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慶應義塾大対策/経済学部

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

慶應経済学部は、一学年の人数は1,200名程度であり、そのうち700名程度が一般入試入学者、残りが内部進学者、帰国生・留学生入試枠合格者である。しかし、帰国生・留学生入試枠合格者数はごく僅かであるため、実質的には一般入試合格者と内部進学者が殆どである。慶應経済では、指定校推薦入試とAO入試は導入していない(2025年度入試から導入(定員30名))。受験方式は、数学受験のA方式(定員400名)と歴史受験のB方式(定員200名)が存在する。定員比が数学選択に傾斜しているため、大学側が数学のできる受験生を特に需要していることは明白である。裏を返せば、その分、歴史選択のB方式は狭き門となっていることを意味する。

A方式(英語・数学・小論文受験)(定員400名)
A方式では、英語(200点)・数学(150点)・小論文(70点)の3科目(計420点満点)が課される。慶應経済A方式では東大、京大、一橋志望の文系の受験生の併願が多いのはいうまでもなく、東大理系や医学部志望の理系または文転の受験生も多く非常にハイレベルな競争を強いられる。合格最低点は近年低下傾向にあり49%〜58%と5割を切っている年もあり、6割を切ることが多い。
B方式(英語・歴史・小論文受験)(定員200名)
B方式では、英語(200点)・歴史(150点)・小論文(70点)の3科目(計420点満点)が課される。歴史は世界史・日本史から1科目選択である(歴史よりも学習量が少なく合格点を取りやすい政治経済の選択は認められていない)。論述系問題(和文英訳、自由英作文、歴史論述、小論文)の割合が高く、420点満点中論述系問題が約260点分(和文英訳と自由英作文の合計が110点、歴史論述が約80点、小論文70点)あるため、私立文系専願者でも論述系の問題の対策を十分に行う必要があり、合格に必要な学力は非常に高い。

英語

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 試験時間は100分、配点は200点。慶應経済の英語では、長文読解問題3題と本格的な英作文問題2種類(和文英訳4問、自由英作文150~200語)が出題される場合が多く、私立文系専願者にとっては非常に難しい内容になっている。

 なお、長文読解問題(マーク式)は、一定の点数を取らないと、後半部分(和文英訳・自由英作文)の問題は採点されないので、受験生は注意が必要である。

 一次選抜(英語長文のみ)の満点が90点であるため、長文の配点は90点であり、残りの配点である110点が和文英訳と自由英作文の合計である。そのため、明らかに記号問題の対策だけでは慶應経済には太刀打ちできず、本格的な和文英訳や自由英作文の対策が必要である。

 また、長文や歴史の記号問題である程度の高得点を取ったのに不合格になった例が一定数あり、得点開示も当初の見込みより低かったケースが多い。それに加えて、論述系の問題を採点されるのは足切りを通過した層であるため、採点対象者の全体の学力が高い分、和文英訳と自由英作文、歴史論述、小論文の採点は厳しめと推測される。 そのため、マーク部分で得点を稼ぐ必要があると考えると、長文の合格点の目安は易化年なら9割弱、難化年なら75%程度であり、記号問題は高得点勝負となる。これは歴史科目においても同様である。後半の和文英訳と自由英作文で差が付きやすいが、これは長文で時間内に高得点を取れることが前提となっているため、当たり前の基準が高く競争が激しい試験となっている。

