制御と振動の数学/第一類/演算子法の誕生/Mikusiński の演算子法
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Heaviside の演算子法は Laplace 変換によって正当化されたが,その反面失われたものも少なくない. 演算子法の生命ともいうべき簡便さが損なわれたのである.例えば,
の両者を比べてみればよい.上式が等号で成立しているのに,下式は積分変換式(1.19)である. その上 Laplace 変換を厳密に取り扱おうとすると,複素関数論の知識が必要となり[1],わずらわしさが増加する.
この欠陥を克服するため,1951 年ポーランドの Mikusiński は新しい演算子法を創り上げた. それは合成積
を基礎にしたものである.この式において とおけば
となる.つまり,合成積の意味で を掛けるということは,積分を意味する. その逆すなわち, で割る(合成積の意味で)ことが微分を意味するであろう. そこで,
なる 2 種の演算を含む代数系を考える.するとこれは整数と同様に加減乗の 3 演算が自由にできることが分かる. そこで,この代数系の中で割り算が自由にできるように,分数を導入する.それを演算子と考えるのである.すなわち
あるいは
とすれば Heaviside の精神がほぼ完全にいかされる[2]ことになるのである. Mikusiński の演算子法はここではこれ以上は追求せず、かわりに次章以降,Laplace 変換と線形微分方程式を Mikusiński の精神で紹介する.
- ^ Bromwich の積分式 (1.23) を見れば想像できる.
- ^ ミクシンスキー:演算子法,上・下:松村英之・松浦重武訳,裳華房,1985年3月