「制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/指数関数の Laplace 変換とその応用」の版間の差分
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<strong>例 |
<strong>例28</strong><math>\quad</math> |
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次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. |
次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ. |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{d^2x}{dt^2} + 5\frac{dt}{dx} +6x = f(t);\quad x(0) = x_0, x'(0) = v_0</math>}} |
{{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{d^2x}{dt^2} + 5\frac{dt}{dx} +6x = f(t);\quad x(0) = x_0, x'(0) = v_0</math>}} |
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<math>e^t\int_0^t e^{-\tau}d\tau = e^t [ -e^{-\tau}]_0^t = e^t [ -e^{-\tau}]_t^0 = e^t(1 - e^{-t}) = e^t - 1</math><br /> |
<math>e^t\int_0^t e^{-\tau}d\tau = e^t [ -e^{-\tau}]_0^t = e^t [ -e^{-\tau}]_t^0 = e^t(1 - e^{-t}) = e^t - 1</math><br /> |
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これは①と一致する.<br /><br /> |
これは①と一致する.<br /><br /> |
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3. ②から「積分範囲の上端が変数である定積分の微分」 |
3. ②から「積分範囲の上端が変数である定積分の微分」を適用して <math>f'(t)</math> を求める.<br /> |
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<math>f'(t) = \frac{d}{dt} \left \{ e^t\int_0^t e^{-\tau}d\tau \right \}</math><br /> |
<math>f'(t) = \frac{d}{dt} \left \{ e^t\int_0^t e^{-\tau}d\tau \right \}</math><br /> |
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<math>= \left( \frac{d}{dt}e^t \right) \int_0^t e^{-\tau}d\tau + e^t\cdot \frac{d}{dt} \left( \int_0^t e^{-\tau}d\tau \right)</math><br /> |
<math>= \left( \frac{d}{dt}e^t \right) \int_0^t e^{-\tau}d\tau + e^t\cdot \frac{d}{dt} \left( \int_0^t e^{-\tau}d\tau \right)</math><br /> |
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287 行 | 287 行 | ||
<math>\diamondsuit</math> |
<math>\diamondsuit</math> |
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<!-- ex: |
<!-- ex:028:end--> |
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==§4== |
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<strong>補題</strong> |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>e^{\alpha t}f(t) * e^{\alpha t}g(t) = e^{\alpha t} \{ f(t) * g(t) \}</math>|tag=(2.17a)|label=eq:2.17a}} |
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<strong>証明</strong> |
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[[w:%E7%95%B3%E3%81%BF%E8%BE%BC%E3%81%BF|合成積]]の定義より |
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{{制御と振動の数学/equation|左辺<math> = \int_0^t e^{\alpha(t - \tau)}f(t-\tau)\cdot e^{\alpha \tau}g(\tau)d\tau</math>}} |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>= \int_0^t e^{\alpha t}\cdot e^{-\alpha\tau}e^{\alpha\tau}\cdot f(t-\tau)g(\tau)d\tau</math>}} |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>=e^{\alpha t}\int_0^t f(t-\tau)g(\tau)d\tau = </math>右辺}} |
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を得る. |
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<math>\diamondsuit</math> |
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この補題[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/指数関数の Laplace 変換とその応用#eq:2.17a|(2.17a)]]を適用すれば, |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\underbrace{e^{\alpha t} * e^{\alpha t} * \cdots * e^{\alpha t}}_{n\text{ terms}} = e^{\alpha t} (\underbrace{1*1*\cdots*1}_{n\text{ terms}}) = \frac{t^{n-1}}{(n-1)!}e^{\alpha t}</math>}} |
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を得る.ところで, |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\mathcal{L}[\underbrace{e^{\alpha t} * e^{\alpha t} * \cdots * e^{\alpha t}}_{n\text{ terms}} = (\mathcal{L}[e^{\alpha t}])^n = \frac{1}{(s-\alpha)^n}</math>}} |
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よって次の公式を得る. |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{t^{n-1}}{(n-1)!}e^{\alpha t} \sqsupset \frac{1}{(s-\alpha)^n}</math>|tag=(2.17b)|label=eq:2.17b}} |
|||
この公式を[[制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/f(t) の積分および微分の Laplace 変換#eq:2.8|前の結果]] |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\frac{t^{n - 1}}{(n - 1)!} \sqsupset \frac{1}{s^n}</math>|tag=(2.8)|}} |
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と比較すると,<math>t</math> 領域で <math>e^{\alpha t}</math> を掛けることと,<math>s</math> 領域で <math>\alpha</math> だけ移動することとが対応している. |
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このことは,もっと一般的に成立する事実である. |
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<strong>第一移動定理</strong> |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>f(t) \sqsupset F(s) \Longrightarrow f(t)e^{\alpha t} \sqsupset F(s-\alpha)</math>}} |
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<strong>証明</strong> |
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{{制御と振動の数学/equation|<math>\int_0^{\infty} f(t)e^{\alpha t}\cdot e^{-st}dt = \int_0^{\infty}f(t)e^{-(s-\alpha)t}dt = F(s-\alpha)</math>|tag=(2.17c)|label=eq:2.17c}} |
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<math>\diamondsuit</math> |
2019年3月25日 (月) 10:42時点における版
§1
前節で導いた公式
において, とおくと, であるから,
となる.
