「線型代数学/ベクトル」の版間の差分

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ベクトルの演算、幾何ベクトルは高等学校数学Bなどに譲る
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:の交角を求めよ。
:の交角を求めよ。

==線型変換==

===単位ベクトル===
次の2つの2次元ベクトルを、R<sup>2</sup>の単位ベクトルという。

<math>\mathbf{e}_1=
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
\end{pmatrix}</math>, 
<math>\mathbf{e}_2=
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
\end{pmatrix}</math>

また、次の3つの3次元ベクトルをR<sup>3</sup>の単位ベクトルという。

<math>\mathbf{e}_1=
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
0\\
\end{pmatrix}</math>, 
<math>\mathbf{e}_2=
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
0\\
\end{pmatrix}</math>, 
<math>\mathbf{e}_2=
\begin{pmatrix}
0\\
0\\
1\\
\end{pmatrix}</math>

平面上の任意の点の位置ベクトルは、二次元の単位ベクトルを適当にスカラー倍して足し合わせることで表現できる。
三次元の空間上の点についても同様に、三次元の単位ベクトルで表現できる。また、この表現の仕方は一意的である。
このような性質を指して、単位ベクトルの組はR<sup>2</sup>(R<sup>3</sup>)の'''基底'''であるという。

===R<sup>2</sup>の線型変換===

行列とは、4個の実数を正方形に並べた表、

<math>A=\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{pmatrix}</math>      (6.1)

のことである。同時に行列

<math>B=\begin{pmatrix}
p & q\\
r & d\\
\end{pmatrix}</math>との掛け算を

<math>BA=
\begin{pmatrix}
ap+cq & bp+dq\\
ar+cs & br+ds\\
\end{pmatrix}</math>

対してベクトル
<math>\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}</math>

との掛け算は、

<math>\mathbf{x}'=A\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
ax+by\\
cx+dy\\
\end{pmatrix}</math>

と、定義する。さて、行列とベクトルとの積は、位置ベクトル'''x'''の点Pが、行列Aをかけることによって
位置ベクトル'''x''''の点P'に変換されたと見ることができる。

例えば、

<math>
\begin{pmatrix}
1& 0\\
0& -1\\
\end{pmatrix}
</math>

は、点Pを、x軸に関して線対称な点P'への変換である。これをx軸に関する折り返しと言う。

 次に、行列Aによって点Pを変換したあと、さらに行列Bで変換することよって点Pを点P<nowiki>''</nowiki>(位置ベクトル'''x'''<nowiki>''</nowiki>)に移そう。

<math>\mathbf{x}''=B(A\mathbf{x})=B\mathbf{x}'=
\begin{pmatrix}
p & q\\
r & s\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
ax+by\\
cx+dy\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
(ap+cq)x+(bp+dq)y\\
(ar+cs)x+(br+ds)y\\
\end{pmatrix}</math>

   
<math>=(AB)\mathbf{x}=
\begin{pmatrix}
ap+cq & bp+dq\\
ar+cs & br+ds\\
\end{pmatrix}\mathbf{x}</math>

よって、'''x'''''=B(A'''x''')=(BA)'''x'''

行列A,B,C,ベクトル'''x''','''y''',数cに関して次の性質が成り立つ。

A(BC)=(AB)C

<math>
\begin{cases}
A(\mathbf{x}+\mathbf{y})=A\mathbf{x}+A\mathbf{y})\\
A(c\mathbf{x})=(Ac)\mathbf{x}
\end{cases}</math>     (6.2)

特に、(6.2)は重要で、これを行列Aによって引き起こされる'''R'''<sup>2</sup>の変換T<sub>A</sub>:'''x'''→A'''x'''(「T<sub>A</sub>は'''x'''のA'''x'''への変換」と言う意味)の線型性と言う。一般にR<sup>2</sup>変換Tが、次の性質を満たすとき、Tを'''R'''<sup>2</sup>の線型変換という

