中学校社会 公民/公害の防止と環境保全

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公害[編集]

工場などからでる排水や排煙などの処理が不十分だと、排水・排煙にふくまれる有害物質により、周辺の環境が汚染され、近隣の住民など多くの人の健康に被害が出る場合がある。このように、産業活動による多くの人への健康への悪影響を 公害(こうがい) という。


四大公害病[編集]

日本でも、かつて、大きな公害をおこしたことがある。公害は第二次大戦よりも前の昔からあるが(明治時代の足尾銅山の鉱毒事件なども公害であろう)、第二次大戦以降は以下の4つの公害および公害による病気が、とくに被害が大きい公害として有名である。

  • 新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)
  • 四日市(よっかいち)ぜんそく
  • 富山のイタイイタイ病
  • 熊本の水俣病(みなまたびょう)

この4つの公害を四大公害病(よんだい こうがいびょう)と言います。

上記の4つの公害が、1950年〜1960年ごろに起きました。高度経済成長のときに重化学工業が成長しましたが、公害をふせぐための環境対策が遅れたことが、この4大公害の原因の一つです。

四大公害の裁判は別々に行われましたが、判決は4つとも患者側の全面勝訴です。

  • 新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)
  新潟水俣病
被害地域  新潟県阿賀野川(あがのがわ)流域
被告  昭和電工
提訴  1967年6月
主な原因  水銀による水質汚濁
判決  1971年9月
患者側全面勝訴

1964年ごろに新潟県の阿賀野川(あがのがわ)の流域で起きた、水銀および水銀化合物による公害です。 化学工場の排水中の水銀化合物が原因です。

被告は、昭和電工(しょうわでんこう)です。(※ 検定教科書にも被告企業名が記載されています。)

症状は、熊本県の水俣病と同じです。


  • 四日市(よっかいち)ぜんそく
  四日市ぜんそく
被害地域  三重県四日市(よっかいち)市
被告  三菱油化、昭和四日市石油など6社
提訴  1967年9月
主な原因  亜硫酸ガスによる大気汚染
判決  1972年9月
患者側全面勝訴

三重県の四日市市は石油化学工業で、1940年ごろから、さかえていました。多くの石油化学工場があつまった石油化学コンビナートといわれる工場のあつまりが、あります。

被告は、三菱油化などの石油コンビナート6社です。(※ 検定教科書にも被告企業名が記載されています。)

1950年ごろから、この周辺では、ぜんそくや気管支炎(きかんしえん)など、のどをいためる病気の人が、ふえてきました。また、この近くの海でとれた魚は油くさい、と言われたりもしました。

四日市ぜんそくの原因の物質は 亜硫酸ガス(ありゅうさんガス) だということが、今では分かっています。

どうも、石油化学コンビナートから出る、けむりや排水(はいすい)が、環境に悪い影響をあたえているらしいと言うことが1960年ころから言われはじめ、社会問題になりました。

このうち、とくに ぜんそく の被害が有名なので、この四日市(よっかいち)でおきた公害を 四日市ぜんそく というのです。

四日市ぜんそくの、ぜんそくの原因は、今ではわかっており、けむりにふくまれる亜硫酸ガス(ありゅうさんガス)や窒素酸化物(ちっそ さんかぶつ)が、おもな原因だと分かっています。


  • イタイイタイ病(イタイイタイびょう)
  イタイイタイ病
被害地域  富山県神通川(じんづうがわ)流域
被告  三井金属工業
提訴  1968年3月
主な原因  カドミウムによる水質汚濁
判決  1972年8月
患者側全面勝訴

1955年ごろ富山県の神通川(じんづうがわ)の周辺で起きた病気であり、体の ふしぶし が痛くなり、骨が折れやすくなる病気です。 カドミウム が原因です。カドミウムは猛毒です。

被告は三井金属工業です。(※ 検定教科書にも被告企業名が記載されています。)

川の上流にある鉱山から流れ出る廃水にカドミウムがふくまれており、その廃水を飲んだ人や、廃水に汚染された米などの農産物などを食べた人に、被害が出ました。


  • 水俣病(みなまたびょう)
熊本水俣病
赤:水俣市、青:葦北郡、薄黄色:その他の熊本県
  水俣病
被害地域  熊本県八代湾(やつしろわん)沿岸
被告  チッソ
提訴  1969年6月
主な原因  水銀による水質汚濁
判決  1973年3月
患者側全面勝訴

