中学校理科 第1分野/科学技術と人間
科学技術と人間[編集]
科学技術の発展によって我々の生活は多くの恩恵を受けている。しかし、科学技術は様々な問題をかかえていることにも注意する必要がある。
科学技術と人間[編集]
我々の生活は多くの先人達の知恵によって支えられている。ビルを建てることも電気を使うことも、物理学に支えられた近代的な技術がなければ不可能である。また、我々が用いている多くの素材は、化学の手法によって開発されて来た。このように、我々が用いている技術と知識に敬意を払い、科学技術の発展を支えていくことが望ましい。
いろいろな先端技術[編集]
燃料電池[編集]

左側から供給された水素 H2 の一部は、正極でイオン化され、負極にたどり着き、酸素 O2 と反応し水になる。
anode = 陰極 , cathode = 正極 , Fuel = 燃料 , electrolyte = 電解質 .
水素などの陽極の燃料を、触媒を用いてイオン化させ、余った電子を取り出す電池。陽極の燃料が水素の場合は、陰極で酸素および回収した電子と反応し水になる。このような仕組みで、電気を取り出す装置を燃料電池(ねんりょう でんち)という。様々な方式の燃料電池がある。
水素ガスなどからエネルギーを取り出せる燃料電池(ねんりょう でんち)は、べつに発電方法では無い。電池は、発電した電力を蓄える装置でしかない。水素ガスを作るのに、べつの電力が必要になる。
構造用セラミックス[編集]
陶磁器やガラスなどの、いわゆる「焼き物」のような、材料はセラミックスceramicsである。 セラミックスは一般的に耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れる。しかし衝撃荷重に弱い。 また圧縮荷重には比較的強いが、引張荷重には弱い。 セラミックスは共有結合によって結合した材料によって作った個体状の材料である。 セラミックは硬度がよく、プラスチックなどと比べて、硬い。高分子ではないので、ゴムとは違って伸びにくいし、曲がりにくい。傷がつきにくい。しかし、金属結合では無いため、延性がないので衝撃に弱くてもろい。また、成型が困難である。(高分子とは違い融点が高いためと、金属のような延性が無いためから。) 耐燃性が良く、セラミックスは高分子とも違い、燃えにくい。セラミックスは融点も高い。
- 生体セラミックス
水酸化アパタイトは、骨の無機成分である。 これとおなじ化学構造のセラミックで造った人工の骨は、生体と化学的に結合し、安定となる. 生体内で安定であり、生体に害を及ぼさない性質を 生体親和性 (せいたい しんわせい)などという. さらに生体材料を生体に移植したときに、適切に移植すれば、骨組織などと化学的に結合する材料を生体活性材料などという.あるいは「生体活性がある」などという. 水酸化アパタイトは弱アルカリ性の物質である。酸には良く解ける.アルカリには難溶である.骨には65%の水酸化アパタイトが含まれている.
- バイオガラス
バイオガラスは多量の酸化カルシウムと燐酸を含むガラスである.骨組織との親和性に優れる. 水酸化アパタイト、バイオガラスはともに生体活性である。
- 生体不活性
アルミナは、生体内で耐食性があり、化学的に安定であり、また、生体に害を及ぼさないので人工骨などに用いられている.アルミナは生体内で骨組織とは化学結合を造らないので、生体活性はない。このような性質を生体不活性という。 化学結合を造らないので、体内に固定する場合には、ねじ溝などを作ることにより機械的に固定する。
生分解性プラスチック[編集]
自然界で、微生物などにより分解される樹脂を生分解性プラスチックという。 また生分解性プラスチックが、自然界で分解されることを生分解という。 分子構造の種類は、おもに、タンパク質のものと、ポリ乳酸とポリグリコール酸のものや、デンプンやセルロース、キトサンなどからつくられるものがある。
一般に、生分解性樹脂は親水性が高まるほど、生分解されやすくなる。
液晶[編集]
導電性ポリマー[編集]
ポリアセチレンの導電率は半導体ほどである。ポリアセチレンは長い共役二重結合(きょうやく にじゅうけつごう)をもった化合物である。 一般に化合物の価電子は、共役二重結合の内部を動き回れる性質がある。(この共役二重結合を動き回れる価電子をπ電子という。)この共役二重結合とπ電子が半導体並みの導電率の理由である。
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実用的な導電性ポリアセチレンには、さらに導電性を高めるため、添加物として、ヨウ素I2またはAsF6 が添加されている。ヨウ素もAsF6もそれ単体は、大した導電性を持たない。
このヨウ素などの添加によって金属並みの導電性を持つ。
単体では導電性を持たないヨウ素を添加して導電性が向上するのは、ヨウ素に電子が吸収されるからであり、である。ヨウ素の他に、Br2やFeCl2なども、電子を吸収する。これらの性質を電子吸引性という。また電子吸引性をもった化合物をアクセプターという。
NaやLiなどは電子を供与する物質であり、これらを添加することでも、ポリアセチレンの導電性を向上できる。 この電子を供与する性質を電子供与性と言い、また電子供与性のある化合物をドナーという。
この原理は、シリコン半導体などのドーピングの原理と似た原理である。 なので共役π電子系の導電性高分子でも、ドナーやアクセプターの添加を化学ドーピングあるいはドーピングという。
ポリアセチレンのシス型とトランス型とで導電性は異なる。トランス型のほうが導電性が大きい。 ポリアセチレンそのものの合成は、チーグラー触媒を用いてアセチレンガスと有機金属化合物から合成できる。