  • 長文読解問題
  •  時間制限が厳しい中で難しい設問を処理し高得点を取る労力を考慮すると、非常にハイレベルな競争である。
  • 基本的に3題であるが、年によっては2題の場合もある。しかし、合計語数が2500語程度であることに変わりはない。時間配分の目安は60分程度である。
  • 長文の設問は非常に練られているため、選択肢が切りにくく難しい。長文そのものは慶應義塾大学が入試用に作ったオリジナルの長文であり語彙レベルは高くなく本文は非常に読みやすいが、紛らわしい引っ掛けが多いため、解いた直後の手応えが良くても、実際に採点すると当初の予想より誤答が多く、正答率が悪かったという例は多い。設問の選択肢の切りにくさに対応するためには、国語的な内容把握力(読解力)や、英文法・構文・英単語のニュアンスの本質的な理解などが必要である。本文の内容把握が浅いと、一見読めたつもりにはなるものの、設問には太刀打ちできない。
  • そして、英作文が本格的で時間がかかるため、長文読解問題は素早く正確に処理できるようにしておかないといけない。
  • 特に、設問と時間制限という2つの別種の難しさが掛け合わさると相乗効果でさらに難しく感じる。実は使用されている語彙レベルは低いのだが、だからこそ知識量でアドバンテージを取ることができず、本当の意味で読解本位の勝負になるため、より激しい競争を強いられる。
  • ちなみに、自由英作文問題は、この長文読解問題で出題された文章の内容に基づいたテーマの見解論述をする形で出題されるため、内容を漠然と理解しただけでは、自由英作文のクオリティを低下させてしまう可能性がある。
  • 和文英訳問題

 和文英訳は、短い時間内に素早く正確に解ききる労力を加味すれば、非常に難しい問題である。

 時間配分の目安は10〜15分であり、砕けた日本語が使用されている軟らかい文体の会話文を英訳する問題である。

 和文英訳問題というのは、出題された日本文が適度に硬質なくらいが最も解きやすく、硬すぎても軟らかすぎても難しい。慶應経済の和文英訳は会話文の文体が軟らかすぎるが故に、直接英訳することは非現実的であるため、文脈に応じて、英語に訳しやすい日本語表現に適宜読み替えていく思考力が求められる点でハイレベルである。

 対策としては、一般的な和文英訳の参考書学習を行った後に、会話文の参考書を使って会話文に慣れ、その後会話文の参考書の和訳を読んでそれを英訳する練習などが有効である。

  • 自由英作文問題

 主要な予備校は軒並み毎年、解答速報の自由英作文の難易度の講評を「難」としている。

 時間配分の目安は25〜30分である。近年は、2つのテーマから1つを選んで、自分の見解を150~200語程度で英語で論述する形式で出題されている。

 出題されるテーマは、先に解く3題の長文の内容に関しての自身の見解を述べるもので、専門性は高い。形式としては語数は指定はされていないものの、解答欄の大きさや内容の深さからして、かなり長めの論述が求められている。また、本文から正しい形式をとって引用したり、反対意見に言及してそれに反論しなければならないなど、条件面の指定が厳しい意味でも難しい。このような内容面の指定があることや語数が多いこと、そして別途和文英訳が出題されていることなどを考慮すると、慶應経済の自由英作文では、文法語法での減点だけでなく構成点や内容点が存在することが推測される。その証拠に、文法語法の正誤検査なら50語程度で十分であり、その機能は和文英訳が果たしているからである。 わざわざ和文英訳と自由英作文を独立して出題するということは、それぞれの出題に異なった目的が存在すると考えるのが自然である。また、文法語法の正誤検査が目的なら、前述のような内容面での指定はしてこないはずである。つまり、採点基準が多い上に書く語数も膨大であるため、減点されやすく高得点が難しい。そのため、早い段階で対策を開始し、減点されにくいような質の高い答案を作る練習を積んでおくべきである。

 ちなみに、正しい引用の形式をとらずに本文をそのまま書き写すと減点の可能性があるため、注意してほしい。

数学

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 試験時間は80分、配点は150点。数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学A・数学B(数列)・数学C(ベクトル)が出題範囲で、特に領域・確率・微積分・数列・ベクトルは頻出である。

 制限時間の割に問題量が非常に多いため、スピードが鍵となる。大問は例年6題出題され、前半3題は正確な高速処理能力を求めるマーク式の問題、後半3題は応用的な思考力を求める記述式の問題となっている。合格点の目安は、易化した年だと8割で、難化した年だと5〜6割である。難化した年と易化した年の難易度の乱高下が激しいため、どちらにも対応できるような実力と慣れを身に付けておくべきである。

 近年難化傾向にあり、文系で数学が得意な受験生でも点数を取ることが厳しくなっている。なお、受験者層のレベルが非常に高いため、難化した年も易化した年も、問題難易度に対する必要得点は割高という点で、激しい競争を強いられるのは言うまでもない。

