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高等学校 生物基礎/植生とバイオームⅡ

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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本節では、国内のバイオームとその分布について扱います。

キーワード

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水平分布・亜熱帯多雨林・照葉樹林・針葉樹林・夏緑樹林・垂直分布・低地帯・山地帯・亜高山帯・森林限界・高山帯

バイオーム(日本)

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暖かさの指数
 植物生態学者の吉良竜夫は暖かさの指数を考えました。暖かさの指数を使うと、その地域でどのような植物や樹木が育つかも分かります。しかし、暖かさの指数は世界であまり使われていません。

 まず、1年間で月平均気温が5℃以上の月だけを選びます。次に、その月平均気温から5を引きます。どうして5℃なのかというと、もし5℃より低めなら、大半の植物が好まないからです。最後に、計算後の数字を全て足します。この合計が暖かさの指数です。

 暖かさの指数が高ければ高いほど暖かい地域になり、植物の種類も変わります。暖かさの指数とバイオームの関係を順番に説明します。15未満の指数なら、ツンドラが広がります。15~45の指数なら、針葉樹林が広がります。45~85の指数なら、夏緑樹林が広がります。85~180の指数なら、照葉樹林が広がります。180~240の指数なら、亜熱帯多雨林が広がります。240以上の指数なら、熱帯多雨林が広がります。

水平分布

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 雨・雪が降れば降るほど、豊かな自然も広がります。そして、年間の気温も海外と違ってそこまで寒くありません。だから、緑豊かな自然が日本各地に広がっています。日本列島は北から南まで広がっています。そして、南に向かえば向かうほど暖かく、北に向かえば向かうほど寒くなります。それぞれの気温に合わせて、森林のバイオームも亜熱帯多雨林・照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林と少しずつ変わります(バイオームの水平分布)。

人間生活と日本の植生

 日本もかなり暑くて雨もよく降るような地域(屋久島・琉球列島・小笠原諸島)があります。亜熱帯多雨林はこのような地域に見られます。日本の亜熱帯多雨林は、照葉樹林も見られます。そして、このような地域に珍しい植物(ヘゴ・ビロウ・アコウ・ガジュマルなど)が育っています。ヘゴは長い茎を地面に張り巡らします。ヘゴの長い茎は樹木の根のように見えます。普通の花は枝の先から咲きます。しかし、ビロウ・アコウ・ガジュマルなどは、樹木の幹から直接大きな花を咲かせます。

マングローブ
 マングローブは熱帯・亜熱帯の海水で育ちます。特に、穏やかな波が佇むような地域で育ちます。日本のマングローブは、沖縄地方・奄美地方でしか見られません。中でも、ヒルギ類(メヒルギ・オヒルギ・ヤエヤマヒルギなど)がこの地方で育っています。日本のマングローブは、世界から見ても北の果てになります。そこまで、暑くないので、日本のマングローブはどうしても小さく育ちます。一方、東南アジア・太平洋諸島のマングローブは、かなり暑いので、マングローブも大きく育ちます。

 水がないと、植物も育ちません。しかも、大半の植物は雨水・雪解け水・川の水を浴びないとすくすく育ちません。もし、植物が海水に浸かると、塩まみれになり枯れてしまいます。しかし、マングロープは海水でもすくすくと育ちます。なぜなら、マングローブの根は塩分をあまり吸わないようになっているからです。そして、マングローブの根は、海水から真水を作り出します。一方、海水は酸素もかなり少ないので、マングローブは呼吸根から酸素を取り入れます。このように、マングローブが育つと、魚介類・鳥類・昆虫などの様々な生物もそこに住み着きます。

 日本の照葉樹林は、スダジイ・アラカシ・タブノキ・ヤブツバキなどの樹木で成り立っています。このような樹木は九州地方から関東地方まで広がっています。日本の夏緑樹林は、ブナ・ミズナラ・トチノキ・カエデ類などの樹木で成り立っています。このような樹木は東北地方から北海道南部まで広がっています。日本の針葉樹林は、エゾマツ・トドマツなどの樹木で成り立っています。このような樹木は北海道の北東部に広がっています。したがって、日本の樹木は、北に向かえば向かうほど少しずつ変わります。しかし、針葉樹林と夏緑樹林・夏緑樹林と照葉樹林のように樹木は仲良く育っています(混交林)。

垂直分布

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日本中部における植物の垂直分布

 山に登れば登るほど、涼しくなります。そのため、気温が低くなると、動植物も変わります(バイオームの垂直分布)。バイオームの垂直分布は標高から分けています。

 中部地方の山を登れば登るほど、植生も変わります。山の麓から標高600mまでを低地帯(丘陵帯)といいます。常緑広葉樹(スダジイ・アラカシ・タブノキ・ツバキなど)は低地帯(丘陵帯)に見られます。標高600mから1500mまでを山地帯といいます。落葉広葉樹(ブナ・ミズナラ・シラカンバ・カエデなど)は山地帯に見られます。標高1500m~2400mまでを亜高山帯といいます。針葉樹(シラビソ・オオシラビソ・コメツガなど)は亜高山帯に見られます。また、針葉樹に隠れて落葉広葉樹のダケカンバも見られます。

 中部地方の山を登っていくと、最初は緑豊かな森林が広がっています。しかし、標高が高くなると、広葉樹林から針葉樹林に変わっていきます。そして、標高2500mを超えると、樹木はほとんど育ちません(森林限界)。なぜなら、気温が低くなったり、風が強過ぎたり、乾燥したりするからです。

 山の斜面がどちらを向いているかで森林限界の標高も変わります。もし、南側なら日光がよく当たるので森林も高い場所まで広がっています。反対に北側なら日光はあまり当たらないので、森林もあまり高い場所に広がっていません。次に、夏緑樹林の広がり方を示します。鹿児島県の高隈山なら標高1100mを超えないと夏緑樹林が育ちません。富士山なら標高800mを越えないと夏緑樹林が育ちません。青森県に入ると夏緑樹林は平地でも育ちます。このように、南から北に行くほど、夏緑樹林は平地でも広がっています。

 山脈のとても高い場所に高山帯が広がっています。この高さから、森林が見られなくなります。砂利と石が高山帯の地面に広がっています。小さな木(ハイマツ・シャクナゲ)と地衣類のコケモモなどが高山帯の地面に生えています。高山植物(コマクサ・ハクサンイチゲなど)はかなり厳しい環境でも元気に育ち、美しい花を咲かせます(お花畑)。珍しい動物(オコジョ・ライチョウなど)も暮らしています。

資料出所

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  • 東京書籍株式会社『生物基礎』浅島誠ほか編著【生基701】
  • 実教出版株式会社『生物基礎』最上善広ほか編著【生基703】
  • 新興出版社啓林館『高等学校 生物基礎』赤坂甲治ほか編著【生基706】
  • 数研出版株式会社『高等学校 生物基礎』嶋田正和ほか編著【生基708】
  • 株式会社第一学習社『高等学校 生物基礎』吉里勝利ほか編著【生基710】
  • 株式会社浜島書店『二訂版 ニューステージ 生物図表』2024年度版
  • 数研出版株式会社『チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』本川達雄ほか編著 2023年