ない層が数十mほどあり、これを混合層(こんごうそう)あるいは表層混合層(ひょうそう こんごうそう)という。

表層混合層のことを単に「表層」(ひょうそう)という場合もある。


混合層よりも下には、水温が急激に下がる層があり、これを水温躍層(すいおんやくそう)といい、深さ500mあたりまで続く。

深さが2000mほどになると、世界中のどの地域でも(緯度によらない、という意味)、それ以降の深さでは温度はあまり急変せず約2℃で一様になり、ゆるやかに温度が低下していく。

なお、水温躍層では、温度のほかにも、塩分も深くなるにつれて急激に濃くなっていく。また、海水の密度は、海水の塩分と温度によって決まるので、よって水温躍層では海水の密度も急激に上昇していく。

深層の塩分濃度は、緯度によらず、ほぼ一定である。

海水の循環[編集]

海洋は水平方向と鉛直方向に運動するが、海洋の水平方向の運動のことを海流という。

日本近海にある 黒潮(くろしお) や 親潮(おやしお) も、それぞれ海流である。日本近海にある 対馬海流(つしま かいりゅう) や リマン海流 も、その名の通り当然に海流である。

海流の生じる原因としては、地球の自転と、貿易風や偏西風などの地上を吹く大規模な風の影響が原因だろうと考えられている。

海水の大循環。

海水の密度は、温度が低いほど密度が大きく、また、塩分濃度が高いほど海水の密度が大きい。北大西洋のグリーンランド付近では、寒さのため海水の表面が凍るので、そのため海水の塩分が増加するので、海水の密度が大きくなる。この密度の高い海水が、海底に向かって沈み込み、図(「海水の大循環。」)のような海の表層と深層との大循環の一部を形成する。このような深層もふくむ海底の大循環を深層循環(しんそう じゅんかん)などという。深層循環のことをコンベアーベルトともいう。

循環の速度はきわめて遅く、約2000年程も掛かって、北大西洋で沈んだ海水が、北太平洋で上昇する。(一部、インド洋でも北大西洋で沈んだ海水が上昇している。)