ポリアセチレンの他の高分子でも導電性樹脂の開発が進められている。 たとえばポリチオフェンやポリアニリンが有る。 それらも同様に、共役二重結合をもった導電性樹脂の場合は、導電の仕組みは共役二重結合によるものである。
カーボンナノチューブ[編集]
超電導物質[編集]
※ 範囲外: スターリング冷凍機[編集]
スターリング機関というのを、ひょっとしたら技術科の資料集で習うかもしれない。
よく、自動車のモデルとして、スターリング機関を加熱して、エンジンに見立てるという教育がある。
では、加熱せずに、スターリング機関を(電力などで)運動させたら、どうなるのだろうか?
実は、冷却器になる。
これをスターリング冷凍機という。
そして、この冷却器の便利なところは、本格的なスターリング冷凍機なら、ー100℃くらいの、かなり低い温度まで冷却できる。
もちろん、超電導を起こすための絶対零度には、まだまだ及ばない。なので、「断熱消磁」(だんねつしょうじ)と言われる、別の技術で、絶対零度に近づける。
しかし、常温から、いきなり断熱消磁を行うのは効率が悪い。なので、断熱消磁を行う前に、まず先にスターリング冷凍機を用いて、冷却するのである。
この他、ある種類の赤外線センサーは、絶対零度に近いほど性能が良くなるので、このような極度の低温で性能を発揮する特殊なセンサーを冷却するのにも活用され、宇宙観測のための超高精度の赤外線センサーの冷却に、スターリング冷凍機が用いられている。
形状記憶合金[編集]
吸水性ポリマー[編集]

アクリル酸ナトリウムCH2=CH-COONaを架橋させた樹脂は、多量の水を吸収する。 給水の仕組みは、水が加わると、電離によってCOONa部分が、COO-とNa+に電離するが、このときイオンの増加により浸透圧が発生するので、水を吸収する。 また、COO-どうしは同種の電荷なので反発しあい、樹脂が膨張するので、膨張した隙間に水が入り込めるようになり、水を吸収する。
用途としては、紙おむつや保水剤などがある。
水素吸蔵合金[編集]
発光ダイオード[編集]
- ダイオード

ダイオード(diode)という半導体素子はp極とn極とがあり、電気が流れるのは、p極に加えた電圧がn極の電圧よりも高い時だけである。それ以外の場合は電気が流れないので、交流から直流への整流などに用いられる場合もある。 他にも様々な用途がある。
ダイオードのうち、電流が流れた時にPN接合面が発光するものを発光ダイオード(はっこうダイオード)という。 ダイオードには過大な電流が流れると故障するので、回路には抵抗器を加えるのが一般である。
圧電体[編集]
- (あつでんたい)
水晶に力を加えると、電気が発生することは昔から知られていた。 逆に、水晶に電圧をかけると、伸び縮みをする。たとえば上部に正、下部に負の電圧をかけると伸びるときは、逆に上部に負、下部に正の電圧をかけると、縮む。よって交流電圧をかけると伸び縮みを繰り返し、ふるえる。振動に伴って、音が出るので、ブザーとして使える。 水晶のように、力を加えると電圧が発生し、逆に電圧を加えると、ひずみの生ずる材料を圧電体(あつでんたい)という。 圧電体に力をくわえると電圧が発生する。ライターの着火素子に火花を出す仕組みや、ガスコンロの点火用の部品や、圧力センサーとして使われている。
炭素せんい[編集]