 易化した年は、マークで高得点を取れるのは当たり前であり、その上で記述で差がつく。難化した年は、記述が難しすぎて差がつきにくいため、マークで稼ぎつつ記述で耐えるのが良い。また、著しく難しい問題は捨てて先に進み、取れる問題を確実に取るという手法も重要になってくる。このように、問題難易度の変化によって戦略が全く変わってくるため、注意が必要である。

 応用的な問題に対処するために「チャート式基礎からの数学(数研出版)」(青チャート)などの網羅系参考書を徹底的にやり込み、大学受験数学の応用問題まで取れるようにし、過去問研究を十分に取り組むことが必要条件である。これらを行っていれば、難度が高い問題にも食らいつく力が養成されているだろう。慶應経済学部の数学では時間配分を間違えると数学が得意な者でも失敗することが多い。したがって、赤本に載っているここ6年分の過去問をしっかり復習も含めてやって本番のイメージを作っておくべきである。本番に時間をロスしないように受験生が忘れやすい「メネラウスの定理&チェバの定理」や「方べきの定理」などの幾何定理にも慣れておくこと。また、数列の漸化式から一般項を求める分野では、3項間の場合であるan+2=αan+1+βanまでをしっかりと理解しておきたい。そして、ベクトルの係数設定のために座標を設定する応用的な手法も頭に入れておきたい。

 因みに難易度の高い問題の一例として、複数の場合分けが必要な確率漸化式、座標を設定して容積を求める問題、曲線の移動、高次の複接線などが過去に出題されている。

世界史

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 時間は80分、配点は150点。出題範囲は1500年以降を中心とする。だからといって、その範囲だけを対策すればいいわけではないことは言うまでもない。現に、それ以前の歴史の知識を遠回しに聞いている問題、その知識がないと理解できない問題も出題されている。思考力や応用力等が必要な記号問題で高得点が必要なことに加え、本格的な論述問題の労力も加味すれば、非常にハイレベルな試験と言える。

 論述問題は7~8題出題され、合計字数は約600字である。世界史は配点が公表はされていないものの、数学は記号問題の配点が70点、記述問題の配点が80点であるため、世界史でも記号や用語記述などの短答式の問題の配点が70点、論述問題の配点が80点という可能性が高い。そのため、記号問題の対策だけでは足りず、論述問題の対策が肝要であり、むしろ慶應経済の歴史科目は論述問題で最も差がつくと思われる。論述は付け焼き刃の丸暗記が通じず、本質的な理解や言語化が必要であるため、実力差が出やすい良問である。

 英語でも述べたように、論述以外の部分で得点を稼ぐ必要があるため、記号や用語記述などの短答式部分の合格点の目安は例年は8割程度(難化年は75%程度、易化年は9割程度)であり、高得点勝負となる。

 歴史的な流れや本質の理解が重視される出題形式になっており、教科書の用語や年号を全部知っているのは当たり前として、教科書内容を順序立てて「自分で説明できる」レベルまで学習をやりこめば、合格点を取ることは可能である。慶應経済学部の世界史は、使用されている用語自体はあまり細かくはない(但し後述する年表と並べ替えは除く)ものの、それらを複数組み合わせつつ、上手く受験生の盲点を突いたり応用力を試したりする点で難しい。知識そのものの細かさというよりは、知識を使いこなすことが重視されている(但し、知識が細かい出題も一定程度はされるため、その対策も必要ではある。)。あとは、ある種感覚やイメージで理解を済ませがちな部分を言語化させてくるような性質もある。全体的に、あまり思考せずに一問一答やレジュメの丸暗記ばかりしている受験生を排除しようとする出題だと思われる。

 論述問題を解くときの注意点としては、要素(ポイント)を欠かさないことと、設問の要求と関係無いことを記述しないということである。字数が余るようなら、何かしらの要素が欠けていると思ってほしい。また、関係の無い余計な情報を入れると、採点者側は「この受験生は思考や理解をせずに、適当に沢山書いておいて当たるのを待っている」と判断するため、減点されるリスクが高い。何でもかんでも書くというのは、設問の指示や歴史事実を正しく理解せず、思考さえも放棄していると解釈されるため、採点者の印象がかなり悪い。このミスをしがちな受験生はそれなりにいるため、是非とも注意しておきたい。

