.NET
.NETは、マイクロソフトが開発したクロスプラットフォーム対応のソフトウェア開発プラットフォームであり、現代のソフトウェア開発において革新的な役割を果たしています。その歴史は2002年のマイクロソフト .NET Frameworkの初回リリースにさかのぼり、長年にわたって進化を続けてきました。
従来の .NET Frameworkは主にWindowsプラットフォームに限定されていましたが、.NET Core(現在の .NET)は根本的に異なるアプローチを採用しました。クロスプラットフォーム性を最優先し、Windows、macOS、GNU/Linuxのディストリビューションなど、多様な環境で動作することを可能にしたのです。
サポートされる主要なプログラミング言語には、C#、F#、Visual Basicがあり、それぞれ異なる開発スタイルと哲学を持っています。中でもC#は最も広く使用され、言語仕様の継続的な改良によって、開発者に柔軟で強力なプログラミング体験を提供しています。
開発環境のセットアップ
[編集].NET開発環境の構築は、現代のソフトウェア開発において重要な最初のステップです。.NET SDKをインストールすることで、クロスプラットフォームでのアプリケーション開発が可能になります。開発者は、自身のニーズと好みに応じて、Visual Studio、Visual Studio Code、JetBrains Riderなど、多様な統合開発環境(IDE)を選択できます。
Visual Studioは、エンタープライズレベルの包括的な開発ツールであり、豊富な機能と緊密な統合環境を提供します。一方、Visual Studio Codeは、軽量でカスタマイズ性の高いエディターとして、モダンな開発ワークフローに適しています。
クロスプラットフォーム開発を支援するツールチェーンも充実しており、コマンドラインインターフェース(CLI)ツールを使用することで、効率的なプロジェクト管理と開発が可能になります。
C#の基本と最新機能
[編集]C#は .NETエコシステムにおける中心的なプログラミング言語であり、オブジェクト指向プログラミングのパラダイムを強力にサポートしています。最新バージョンでは、パターンマッチング、初期化子、ローカル関数、非同期ストリームなど、開発者の生産性を高める革新的な機能が追加されてきました。
特に注目すべき機能として、LINQ(Language Integrated Query)があります。LINQは、データソースに対して宣言的で型安全なクエリ操作を可能にし、コレクション、データベース、XMLドキュメントなど、多様なデータソースを均一な方法で操作できます。
非同期プログラミングのサポートも C# の大きな特徴です。async/await キーワードにより、複雑な非同期処理を直感的かつ簡潔に記述できるようになりました。
.NETアーキテクチャ
[編集].NETのアーキテクチャは、Common Language Runtime(CLR)を中心に設計されています。CLRは、メモリ管理、セキュリティ、例外処理などの重要な機能を提供し、プラットフォーム間の抽象化レイヤーとして機能します。
ガベージコレクションは、.NETの自動メモリ管理機能の中核をなすメカニズムです。開発者は明示的なメモリ解放から解放され、アプリケーションの信頼性と安定性を向上させることができます。
クラスライブラリは、.NETの豊富な機能セットを提供し、開発者は再利用可能で最適化されたコンポーネントを活用できます。
クロスプラットフォーム開発
[編集]クロスプラットフォーム開発は、現代のソフトウェア開発において最も重要な戦略の一つとなっています。.NETは、Windows、macOS、Linuxなど、異なるオペレーティングシステム間でシームレスな開発を可能にします。これにより、開発者は単一のコードベースで複数のプラットフォームに対応するアプリケーションを構築できるようになりました。
コンテナ技術、特にDockerは、.NETアプリケーションの展開をさらに柔軟にしています。コンテナ化により、アプリケーションの依存関係と実行環境を一貫して管理でき、異なるインフラストラクチャ間での移植性が大幅に向上します。クラウドネイティブな開発アプローチと相まって、.NETは現代のマイクロサービスアーキテクチャに最適なプラットフォームとして進化しています。
Webアプリケーション開発
[編集]ASP.NET Coreは、モダンでスケーラブルなWebアプリケーションを構築するための最新のフレームワークです。従来のWeb開発モデルから大きく進化し、軽量で高性能なWeb APIとサーバーサイドアプリケーションの開発を可能にしています。
Blazorは、.NETによるWebフロントエンド開発における革新的なアプローチを提供します。WebAssemblyを利用することで、C#コードをブラウザ上で直接実行でき、フルスタックのWeb開発を.NET開発者に開放しています。サーバーサイドレンダリングとクライアントサイドの両方のモードをサポートし、柔軟な開発が可能となっています。
Minimal APIsは、軽量で高性能なWeb APIエンドポイントを最小限のコードで実装できる革新的な機能です。従来の重厚なコントローラーベースのアプローチから脱却し、よりシンプルで読みやすいAPIコードを実現します。
モバイルアプリケーション開発
[編集]モバイルアプリケーション開発の領域において、.NET MAUIは次世代のクロスプラットフォームフレームワークとして注目を集めています。Xamarin.Formsの後継として、iOS、Android、macOS、Windowsなど、マルチプラットフォームに対して単一のコードベースでネイティブアプリケーションを開発できます。
