会社法施行規則第3条
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条文
[編集](子会社及び親会社)
- 第3条
- 法第2条第3号 に規定する法務省令で定めるものは、同号に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等とする。
- 法第2条第4号に規定する法務省令で定めるものは、会社等が同号に規定する株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社等とする。
- 前二項に規定する「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」とは、次に掲げる場合(財務上又は事業上の関係からみて他の会社等の財務又は事業の方針の決定を支配していないことが明らかであると認められる場合を除く。)をいう(以下この項において同じ。)。
- 他の会社等(次に掲げる会社等であって、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の総数に対する自己(その子会社及び子法人等(会社以外の会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等をいう。)を含む。以下この項において同じ。)の計算において所有している議決権の数の割合が100分の50を超えている場合
- イ 民事再生法 (平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等
- ロ 会社更生法 (平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社
- ハ 破産法 (平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等
- ニ その他イからハまでに掲げる会社等に準ずる会社等
- 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が100分の40以上である場合(前号に掲げる場合を除く。)であって、次に掲げるいずれかの要件に該当する場合
- イ 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(次に掲げる議決権の数の合計数をいう。次号において同じ。)の割合が100分の50を超えていること。
- (1) 自己の計算において所有している議決権
- (2) 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
- (3) 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
- ロ 他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の総数に対する次に掲げる者(当該他の会社等の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものに限る。)の数の割合が100分の50を超えていること。
- (1) 自己の役員
- (2) 自己の業務を執行する社員
- (3) 自己の使用人
- (4) (1)から(3)までに掲げる者であった者
- ハ 自己が他の会社等の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。
- ニ 他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額に対する自己が行う融資(債務の保証及び担保の提供を含む。ニにおいて同じ。)の額(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を含む。)の割合が100分の50を超えていること。
- ホ その他自己が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。
- 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数の割合が100分の50を超えている場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含み、前二号に掲げる場合を除く。)であって、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合
- 他の会社等(次に掲げる会社等であって、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の総数に対する自己(その子会社及び子法人等(会社以外の会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等をいう。)を含む。以下この項において同じ。)の計算において所有している議決権の数の割合が100分の50を超えている場合
- 法第135条第1項 の親会社についての第2項 の規定の適用については、同条第1項 の子会社を第2項 の法第2条第4号 に規定する株式会社とみなす。
解説
[編集]会社の親子関係及びそれを規定する「財務及び事業の方針の決定を支配している場合(しばしば、「支配関係」「実質的支配」と略す)」について規定する。
以下の場合に支配関係があるとされる(親会社となるべき者を甲、子会社となるべき会社を乙とする)。なお、倒産処理中の会社についてはこの限りではない。
