音程
音程
[編集]音程とは、2つの音の高さの隔たりを言います。普通、「度」で表します。
音程を言い表すためには2つの段階があります。ひとつはおおまかに楽譜上の位置関係を表すもので、日本式には数字+「度」で言い表します。英語式には序数で表します。もうひとつは、それぞれの半音関係を織り込んだもので、数字の前にさらに「長」「減」(英語式には “major” “diminished”)といった修飾詞を加えます。
度
[編集]2つの音がどれだけ隔たっているかを楽譜上の位置関係で言い表します。
下の音から上の音までに音がいくつあるかを数えます。このとき、下の音も上の音も数えます。♯や♭が付いていても(またそれが調号であろうと臨時記号であろうと)無視します。たとえばミとソであるならば、楽譜上
ソ ファ ミ
と3つの音が数えられますから、3度です。ソに♯が付いても♯は無視されますから3度です。またソとシも同じように
シ ラ ソ
で3度です。一方、ミとファなら
ファ ミ
で2度です。同じ音でも0ではなく、
ミ
で1度です。♯がついても♭がついても変わりませんから、ミ♭とミ♯でも(楽譜上同じところに書かれるミであれば)1度です。
全音階的音程
[編集]♯も♭も(それが調号であろうと臨時記号であろうと)付かない音同士で表すことができる音程を全音階的音程といいます。最初に2度から見ていきましょう。
2度
[編集]2度で、♯も♭も付かない音同士の組み合わせは7つあります。(以下、このページではドレミ..は音名として用います)
ド—レ、レ—ミ、ミ—ファ、ファ—ソ、ソ—ラ、ラ—シ、シ—ド
ピアノを思い出してください。ドとレの間には黒鍵がありますね。このとき、ドと黒鍵の間は半音です。黒鍵とレの間も半音です。つまりドとレの間には半音が2つあることになります。レとミの間も同じです。ところがミとファの間には黒鍵がありません。つまりミとファは半音1つなのです。黒鍵があると半音が2つ、ないと1つ、です。ここでは黒鍵があると音の間隔が広がる、とおぼえておいてください。また、広がる幅は、黒鍵1個につき半音です。
話を戻しますが、ファとソは黒鍵あり、ソとラもあり、ラとシもあり、シとドはなし。まとめると、黒鍵ありの2度と黒鍵なしの2度があることがわかります。
- 黒鍵ありの方が間隔が半音1つだけ広いので、これを長2度と呼びます。
- 長2度は、次の5つです:ド—レ、レ—ミ、ファ—ソ、ソ—ラ、ラ—シ
- 黒鍵なしの方が間隔が半音1つだけ狭いので、これを短2度と呼びます。
- 短2度は、次の2つです:ミ—ファ、シ—ド
このように、短2度は、ミ—ファとシ—ドの2つしかありません。この2つの組み合わせをおぼえましょう。この2つを覚えたら、それに当てはまらない2度は長2度だとすぐわかるからです。
☆覚えましょう:短2度は、ミ—ファ、シ—ド
3度
[編集]3度で、♯も♭も付かない音同士の組み合わせは7つあります。
ド—ミ、レ—ファ、ミ—ソ、ファ—ラ、ソ—シ、ラ—ド、シ—レ
この中には、黒鍵が2つ挟まれる組み合わせと、1つしか挟まれない組み合わせがあります。
- 黒鍵が2つ挟まれるの方が間隔が半音1つだけ広いので、これを長3度と呼びます。
- 長3度は、次の3つです:ド—ミ、ファ—ラ、ソ—シ
- 黒鍵が1つしか挟まれない方が間隔が半音1つだけ狭いので、これを短3度と呼びます。
- 短3度は、次の4つです:レ—ファ、ミ—ソ、ラ—ド、シ—レ
このように、長3度は、ド—ミ、ファ—ラ、ソ—シの3つしかありません。この3つの組み合わせをおぼえましょう。この3つを覚えたら、それに当てはまらない3度は短3度だとすぐわかるからです。
☆覚えましょう:長3度は、ド—ミ、ファ—ラ、ソ—シ
5度
[編集]5度で、♯も♭も付かない音同士の組み合わせは7つあります。(4度についてはあとで学習します)
ド—ソ、レ—ラ、ミ—シ、ファ—ド、ソ—レ、ラ—ミ、シ—ファ