よって公式,
を得る. ここで上式の右辺を で展開してみると,
すなわち,
となるが,この原像は,式(2.8)より,
である.これは の Taylor 展開にほかならない.
§2
次に公式(2.12) の応用として 14C による年代測定を説明しよう. 試料に含まれている 14C の濃度を とすると,
なる微分方程式を満たす.すなわち炭素の放射性同位元素 14C の壊変の速さは,その時の濃度に比例する.この式を Laplace 変換すると
この原像は、
である.これより経過年数は,
と求まる. となる時間を半減期といい で表す.14C の場合は,
である.半減期が分かれば、壊変定数が分かる.[2] したがって,初期濃度 が分かれば現在の濃度 を測定することによって経過年数が分かる.これが 14C による年代測定の原理である.
例22
の決定が大問題である. としては,1950年代の大気中の 14C の濃度をとる.これは奇怪である.理由を調べてみよ.
解答例
不明.
例23
ここに
を解け.ただし は定数である.
解
Laplace 変換すると
これを について解き,
さらに右辺を部分分数分解すると,
この原像を求めると,
を得る.
この例は,時刻 にスイッチを入れて部屋を暖房したときの温度変化を表す. は暖房前の室温(外界の温度に等しいと仮定している)からの偏位を表す. 定常状態の温度は,
であって,これは供給熱量と外界に逃げる熱量とが平衡を保つ状態での温度を示す. これは平衡状態の式,すなわち式(2.13) で とおいた式,
の解と一致している.
§3
例24
を解け.
解
Laplace 変換すると,
ところで,
となることを想い起こすと,原像は,
となる.
式(2.15)は定数変化の公式と呼ばれている重要な公式である. その名前の由来は次のとおりである. 同次式,
の解は,
であった.定数 を変数 に置き換えて、非同次の式(2.14) の解を探す.すなわち,
を式(2.14)に代入すると,
となる.これを から まで積分し,
この結果を式(2.16)に代入すると,
となり求める結果を得る.
この公式は重要であるから,誘導法とともに覚えておくことが望ましい.
例25 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ.
解
このとき
よって解 は与方程式の解のひとつ.
例26 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ.
解
このとき
よって解 は与方程式の解のひとつ.
例27 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ.
解
[4]
このとき
よって解 は与方程式の解のひとつ.
例28 次の微分方程式を解け.解を直接微分方程式に代入して成否を確かめよ.
解
過渡解を とすると, については
この原像は
定常解を とすると, については
この原像は
よって解は
続いて検算を実施する.積分範囲の上端が変数である定積分の微分について復習すると,
ただし, の被積分形 の中にすでに変数 が入っていてはいけない.[5]
定常解 については
よって
過渡解 については
よって
よって は与方程式の解のひとつ.
§4
補題
証明
合成積の定義より
を得る.
この補題(2.17a)を適用すれば,
を得る.ところで,
よって次の公式を得る.
この公式を前の結果
と比較すると, 領域で を掛けることと, 領域で だけ移動することとが対応している. このことは,もっと一般的に成立する事実である.
第一移動定理
証明