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その他の音階

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

音楽の音階には、長調と短調があることを学習しました。しかし、音楽の歴史の中にはこれ以外の様々な音階が使用されたこともあります。ここでは、実際に使用されることは少ない、けれども著名な音階を複数紹介します。

教会旋法[編集]

中世ヨーロッパにはグレゴリオ聖歌という各地の教会で歌われていた音楽がありました。その音楽の音階を分類すると、12種類(理論上は14種類)の音階があることがわかりました。これを教会旋法といいます。

半音階[編集]

半音階は、その名の通り半音だけで構成される音階です。全音が含まれませんから、実質無調だといってよいでしょう。

半音階には1種類しかありません。なぜなら、音程の最小単位である半音だけを用いて音階が作られていますので、どの音から音階を初めても、実質上はすべて同じ音階になるのです。

全音階が前提となっている普通の楽譜で書き表すのは、あまり都合がいいとは言えません。つまり、多くの音を臨時記号で書き表さなくてはなりません。

半音階を書く決まった書き方というのはありませんが、取り消しの臨時記号をなるべく少なくしながら、できるだけ理にかなった書き方をするため、次のように書くのが一般的です。

長調上行形
ド ド♯ レ レ♯ ミ ファ ファ♯ ソ ソ♯ ラ シ♭ シナチュラル(ド)
長調下行形
ド シ シ♭ ラ ラ♭ ソ ファ♯ ファナチュラル ミ ミ♭ レ レ♭(ド)
短調
ラ シ♭ シナチュラル ド ド♯ レ レ♯ ミ ファ ファ♯ ソ ソ♯(ラ)

全音音階[編集]

全音音階は、先述した半音階の逆で、全音のみを用いて作られる音階です。この音階もまた、全音のみで半音が含まれませんから、実質無調といっていいでしょう。

全音音階には白鍵から始めるパターンと黒鍵から始まるパターンの2種類があります。ちなみに、よくある間違いとして幹音からなる音階である全音階(要するにハ長調とイ短調自然短音階)とは異なりますので注意しましょう。

ハンガリー音階[編集]

ハンガリー音階(ジプシー音階・ロマ音階とも呼ばれる)とは、ハンガリーを中心に活動してきたロマの音楽に使用される短音階のことです。通常の短音階なら、和声的短音階の第六音と第七音の間に増2度が含まれますが、ハンガリー音階にはこれにくわえて、第三音と第四音の間に増2度が含まれます。

この音階はショパンやリストといった作曲家が愛用しており、東洋的な雰囲気を醸し出すために国民楽派の作曲家もまた愛用しました。

五音音階[編集]

ヨナ抜き音階・スコットランド民謡の音階[編集]

ヨナ抜き音階とは通常の長音階・短音階の四番目と七番目の音を抜いた音階です。スコットランド民謡の音階もこの音階と同じ音を使用します。

ニロ抜き音階[編集]

ヨナ抜き音階とは通常の長音階・短音階の二番目と六番目の音を抜いた音階です。

日本音階[編集]

注意:ここで紹介する理論は日本の民族音楽学者、小泉文夫氏の理論です。日本音階にはこのほかにも小山清茂氏の理論など、様々な理論があります。ですのでここで紹介した音階以外にも様々な理論体系による音階があることを注意しましょう。

民謡音階[編集]

童歌や日本民謡の中で多く使われている音階なので、民謡音階と呼ばれています。

都節音階[編集]

都節音階は主に江戸時代の都会で発達した音楽に多く見られる音階です。

律音階[編集]

律音階は、主に雅楽や声明で使われる音階です。日本の国歌、君が代も、この律音階で作曲されています。

沖縄音階[編集]

読んで字のごとく沖縄本島やその周辺の島国で用いられてきた音階です。

移調の限られた旋法[編集]

移調の限られた旋法とは、オリヴィエ・メシアンによって提唱された、7つの旋法です。