この中には、黒鍵が3つ挟まれる組み合わせと、2つしか挟まれない組み合わせがあります。
- 黒鍵が3つ挟まれる方を完全5度と呼びます。
- 完全5度は、次の6つです:ド—ソ、レ—ラ、ミ—シ、ファ—ド、ソ—レ、ラ—ミ
- 黒鍵が2つしか挟まれない方は間隔が半音1つだけ狭いので、減5度と呼びます。
- 減5度は、次の1つだけです:シ—ファ
このように、減5度は、シ—ファの1つしかありません。この1つの組み合わせをおぼえましょう。この1つを覚えたら、それに当てはまらない5度は完全5度だとすぐわかるからです。
☆覚えましょう:減5度は、シ—ファ
覚える音程の総括
[編集]覚える音程は、6つだけです。
- 短2度の、ミ—ファ、シ—ド
- 長3度の、ド—ミ、ファ—ラ、ソ—シ
- 減5度の、シ—ファ
音程の転回
[編集]音程を構成する2音の内、下の音を1オクターブ上げて、上下関係を逆転させることを音程の転回といいます。
- 厳密には、上下関係を逆転するまで(何オクターブでも)下の音を上げることを音程の転回といいますが、現時点では1オクターブの中での音程のみ考えています。
- 上の音を1オクターブ下げても同じです。
2度の転回
[編集]2度の転回音程は、次のように考えます。
┌オクターブ上げる────→◎ │ ● │ │ ● │ │ ● │ │ ● │ │ ● │ │ ◎────────転回音程 ○ │ └2度
2度の転回音程は7度になります。(◎から◎までを数えると7になります)
3度の転回
[編集]3度の転回音程は、次のように考えます。
┌オクターブ上げる────→◎ │ ● │ │ ● │ │ ● │ │ ● │ │ ◎──────転回音程 │ ● │ ○ │ └─3度┘
3度の転回音程は6度になります。
5度の転回
[編集]5度の転回音程は、次のように考えます。
┌オクターブ上げる────→◎ │ ● │ │ ● │ │ ◎──転回音程 │ ● │ │ ● │ │ ● │ ○ │ └───5度──┘
5度の転回音程は4度になります。
転回音程の基礎の総括
[編集]上の3つの図を見比べてみてください。同じオクターブという枠の中で、元の音程が大きくなればその分転回音程は小さくなり、元の音程が小さくなればその分転回音程が大きくなるという関係にあることが見て取れると思います。
また、2度の転回音程は7度、3度の転回音程は6度、5度の転回音程は4度、なのですから、転回音程同士の数字を足すと9になることがわかりますね。
これらのことからまた、転回音程の転回音程は元の音程にもどる、ということもわかると思います。
7度
[編集]7度は2度の転回音程です。2度に長2度と短2度の2種類があるように、7度にも2種類があります。
先に述べたように、元の音程が大きくなればその分転回音程は小さくなるのですから、長2度の転回音程の7度は、短2度の転回音程の7度よりも小さくなります。
6度
[編集]6度は3度の転回音程です。3度に長3度と短3度の2種類があるように、6度にも2種類があります。6度も、長3度の転回音程の6度の方が短3度の転回音程の6度よりも小さくなります。
4度
[編集]4度は5度の転回音程です。5度に完全5度と減5度の2種類があるように、4度にも2種類があります。
転回して考える音程の総括
[編集]このように、7度、6度、4度は、転回して考えます。転回するとき、「長」と「短」は入れ替わり、「完全」はそのまま、「減」は「増」になります。
1度
[編集]1度とは楽譜上の同じ位置に書かれる音です。♯も♭も使わない場合、どこに置かれても、全く同じ音となります。すなわち、1種類しかありません。
- 1度は1種類だけです。これを完全1度と呼びます。
8度
[編集]8度はオクターブです。楽譜上は違う位置に書かれますが、♯も♭も使わない場合、同じ音名同士(ド—ド、レ—レ)しかありません。すなわち、1種類しかありません。
- 8度は1種類だけです。これを完全8度と呼びます。
