公認会計士試験/平成30年第II回短答式/財務会計論/問題12

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
←前の問題
次の問題→

問題[編集]

 金融資産および金融負債の「発生または消滅の認識」に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(5 点)

ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。

イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識しなければならない。

ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。

エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。

  1. アイ
  2. アウ
  3. アエ
  4. イウ
  5. イエ
  6. ウエ

正解[編集]

4

解説[編集]

ア.有価証券の売買契約について,約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合,売買契約は先渡契約となる。この場合,有価証券の買手側は,約定日基準を採用しているか修正受渡日基準を採用しているかにかかわらず,受渡日まで先渡契約に係る正味の金融資産または金融負債のみを計上する。金融商品会計に関する実務指針22,金融商品会計に関するQ&AQ3

イ.有価証券を消費貸借契約によって借り入れたとき,借手は当該有価証券を売却または担保という方法などで自由に処分する権利を有する。よって借入時において,借手側は,受け入れた有価証券を金融資産として,また,対応する返還義務を金融負債として,ともに時価で認識注記しなければならない。金融商品会計に関する実務指針27,77,241-2

ウ.金融資産の譲渡の際,譲渡人に買戻義務はなく,買戻権のみがある場合,譲受人は当該金融資産を自由に処分することができないので,支配は移転していないものとされる。ただし,買戻価格が固定価格で確定している場合には,譲受人は当該固定価格と同一の現金を獲得できることが明白であるので,支配は移転しているものとされる。譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき,又は買戻価格が買戻時の時価であるときは,当該金融資産に対する支配が移転している。他方,譲渡金融資産が市場で容易に取得できないもので,かつ,買戻価格が固定価格であるものは,当該金融資産に対する支配は移転していない。 金融商品会計に関する実務指針33,250,金融商品に関する会計基準9項(2)

エ.金融資産を売却した直後に同一の金融資産を同一数量購入し,かつ,譲渡価格と購入価格が同一の場合,たとえ売却と購入が別々の契約であったとしても,金融資産の消滅の認識要件は満たさない。よって,この取引を金融資産の売買として処理することはできない。金融商品会計に関する実務指針42,金融商品に関する会計基準9項(3)

参照基準等[編集]

←前の問題
次の問題→