ガロア理論/代数的閉体

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定義[編集]

定義 (代数的閉体 algebraically closed field)

代数的閉(algebraically closed)であるとは、任意の定数でない多項式 に対して があって となることをいう。

  • 複素数体 は代数的閉体である。これは 代数学の基本定理と呼ばれる事実である。
  • 有理数体上代数的である複素数を代数的数という。 を代数的数全体とすると、これは代数的閉体である。
(証明) 体であることはガロア理論/代数拡大#定理 6から明らか。 を定数でない多項式として、複素数体 が代数的閉体であることから、 となるものがある。この が実は代数的数であることを示せば良い。
として、 上代数的であり、 上代数的である (ガロア理論/代数拡大#系 7より) ので、ガロア理論/代数拡大#定理 5より 上代数的である。

命題1[編集]

代数的閉体 について、 の多項式は一次の式に分解される。つまり、任意の多項式が という形である。

証明

次数に関する帰納法。

代数的閉包とその存在性[編集]

定義 (代数的閉包 algebraic closure)

の代数的閉包(代数閉包) とは、 の拡大体であり、かつ代数的閉であるような体のことをいう。

さて、このページで最も重要な定理は次である。

定理2[編集]

を体とする。
(i) の代数的閉包が存在する。
(ii) を代数拡大とし、 上の体の同型であるとする。また、 をそれぞれの代数的閉包とする。このとき、同型 の拡張になっているものがある。
(iii) の代数的閉包はみな 上同型である。
(注) (ii) において、 はそれぞれ の代数閉包でもある。

この定理は重要であるが、その証明はガロア理論の本質に関係のあるものではないため、読み飛ばすことを推奨する。