アクリロニトリル CH2=CH-CN を重合させようとすると、CH2=CH-CN の二重結合の部分であるビニル基 CH2=CH-が、付加重合をして一重結合になることで、他の分子との結合が可能になる。
アクリロニトリルを付加重合させたものをポリアクリロニトリルという。ポリアクリロニトリルを主成分とした繊維をアクリル繊維という。 ポリアクリロニトリルは疎水性であり、染色しづらい。 そのため、ポリアクリロニトリル繊維に添加物として酢酸ビニル CH2=CH-OCOCH3 などを混ぜて、染色性を高める。
- 炭素繊維
アクリロニトリルを窒素などの不活性気体中で、温度200℃ から段階的に温度を上げ 温度3000℃程度の高温で熱分解すると、炭素を主成分とする炭素繊維(カーボンファイバー)が得られる。炭素繊維は強度が優れている。
発展的記述:コンピューターのハードウェアの技術史[編集]
(※ 発展的記述です。けっして、「全部、おぼえよう。」なんてせずに、分かるとこだけ読み進めて言ってください。)
小学校の理科で習うような電気部品では、デジタルの計算機は、つくれません。
半導体と真空管[編集]
2極真空管と半導体ダイオード[編集]
以下の真空管(しんくうかん)は、発展的記述である。電子部品の歴史の学習として読んでいただきたい。
- 真空管(しんくうかん)


コンピュータに計算させる部品には、今でこそ半導体ICを用いているが、1940年ごろのアメリカでは、真空管(しんくうかん)というを用いていた時代もあった。
電気回路の整流には今でこそ半導体ダイオードを用いているが、1960年ごろまでは、昔は、整流などに真空管を用いていた時代もあった。 そもそも半導体ダイオードの「ダイオード」の語源が真空管の一種の、2極(ダイ・オード) 真空管のことが由来である。
真空管(しんくうかん、vacuum tube)とは、ガラス管の中を真空(しんくう)にしたガラス管の中で、電源のマイナス極に結びついた電極と、電源のプラス極に結びついた電極を取り付け、マイナス極を熱することで電子を放電させることで電気をながすという、大きな電気部品です。 この2極真空管で、整流が出来ます。
2極真空管の整流の仕組みは、離れた陽極(ようきょく)と陰極(いんきょく)に大きな電圧差をかけ、このとき陰極に高温を加えると電子が放出するという、陰極線(いんきょくせん)を利用したものである。
そもそも陰極線(いんきょくせん、cathode ray、カソード・レイ)の発見そのものが、放電管では陰極からしか電子が放電されないという実験事実によるものです。 電子の放電は、マイナス極を熱したときにしか、おきません。プラス極を熱しても、電子は放電しません。
ちなみに熱すると電子が放出しやすくなるので、このような電子を熱電子(ねつでんし、thermo electron)という。熱すると熱電子が出やすくなる、この現象のことをエジソン効果(エジソンこうか,Edison effect)という。
電子の電荷(でんか)は、マイナスの符号であることに注意してください。電子がマイナスなので、電流の向き電子の動く向きとは反対になります。なので真空管での電流の向きは、陽極から陰極への向きです。
この陰極からしか電子が出ないという仕組みを使うと、電流を一方向のみに流す整流(せいりゅう)ができます。 整流によって、陽極から陰極へ電流が流れます。(電子は陰極から放出され陽極に到達する。)
この加熱するという理由から、真空管は耐久性に欠陥があった。また、小型化も難しかった。半導体ダイオードや半導体トランジスタの実用化後は、加熱の必要がなく、真空管を用いていた多くの電子部品で、耐久性の高い半導体部品へと置き換わることになった。
三極真空管と半導体トランジスタ[編集]

この真空管に、さらに、もう一本、マイナス極の近くに、金属の網状のグリッド電極を取り付けます。3本目の電極であるグリッド電極の電圧の大きさを変えると、陰極から放電される電子の量が変わります。3本目の電極の電圧をかえるのに流した電流の大きさ以上に、陰極からの電流の大きさを変えることができます。これによって、3極真空管には、少ない電流の変化を、大きな変化に変える 増幅(ぞうふく)が可能になります。(増幅といっても、べつに無から有の電流を作るわけでは無く、外部電源は必要になる。)
3極真空管は、半導体の実用化後は、半導体トランジスタ(transistor)に置き換えられていった。
真空管とコンピュータ[編集]