化学工場の排水にふくまれていた水銀および水銀化合物(有機水銀、メチル水銀)が原因でおきた病気です。被告は「チッソ」という企業です。(※ 検定教科書にも被告企業名が記載されています。)

水銀は猛毒(もうどく)なので、この水銀に汚染された水を飲んだり、水銀に汚染された海水で育った魚や貝を食べたりすると、病気になります。体が水銀におかされると、神経細胞が破壊され、手足がしびれたり、うごかなくなります。

熊本県の水俣(みなまた)という地域や、水俣湾(みなまたわん)の周辺で、1953年ごろに新聞報道などで有名になった公害なので、水俣病(みなまたびょう)と言います。

なお、有名になったのは1953年ごろからだが、それ以前の1940年代ごろから、水俣病とおぼしき症例が知られている。

人間以外にも、猫や鳥など、水銀に汚染された魚を食べたり水を飲んだりしたと思われる動物の不審死がいくつもあり、当初は、水俣病の原因もよく分かっていなかったので、しびれている猫が踊って(おどって)るようにも見えたことから、当初は「猫おどり病」(ねこおどりびょう)とも言われた。

四大公害裁判[編集]

これらの公害病の原因の物質を排出した会社や工場に対し、住民らが国に裁判を、訴え(うったえ)でます。

四大公害の裁判は別々に行われましたが、判決は4つとも患者側の全面勝訴です。

裁判は1960年代の後半に起こされ、1970年代の前半の1971年〜1973年ごろに判決が出ます。 判決は、企業側の責任を認め、企業側は被害住民に 賠償金(ばいしょうきん) を支払うように命じた判決が出ます。

公害対策[編集]

四大公害などの発生を受け、公害対策の気運が高まります。

1967年に公害対策基本法(こうがいたいさく きほんほう)が制定。(1993年の環境基本法にともない廃止。)
1970年に環境庁(かんきょうちょう)が、設置。それまで、省庁ごろにバラバラに公害に対応していたことが問題視されたのが、環境庁の設置のきっかけ。2001年に環境庁から環境省(かんきょうしょう)に変わる。
1970年に水質汚濁防止法(すいしつおだく ぼうしほう)が制定。
1972年に自然環境保全法(しぜんかんきょう ほぜんほう)が制定。
1993年に、環境基本法(かんきょう きほんほう)が制定。これにともない、公害対策基本法は廃止。環境基本法では、公害対策だけではなく、その他の多くの環境問題にも対策をした法律である。
2002年に土壌汚染対策法(どじょうおせん たいさくほう)が制定。

近年では、焼却処理施設などから出るダイオキシンなど、新たな公害問題が社会問題に。

関連項目[編集]

企業の活動による健康被害だが、工場の中の従業員だけに健康被害がある場合については、「公害」と呼ぶ場合もあるが、ふつうは「職業病」(しょくぎょうびょう)などと呼ぶ。

近年では、「アスベスト」という素材をあつかう労働者の健康被害が問題になった。アスベストは、断熱材などとして長い間、使われていたが、2009年に禁止になった。

家庭からの排水や、自動車などの排煙によって環境が汚染されることも、公害である。

公害の7つの典型[編集]

公害とは、主に、以下の7つの公害が典型的である。

  • 大気汚染(たいき おせん) ・・・ 排煙などで、空気が、よごれること。
  • 水質汚濁(すいしつ おだく) ・・・ 川や海などの水がよごれること。
  • 土壌汚染(どじょう おせん) ・・・ 土壌中に汚染物質が持ち込まれること。
  • 騒音(そうおん) ・・・ 不快な音、好ましくない音のこと。
  • 振動(しんどう) ・・・ 土地、建物等の上下左右の揺れのこと。
  • 地盤沈下(じばん ちんか) ・・・ 地下水を大量に取り出すと、地面が低くなる地盤沈下が起きることがある。
  • 悪臭(あくしゅう) ・・・ 人に不快感を与える臭いのこと。

環境基本法では、この7つの種類の公害を、典型七公害(てんけい ななこうがい)としている。