マンション標準管理規約(単棟型)第27条
表示
法学>民事法>コンメンタールマンション標準管理規約(単棟型) (前)(次)
条文
[編集](管理費)
- 第27条
- 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
- 一 管理員人件費
- 二 公租公課
- 三 共用設備の保守維持費及び運転費
- 四 備品費、通信費その他の事務費
- 五 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
- 六 経常的な補修費
- 七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
- 八 委託業務費
- 九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
- 十 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
- 十一 管理組合の運営に要する費用
- 十二 その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用
コメント
[編集]- ① 管理組合の運営に要する費用には役員活動費も含まれ、これについては一般の人件費等を勘案して定めるものとするが、役員は区分所有者全員の利益のために活動することにかんがみ、適正な水準に設定することとする。
- ② コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である。他方、各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費、町内会費等は地域コミュニティの維持・育成のため居住者が任意に負担するものであり、マンションという共有財産を維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
解説
[編集]- 町内会費を徴収することをマンション管理規約等で定めてもその拘束力はなく、町内会費分の支払い義務はないとの判例がある。
- 管理組合と自治会及び町内会、以下町内会、は全く別個の組織である。また、管理組合は町内会の下部組織でもない。管理組合の役員が町内会の役員を兼ねていて、町内会の役員としての立場で町内会の会合に出席する場合は、その経費を管理組合が負担することはできない。その経費を管理組合が負担できるのは、管理組合の役員として、管理組合を代表して会合に出席して、管理組合が持つ権限を行使する場合のみである。例えば、町内会の会合において、地域の清掃の分担について話し合われる場合、地域の美化や草花の植栽について話し合われる場合などが考えられる。マンション敷地内やその周辺の清掃や草花の植栽については管理組合の権限の範囲内である。また最近では、マンションの共用部分を津波襲来の際の地域住民の一時的な避難場所として提供を求められるという例もある。このような問題についても管理組合の権限の範囲内である。このように、管理組合役員が町内会の会合へ出席するための経費を管理組合が負担できるのは限定的である。要は、管理組合はマンションの区分所有者が構成する強制加入団体、町内会はマンションの居住者や地域住民が構成する任意加入団体である、ということである。言うまでもないことだが、マンションの区分所有者とマンションの居住者は同義ではない。管理組合が目的外の活動を行ってはならないし、目的外の活動に伴い、費用を管理費会計から支出することはもちろん、収益を管理費会計への収入とすることもあってはならないことである。管理組合が目的外の活動を行うことは管理組合が持つ権限の濫用である。目的外の活動を行い、その収益を管理費会計への収入とすることは、他の正当な権利者の持つ権利を侵害する可能性が高い。例えば、多くの自治体には資源物集団回収制度がある。地域住人が実施団体を作り、資源物を集積し、回収業者に引き渡すことで、その代金と行政からの助成金を得る事ができるという制度である。管理組合を実施団体として登録し、収益を管理費会計の収入としている例が見受けられるが、このようなことは誤りである。実施団体は居住者による任意団体として、別個に設立するなどし、登録する必要がある。資源物を排出するのはマンションの居住者であり、区分所有者ではない。資源物集団回収による収益は区分所有者ではなく、居住者のために使われなければならない。
参照条文
[編集]- マンション標準管理規約(単棟型)第67条(理事長の勧告及び指示等)