- 甲が乙の発行済み株式(以下、「株式」)を過半数(50%超)保有しているとき。
- 甲が保有する乙の株式が40%以上50%以下であって保有している場合で、以下のいずれかの条件に合致するとき。
- 甲が保有する株式に、以下の者が保有する株式を合算した場合で、過半数となるとき。
- 甲と緊密な関係があることにより甲の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
- 甲の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
- 甲が自然人である場合、甲の配偶者又は二親等内の親族が所有している議決権
- 乙の取締役会等の機関の構成員の総数に対する次に掲げる者の数の割合が半数を超えているとき。
- 甲が自然人である場合、甲自身及び甲の配偶者又は二親等内の親族。
- 甲が会社法上の会社[1]である場合、甲の役員等、又はかつて役員等であった者。
- 「役員等」甲が株式会社である場合は役員、甲が合名会社・合資会社・合同会社である場合、会社の業務を実際に執行する権限を持つ社員(特に、無限責任社員や定款で定められた業務執行社員)
- 甲の使用人、又はかつて使用人であった者。
- 甲が乙の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在するとき。
- 乙の資金調達額の総額に対する甲が行う融資の額(甲と緊密な関係のある者及び自然人である場合の甲の配偶者又は二親等内の親族が行う融資の額を含む。)の割合が100分の50を超えていること。
- その他甲が乙の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。
- 甲が保有する株式に、以下の者が保有する株式を合算した場合で、過半数となるとき。
緊密な関係
[編集]- 本条第3項第2号イ⑵に定める「出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係」は、他の法令においても、会社同士の支配関係や影響関係を判断するための要素として頻用され、特定の会社が他の会社に対して実質的な影響力を行使できるかどうかを判断するための基準として用いられる(以下、経営へ支配又は影響を与える会社を甲、経営へ支配又は影響を受ける会社を乙とする)。甲乙間に以下の関係がある場合、緊密な関係を認められる。
- 出資関係
- 支配株式の保有:甲が乙の議決権のある株式の一定割合(通常過半数)を保有している場合。または、議決権割合が過半数未満でも、以下の「人事関係」「資金関係」「技術関係」「取引関係」の条件・状況を具備することにより、実際の株主総会や取締役会の意思決定に対する影響力が強い場合。
- 持分保有:合同会社などの持分会社において、甲が支配的な出資を行っている場合。
- 間接出資:これらは、甲が直接ではなく、甲の子会社等を通じて出資している場合も含む。
- 人事関係
- 役員の兼任:甲の役員(取締役、監査役、執行役員など)が、乙の役員の過半数または重要な意思決定を行う役職を兼任している場合。
- 出向や派遣:甲の社員の相当数が、乙へ継続的に出向しており、特に、経営や管理の立場にある場合。
- 資金関係
- 資金の貸付・借入:甲が乙に対して、乙の総資産や年間売上の一定割合(例:30%以上)に相当する資金を継続的に貸し付けている場合。
- 保証や担保提供:甲が乙の借入の相当額に対して保証や担保提供を行い、乙が実質的に甲の信用力に依存している場合。
- 資金繰りの依存:乙が継続的に甲の資金支援に依存しており、甲の支援なしでは事業継続が困難な状態にある場合。
- 技術関係
- ライセンス供与:甲が乙に対して、技術や特許を提供し、継続的な使用料を受け取っている場合。また、乙の事業が甲の技術供与に大きく依存している場合。
- 共同研究・開発:甲の技術やノウハウを活用し、共同で製品開発や研究を行っている場合。
- 生産技術の提供:甲が乙に対して、生産工程や製造技術の指導を行っている場合。
- フランチャイズ契約:甲がフランチャイザー、乙がフランチャイジーであり、甲の事業モデル・経営ノウハウ・商標の利用を前提とする継続的な契約関係にある場合、技術関係および取引関係の両面から緊密な関係を構成する。
- ブランド・ノウハウの提供:甲が乙に対し、商標やブランド、業務ノウハウ、研修などを提供。
- 営業・管理システムの使用:乙が甲の指定するPOSシステムや経営管理ツールを使用する。
- 製品・サービスの統一:甲が乙に対して、商品の提供方法や接客マニュアルを指導。
- 取引関係
- 継続的な取引依存:乙が甲との取引に大きく依存している場合(例:売上の主要部分が甲との取引に依存)。
- 優遇取引:甲が乙に対して、市場価格よりも有利な条件で商品やサービスを提供する場合、決済条件を通常の取引先よりも大幅に緩和する場合(例:長期の支払猶予、金利なしの分割払い)など。
- 決済条件の優遇:乙が甲に対して、通常の取引先よりも有利な決済条件を提供される場合(例:代金の見込み支払いを含む決済の早期化や、他社よりも優遇された支払い期日)。
- 専属的取引:乙が甲に対してのみ取引を行う場合(例:OEM供給契約、特定販売代理店契約、単一購買契約など)。
関連条文
[編集]関連事項
[編集]脚注
[編集]- ^ 株式会社以外の法人である場合は、原則として適用がないと解される。
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