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高等学校 生物基礎/植生と遷移Ⅱ

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キーワード[編集]

適応・光合成速度・呼吸速度・光補償点・光飽和点・陽生植物・陰生植物・陽樹・陰樹

光合成と植物[編集]

※生物はどのようにして環境に合わせているのでしょうか?

適応とは?[編集]

 動植物の形と性質は自然環境と地域に合わせて、生きていくための工夫をしています(適応)。

光合成とは?[編集]

 植物は、空気中の二酸化炭素と水と日光から、酸素と栄養分を作ります(光合成)。しかし、虫が葉を食べたり、様々な植物が近くにいると、日光と水と栄養分を取り合ったりします。

光の強さと光合成[編集]

光・光合成曲線

 植物は、太陽の光を使って二酸化炭素を空気から取り込んでいます。一方、植物も私達と同じように呼吸をしています。呼吸は一日中続き、太陽の光がなくても行われます。植物も呼吸をしたら、二酸化炭素を出します。そこで、生物学者達は日光をどれくらい集めて、二酸化炭素をどれくらい取り込んでいるのかを調べて、その関係をグラフに表しました(光・光合成曲線)。そのため、単位時間当たりの光合成量(光合成速度)と単位時間当たりの呼吸量(呼吸速度)は、次のように求められます。

呼吸速度と光合成速度
単位時間当たりの呼吸量(呼吸速度)=二酸化炭素排出量(二酸化炭素放出量)

単位時間当たりの光合成量(光合成速度)=二酸化炭素吸収量(光合成量)+二酸化炭素排出量(二酸化炭素放出量)

なお、光・光合成曲線から呼吸速度は0より下の部分を見ればすぐ求められます。

 もし、日光が長い間全く入らなかったら、植物も枯れてしまいます。そして、見かけの光合成速度は二酸化炭素吸収速度(二酸化炭素吸収量)から分かります。しかし、植物の二酸化炭素排出量(呼吸量)も考えなくてはなりません。植物は空気中の二酸化炭素だけでなく、自身の呼吸も使って光合成をしています。したがって、本来の光合成速度は見かけの光合成速度に二酸化炭素排出量(呼吸量)を足して求めます。言い換えると、見かけの光合成速度は本来の光合成速度から二酸化炭素吸収速度(二酸化炭素吸収量)を引いても分かります。

見かけの光合成速度
見かけの光合成速度=二酸化炭素吸収量(光合成量)

見かけの光合成速度=単位時間当たりの光合成量(光合成速度)-二酸化炭素排出量(二酸化炭素放出量)

なお、光・光合成曲線から見かけの光合成速度は0より上の部分を見ればすぐ求められます。

 日光が強くなると、植物はより多くの二酸化炭素を吸います。やがて、日光が適度な強さになると、植物も二酸化炭素を取り入れたり、吐き出したりしていないように見えます(光補償点)。

 植物は光補償点よりも日光を取り入れないと成長しません。光補償点よりも日光を取り入れると、植物は光合成をもっと早く行えるようになります。この時、二酸化炭素吸収量が、二酸化炭素排出量を上回ります。そして、日光を取り入れば取り入れるほど植物もゆっくり呼吸します。さらに、日光を取り入れると、植物はもうこれ以上二酸化炭素を吸い込めなくなります(光飽和点)。この時、光・光合成曲線の速さもこれ以上変わりません(最大光合成速度)。

月と鼈みたいな関係[編集]

陽生植物と陰生植物[編集]

陽性植物と陰性植物の光・光合成曲線。なお、陽樹と陰樹(陽葉と陰葉)も同じ光・光合成曲線になります。

 陽性植物は、日光をいっぱい浴びると、すくすく大きくなります。例えば、ススキ・イタドリ・タンポポ・アカマツ・クリ・シラカンバなどが陽性植物になります。これに対して、日光があまり当たらなくてもすくすく育つ植物(陰生植物)もいます。例えば、シダ類・アオキ・コケ類・ヤツデなどが陰生植物になります。

 陽生植物は、日光をたくさん浴びれば浴びるほど大きくなります。もし、日光をあまり浴びなかったら、あまり育ちません。その結果、陽生植物は病気になったり、虫に食べられたりして、枯れてしまいます。一方、陰生植物は少しの日光でも少しずつ育ちます。もし、日光をたくさん浴びてしまうと、驚いて光合成を止めてしまいます。

陽葉と陰葉[編集]

 葉も陽葉陰葉がいます。陽葉は日光をたくさん浴びれば浴びるほど、育ちます。その結果、葉も厚くてしっかりしています。もし、あまり日光を浴びなかったら、陽葉も育ちません。一方、陰葉は、あまり日光を浴びなくても育ちます。その結果、葉も薄くて柔らかくなります。

陽樹と陰樹[編集]

 樹木も陽樹陰樹がいます。陽樹は、日光をいっぱい浴びて、すくすく元気に育ちます。陽樹に対して、陰樹は日光をあまり浴びなくてもすくすく元気に育ちます。陰樹は森の中で育ちます。しかし、陰樹が大きくなって他の樹木より高くなると、葉も日光を浴びるようになります。

資料出所[編集]

  • 東京書籍株式会社『生物基礎』浅島誠ほか編著【生基701】
  • 実教出版株式会社『生物基礎』最上善広ほか編著【生基703】
  • 新興出版社啓林館『高等学校 生物基礎』赤坂甲治ほか編著【生基706】
  • 数研出版株式会社『高等学校 生物基礎』嶋田正和ほか編著【生基708】
  • 株式会社第一学習社『高等学校 生物基礎』吉里勝利ほか編著【生基710】
  • 株式会社浜島書店『二訂版 ニューステージ 生物図表』2024年度版
  • 数研出版株式会社『チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』本川達雄ほか編著 2023年