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制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/指数関数の場合

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

§1

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前節の思いつきが成功したのは,割り算が常に割り切れたからである. 割り切れたのは の多項式であったからで, を何回か微分すれば必ず となることが保証されているからにほかならない. そこで,何回微分しても決して にならない指数関数を に選んでみよう.

例5

例によって とおくと

となる.この割り算を実行しよう.





これはいつまでたっても割り切れない.しかしここで諦めては長蛇を逸する. そこで 回,上の演算を実行すると,

商:
剰余:

を得る.したがって,

ならば,無限回の施行の後,

となって割り切れる.このとき商は,

となる.

験算

よって,この は,初期条件 をみたす解であることが分かった.


§2

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上で行った験算は, でなくても, が正しい解を与えることを示している.そこで,

の場合にも,正しいを解が得られるように工夫してみよう. で割るということは,積分するということであった. を積分すれば となる. のベキ級数は で収束する. そこで割り算を少し変形して、次のように から先に割っていこう.

この演算を無限回続けると, であるから,商は収束して,

となる.


§3

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の場合の考察は後まわしにして,これら 2 種の計算法の検討をしておこう.


の場合

の場合

このように の関数を あるいは で展開し, は微分, は積分と考えて形式的に計算すると,正しい答に導かれる.例えば例1

となって同じ答を得る.

例6 で展開するとどうなるか.

解答例

と項が無限に生成されてしまい,うまくいかない.


§4

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上に示した幾つかの例において,微分方程式の解は得られるには得られたが,まだ多くの問題点を残している. 手法のいかがわしさは暫くおくとしても,一つの方程式に対して一つの解しか得られず、任意の初期値を満たす解が得られないのは大きな欠陥である. このことは,次のような方程式

(1.5)

を取り扱うとき,深刻な問題となる.というのは,単に と置いたのでは,

となって,得られた解 は正しい解には違いないが,視察でも求まるつまらない解だからである.

さて を積分と考えることによって、色々な初期値が得られる可能性のあることを前に示唆しておいた.

そこで,ひとまず (1.5) から で積分してみよう.

(1.6)

を得る.そこで,積分は微分 の逆演算であるという考えを一方深めて,改めて,

あるいは,もっと正確に,

(1.7)

と定義しなおすことにしよう.そうすれば式 (1.6) は,

となる.初期値 が入ってきたところが,単に とおいた場合と根本的に異なっている. この式を について解き,

これを で展開すると,

(1.8)
[1]

を得る. さてここで定義 (1.7) に戻り,

以下同様にして,

(1.9)

が得られることに注意すると,式 (1.8)

となる.上の式の( )内は Taylor 展開である.よって,

を得る.これが式 (1.5) の正しい解であることは明らかである.

どうやら我々は満足するべき解法にかなり近づいたようである.次節でもう少し掘り下げて考えてみよう.


  1. ^ 因数分解 より

    は公比で とすれば,右辺、初項 公比 等比級数の和は収束して その和は .ここでは形 が「収束する条件を満たす」として上記の導出を逆方向に適用する.