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制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/微分不等式と比較定理

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

不等式式 (3.18) を解く技法は重要なので,ここで復習しておこう.

微分不等式

が次の微分方程式

を満たすならば,

が成立する.


証明

1 階線形微分方程式の解法と同じである.

の両辺に を掛ける[1]と,

となる[2].これは 内の関数が広義の単調減少であることを示している.よって

これは求める結果にほかならない[3]


  1. ^
  2. ^
  3. ^ の両辺に をかけると



この結果は実際に解くまでもなく予想できる.

は微分方程式 の解である[1]. そこで,同じ初期値 を持った二つの式,

の解を比較してみよう.

であるから,

(3.19)

である.. よって次の瞬間,

となり, 式 (3.19) により,この状態が持続する. 比喩的にいえば,兎 と亀 との競争である. 兎の方が俊足であるから で 2 匹が肩を並べていたら,それ以降は兎が先行し,

それ以前は兎が亀を追っ掛けていたことになる.すなわち,

ただし兎は居眠りをしないものとする.


  1. ^ にて より



例75

ならば

となることを示せ.

解答例



兎と亀の比喩が理解できれば,次の比較定理が成立することは直感的には明らかであろう.


比較定理

二つの微分方程式,

があって,

が常に成立するならば,同じ初期条件,

を持つ二つの解 に対して

が成立する.ただし は領域 で定義されており,連続であるとする. また のいずれか一方は Lipschitz の条件

ここに は定数,を満たすものとする.


説明

定理の真意はただし書き以前の部分にある.ただし書きによって解の存在や一意性が保証されているのであるが,それよりも,Lipschitz の条件により,非線形の方程式がほとんど線形の方程式となり,取り扱いが簡単となるのである.


証明

が Lipschitz の条件を満たす場合だけを証明しておこう. 仮定から,

であるから,

となる.いま とおけば,上式は,

である.問題より すなわち

を得る.


例76

が Lipschitz の条件を満たす場合の証明を実行せよ.

解答例