♯や♭の付く音の音程
[編集]ここまで♯や♭の付かない音同士の音程を考えてきました。これからいよいよ♯や♭の付く音の音程を考えます。
上下どちらかの音に♯や♭が付けば、当然、音の幅に関係が出てきます。
- 上の音が半音上がれば、幅は半音広くなります。
- 上の音が半音下がれば、幅は半音狭くなります。
- 下の音が半音上がれば、幅は半音狭くなります。
- 下の音が半音下がれば、幅は半音広くなります。
1上に♯ 2上に♭ 3下に♯ 4下に♭ ○ / ○ ○ ○─○ ○─○ \ ○ ○ / ○─○ ○─○ ○ ○ \ ○
♯や♭の付いた2度
[編集]最初、♯や♭が付いていないときの音程を考えます。ですから、最初に♯や♭をはずします。
こうして考えた音程が長2度だったとします。長2度を成す2つの音の内、もし上の音に♭が付いていれば、音程は長2度より半音狭くなります。長2度より半音狭い音程は短2度でした。ですから、♯や♭が付いていないときに長2度を成すの2つの音の内、上の音に♭が付いていたら、それは短2度です。またもし、下の音に♯が付いていても、音程は長2度より半音狭くなります。それは同じように短2度です。
もし♯や♭が付いていないときの音程が短2度だったらどうでしょうか。短2度を成すの2つの音の内、上の音に♯が付けば、音程は短2度より半音広くなります。短2度より半音狭い音程は長2度でした。ですから、♯や♭が付いていないときに短2度を成すの2つの音の内、上の音に♯が付いていたら、それは長2度です。またもし、下の音に♭が付いていれても、音程は短2度より半音広くなります。同じようにそれは長2度です。
♯や♭の付いた3度
[編集]3度は2度と同じように考えます。
♯や♭の付いた5度
[編集]5度もだいたい同じです。♯や♭なしの時の音程が完全5度の場合、上の音に♭が付くか下の音に♯が付くかして半音狭くなったら、それは減5度です。♯や♭なしの時の音程が減5度の場合、上の音に♯が付くか下の音に♭が付くかして半音広くなったら、それは完全5度です。
♯や♭の付いた7度、6度、4度
[編集]7度、6度、4度のように転回して考える音程の場合、次の2種類の手順があります。どちらの手順でも結果は同じになります。
- 手順1
- ♯や♭をはずします。
- 2音を転回して、(♯や♭のないときの転回音程が)長2度/短2度、長3度/短3度、完全5度/減5度のいずれであるかを求めます。
- 得られた音程を転回します。数字は9から減じます。長と短は入れ替え、完全はそのまま、減は増にします。短7度/長7度、短6度/長6度、完全4度/増4度のいずれかが得られます。
- ♯や♭を見て、半音広くなっているのであれば、短→長または完全→増とします。狭くなっていれば長→短または増→完全とします。
- 手順2...この手順では、転回音程で♯や♭の計算をします。
- ♯や♭をつけたまま2音を転回します。
- ♯や♭をはずして音程を求めます。
- ♯や♭を見て、半音広くなっているのであれば、短→長または減→完全とします。狭くなっていれば長→短または完全→減とします。
- 得られた音程を転回します。数字は9から減じます。長と短は入れ替え、完全はそのまま、減は増にします。
上下に♯や♭が付く場合
[編集]上下の両方に同じ記号が付いていたら、幅は変わりません。たとえば、長2度を成す2音の両方に♯が付いていたら、やはり長2度です。
また、上の音にダブルシャープが付き、下の音が♯だったら、元の音程より都合半音広くなったとことになります。下の音がダブルフラットで上の音が♭でも同じです。逆に下がダブルシャープで上が♯なら半音狭くなっています。上がダブルフラットで下が♭でも同じです。
半音階的音程
[編集]♯や♭が付いた結果として、これまで学習した音程(全音階的音程)以外の音程となったら、どのように呼んだらいいでしょうか。