 また、慶應経済学部の世界史は、地図、統計図表、グラフ、年表を用いた問題が例年出題される。これらに対応できるように分析力や推測力、歴史的な流れの理解等を養成することも必要である。教科書レベルの知識をマスターした後に過去問分析をして、資料集や年表を学習してこれらの多角的な出題形式に対応できる実力を養成するのが鍵となる。

特に並べ替え問題に関しては、同じ年号の中での前後関係が問われることが多々ある。そのようなときは年号の丸暗記だけでは対応できないため、年号暗記に加えて歴史の大きい流れと細かい流れの両面、そして同年号内の順序を学習することが必要である。ちなみに、同年号内の順序を覚えていなければ解けないことがある。同年号の事項が問題内に複数出てきた場合、特定の位置(n番目、特に最初と最後)さえ知っていれば解けてしまったり、或いは消去法が通じたりすることが一般的だが、そのような甘い手法は慶應経済には通用しない。慶應経済の並べ替えや年表中にある1つ1つの事項の用語自体は標準レベルであり、参考書の年表を使用すれば対策は可能であるため、同年号内の並べ替えや年表は捨て問にはならない。そこでどれだけ得点できるかで差がつく。

日本史

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 時間は80分、配点は150点。出題範囲は1600年以降を中心とする。だからといって、その範囲だけを対策すればいいわけではないことは言うまでもない。現に、それ以前の歴史の知識を遠回しに聞いている問題、その知識がないと理解できない問題も出題されている。思考力や応用力等が必要な記号問題で高得点が必要なことに加え、本格的な論述問題の労力も加味すれば、非常にハイレベルな試験と言える。

 論述問題は7~8題出題され、合計字数は約600字である。日本史は配点が公表はされていないものの、数学は記号問題の配点が70点、記述問題の配点が80点であるため、日本史でも記号や用語記述などの短答式の問題の配点が70点、論述問題の配点が80点という可能性が高い。そのため、一般的な記号問題の対策だけでは足りず、論述問題の対策が肝要であり、むしろ慶應経済の歴史科目は論述問題で最も差がつくと思われる。論述は実力差が出やすい良問である。

 英語でも述べたように、論述以外の部分で得点を稼ぐ必要があるため、記号や用語記述などの短答式部分の合格点の目安は例年は8割程度(難化年は75%程度、易化年は9割程度)であり、高得点勝負となる。

 歴史的な流れや本質の理解が重視される出題形式になっており、教科書の用語や年号を全部知っているのは当たり前として、教科書内容を順序立てて「自分で説明できる」レベルまで学習をやりこめば、合格点を取ることは可能である。慶應経済の日本史は、使用されている知識自体はあまり細かくはない(但し後述する年表と並べ替えは除く)ものの、それらを複数組み合わせつつ、上手く受験生の盲点を突いたり応用力を試したりする点で難しい。知識そのものの細かさというよりは、知識を使いこなすことが重視されている(但し、知識が細かい出題も一定程度はされるため、その対策も必要ではある。)。あとは、ある種感覚やイメージで理解を済ませがちな部分を言語化させてくるような性質もある。全体的に、あまり思考せずに一問一答やレジュメの丸暗記ばかりしている受験生を排除しようとする出題だと思われる。

 論述問題を解くときの注意点としては、要素(ポイント)を欠かさないことと、設問の要求と関係無いことを記述しないということである。字数が余るようなら、何かしらの要素が欠けていると思ってほしい。また、関係の無い余計な情報を入れると、採点者側は「この受験生は思考や理解をせずに、適当に沢山書いておいて当たるのを待っている」と判断するため、減点されるリスクが高い。何でもかんでも書くというのは、設問の指示や歴史事実を正しく理解せず、思考さえも放棄していると解釈されるため、採点者の印象がかなり悪い。このミスをしがちな受験生はそれなりにいるため、是非とも注意しておきたい。