.NET MAUIは、プラットフォーム固有の機能とのシームレスな統合、パフォーマンスの最適化、そして直感的な開発エクスペリエンスを提供します。グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)コンポーネントの再利用性を高め、開発生産性を大幅に向上させています。
データアクセスとデータベース
[編集]Entity Framework Coreは、.NETにおけるオブジェクトリレーショナルマッピング(ORM)の中心的な技術です。リレーショナルデータベースとのインタラクションを抽象化し、開発者がデータベース操作に関する低レベルの詳細から解放されます。コード優先(Code-First)やデータベース優先(Database-First)のアプローチをサポートし、柔軟なデータモデリングを可能にしています。
NoSQLデータベースとの統合も .NET の強力な機能の一つです。MongoDB、Cassandra、Redis などの異なるデータストアと効率的に連携できるライブラリとツールが豊富に提供されています。マイクロサービスアーキテクチャにおいて、この柔軟性は特に重要な意味を持ちます。
パフォーマンスとチューニング
[編集].NETアプリケーションのパフォーマンス最適化は、高効率なソフトウェア開発において極めて重要な課題です。最新の .NET では、きめ細かなパフォーマンス分析とチューニングのためのツールと技術が豊富に提供されています。
プロファイリングツールは、アプリケーションの詳細なパフォーマンス特性を可視化します。Visual Studio に統合されたプロファイラーは、CPU使用率、メモリ割り当て、実行時間などの重要なメトリクスをリアルタイムで分析できます。これにより、開発者はボトルネックを特定し、効果的な最適化戦略を立案できます。
メモリ効率の改善は、.NET の継続的な進化において重要なテーマとなっています。最新のガベージコレクションアルゴリズムは、アプリケーションの応答性を維持しながら、メモリ消費を最適化します。特に、大規模で高負荷なアプリケーションにおいて、この最適化は決定的な意味を持ちます。
並列処理とマルチスレッドプログラミングは、モダンなマルチコアプロセッサ環境における性能向上の鍵となります。.NET は、タスク並列ライブラリ(TPL)や async/await パターンを通じて、複雑な並行処理を簡潔かつ安全に実装する手段を提供しています。
セキュリティ
[編集]セキュリティは現代のソフトウェア開発における最重要課題の一つであり、.NET はこの領域において包括的なアプローチを提供しています。認証と認可のメカニズムは、ASP.NET Core のセキュリティアーキテクチャの中核を成しています。
Identity Frameworkは、ユーザー認証、ロール管理、外部ログインプロバイダとの統合など、包括的な認証ソリューションを提供します。OAuth 2.0、OpenID Connectなどの最新の認証プロトコルをネイティブにサポートし、セキュアな認証フローを実装できます。
暗号化技術は、.NET のセキュリティ戦略において重要な役割を果たします。対称暗号化、非対称暗号化、ハッシュ関数など、様々な暗号化メカニズムがライブラリとして提供され、データの機密性と完全性を保護します。
セキュアコーディングプラクティスは、単なる技術的な対策を超えて、開発プロセス全体に組み込まれるべき重要な考え方です。入力バリデーション、安全なデータ処理、適切な例外処理など、セキュリティを意識したコーディングパターンが推奨されています。
テストと継続的インテグレーション
[編集]効果的なソフトウェア品質管理は、現代のソフトウェア開発において不可欠です。.NET エコシステムは、包括的なテスティングフレームワークと継続的インテグレーション(CI)ツールを提供しています。
単体テストと統合テストは、xUnit、NUnit、MSTestなどのフレームワークによって強力にサポートされています。これらのフレームワークは、依存性の注入、モック作成、高度なアサーション機能を提供し、堅牢で信頼性の高いテストコードの作成を可能にします。
継続的インテグレーションと継続的デプロイメント(CI/CD)は、Azure DevOps、GitHub Actions、GitLab CIなどのツールによって実現されます。これらのプラットフォームは、コードのビルド、テスト、デプロイメントを自動化し、開発サイクルの効率を劇的に向上させます。
デプロイメントと運用
[編集]コンテナ戦略は、現代のクラウドネイティブアプリケーション展開において中心的な役割を果たしています。Dockerコンテナを使用することで、.NETアプリケーションの一貫性のある、再現可能な展開が可能になります。Kubernetesなどのオーケストレーションプラットフォームと組み合わせることで、スケーラブルで柔軟な運用環境を構築できます。
クラウドデプロイメントは、Azure、AWS、Google Cloud Platformなどの主要クラウドプロバイダによって高度にサポートされています。これらのプラットフォームは、.NETアプリケーション向けに最適化されたサービスと緊密な統合を提供し、効率的なクラウド移行を実現します。
サーバーレスコンピューティングは、Azure Functions や AWS Lambda などのサービスを通じて、.NET開発者に新たな可能性を開いています。従来のサーバー管理から解放され、イベント駆動型のスケーラブルなアプリケーションアーキテクチャを実現できます。
監視とログ管理は、運用段階における重要な機能です。Application Insightsなどの高度な監視ツールにより、リアルタイムのパフォーマンス分析、エラー追跡、ユーザー行動洞察が可能になります。
最新トレンドと将来の展望
