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アブハズ語/音韻

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

通常子音は58個と言われています。母音は2種類の区別ですが異音化によって5個存在します。

母音

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広母音Аと狭母音Ыの2種類ですが、異音化による母音が存在します。

  • А [a] アー
  • Е [ɛ] エー(日本語より若干広め・アより)
  • Ы [ɨ] →w:非円唇中舌狭母音
  • О [o] オー(唇を丸くするオー)
    • 広母音と狭母音が隣接した時の異音。→異音化
  • И [i] イー
    • 通常、子音として用いられるが、まれに母音として現れる。
  • У [u] ウー
    • 通常、子音として用いられるが、まれに母音として現れる。

子音

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日本語ではwを表す文字がワしかないため原則カナ表記は子音+а

  • Б [b] バ
  • В [v] ヴァ
  • Г [g] ガ
  • Гь [gʲ] ギャ
  • Гә [gʷ] グヮ
  • Ҕ [ɣ] (Гは舌と口蓋をつけるが、Ҕは狭めるがつけない。母音の後のガ行)
  • Ҕь[ɣʲ] ギャ
  • Ҕә [ɣʷ] グヮ
  • Д [d] ダ
  • Дә [dʷ] ドゥヮ, [db] (ドゥとバの同時発音) [1]
  • Ж [ʐ] →w:有声そり舌摩擦音
  • Жь [ʒ] ジャ (舌先を歯茎後部につけるジャ、 母音の後のジャ行)
  • Жә [ʒʷ] ジュヮ (Жь+ә)
  • З [z] (英語のz。舌と口蓋をつけない)
  • Ӡ [ʣ] ザ (日本語のザ。舌と口蓋をつける)
  • Ӡә [ʥʷ] ジュヮ (日本語のジュにヮ)
  • И [j] ヤ (母音イとして現れる事がある)
  • К [k’]カ' (放出音のカ)
  • Кь[kʲ’] キ'ャ
  • Кә [k’ʷ] ク'ヮ
  • Қ [kʰ] カ (有気音。日本語のカはこちらに近い)
  • Қь [kʲʰ] キャ
  • Қә [kʰʷ] キャ
  • Ҟ [q’] →w:無声口蓋垂破裂音
  • Ҟь [qʲ’]
  • Ҟә [qʷ’]
  • Л [l] ラ (英語のL)
  • М [m] マ
  • Н [n] ナ
  • П [p’] パ' (放出音)
  • Ҧ [pʰ] パ (有気音)
  • Р [r] →w:歯茎ふるえ音
  • С [s] サ
  • Т [t’] タ' (放出音)
  • Тә [tʷ’] ト'ゥヮ, [t’p’] (ТとПの同時発音) [1]
  • Ҭ [tʰ] タ (有気音)
  • Ҭә [tʷ] トゥヮ, [tp] (タとパの同時発音) [1]
  • У [w] ワ (母音ウとして現れる事がある)
  • Ф [f] ファ
  • Х [x] (→w:無声軟口蓋摩擦音)
  • Хь[xʲ] ヒャ
  • Хә [xʷ] フヮ
  • Ҳ [ħ] ハ (日本語のハと厳密には異なるがそれでも可)
  • Ҳә [ħʷ] フヮ (ファ(f)ではない)
  • Ц [ʦʰ] ツァ (有気音)
  • Цә[ʨʷʰ] チュヮ
  • Ҵ [ts’] ツ'ァ (放出音)
  • Ҵә [ʨʷ’] チュヮ'
  • Ч [ʧʰ] (有気音。日本語のチャではҼと混同 →w:無声後部歯茎破擦音)
  • Ҷ [ʧ’] (放出音)
  • Ҽ [ʈʂ] (有気音。日本語のチャではЧと混同 →w:無声そり舌破擦音
  • Ҿ [ʈʂ’] (放出音)
  • Ш [ʂ] →w:無声そり舌摩擦音
  • Шь [ʃ] シャ (厳密には異なる →w:無声後部歯茎摩擦音)
  • Шә [ʃʷ] (Шь+ә)
  • Ҩ [ɥ] またはヤとワを同時調音 →w:有声両唇硬口蓋接近音
  • Џ [ɖʐ] → w:有声そり舌破擦音
  • Џь [ʤ] →w:有声後部歯茎破擦音

Bzyp方言独特の音

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しばしばBzyp方言について記した文書内では新たに区別されるべき音として別の文字で表記される。

  • Ц’ [t͡ɕ] (日本語のチャと同じ)
  • Ҵ’ [t͡ɕʼ] (Ц’の放出音)
  • Ӡ’ [dʑ] ジャ (日本語のジャ)
  • Ҙ [ʑ] ジャ (日本語のジャと似ているが、舌と口蓋をつけない。)
  • Ҙә,Ж'ә [ʑʷ] (Ҙを唇音化させた音)
  • Ҫ [ɕ] (日本語のシの音と同じ →w:無声歯茎硬口蓋摩擦音)
  • Ҫә,Ш'ә [ɕʷ] (Ҫを唇音化させた音)
  • Х’ [χˤ] → 咽頭化口蓋垂音
  • Х’ә [χˤʷ] (Х’を更に唇音化した音)
  • Ъ [ʔ] → w:声門破裂音 (-аъ- /aʔ/ (挿入辞"where")に現れる) [2]

また標準アブハズ語と異なる異音化をするため、以下の文字が導入されることもあります。

  • Й [j] →И
  • Ў [w] →У

方言と標準語の違いの例

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標準アブハズ語 Аҵараは同音・同アクセントで
Аҵара /аts’аrа/

  • 1.産卵する
  • 2.スキルを修得する、学ぶ

という意味があるが、Bzyp方言では
Аҵара /аts’аrа/

  • 1.スキルを修得する、学ぶ

Аҵ’ара /аtɕ’аrа/

  • 1.産卵する

として、別の音素の単語として区別されている。[3]

参考文献

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  1. ^ 1.0 1.1 1.2 『ニューエクスプレス・スペシャル ヨーロッパのおもしろ言語』柳沢民雄他編、白水社、2010年、11~12頁
  2. ^ 柳沢民雄 "A grammar of Abkhaz" ひつじ書房、2013年、403頁
  3. ^ Л. Х. Саманба "Вопросы абхазского и общего языкознания" アブハジア科学アカデミー、2015年、90頁 34.-35.