<math>
\begin{cases}
T(\mathbf{x}+\mathbf{y})=T\mathbf{x}+T\mathbf{y}\\
T(c\mathbf{x})=c(T\mathbf{x})
\end{cases}</math>

一般に次の定理が成り立つ。


'''定理(6.1)'''

TをR<sup>2</sup>上の変換とするとき、

Tが線型変換⇔あるAに対してT'''x'''=A'''x'''


(証明)
<math>\Leftarrow</math>は既に示した。<math>\Rightarrow</math>を示す。

単位ベクトルの行き先だけ調べれば十分である。(その理由は別のところで述べる)

<math>T\mathbf{e}_1=
\begin{pmatrix}
a\\
c\\
\end{pmatrix}</math> 
<math>T\mathbf{e}_2=
\begin{pmatrix}
b\\
d\\
\end{pmatrix}</math>とする。

任意の<math>\mathbf{x}=x\mathbf{e}_1+y\mathbf{e}_2</math>

Tは線型変換なので、

<math>T\mathbf{x}=T(x\mathbf{e}_1+y\mathbf{e}_2)=xT\mathbf{e}_1+yT\mathbf{e}_2
=x\begin{pmatrix}
a\\
c\\
\end{pmatrix}+y
\begin{pmatrix}
b\\
d\\
\end{pmatrix}</math>

  <math>=\begin{pmatrix}
ax+by\\
cx+dy\\
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
\end{pmatrix}</math>

<math>A=
\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d\\
\end{pmatrix}</math>とすれば、

T'''x'''=A'''x'''                        ♯

Aによって引き起こされる変換をT<sub>A</sub>と書くこともある。

全てのベクトルを'''o'''に移す変換に対応する行列を特にOと書く。

'''例'''

全ての点を反時計回りにα回転させる変換は線型変換であり、対応する行列は

<math>\begin{pmatrix}
\cos \alpha & -\sin \alpha\\
\sin \alpha & \cos \alpha\\
\end{pmatrix}</math>である。


演習

1.原点に対する対象変換は線型変換である。この変換に対応する行列を求めよ

2.T<sub>B</sub>T<sub>A</sub>=T<sub>BA</sub>を示せ。

3.

 T'''x'''を'''x'''の'''a'''への正射影とする。この時Tを射影子と言う。射影子は線型変換である。この時

 <math>\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
a\\
b\\
\end{pmatrix}</math> 
<math>a^2+b^2=1</math>
とすると、Tに対応する行列を求めよ

4.

 ('''a''','''b''')=0,'''a''','''b'''≠'''o'''

 S:'''a'''への射影子,  T:'''b'''への射影子

 とする。この時次の三つを証明せよ。

 (1)T^2=S (2)TS=ST=O (3)任意の'''x'''に対して、T'''x'''+S'''x'''='''x'''

===R<sup>3</sup>の線型変換===

前部で定義した行列の概念を広げよう。すなわち、9個の実数の表

<math>A=
\begin{pmatrix}
a_{1,1} & a_{1,2} & a_{1,3}\\
a_{2,1} & a_{2,2} & a_{2,3}\\
a_{3,1} & a_{3,2} & a_{3,3}\\
\end{pmatrix}</math>

も行列と言う事にして、前部で定義した行列を二次の、今定義した行列を三次の行列といって区別することにする。

ベクトルとの積、行列同士の積も同様に定義される。したがって、

<math>\mathbf{x}=\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z\\
\end{pmatrix}</math>に対しては、
<math>A\mathbf{x}=\begin{pmatrix}
a_{1,1}x + a_{1,2}y + a_{1,3}z\\
a_{2,1}x + a_{2,2}y + a_{2,3}z\\
a_{3,1}x + a_{3,2}y + a_{3,3}z\\
\end{pmatrix}</math>が、