[編集].NETエコシステムは、テクノロジーの進化と開発者のニーズに応じて継続的に進化しています。オープンソースコミュニティの貢献により、.NETは単なる商用プラットフォームを超えて、グローバルな開発者コミュニティによって形作られるプラットフォームへと変貌を遂げました。
最新のバージョンでは、クロスプラットフォーム性のさらなる強化、パフォーマンスの最適化、開発者生産性の向上に焦点が当てられています。ネイティブのAoT(Ahead-of-Time)コンパイル、より洗練された言語機能、次世代のランタイム最適化など、技術的な革新が続いています。
マイクロソフトのロードマップでは、クラウドネイティブコンピューティング、人工知能との統合、IoTデバイスサポートの拡張など、将来の方向性が示されています。開発者コミュニティとのオープンな対話を通じて、プラットフォームの進化が継続的に推進されています。
附録
[編集]サンプルプロジェクト
[編集]附録では、.NET 開発の実践的な理解を深めるために、多様な領域をカバーしたサンプルプロジェクトを提供します。これらのプロジェクトは、初学者から中級・上級者まで、幅広いスキルレベルの開発者を対象に設計されており、実際の開発シナリオを反映しています。各プロジェクトにはベストプラクティスが組み込まれており、コーディングスタイル、設計パターン、セキュリティ対策などの学びが得られます。
1. Web アプリケーション
[編集]- プロジェクト概要:
- ASP.NET Core を使用したブログ管理システム。ユーザー認証、記事投稿、コメント機能を含む完全な CRUD アプリケーション。
- 主な学習ポイント:
- MVC (Model-View-Controller) パターンの実装。
- Entity Framework Core を用いたデータベース操作。
- 認証と認可の基本。
- Startup.cs
using Microsoft.AspNetCore.Builder; using Microsoft.AspNetCore.Hosting; using Microsoft.Extensions.DependencyInjection; using Microsoft.Extensions.Hosting; using Microsoft.EntityFrameworkCore; using BlogManagementSystem.Data; namespace BlogManagementSystem { public class Startup { public void ConfigureServices(IServiceCollection services) { services.AddControllersWithViews(); services.AddDbContext<AppDbContext>(options => options.UseInMemoryDatabase("BlogDb")); // Using In-Memory DB for simplicity. services.AddRazorPages(); } public void Configure(IApplicationBuilder app, IWebHostEnvironment env) { if (env.IsDevelopment()) { app.UseDeveloperExceptionPage(); } else { app.UseExceptionHandler("/Home/Error"); app.UseHsts(); } app.UseHttpsRedirection(); app.UseStaticFiles(); app.UseRouting(); app.UseAuthentication(); app.UseAuthorization(); app.UseEndpoints(endpoints => { endpoints.MapControllerRoute( name: "default", pattern: "{controller=Home}/{action=Index}/{id?}"); endpoints.MapRazorPages(); }); } } }
- Models/Post.cs
using System; using System.ComponentModel.DataAnnotations; namespace BlogManagementSystem.Models { public class Post { public int Id { get; set; } [Required] [StringLength(100)] public string Title { get; set; } [Required] public string Content { get; set; } public DateTime CreatedAt { get; set; } = DateTime.Now; } }
- Data/AppDbContext.cs
using Microsoft.EntityFrameworkCore; using BlogManagementSystem.Models; namespace BlogManagementSystem.Data { public class AppDbContext : DbContext { public AppDbContext(DbContextOptions<AppDbContext> options) : base(options) { } public DbSet<Post> Posts { get; set; } } }
- Controllers/PostsController.cs
