フランス語/文法/基本文型

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フランス語には、6つの基本文型があります。文型とは簡単に言うと、品詞の組み合わせのことで、6種類の基本的な組み合わせパターンがあるのです。フランス語の文章は、これらのパターンを土台として成り立っています。

第1文型 「自動詞構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V]

1番目の文型は、自動詞構文(じどうし こうぶん)と呼ばれます。これは6つのパターンの中でも一番すっきりした形の文型で、主語と動詞の2つだけで完全な文章を作ることができます。

  • Je voyage. 私は旅行する。

 je 私は(主語) / voyager 旅行する(動詞)

  • Le soleil luit. 太陽が輝く。

 le soleil 太陽(主語) / luire 輝く(動詞)

実はフランス語の動詞にはいくつかの種類があるのですが、この自動詞構文に使われる種類の動詞を、「自動詞」 と呼びます。voyager も luire も自動詞です。辞書でこの単語を引くと、「自動」 や 「自」、あるいは 「v.i.」 というマークがついていますが、これが動詞の種類を表しています。

第2文型 「繋合動詞構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V] + 属詞 [A]

2番目の文型は、繋合動詞構文(けいごうどうし こうぶん)と言います。読みにくい名前ですが、êtreC'est~ / Ce sont~, Il y a~ の項を読んだ方は、もうこの文型を知っています。まずは例文を見てみましょう。

  • Il est français. 彼はフランス人です。

 il 彼は(主語) / être です(動詞) / français フランス人(属詞・名詞)

  • Ces fleurs sont rouges. その花々は赤いです。

 ces fleurs その花々(主語) / être です(動詞) / rouge 赤い(属詞・形容詞)

  • C'est une pomme. これはリンゴです。

 ce これ(主語) / être です(動詞) / une pomme リンゴ(属詞・名詞)

この文型に使われている動詞も、種類としては自動詞なのですが、それのみでは文章が成り立ちません。 「Il est. 彼はです。」 では意味が分かりませんね。完全な文章を作るためには、属詞を取って主語の状態を説明してあげる必要があります。属詞の役割をするのは、主に名詞か形容詞です。
繋合動詞構文で使われる自動詞は、繋合動詞、属詞動詞などと呼ばれることもあります。繋合動詞は être の他にも、devenir (~になる)や paraître (~のように見える)などがあります。

  • Je deviens chanteur. 私は歌手になる。
  • Elle parait jeune. 彼女は若く見える。


第3文型 「他動詞構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V] + 直接目的補語 [O・D]

他動詞構文(たどうし こうぶん)と呼ばれるこの文型では、動詞が直接目的補語として名詞を取る必要があります。
目的補語とは何でしょうか。例えば、「好きだ」 という動詞について、「何を」 好きなのか? また 「出会う」 という動詞について、「誰に」 出会うのか? といった動作の対象を表すのが目的補語です。なぜ 「直接」 なのかについては、第4文型で分かります。

  • Mon chat aime le biscuit. 私の猫はビスケットが好き。

 mon chat 私の猫(主語) / aimer 好き(動詞) / le biscuit ビスケット(直接)

  • Elle rencontre mon frère aîné. 彼女は私の兄に出会う。

 elle 彼女は(主語) / rencontrer 出会う(動詞) / mon aîné 兄(直接)

この文型で使われているのは、他動詞という種類の動詞です。 aimer や rencontrer を辞書で引くと、「他動」 「他」 「v.t.」 などのマークがありますが、これが他動詞であるという意味です。

第4文型 「間接他動詞構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V] + 間接目的補語 [O・I]

第3文型と第4文型は、兄弟のようなものです。この間接他動詞構文(かんせつ たどうし こうぶん)も、目的補語を取ります。ただし、こちらは 「間接」 目的補語です。まずは、例文をご覧ください。

  • Cette feuille ressemble à un chapeau. この葉っぱは帽子に似てる。

 cette feuille この葉(主語) / ressembler 似ている(動詞) / à (前置詞) un chapeau 帽子(間接)

  • Je jouis de mon voyage. 私は旅行を楽しみます。

 je 私は(主語) / jouir 楽しむ(動詞) / de (前置詞) mon voyage 私の旅行(間接)

動詞に直接くっつくことができるのが直接目的補語、そして、動詞との間に前置詞をはさんで付くのが間接目的補語です。
前置詞という小さな品詞があるかないかの違いですが、第4文型ではこの前置詞が重要な存在でもあります。前置詞には à や de などのいくつかの種類があり、どの動詞がどの前置詞を取るかは決まっているのです。例えば、例文の動詞の ressembler は à を、jouir は de を取ることが決まっています。また、jouer à で 「遊ぶ」、jouer de で 「演奏する」 というように、取る前置詞によって意味の変わってくる動詞もあります。それぞれの動詞に必要な前置詞は、仏和辞書を引いて知ることができます。
この文型の他動詞は、種類を区別するために間接他動詞と呼ばれ、また第3文型のものは直接他動詞と呼ばれることがあります。

第5文型 「二重目的補語構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V] + 直接目的補語 [O・D] + 間接目的補語 [O・I]

5番目の文型は、二重目的補語構文(にじゅう もくてきほご こうぶん)と言います。呪文のような名前ですが中身は簡単で、第3文型と第4文型を合わせた形になっています。

  • Il donne un bouquet à sa femme. 彼は妻に花束をあげる。

 il 彼は(主語) / donner あげる(動詞) / un bouquet 花束(直接) / à (前置詞) sa femme 彼の妻(間接)

  • Je tire un carnet de ma poche. 私はポケットから手帳を取り出す。

 je 私は(主語) / tirer 取り出す(動詞) / un carnet 手帳(直接) / de (前置詞) ma poche 私のポケット(間接)

第6文型 「繋合他動詞構文」[編集]

主語 [S] + 動詞 [V] + 直接目的補語 [O・D] + 属詞 [A]

最後の文型、繋合他動詞構文(けいごう たどうし こうぶん)は、完全な文章を作るために、直接目的補語と属詞の両方を必要とする文型です。

  • Je trouve ce film excellent. 私はこの映画がすばらしいと思います。

 je 私は(主語) / trouver 思う(動詞) / ce film この映画(直接) / excellent すばらしい(属詞・形容詞)

  • Mon ami nomme ce chien Luc. 友達はこの犬をリュックと名付ける。

 mon ami 私の友達(主語) / nommer 名付ける(動詞) / ce chien この犬(直接) / Luc リュック(属詞・名詞)

以上の2つの例文は、第6文型の中でも 「直接構成」 という形をとっています。この文型で使われる動詞を 「繋合他動詞」 と言いますが、繋合他動詞の中には、属詞の前に前置詞を置く 「間接構成」 という形をとるものもあります。

  • Je choisis un pouding comme dessert. 私はデザートにカスタードプリンを選ぶ。

je 私は(主語) / choisir 選ぶ(動詞) / un pouding プリン(直接) / comme (前置詞) dessert デザート(属詞)