<math>B=
\begin{pmatrix}
b_{1,1} & b_{1,2} & b_{1,3}\\
b_{2,1} & b_{2,2} & b_{2,3}\\
b_{3,1} & b_{3,2} & b_{3,3}\\
\end{pmatrix}</math>と
<math>AB=
\begin{pmatrix}
c_{1,1} & c_{1,2} & c_{1,3}\\
c_{2,1} & c_{2,2} & c_{2,3}\\
c_{3,1} & c_{3,2} & c_{3,3}\\
\end{pmatrix}</math>にたいしては、

<math>c_{k,j}=\sum_{i=1}^{3}a_{k,i}b_{i,j}</math>(i,j=1,2,3)

が定義されている。次のような性質がある。

(AB)'''x'''=A(B'''x'''), (AB)C=A(BC)


A('''x'''+'''y''')=A'''x'''+B'''y''', A(c'''x''')=(Ac)'''x'''     (6.3)

R<sup>3</sup>における線形変換Tは次の性質を持つ変換である。

T('''x'''+'''y''')=T('''x''')+T('''y''')
T(c'''x''')=c(T'''x''')

前部とまったく同様に次の定理が導ける

'''定理(6.2)'''

 R<sup>3</sup>においてTが線型変換⇔あるAに対してT'''x'''=A'''x'''

Aによって引き起こされる変換をT<sub>A</sub>と書くことがある。すべてのベクトルを'''o'''に線形変換する行列をOと書く

'''例'''

 y軸を中心にα回転させる変換に対応する変換は

<math>\begin{pmatrix}
\cos \alpha & 0 & -\sin \alpha\\
0 & 1 & 0\\
\sin \alpha & 0 & \cos \alpha\\
\end{pmatrix}</math>

'''演習'''

1.定理(6.2)を証明せよ

2.次の行列が引き起こす変換はどんな変換か

 (1)<math>\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{pmatrix}</math> 
(2)<math>\begin{pmatrix}
\cos \alpha & -\sin \alpha & 0\\
\sin \alpha & \cos \alpha & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{pmatrix}</math> 
(3)<math>\begin{pmatrix}
0 & 1 & 0\\
1 & 0 & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{pmatrix}</math>

3.

 <math>\mathbf{a}=\begin{pmatrix}
a\\
b\\
c\\
\end{pmatrix}</math>, <math>a^2+b^2+c^2=1</math>

 この時、'''a'''への射影子に対応する行列を求めよ。

4.

 '''b'''と'''c'''の張る平面に、その平面上に無い点P(位置ベクトル'''x''')から垂線を下ろす。その足をP'(位置ベクトル'''x'''')とするとき、'''x''''を'''x'''の正射影、T'''x''': '''x'''→'''x''''を'''b''','''c'''の張る平面への射影子と言う。さて、今'''a''','''b''','''c'''が直交しているとしよう。'''x'''の'''a'''への射影子をS,'''x'''の'''b''','''c'''の張る平面への射影子をTとするとき、次の事柄を証明せよ

 (1)T<sup>2</sup>=T (2)TS=ST=O (3)任意の'''x'''にたいし、T'''x'''+S'''x'''='''x'''


==外積==
==外積==

2009年6月11日 (木) 00:58時点における版

複素数の概念は既知のものとした。ただし、複素数のことを知らない読者は、複素数に関する記述を読み飛ばしたとしても差し支えない。

ベクトル

n個のKの元を縦に並べたものをn次列ベクトルとよび、次のように括弧でかこんだ中にn個の縦に並べたKの元を書く。

また、n個のKの元を横に並べたものをn次行ベクトルとよび、次のように括弧でかこんだ中にn個の横に並べたKの元を書く。

a1, a2, …, anをベクトルa成分(element)と呼び、特にakaの第k成分と呼ぶ。成分がすべて実数のベクトルを特に実ベクトルと言う。対して、成分がすべて複素数のベクトルを特に複素ベクトルと言う。また、成分が全て0のベクトルを零ベクトルといい、oと書く。