using System.Linq; using Microsoft.AspNetCore.Mvc; using BlogManagementSystem.Data; using BlogManagementSystem.Models; namespace BlogManagementSystem.Controllers { public class PostsController : Controller { private readonly AppDbContext _context; public PostsController(AppDbContext context) { _context = context; } public IActionResult Index() { var posts = _context.Posts.ToList(); return View(posts); } public IActionResult Create() { return View(); } [HttpPost] [ValidateAntiForgeryToken] public IActionResult Create(Post post) { if (ModelState.IsValid) { _context.Posts.Add(post); _context.SaveChanges(); return RedirectToAction(nameof(Index)); } return View(post); } } }
- Views/Posts/Index.cshtml
@model IEnumerable<BlogManagementSystem.Models.Post> <h1>Blog Posts</h1> <a href="/Posts/Create">Create New Post</a> <table class="table"> <thead> <tr> <th>Title</th> <th>Content</th> <th>Created At</th> </tr> </thead> <tbody> @foreach (var post in Model) { <tr> <td>@post.Title</td> <td>@post.Content</td> <td>@post.CreatedAt</td> </tr> } </tbody> </table>
- Views/Posts/Create.cshtml
@model BlogManagementSystem.Models.Post <h1>Create New Post</h1> <form asp-action="Create" method="post"> <div class="form-group"> <label asp-for="Title"></label> <input asp-for="Title" class="form-control" /> <span asp-validation-for="Title" class="text-danger"></span> </div> <div class="form-group"> <label asp-for="Content"></label> <textarea asp-for="Content" class="form-control"></textarea> <span asp-validation-for="Content" class="text-danger"></span> </div> <button type="submit" class="btn btn-primary">Create</button> </form> @section Scripts { <partial name="_ValidationScriptsPartial" /> }
2. モバイルアプリケーション
[編集]- プロジェクト概要:
- Xamarin または .NET MAUI を使用して開発するタスク管理アプリ。オフライン同期機能付き。
- 主な学習ポイント:
- クロスプラットフォーム UI の作成。
- ローカルデータストレージ(SQLite)の活用。
- REST API と連携したバックエンド通信。
3. マイクロサービス
[編集]- プロジェクト概要:
- .NET で構築されたマイクロサービスアーキテクチャの E コマースプラットフォーム。注文管理、在庫管理、支払い処理を各サービスで分割。
- 主な学習ポイント:
- Docker と Kubernetes を用いたコンテナ化。
- RabbitMQ を使用したメッセージング。
- gRPC または REST API によるサービス間通信。
4. データ分析アプリケーション
[編集]- プロジェクト概要:
- .NET で開発するデータ分析ダッシュボード。CSV やデータベースからデータを取り込み、視覚的なグラフを表示。
- 主な学習ポイント:
- LINQ を用いたデータ操作。
- SignalR によるリアルタイム更新。
- Chart.js などのライブラリを利用したデータ可視化。
5. コンソールアプリケーション
[編集]- プロジェクト概要:
- C# を使用して開発するファイル整理ツール。フォルダ内のファイルを種類ごとに分類し、自動的に整理する。
- 主な学習ポイント:
- ファイルシステム API の活用。
- ユニットテストによるコード品質の向上。
- コマンドライン引数の処理。
提供されるサポート
[編集]各プロジェクトには以下の要素が含まれています:
- README ファイル: セットアップ手順、依存関係、使用方法を解説。
- コードコメント: 各セクションで何をしているかを詳細に記載。
