倒産処理法

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法学民事法民事訴訟法倒産処理法

日本における倒産処理の手続きに関する法律の教科書。

本教科書の範囲[編集]

本教科書は、日本における倒産処理の法体系について論ずる。

倒産の定義[編集]

倒産処理法の周辺[編集]

消費者破産[編集]
地方自治体[編集]

倒産処理法概観・倒産処理法の体系[編集]

倒産処理の意義と概観[編集]

倒産・経営破綻にいたると、倒産者の債権者は自己の債権を回収にかかる。一般的に、契約などで、その債務は「期限の利益」を失っているため、倒産者は、これに抗すべき法的根拠を持っていない。しかし、こうした債権回収(これを「個別執行」という)を無制限に認めると、以下の事態が予想され、法秩序の観点から望ましくない状況が現出するおそれが生ずる。

  1. 経営破綻状況は一時的なもので、業務を継続することにより収益状況が回復し、将来的には債権が回収できる又は大幅に高い割合での回収が望める可能性があるにもかかわらず、個別執行により経営資源等を毀損し、その可能性を失う。
  2. 債権回収は早い者勝ちとなるため、債権者において法を逸脱する行為(例 恐喝まがいの行為、混乱に乗じての過剰な債権回収)が行われる。
  3. 倒産者の資産等について換価を急ぐ余り、本来の価値より低廉に処分され他の債権者及び倒産者にとって不利益を生ずる。
  4. 「労働債権」など社会的に保護されるべき債権が確保されない。

このような事態を避けるべく、個別執行を停止して、倒産者にかかる全ての債権を「整理(しばしば、倒産処理の別称となる)」し、全ての債権者の満足度をあげる手続きが倒産処理である。執行の局面から、個別執行に対して、これは「包括的執行」と捉えられる。

倒産処理のタイプは、大きく、「私的手続か法的手続か」「再建型手続か清算型手続か」の二つの観点から分類される。

  1. 私的手続か法的手続か―倒産処理を進めるための法的根拠
    倒産処理を進めるにあたって、その包括的執行手続きを定めた(狭義の)倒産処理法(民事再生法会社更生法破産法 など)によるか(「法的手続」)、それらによらない(「私的手続」、これをしばしば「私整理」という)かの分類である。「(狭義の)倒産処理法」としたのは、「私的手続」とはいっても、個々の局面においては民法や会社法の法律によっており、また、多くは慣習的な手続が確立しているので、「私的手続」も広義には倒産処理法に含まれうるためである。
    歴史的には、私的手続きがあり、それでは不十分な点を法的に可能にしたり、公平の観点から手続きを厳格にしたものが倒産処理法で、私的手続に比べ、債権者の公平が図られ、また、個別執行を法的に停止できるなど強力であることは確かである。しかしながら、実際の倒産処理は、私的整理がその多くを占める。これは、①法的手続は、裁判所が介入するため、公平の観点などから、手続の柔軟性や迅速性を欠く。これは事業を継続し債権を回収するという観点からはかえって、再建に支障を生ずる、②結果的に清算する場合にあっては、清算手続きに要する費用を抑制したい、などの理由による。
  2. 再建型手続か清算型手続か―倒産処理の着地点
    包括的執行の結果、事業を継続して債権者に将来的に回収を望めるようにするのか(再建型手続)、倒産者の有する資産を換価して債権者にその時点で公平に(「平等に」ではない)分配するのか(清算型手続)という分類がなされる。

その結果、倒産処理は大きく「私的再建型手続」「私的清算型手続」「法的再建型手続」「法的清算型手続」に分類しうるが、私的手続の場合、「再建型」「清算型」を厳格に分類する意味が乏しい(手続の経過に応じて柔軟に移行しうるし、スポンサー企業により合併や子会社化といった処理は「再建型」とも「清算型」ともいえる)ので、「私的手続」としてまとめ、法的手続を「再建型」と「清算型」に分類して論ずるのが一般的である。

倒産処理における共通の流れ[編集]

上述のように、倒産処理には大きく分けて4種類があり、さらに、実際の適用や法律は何種類にも分類されるが、包括的執行として以下の共通する流れがあり、各々の局面において、それを実現するための手段を異にしていると理解すべきである。

  1. 個別執行を停止する
    倒産処理の前提。法的手続はこれを強制的に行うことができる(ただし、法律によってその範囲は異なる。cf.別除権)が、私的手続は、個々の債権者を説得することのみにより実現できる。
  2. 倒産者にかかる債権を確定させる
    包括的執行を実施するためには、債権の全体像を明らかにする必要があるため、債権者に呼びかけ、その債権の内容などを申し出てもらい総債務を確定させる。
  3. 倒産者の有する財産を確定させる
    倒産者の債務の弁済に当てるべき財産を明らかにする。ここで「財産」としたのは、会計上の資産だけではなく、企業の事業など、弁済に供する全ての経済的価値を意図するからである。また、一見は倒産者に属しているように見えるが、倒産者の財産とはいえないものを取り除き(cf.取戻権)、逆に他人に属しているように見えるものでも倒産者の財産とすべきものを取戻し(cf.否認権債権者取消権)、これに続く、再建や清算の原資を確定する。
  4. 倒産者の債務を消滅させる
    以上の手続を経て、3で確定した倒産者の財産を使って、2の債務を消滅させる。消滅の方法としては、①現金による弁済、②債権者による債務免除(債権者から見ると債権放棄)、③債権内容の更改(主要なものとして支払猶予)があり、一般にこれらが組み合わされる。再建型か清算型かの差異は、経済主体として存続し③の更改に値する債権を生じうるか否かにある。

私的手続[編集]

平成13年9月発表 私的整理に関するガイドライン研究会「私的整理に関するガイドライン」

概観[編集]
  1. 個別執行の停止
  2. 債務及び債権者の確定
  3. 保有資産の確定
  4. 債権債務の整理
個別執行の停止[編集]
債務及び債権者の確定[編集]
  • 主たる債権者によるコンセンサスの形成
  • 債権者集会
保有資産の確定[編集]
倒産者に属していない財産の分離[編集]
倒産者に属すべき財産の確保[編集]
債権債務の整理[編集]

法的手続[編集]

再建型手続[編集]

民事再生法[編集]

民事再生法

会社更生法[編集]

会社更生法

その他の再建型手続[編集]

清算型手続[編集]

破産[編集]

破産法

その他の清算型手続[編集]

日本における倒産処理法の沿革[編集]

国際倒産処理[編集]

関連分野[編集]