陰極線が発見されたばかりのころは、まだコンピュータへの応用には、気づかれていませんでした。それから時代が変わって1940年ごろに、第二次大戦のため、アメリカでは高性能の計算機が必要になり、新型の計算機の開発が進みます。この時代に、陰極線を用いた真空管で計算機が作れる、ということが、気づかれます。
アメリカ軍は、真空管を用いた電子式の計算機の開発に、巨額の資金(しきん)を、つぎ込みます。 そうして、完成した電子計算機が、エニアック ENIAC というコンピュータです。
真空管は、陰極を加熱するという理由から、耐久性に欠陥があった。たとえば電球のフィラメントが焼き切れるように、真空管が熱で電極が焼き切れたりなどして、故障するということが多かった。
また、真空管は小型化も難しかった。
- (※ 範囲外 :) 歴史の内容なので暗記は不要だが、ENIACを発明した人について、日本の教育界では昔は「(ENIACの発明は)数学者ノイマンの業績だ」と言われていたが、近年、コンピュータ史の研究が進み、(ENIACの発明に)技術者のモークリとエッカートの貢献がけっこう大きいことが分かった。(※ 高校の『情報』教科の検定教科書(数研出版『情報の科学』)でも、巻末の見開きページで、モークリとエッカートを紹介している。)


しばらく年月がたち、半導体という物質に、いくつかの物質をまぜると、一方向にしか電子が流れないという現象が発見されます。半導体の中を、一方向にのみ、電子が流れます。半導体素子(はんどうたい そし)での整流の発見です。
しかも、半導体により一方向に流すばあいは、真空管とはちがい、熱する必要がありませんでした。材料の中を電子がながれるので、放電をさせる必要もなくなります。 なので、熱で故障することが無くなります。おまけに加熱のためのヒータを取り付ける必要も無くなります。
また、3極真空管のように、3つの電極を作って、増幅作用があることなども発見されます。
半導体ダイオードや半導体トランジスタの実用化後は、加熱の必要がなくなり、真空管を用いていた多くの電子部品で、耐久性の高い半導体部品へと置き換わることになりました。
トランジスタの場合は、電極の端子が3つあり、それぞれエミッタ(emitter)、ベース(base)、コレクタ(collector)と言います。ベースに電圧が加わらないと、トランジスタのエミッタ-コレクタ間には電流が流れません。

このようにトランジスタでは、ベース電圧により、エミッタ-コレクタ間の電流のオン・オフを切り替えられます。この仕組みをトランジスタの スイッチング作用(スイッチングさよう,switching) と言います。
半導体産業[編集]


これをうすく切断して、シリコンウエハ ( silicon wafer)にする。
ICとは、集積回路(しゅうせきかいろ)とも言われ、数mmのチップに、電子素子(でんしそし)を、とても多く、つめこんだ部品です。コンピュータ部品にICが使われます。パソコンだけでなく、計算する機能をもっている「デジタル家電」(デジタルかでん)などの製品のほとんどに、ICは入っています。
IC産業や電子産業が、半導体(はんどうたい)産業と言われることもあります。ICの材料に、半導体(はんどうたい)という材料が使われることが多いからです。
半導体(はんどうたい)とは、電気の流しやすさが、電気を流す金属などの導体(どうたい)と、電気を流さないゴムなどの絶縁体(ぜつえんたい)とのあいだの、半分くらいの流しやすさの材料なので、半導体(はんどうたい、semiconductor,セミコンダクター)といいます。
元素のケイ素(元素記号:Si)であるシリコンなどが半導体です。

高機能のICの製造には、とても、お金がかかります。どれだけ多くの素子をICチップに多く組み込めるかで性能がきまるので、最先端の精密(せいみつ)技術を持った大企業でないと、製造も開発も、出来ません。
ICの配線の加工は、とても細かいので、手では不可能です。おもに、光を用いています。 たとえば写真の業界では、銀塩写真(ぎんえんしゃしん)は、光を用いて、化学反応を制御しています。半導体の製造でも、光を用いて、シリコンウエハにぬられた感光剤(かんこうざい)の化学反応を制御して、ICを作っています。
なので、半導体製造装置(はんどうたいせいぞうそうち)には、レンズなどの光学部品が、ついています。 シリコンウエハに、写真のように回路図をうつして、ICの配線をつくっているのです。
LSI(「エル・エス・アイ」、大規模集積回路)とは、ICの中でも、1つのチップの中の電子部品の数が、とても多いICです。