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初等数学公式集/数列

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

一般項

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  • 等差数列(算術数列)
    初項を とし、公差を とすれば、番目の項
  • 等比数列(幾何数列)
    初項を とし、公比を とすれば、番目の項

数列の和

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数列 に関して、 について区間で足し上げた総和を記号:(シグマ)を用いて、と表す。

数列の和の性質

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  •  
線形性
  • なお、 、したがって、

数列の和の公式

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等差数列の和
  •  
等比数列の和
  •  
自然数の累乗の和
  •  (証明
     
  •  (証明
     
  •  (証明
     
  •  (証明
     
連続する自然数の積の和 (証明
  •  
  •  
  • [個の連続する自然数の積の和]
     
連続する自然数の積を分母とする数列の和
  •  

階差数列

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Wikipedia
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ウィキペディア階差数列の記事があります。

初項が であり、2項間の差としたとき、 が規則性を持つのであれば(すなわち、いわゆる数列であれば)、 も規則性を有することとなり数列であると言える。このような数列を階差数列という。さらに、数列 の規則性が不明瞭である時、さらにその階差をとって数列 を作って明瞭な規則性を発見する場合もあり、それからさらに階差の深度を深める場合もある。数列 に対して、数列 を第1階差数列、数列 を第2階差数列という。

であるとき、
であるとき、

漸化式と一般項

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初項の値と、第と第の関係によって数列を定義することができる。このような定義のしかたを数列の帰納的定義といい、のような関係式を漸化式という。

二項間漸化式

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※以下、初項は所与

  • (定数) のとき、
    一般項は、  [等差数列]
  • のとき、
    一般項は、  [等比数列]
  • のとき、
    一般項は、  [階差数列]
    • 階差数列の拡張
      の一般項は不明であるが、数列の和 を漸化式として、の式で与えられていたり、を含んだ関係式が示されているとき、
      ,
      の性質を用い、の一般項を求める。

等比数列となる漸化式の応用

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  •   のとき、
    ここで、
    とすると、
    元の漸化式は、
    となり、これは等比数列なので、一般項は、 となる。
    かつ、 なので、
    一般項は、 となる。

三項間漸化式

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※以下、初項及び第2項は所与

一般形

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- ① のとき、
- ② と変形、
・・・ - ③
①と②から、, が成立している(※)ので、①はとも変形でき、③同様、
- ④となる。
③-④
即ち、
- ⑤
(参考)
  1. ※から、は、二次方程式(特性方程式)の解であることがわかるが、高校の過程では「変形できる」でよい。
  2. 特性方程式の解が、以下に示す重解の場合を除き、有理数である時のみならず、無理数であっても(下記「フィボナッチ数列参照」)、虚数解であっても成立する。

特殊形

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上記②において、であるとき

変形の結果、以下の式が得られる。
両辺をで割ると、
ここで、、左辺は定数なので、と置くと、この式の形は、となり、等差数列となる。したがって、

非斉次形

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(定数)は以下のように変形して解くことができる。

とおけば、なので、は等差数列となり、
である。これがの階差数列であることから、

フィボナッチ数列

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Wikipedia
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ウィキペディアフィボナッチ数の記事があります。

以下の関係で定義される数列をフィボナッチ数列という。

, , ( ≧3)
上記三項間漸化式にあてはめ、を解く。
特性方程式:を解くとであるから、
,
を⑤に代入する。, , であるから、

参考(黄金数)

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ウィキペディア黄金比の記事があります。
の正の解;(上記)との比を黄金比(Golden ratio)、その値を黄金数といい、しばしば、で表す。
同様に、と共役関係にある負の解;(上記)をで表し、フィボナッチ数を以下のように表すこともある。
 
 
黄金比・黄金数は、数学のその他の分野にも登場する興味深い数である。

数学的帰納法

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順々に出現する自然数について(離散的)、命題が成立することの証明法。
 
(手順)
  1. のときに、命題が成り立つことを証明。
  2. のときに、その命題が成り立つことを仮定して,演算を行なってのときその命題が成り立つことを証明する。
  3. 1.及び2.により、与えられた命題はすべての自然数について成り立つことが証明された。
 
(事例)一般項の式が漸化式を満たすことの証明
のとき、一般項は、 (命題※)となることの証明。
  1. のとき、 。一般項の式:、となり命題※は成立。
  2. のとき、命題※が成立していると仮定。
    のとき、
    となり、のときも命題※は成立している。
  3. 1.及び2.により、命題※はすべての自然数について成り立つ。

数列・級数の極限

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極限

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自然数 に対応する数列 について、 が無限に大きくなるものを無限数列といい、無限に大きくする操作を と記述する。
による数列 の挙動には以下のものがある。
  1. ある実数 限りなく近づく[1]。これを、 と表記し、「数列 は、収束する」という。
    (例),  いずれも、 となる。
  2. が無限に大きくなることで収束しない場合を、発散するという。
    1. が無限に大きくなると も無限に大きくなる。これを、 と表記し、「数列 は、正の無限大に発散する」という。
      (例),  いずれも、 となる。
    2. が無限に大きくなると 負の方向に無限に大きくなる[2]。これを、 と表記し、「数列 は、負の無限大に発散する」という。
      (例),  いずれも、 となる。
    3. が無限に大きくなると は、 の値によって、正または負の値いずれかを取り、収束しない。これを振動するという。なお、 は、振動し収束しないが発散の範疇とは通常しない。
      (例)
上記の場合で、振動しないものを「極限がある」といい、振動するものを「極限がない」という。

数列の極限

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  • 数列 が、 が十分大きいとき常に を満たし、 となるならば、 も収束し、

(はさみうちの原理)

  • 数列が十分大きいとき常にを満たし、となるならば、

(追い出しの原理)

  • 数列 に対して, , ならば、
  1. ただし は定数。
  2.  (複号同順)。
  3.  (ただし、)。
  • 数列 について、
  1. ならば 。(収束)
  2. ならば 。(収束)
  3. ならば 。(発散)
  4. ならば は存在しない。(振動)
  • 数列 において、 ならば
(証明) であるから とおくと、 のとき、
ここで、を2項定理で展開して、2次の項だけ抽出した。 のとき右辺 であるから、はさみうちの原理により、

級数の極限

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無限数列 の各項を足し合わせたものを無限級数または単に級数と呼ぶ。和の表現を用いると、であり、 という数列であると捉えると、 と記すことができる。
  • 級数: について、
  1. のとき
  2. のとき は発散する。
(証明)
のときより
のときよりの極限は発散する。

脚注

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  1. ^ 数学的に厳密な表現ではないが、高校数学では足りる。 となる自然数 が存在しているわけではないことに注意。
  2. ^ 「無限に小さくなる」は、基本的に「 に近づく」を意味するので、この表現を用いる。