Kを成分とするn次列ベクトル全体の集合をで表す。

のときは実数を成分とするn次列ベクトル全体の集合であり、のときは複素数を成分とするn次列ベクトル全体の集合である。

相等関係

2つのn次列ベクトルが「等しい」とは、2つのベクトルの各成分が全て等しいことをいう。すなわち、ベクトルの相等関係は

のとき

により定義される。なお、2つのn次行ベクトルについても同様に定義される。

ベクトルの演算

2つのn次列ベクトル について、ベクトルの和 を次のように定義する。

ベクトルの和に関して、次が成り立つ。ここで、であり、は零ベクトルである。

  • 交換則: a+b=b+a
  • 結合則: (a+b)+c=a+(b+c)
  • 零元の存在: a+o=a

証明は、簡単なので読者に任せたい。

またn次列ベクトル と定数について、ベクトルの定数倍 を次のように定義する。

ベクトルの定数倍に関して、次が成り立つ。ここで、である。

ノルム

ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれは||a||で表され、

と定義される。これをaのノルムと言う。

演習

次のベクトルのノルムを求めよ

内積

ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

ab内積という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • (a,a)=||a||2
  • abが直交する⇔(a,b)=0[1]
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)
  1. ^ なす角について上で述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。

演習

空間ベクトル

とのなす角がであり、かつ

とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

助変数表示

平面上の直線

以後、特に空間ベクトルについて議論する。

まずは、二次元空間上の直線を、助変数を用いて現すことを考える。

とすると、一般の直線は下の式で表される。

  • x=at+x0

成分を用いて書けば、 である。 成分を用いた式を見れば、この表示によって直線が表されることの妥当性が理解しやすいだろう。

上に挙げた式を直線の助変数表示またはベクトル表示という。また、aをこの直線の方向ベクトルという。 方向ベクトルはこの直線と平行なベクトルである。 もちろん助変数表示の仕方は一つではないが、方向ベクトルはノルム1のものを選ぶと便利な事も多い。

例題

  • 3x+2y=5

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
よって、

演習

ベクトル表示は座標表示に、座標表示はベクトル表示にせよ

1.6x-3y=9.5

2.x=a

3.

4.

空間内の直線

平面内の直線は

という式で表された。しかし、空間において

という式の表す図形は平面である。直線は2つの平行でない平面の共通部分として表される。式で書けば、

となる。この式が表す直線をベクトル表示することを考えよう。連立方程式を解く要領で

(但し,は定数) と書けることはすぐわかる。この式は、形式的にはxをtと置き換えることで、下のように書ける。

これが空間内の直線の助変数表示である。

例題

を助変数表示にせよ。

x=tとすると、
2y+3z=-t+4
6y+7z=-5t+8

これを解いて、

よって、

演習

1.

を助変数表示にせよ

空間内の平面

前述のとおり、空間内の平面はax+by+cz=dであらわせる。今度は2つの助変数s,tを導入することで、同様にして

と表せる。これを平面の助変数表示という。

例題

  • 2a+b+3c=5を助変数表示にせよ。
a=t,b=sとすると、
3c=5-2t-s⇔
よって、

演習

1.2x-y+3z=1を助変数表示にせよ

2.

を、直交座標表示で表せ。

まとめ

1.平面上の直線のベクトル表示

2.空間内の直線のベクトル表示

3.空間内の平面のベクトル表示

演習

1.

二点P,Qの位置ベクトルをp,qとすると、線分PQ上の点の位置ベクトルは
t1p+t2q, t1+t2=1, t1,t2≧0
の形で表される。これを証明せよ。

2.