- 演習: 応用力を高めるための追加タスク。
これらのプロジェクトを通じて、.NET の実践的なスキルを深め、現実の開発シナリオに備えることができます。
ベストプラクティス
[編集]効果的な .NET 開発のためのベストプラクティスを以下にまとめています。これらのガイドラインを参考にすることで、コードの品質向上、保守性の向上、パフォーマンスの最適化、セキュリティの強化を図ることができます。
コーディング規約
[編集]- 命名規則の統一
- クラス名やメソッド名は PascalCase を採用する。例:
CustomerManager
- ローカル変数やフィールドには camelCase を使用する。例:
customerName
- 定数には全て大文字を使用し、単語間はアンダースコアで区切る。例:
MAX_RETRY_COUNT
- クラス名やメソッド名は PascalCase を採用する。例:
- コメントの適切な使用
- XML コメント (
///
) を活用して、クラスやメソッドの目的を明確にする。 - 不要なコメントや、コードの説明が冗長にならないよう注意する。
- XML コメント (
- DRY 原則の遵守
- "Don't Repeat Yourself" を徹底し、コードの再利用性を高める。
- 共通処理はユーティリティクラスや拡張メソッドに切り出す。
アーキテクチャパターン
[編集]- レイヤードアーキテクチャの採用
- アプリケーションを明確な層(例: プレゼンテーション層、ビジネスロジック層、データアクセス層)に分割する。
- 各層が疎結合であることを保ち、インターフェースや依存性注入を活用する。
- Clean Architecture
- ドメイン層を中心に据え、外部の変更が影響を与えない構造を目指す。
- エンティティ、ユースケース、インターフェースの順でレイヤーを分離する。
- Microservices の利用
- 小規模かつ独立したサービスとしてアプリケーションを構築し、スケーラビリティとメンテナンス性を向上させる。
- サービス間通信には REST API や gRPC を使用する。
セキュリティ
[編集]- 入力データの検証
- 必要に応じて入力データをサニタイズし、不正なデータの注入を防ぐ(例: SQL インジェクション対策としてパラメータ化クエリを使用)。
- ASP.NET Core のバリデーション属性(
[Required]
,[MaxLength]
など)を活用する。
- 認証と認可
- 認証には ASP.NET Core Identity または OAuth を使用し、安全な認証フローを構築する。
- ロールベースまたはポリシーベースの認可を導入する。
- セキュリティヘッダーの設定
Content-Security-Policy
やStrict-Transport-Security
ヘッダーを適切に設定し、アプリケーションを保護する。- HTTPS を強制し、TLS 証明書を利用する。
パフォーマンス最適化
[編集]- 非同期プログラミングの活用
- 非同期メソッド(
async/await
)を使用して、スケーラビリティを高める。 - I/O バウンドの処理には非同期 API を使用する。
- 非同期メソッド(
- キャッシュの有効活用
- 頻繁にアクセスされるデータをメモリキャッシュや分散キャッシュ(Redis など)に保存する。
- HTTP 応答にキャッシュ制御ヘッダーを含める。
- パフォーマンスプロファイリング
- .NET の診断ツール(
dotnet trace
,dotnet-counters
)を使用してボトルネックを特定する。 - 不要なリソースの使用を最小限に抑える。
- .NET の診断ツール(
コミュニティ知見とリソース
[編集]- 公式ドキュメント: Microsoft Docs の最新情報を参照。
- オープンソースプロジェクト: GitHub 上の .NET リポジトリを通じて他の開発者の実装例を学ぶ。
- ユーザーフォーラム: Stack Overflow や .NET Foundation のフォーラムで質問や議論を行う。
以上のベストプラクティスを実践することで、堅牢で高性能なアプリケーション開発を行うことができます。
参考文献とリソース
[編集].NET 開発に関する最新の技術情報や学習リソース、コミュニティフォーラム、公式ドキュメントなど、開発者が活用できる情報源を以下にまとめます。これらは、学習やスキル向上、最新トレンドの把握に役立つ包括的なリソースとして利用できます。
公式ドキュメント
[編集]- Microsoft Learn: .NET
- .NET 開発に関する詳細な公式ガイド。基礎から高度なトピックまで幅広くカバー。
- https://learn.microsoft.com/dotnet
- .NET API Browser
- .NET の各種 API リファレンスを検索可能。開発中に役立つ便利なツール。
- https://learn.microsoft.com/dotnet/api
学習リソース
[編集]- プログラミングガイド
- C#、F#、VB.NET の基礎や応用テクニックを学べる豊富なガイド。
- https://learn.microsoft.com/dotnet/csharp/
- Microsoft Learn のラーニングパス
- ハンズオン形式で学べるコースを多数提供。実践的な学習が可能。
- https://learn.microsoft.com/training/
- 書籍
- C# in Depth(Jon Skeet 著)
- Pro ASP.NET Core(Adam Freeman 著)
- The Pragmatic Programmer(David Thomas, Andrew Hunt 著)など