- 全音階的音程以外の音程を半音階的音程といいます。これは、全音階の中では起こりえないが半音階の中では起こりうる音程、と言う意味です。
完全音程より半音広い音程(増音程)
[編集]完全4度より半音広い4度音程は増4度でした。4度以外の完全音程でも、完全音程より半音広い音程は「増」を付けて呼ばれます。
完全音程より半音狭い音程(減音程)
[編集]完全5度より半音狭い5度音程は減5度でした。5度以外の完全音程でも、完全音程より半音狭い音程は「減」を付けて呼ばれます。
長音程より半音広い音程(増音程)
[編集]長音程より半音広い音程も、「増」を付けて呼ばれます。
短音程より半音狭い音程(減音程)
[編集]短音程より半音狭い音程も、「減」を付けて呼ばれます。
増音程より半音広い音程(重増音程)
[編集]増音程よりさらに半音広い音程は「重増」を付けて呼ばれます。
- 増1度より半音広い1度音程は重増1度です。
- 増2度より半音広い2度音程は重増2度です。
- 増3度より半音広い3度音程は重増3度です。
- 増4度より半音広い4度音程は重増4度です。
- 増5度より半音広い5度音程は重増5度です。
- 増6度より半音広い6度音程は重増6度です。
- 増7度より半音広い7度音程は重増7度です。
- 増8度より半音広い8度音程は重増8度です。
減音程より半音狭い音程(重減音程)
[編集]減音程よりさらに半音狭い音程は「重減」を付けて呼ばれます。
- 減2度より半音狭い2度音程は重減2度です。
- 減3度より半音狭い3度音程は重減3度です。
- 減4度より半音狭い4度音程は重減4度です。
- 減5度より半音狭い5度音程は重減5度です。
- 減6度より半音狭い6度音程は重減6度です。
- 減7度より半音狭い7度音程は重減7度です。
- 減8度より半音狭い8度音程は重減8度です。
半音階的音程の転回
[編集]半音階的音程の転回も、基本的には全音階的音程の転回と同じです。新しいことは重増と重減が入れ替わることくらいです。
- 転回音程同士の数字を足すと9になります。
- 完全は転回しても完全です。
- 長と短が入れ替わります。
- 増と減が入れ替わります。
- 重増と重減が入れ替わります。←new
音程の半音関係のまとめ
[編集]以上の音程の半音関係をまとめると、次のようになります。
←狭 ┃ 広→ 1,4,5,8度 ─完全─ / ┃ \ 重減──減 ┃ 増──重増 \ ┃ / 短─╂─長 2,3,6,7度 ┃
中央の縦線は、転回するときの対称軸です。
複音程
[編集]これまで1オクターブ以内の音程について学習してきました。オクターブ以内の音程を単音程と言います。これに対し、オクターブを超える音程を複音程と言います。複音程は常に、単音程に直して考えます。
1オクターブより大きい音程の場合、上の音を1オクターブ下げます。もし、それでも1オクターブ以内にならなかったら、1オクターブ以内になるまでオクターブずつ下げます。(下の音を上げても同じです)
こうして1オクターブ以内になったところで、その音程を呼びます。それが長2度であるなら、「長2度」です。しかしこれでは、元来の長2度と区別できません。そこで、最初の音程から上の音を下げたオクターブ数を頭に付けて、「1オクターブと長2度」、「2オクターブと長2度」のように呼びます。
複音程には、別の呼び方があります。それは、「—度」の方だけは、オクターブ以上であることを考えずにそのままの度数で呼ぶことです。つまり1オクターブと長2度は、度数をすべて数えてみれば9度になります。ですから、「長9度」と呼ぶことができます。3オクターブと長2度なら「長23度」です。もっとも、このような呼び方をするのはせいぜい2オクターブ(15度)まで、普通は13度まででしょう。
このように、複音程の場合、呼び方が2通りあります。この2通りの呼び方には次の法則があります。
- n オクターブと m 度 = 7n + m 度