三点の位置ベクトルをx1,x2,x3とすると、
この三点が構成する三角形内の任意の点は、
t1x1+t2x2+t3x3, t1+t2+t3=1, t1,t2,t3≧0

と表される。これを証明せよ。

法線ベクトル

平面上の直線

ax+by=c

を考える。この直線の方向ベクトルは

である。ここで、

というベクトルを考えると、

なので、aとこの直線は直交する。このaをこの直線の法線ベクトルという。

例5.1

l:x=at+x1

という直線を考える。平面内の1点Pから直線lへ垂線を下ろし、足をP'とする。この垂線の長さを求めよう。

pをPの位置ベクトル、x0をP'の位置ベクトルとすると、垂線の長さは

||p-x0||

で与えられる。

まずはx0を他のベクトルを用いて表そう。P'はl上の点なので、x=x0をlの式に代入すると

x0=at+x1
p-x0=p-at-x1

となる。このベクトルがaと直交するので

(a,p-x0)=(a,p)-(a,a)t-(a,x1)=0

これを代入して

をえる。

あとは自分自身との内積を計算するだけである。落ち着いて計算すれば

と計算される。空間内の直線についても、同じ事である。

演習 1.

空間内の平面の場合についても同様に考えられる。
F:ax+by+cz=d
を平行移動し、原点を通る平面
F0:ax+by+cz=0
 とすれば、
F:(a,x)=d
F0:(a,x)=0
であるから、aはF0故にFと垂直である。この時aをF0の法線ベクトルと言う。
さて、F上に無い点Pから、Fに垂線を下ろす。垂線の足をP'とする。
x0:Pの位置ベクトル,x'0:P'の位置ベクトル
とするとき、||x0-x'0||を求めよ。

2.

平面Fの法線ベクトルaと平面F'の法線ベクトルa'の交角を平面Fと平面F'の交角と言う
F:x+2y+2z=3
F':3x+3y=1
の交角を求めよ。

外積

二次の行列式

定義(7.1)

,  ,  の時、

をAの行列式という。

次の性質は簡単に証明できる。

a,bが線形独立⇔det(a,b)≠0

det(a,b)=-det(b,a)

det(a+b,c)=det(a,c)+det(b,c)

det(ca,b)=det(a,cb)=cdet(a,b)

|AB|=|A||B|

ここで、a,bが線形独立とは、a,bが平行でないことを表す。

平行四辺形の面積

関係ないと思うかもしれないが、外積の定義に必要な情報である。

abの張る平行四辺形の面積を求める。二ベクトルの交角をθとする。

bを底辺においたとき、高さは||a||sinθなので、求める面積Sは

S=||a||||b||sinθ

⇔S2=||a||2||b||2 -||a||2||b||2cos2θ

       =||a||2||b||2-(a,b)2

よって、

      (7.1)

演習

, 

とすれば、.

これを証明せよ。

外積

内積が有るなら外積もあるのでは?と思った読者待望の部ではないだろうか。(余談)

定義(7.2)

cは次の4条件を満たすとき、a,bの外積、或はベクトル積と呼ばれ,a×b=cと表記される。

 (i)a,bと直交する。

 (ii)a,bは線形独立

 (iii)a,b,cは右手系をなす。

 (iv)||c||が平行四辺形の面積

ここで、右手系とは、R3の単位ベクトルe1〜3が各々右手の親指、人差指、中指の上にある三次元座標系のことである。


定理(7.3)

 右手座標系で、

 , 

とすると、

     (7.2)

(証明)

三段構成でいく。

(i)cと、abと直交することを示す。要するに、 (c,b)=0且(c,a)=0を示す。

(ii)||c||が平行四辺形の面積Sであることをを証明。

(iii)c,a,bが、右手座標系であることを証明。


(i)は計算するだけなので演習とする。

(ii)

   ||c||2=(bc'-b'c)2+(ac'-a'c)2+(bc'-b'c)2

                 =(a2+b2+c2)(a'2+b'2+c'2)-(a a'+bb'+cc')2=||a||^2||b||^2-(a,b)^2

   ||c||≧0より、式(7.1)から、

   

(iii)

   a=e1, b=e2ならば、式(7.2)は両辺ともe3である。e,e2を、線形独立性を崩さずに移すと、 a,b,cは右手系のまま移る。もし、左手系なら、その瞬間||c||=0となり、(中間値の定理)abは平行になるから、線形独立が崩れたことになる。           #