 また、慶應経済学部の日本史は、歴史的史料、地図、統計図表、グラフ、年表を用いた問題が例年見受けられるため、これらに対応できるように分析力や推測力、歴史的な流れの理解等を養成することも必要である。教科書レベルの知識をマスターした後に過去問分析をして、資料集や年表を学習してこれらの多角的な出題形式に対応できる実力を養成するのが鍵となる。 特に並べ替え問題に関しては、同じ年号の中での前後関係が問われることもある。そのようなときは年号の丸暗記だけでは対応できないため、年号暗記に加えて歴史の大きい流れと細かい流れの両面、そして同年号内の順序を学習することが必要である。ちなみに、同年号内の順序を覚えていなければ解けないことが多々ある。同年号の事項が問題内に複数出てきた場合、特定の位置(n番目、特に最初と最後)さえ知っていれば解けてしまったり、或いは消去法が通じたりすることが一般的だが、そのような甘い手法は慶應経済には通用しない。慶應経済の並べ替えや年表中にある1つ1つの事項の用語自体は標準レベルであり、参考書の年表を使用すれば対策は可能であるため、同年号内の並べ替えや年表は捨て問にはならない。そこでどれだけ得点できるかで差がつく。ちなみに、未見史料問題に対応するためには、史料の中の複数のキーワードに着目して解答や推測の根拠にする方法が良い。それを可能にするためには、様々な知識を流れやセットなどで関連させて定着させることが有効である。

 慶應経済学部の日本史は、前述のように近現代史の比重が大きいため、受験生はかなりやりこんでおかなくてはいけない。特に戦後史は論述も含めて毎年出題され、その配点も約3分の1とかなり高い(一般的な私大だと戦後史の配点は5分の1か6分の1程度であり、出題されない年もある。)。しかし現役生の場合、近現代史(特に戦後史)は学校の授業でも最後に学ぶ所がほとんどであり、授業で習う内容だけでは不十分になってしまう場合が多い。そのため、早めに自分で対策していくことが必要となる。また、現在の経済や政治とも関わる内容が出題されるので、日本や世界の動きなど、最新のニュースは常にチェックしておく必要がある。

 試験時間は60分、配点は70点。読ませられる本文の分量が年々増加傾向にある。公共性の高い具体的かつ専門的なテーマが選ばれることが多い。小論文の難易度は慶應の学部の中では標準レベルだが、十分な対策をしなければ、手も足も出ないだろう。また、得点開示のデータから、経済学部の小論文は他学部よりも採点が厳しいと推測されるため、問題難易度が標準的な割には高得点が難しい。対策を行っていないと70点満点で20点どころか10点台になる人も多い。採点が厳しいと推測されるのは、英語の和文英訳や自由英作文、歴史論述も同様である。

対策としては、まず参考書を使用して小論文の書き方の基礎をしっかりと把握する。その後、当学部の過去問を実際に解いていく。はじめは全くできないだろう。問題によっては、何をすべきなのかも分からないこともある。それでも、小論文の書き方に沿って考えに考えて書き上げる。解答例と見比べるとクオリティーは程遠いだろうが、それを実際に小論文の講師などに厳しく添削してもらう。そうすれば解答の質は上がっていく。

設問は2問ある。1問目は200~300字の本文要約か内容説明であり、ここは国語的な読解力があれば対応可能であるため、現代文の学習の延長線上で要約や記述対策を行っておけばいい。1問目は高得点勝負であるため、高度な読解力と正確な記述力をつけることが肝要である。一般的に「小論文」と言われているのは2問目の300~400字の意見論述問題である。慶應の小論文は半分は国語であり、現代文(記述式)と小論文の融合問題のようなものである。

慶應経済の小論文で最も困難な点は、60分という短い制限時間内に課題文を読み、答案を完成させることだと言える。600字前後をこの時間で書くというのは、実質的に下書き無しで簡単なメモを取る程度で、解答用紙にいきなり書かねばならないということだ。ゆえに、文章を簡潔に短時間でまとめる力が求められる。その実力を付けるためには、言語化能力と文章構成力を養成する必要がある。

経済学部の課題文のテーマは生命科学的もしくは自然科学的な内容の時もある。例えば、2012年の霜柱に関する科学的研究についての課題文を読むには化学の基礎的な知識(状態変化など)が不可欠であった。このように適度な背景知識が必要であるため、参考書の背景知識欄は適宜読んでおきたい。2012年の問題は経済学部があらