コンテンツにスキップ

不動産登記法第24条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法不動産登記法コンメンタール不動産登記法不動産登記令不動産登記規則不動産登記事務取扱手続準則

条文

[編集]

(登記官による本人確認)

第24条
  1. 登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、次条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない。
  2. 登記官は、前項に規定する申請人又はその代表者若しくは代理人が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同項の調査を嘱託することができる。

解説

[編集]

本条の趣旨

[編集]

本条は、登記の申請につき、「なりすまし」が疑われる場合について、登記官が執るべき手続について定めたものである

本条第1項の、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときとは、以下のとおりである(不動産登記事務取扱手続準則(2005年(平成17年)2月25日民二第456号通達)第33条第1項。以下「同準則」という。)。

  1. 捜査機関その他の官公署から、不正事件が発生するおそれがある旨の通報があったとき
  2. 申請人となるべき者本人からの、申請人となるべき者になりすました者が申請をしている旨又はそのおそれがある旨の申出(以下「不正登記防止申出」という)に基づき、同準則第35条第7項の措置を執った場合において、当該不正登記防止申出に係る登記の申請があったとき(当該不正登記防止申出の日から3か月以内に申請があった場合に限る)
  3. 同一の申請人に係る他の不正事件が発覚しているとき
  4. 前の住所地への通知(不動産登記法第23条第2項)をした場合において、登記の完了前に、当該通知に係る登記の申請について異議の申出があったとき
  5. 登記官が、登記識別情報の誤りを原因とする補正又は取下げもしくは却下が複数回されていたことを知ったとき
  6. 登記官が、申請情報の内容となった登記識別情報を提供することができない理由が事実と異なることを知ったとき
  7. 上記に掲げる場合のほか、登記官が職務上知り得た事実により、申請人となるべき者になりすました者が申請していることを疑うに足りる客観的かつ合理的な理由があると認められるとき

上記5の複数回とは、具体的には5回程度であるとする見解がある(一発即答104・105頁)。

本人確認の手続き

[編集]

登記官は、本条第1項の規定により申請人の申請の権限の有無を調査したときは、その調査の結果を記録した調書(以下「本人確認調書」という)を作成しなければならない(不動産登記規則第59条第1項前段)。この本人確認調書は、同準則別記第51号様式又はこれに準ずる様式によることとされており(同準則第33条第3項)、申請書(電子申請の場合は電子申請管理用紙)と共に保管することとされている(同準則第33条第4項)。この別記第51号様式は以下のとおりである。

本人確認調書

登記官は、本条第1項の規定により文書等の提示を求めた場合は、提示をした者の了解を得て当該文書の写しを作成し、本人確認調書に添付することとされている。ただし、了解を得ることができない場合は、文書の種類や証明書番号その他文書を特定することができる番号等の文書の主要な内容を本人確認調書に記録すれば足りるとされている(同準則第33条第5項)。

登記官は、登記の申請が資格者代理人(不動産登記規則第63条第5項参照)によってされている場合において、本人確認の調査をすべきときは、原則として、当該資格者代理人に対し必要な情報の提供を求めることとされている(同準則第33条第2項)。そして、この資格者代理人に対する調査により、申請人となるべき者からの申請であると認められたときは、本人に対して調査をする必要はない(2005年(平成17年)2月25日民二第457号通達第1-1(3)。以下「同通達」という。)。ただし、本人確認調書は作成される(一発即答102・103頁)。

本人確認調査は電話による事情を聴取する方法でもよく、必ずしも出頭を求める必要はない(同通達第1-1(5)後段)。また、登記の申請人となるべき者が、出頭できない正当な理由(入院や服役等)がある場合でも、電話で確認する等すればよく、登記官が調査をしに行く必要はないとする見解がある(一問一答104・105頁)。

なお、本人確認調査は、当該申請人の申請権限の有無について調査するものであって、申請人の申請意思を調査するものではない(同通達第1-1(6))。

本人確認調査の結果、申請人となるべき者以外の者が登記の申請をしたと判断されれば、不動産登記法第25条第4号の規定により、当該登記の申請は却下される(一問一答106・107頁参照)。

手続きの嘱託

[編集]

登記官が本人確認の調査のため申請人等の出頭を求めた場合において、申請人等から遠隔の地に居住していること又は申請人の勤務の都合等を理由に他の登記所に出頭したい旨の申出があり、その理由が相当と認められるとき(例えば、申請人の長期出張や病気による入院等。同通達第1-1(8)かっこ書)は、当該他の登記所の登記官に本人確認の調査を嘱託することとされている(同準則第34条第1項)。申請人となるべき者が日本国外に居住している場合でも、在外公館に調査を依頼することはできない(一問一答108・109頁)。

この嘱託は、同準則別記第52号様式による嘱託書を作成し、これに登記事項証明書及び申請書の写しのほか、委任状・印鑑証明書等の本人確認の調査に必要な添付書面の写しを添付して、当該他の登記所に送付する方法によって行うこととされている(同準則第34条第2項)。この嘱託書の様式は、以下のとおりである。

本人確認調査嘱託書

本条第2項の嘱託を受けて本人確認調査をした登記所の登記官は、本人確認調書を作成しなければならない(不動産登記規則第59条第1項後段)。そして、嘱託を受けて調査をした登記所の登記官は、調査終了後、本人確認調書を嘱託書と共に嘱託をした登記所の登記官に送付しなければならないとされている(同規則第59条第2項・同準則第34条第3項)。

なお、嘱託を受けた登記所が送付を受けた登記事項証明書・申請書及び添付書面の写しは、適宜廃棄してよい(同通達第1-1(8))

参照条文

[編集]

不動産登記法第25条第4号

参考文献

[編集]



前条:
不動産登記法第23条
(事前通知等)
不動産登記法
第4章 登記手続
第1節 総則
次条:
不動産登記法第25条
(申請の却下)


このページ「不動産登記法第24条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。