外積に関して、次の性質が成り立つ。

a×b=-b×a  c(a×b)=ca×b=a×cb

a×(b1+b2)= 'a×b1+a'b2

(a1+a2b= 'a1×b+a2'b

三次の行列式

定義(7.4)

,  ,  の時、

 をAの行列式という。

二次の時と同様、

  • a,b,cが線形独立⇔det(a,b,c)≠0
  • a,b,cのどれか二つの順序を交換すればdet(a,b,c)の符号は変わる。絶対値は変わらない。
  • det(a+a',b,c)=det(a,b,c)+det(a,b,c)

b,cに関しても同様

  • det(ca,b)=cdet(a,b)

b,cに関しても同様

  • |AB|=|A||B|

一番下は、大変面倒だが、確かめられる。

例題

次の二直線は捩れの位置(同一平面上にない関係)にある。この二直線に共通法線が一本のみあることをしめし、 最短距離も求めよ

l:x=at+x1

l':x=bs+x2

l.l'上の点P,Qの位置ベクトルを

p=at+x1

q=bs+x2とすると、

PQ⊥l,l'⇔(a,p-q)=(b,p-q)=0

これを式変形して、

(a,p-q)= (a,at+x1-bs-x2)

      =(a,a)t-(a,b)s+ (a,x1-x2)=0

⇔(a,a)t-(a,b)s=(a,x2-x1     (7.3)

同様に、

(b,a)t-(b,b)s=(b,x2-x1     (7.4)

(7.3),(7.4)をt,sに関する連立一次方程式だと考えると、この方程式は、ちょうど一つの解の組(t0,s0)が存在する。

a//b(a,bは平行、の意味)a,boより、

≠0


あとは後述する、連立二次方程式の解の公式による。(演習1)

at0+x1,bs0+x2を位置ベクトルとする点をP0,Q0とおけば、P0Q0が、唯一の共通法線である。 この線分P0Q0の長さは、l,l'間の最短距離である。そこで、

(第一章「ベクトル」参照)

P1:x1を位置ベクトルとする点 Q1:x2の位置ベクトルとする点

とすれば、

          =([x1+t0a]-[x1])


”P0の位置ベクトル↑     ↑P1の位置ベクトル”


         +c+["x1"-"(x1+t0a)"]


”Q1の位置ベクトル↑   ↑Q0の位置ベクトル”


=c+t0a-s0b

よって、

(c,x2-'x1)=(c,c)+t0(c,a)-s0(c,b)

a,bcが垂直なので、(b,c)=(a,c)=0.

すなわち、(c,x2-x1)=(c,c)

c=k(a×b) (k≠0)

coより、求める距離||c||は、

演習

1.

二元一次連立方程式
≠0の時、
の一般解が、
, 

 である事を示せ

2.

多面体Pの二頂点を結ぶ線分上の全ての点がやはりPに含まれる時、Pは凸多面体と呼ばれる。
Pのk個の頂点Pi(i=1,2,...,k;k(∈N)>3)の位置ベクトルをviとすると、P内の任意の点の位置ベクトルvが、下の式で表せることを証明せよ。


, ti≧0, 
このようなvのことを、xiの凸結合と言う

3.

P1(x1,y1),P2(x2,y2)を通る直線の式は、
と表せる。

これを示せ。

4.

:空間において、(a,x)=0への折り返しの変換に対応する行列を求めよ

5.

:
を示せ。

6.

:||x||=||y||=||z||=1の時、det(a,b,c)の最大最小を求めよ。

7.

(1)
(a×bc=-(b,c)a+(a,c)b
(2)
(a×bc+(b×ca+(c×ab=o
を、R3について証明せよ。


このページで述べるベクトルの代数学的説明はここまでである。このまま、代数学の学習を続けたい読者は次に、行列を読まれる事を勧める。今までの内容と、密接に関係している。もし、ベクトルの解析的扱いについて学習したい場合は、このページの次の章に進まれるとよい。参考文献:東京大学出版会 『基礎数学1 線型代数入門』齊藤正彦著

ベクトル関数