コミュニティフォーラム
[編集]- Stack Overflow
- .NET に関する質問やトラブルシューティングに活用可能な開発者向け Q&A サイト。
- https://stackoverflow.com/questions/tagged/.net
- Reddit: r/dotnet
- 開発者コミュニティが集うディスカッションフォーラム。最新ニュースや意見交換の場。
- https://www.reddit.com/r/dotnet/
- .NET Foundation
- オープンソースプロジェクトを支援するコミュニティ。最新イベント情報や開発リソースを提供。
- https://dotnetfoundation.org/
開発ツールとライブラリ
[編集]- Visual Studio
- Microsoft の公式 IDE。
- https://visualstudio.microsoft.com/
- JetBrains Rider
- クロスプラットフォーム対応の .NET IDE。軽量かつ高速。
- https://www.jetbrains.com/rider/
- NuGet
- .NET 用のパッケージマネージャー。数十万のライブラリを利用可能。
- https://www.nuget.org/
動画とウェビナー
[編集]- Microsoft .NET YouTube チャンネル
- チュートリアルや最新トピックのウェビナーを視聴可能。
- https://www.youtube.com/c/dotNET
- Channel 9
- Microsoft の開発者向けチャンネル。技術トークやイベント情報が豊富。
- https://channel9.msdn.com/
最新トレンドとニュース
[編集]- The .NET Blog
- Microsoft が運営する公式ブログ。最新リリース情報や技術トピックをカバー。
- https://devblogs.microsoft.com/dotnet/
- InfoQ
- ソフトウェア開発の最新トレンドや事例を提供する技術ニュースサイト。
- https://www.infoq.com/dotnet/
- X(旧:Twitter)
- .NET 関連の公式アカウント(@dotnet)をフォローすることで、リアルタイムの情報を取得可能。
これらのリソースを活用することで、継続的な学習とプロジェクトの成功に役立ててください。
.NET製品のライフサイクル
[編集]以下は、.NET 製品のライフサイクルをまとめた表です。
.NET 製品のライフサイクル バージョン リリース日 最新パッチバージョン パッチリリース日 リリースタイプ サポートフェーズ サポート終了日 .NET 9 2024年11月12日 9.0.1 2025年1月14日 STS アクティブ 2026年5月12日 .NET 8 2023年11月14日 8.0.12 2025年1月14日 LTS アクティブ 2026年11月10日 .NET 7 2022年11月8日 7.0.20 2024年5月28日 STS 終了 2024年5月14日 .NET 6 2021年11月8日 6.0.36 2024年11月12日 LTS 終了 2024年11月12日 .NET 5 2020年11月10日 5.0.17 2022年5月10日 STS 終了 2022年5月10日 .NET Core 3.1 2019年12月3日 3.1.32 2022年12月13日 LTS 終了 2022年12月13日 .NET Core 3.0 2019年9月23日 3.0.3 2020年2月18日 STS 終了 2020年3月3日 .NET Core 2.2 2018年12月4日 2.2.8 2019年11月19日 STS 終了 2019年12月23日 .NET Core 2.1 2018年5月30日 2.1.30 2021年8月19日 LTS 終了 2021年8月21日 .NET Core 2.0 2017年8月14日 2.0.9 2018年7月10日 STS 終了 2018年10月1日 .NET Core 1.1 2016年11月16日 1.1.13 2019年5月14日 STS 終了 2019年6月27日 .NET Core 1.0 2016年6月27日 1.0.16 2019年5月14日 STS 終了 2019年6月27日 出典:.NET and .NET Core official support policy ‐ dotnet.microsoft.com 2025年1月17日閲覧
註釈
[編集]- LTS (Long Term Support): 長期サポートリリースで、リリース日から3年間サポートされます。
- STS (Standard Term Support): 短期サポートリリースで、リリース日から18か月間サポートされます。
- サポート終了日は、リリースの種類と「Patch Tuesday(第2火曜日)」に基づいて計算されます。
この表は .NET 製品のサポートポリシーを基に作成されており、最新のパッチを適用することがサポート対象である条件です。
下位階層のページ
[編集]おわりに
[編集].NETは単なるプログラミングプラットフォームを超えて、現代のソフトウェア開発におけるエコシステムとして進化し続けています。クロスプラットフォーム性、高いパフォーマンス、豊富なライブラリ、そして活発なコミュニティにより、.NETは多様な開発ニーズに応える柔軟で強力な選択肢となっています。
技術の進化は決して止むことはありません。.NET も、開発者のニーズと技術革新に応じて、常に進化し、改良され続けるでしょう。このハンドブックが、.NET の世界への入り口となり、読者の開発旅行の一助となることを願っています。