を定めたとき の向き即ち 軸の正の向きの取り方に二通りあるが,
ここではいわゆる右手系,即ち が右手の親指,人さし指,中指の向きになっているものを採用する
( の向きがこれと逆のものは左手系という).
は となるようなベクトル
として定義される.従って は に等しい.
我々はベクトルの加法を上記の如く定義した.然るに諸種の物理量の合成は,一般にこれと独立にその量に特有な定義を持つことが多い.この二つの定義が同値でないものに対してはベクトル算法の実用的価値が少ない.故にベクトル量については個々にその合成則がベクトル加法に一致するか否かを調べる必要がある.或る量の合成則は必ず一つに限るわけではないが,少なくともその中の一つがベクトル加法と一致しないものは,ベクトル量の中から除く方がよい.よってベクトル量は向きを持った線分で代表され,その合成則がベクトル加法に従うものと定義するのが正確である[1].
例(i) 変位 運動点 が空間 から へ移動したとき,
その変位はベクトル で表される.
が更に なる変位により へ動いたとすれば,
二つの変位 を続けて行った結果は一つの変位
と同じ意味になる.よって合成の意味を上のように解釈すれば,変位は一つのベクトル量である. の位置ベクトルをそれぞれ
とすれば と書かれる.
例(ii) 平行六面体の相隣れる二面を表すベクトルの和
この場合にはベクトルの合成が直接の意味を持たない.寧ろその定義をベクトル加法から与えるのである.
二面 を表すベクトルを とし を求める. を通って に垂直な面
を作れば,
はまた の代表ベクトルであって,
これを の方向からみれば次図のようになる.
はそれぞれ に垂直で,その大きさは
である.
を相隣れる二辺とする平行四辺形
を作れば、これは を全体 倍[2]
して °回転したものである.故に の大きさは
即ち の面積に等しく[3]
,方向はこれに垂直,向きを考えればこれが の代表ベクトルであることがわかる.よって 平行六面体の相隣れる二面を表すベクトルの和はその共通の陵を含む対角面の:代表ベクトルに等しい
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位置ベクトル,単位ベクトルなどは特殊なベクトルに付けた名で,
位置とか,単位とかいう量を代表するものではないからベクトル量ではない(数字 はスカラー量でないのと同様!).
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なぜならば は の面積に等しく, は と平行により, の面積は と等しいから.