位相幾何学/基本事項/集合と要素
ここでは、位相幾何学を学ぶ上で最低限必要になる集合と要素の考え方について記述した記事です。
ウィキブックスでは、他に高等学校数学A 集合と論理や集合論でも集合について扱っています。こちらも参考にしてください。
ものの集まりと数学
[編集]数学とはもともとは、数を扱っていた学問でした。 しかし、現在では数学は、数というよりも集合( Set )を扱う学問に発展してきました。 数学がそれまで扱ってきた数という概念も、その本質は数の集合という概念だったと考えることができたからです。
ここでは、位相幾何学を学んでいく上で、最低限その意味を知っておかなければならない用語と記号について解説しています。
集合と要素
[編集]このセクションでは、集合と要素の基本的な事柄について、簡単に説明します。
集合の基礎
[編集]では集合( Set )というものについて学びましょう。
今、あなたの前にりんごが3個、なしが6個あるとします。 このとき、りんごだけを集めて箱に入れれば、集合の完成です。 当然、なしをすべて箱に入れても、集合は出来上がります。 つまり、モノを集めれば集合と言えるのです。
これが、集合の基本です。 ある規則を作ってモノを集めたら、それはすべて集合になります。 もちろん、集合の集合、なんていうのも有りです。
集合の表現
[編集]さて、ここに「1」と「2」と「3」の三つの数を集めた集合があるとします。 この集合にSという名前をつけると、
- S = { 1, 2, 3 }
という式で、このことが表現できます。Sは「1」と「2」と「3」を集めた集合である、という意味です。 このように、集合に属するモノをすべて書き出して、集合を説明することができます。
また、別の方法を用いると、
- S = { x | 0 ≤ x ≤ 5 }
といった具合に、集合を示す{}の中に | で区切りを付けて、左側に一般型、右側のその条件を記述することもできます。 集合に属するモノの数が多いときは、この方法が便利です。
集合と要素
[編集]集合として集められたものひとつひとつを、その集合の要素( Element )といいます。
今、ある数の集合Sが
- S = { 1, 2, 3 }
と定義されているとき、「1はSの要素だ」や、「1はSに属する」といいます。このことを式で表すと、
- 1 ∈ S , 2 ∈ S , 3 ∈ S
と書き表せます。 「∈」の記号は、「要素∈集合」のように書いて、集合に要素が属していることを表します。
また、Sの要素に4は含まれていませんから、
- 4 ∉ S
となるわけです。 この「∉」の記号は、「要素∉集合」のように書き、集合に要素が属していないことを表します。
部分集合
[編集]ある集合Aとある集合Bがあるとします。 このとき、集合Aの要素がすべて集合Bにも含まれているなら、「集合Aは集合Bの部分集合( Subset )である」や「集合Bは集合Aを包括している」と表現し、
- A ⊆ B または A ⊂ B
と書き表します。この表現はどちらも同じ意味で、慣例で「⊆」と「⊂」の二種類の表記があるだけです。本書では、部分集合の関係を現す記号として「⊂」を用いることにします。 当然、集合Aの要素は自分自身である集合Aに含まれていますから、集合Aは集合Aの部分集合だということになります。
さらに、集合Aの要素のすべてが集合Bにも含まれて、集合Bの要素のすべてが集合Aに含まれるとき、集合Aと集合Bの要素はまったく同じですから、これらは同じ集合だと考えることができます。 このことは、
- A = B
と表します。
集合Aが集合Bの部分集合だけど、集合Bは集合Aに含まれない要素を持っているとき、集合Aは集合Bの真部分集合といい、
- A ⊊ B
で表します。 この、真部分集合を表す記号も、部分集合を現す記号と同じく複数あります。本書では、真部分集合を現す記号として、「⊊」を使用します。
また、集合Aが集合Bの部分集合であるとき、集合Bは集合Aの上位集合( Superset )と呼ばれることがあります。
和集合
[編集]二つの数の集合SとTが、
- S={ 1, 2, 3 } , T={ 2, 4, 6 }
のとき、どちらかの集合に属する要素を集めた集合を考えることができます。 この新しい集合を、
- S ∪ T = { 1, 2, 3, 4, 6 }
と表します。 2は共通な要素ですが、二回数えないように注意してください。 この2は数の集合において、同じものを示しています。 Sの2とTの2は区別しません。 だから、2が二つになったりはしないということです。
このように、二つの集合のどちらかに属する要素を集めて作った集合を、和集合、集合の和、合併( Union )、結び( join )と言います。
積集合
[編集]二つの数の集合SとTが、
- S = { 1, 2, 3, 4, 5 } , T = { 2, 4, 6, 8, 10 }
のとき、この二つの集合に共通する要素を抜き出した新しい集合を考えることができます。 この新しい集合を、
- S ∩ T = { 2, 4 }
と表します。 今、SとTの両方に含まれている数は、2と4の二つだけなので、これは間違えないですね。 「∩」はキャップと読み、二つの集合を結びつけて、その共通な要素を持つ新しい集合を表現する記号です。
こうして二つの集合から生み出される集合を、積集合、共通部分( Intersection )、集合の積、交わり( Meet )、などと呼びます。 本書では、統一して積集合と呼ぶことにします。
定義のまとめ
[編集]このページで扱った事柄について、数学的な定義を記述しておきます。 文書で理解することは確かに容易ですが、例えばウィキペディアの数学に関する文書の多くは、数式によって概念を説明していく傾向にあります。 そこで、一つ一つの定義を数学的に見ておくことは、これからの学習においてもメリットがあることでしょう。
もちろん、わからないからといって嘆くようなことではありません。複雑な記号が用いてありますから、わからないなら読み飛ばしましょう。
以下、S1、S2は数の集合、xとyは任意の数、P(x)はxによって結果の定まる命題とします。
- 命題 P(x) を真とする x の集合S1
- S1 = { x | P(x) } ⇔ ∀x ∈ S1 ; P(x)
- 部分集合
- ∀x∈S1 ; x∈S2 ⇔ S1 ⊂ S2
- 真部分集合
- ( ∀x∈S1 ; x∈S2 ) and ( ∃ y ; y ∈ S2 and y ∉ S1 ) ⇔ S1 ⊊ S2
- 和集合( S1 ∪ S2 )
- S1 ∪ S2 := { x | x ∈S1 or x ∈S2 }
- 積集合( S1 ∩ S2 )
- S1 ∩ S2 := { x | x ∈S1 and x ∈S2 }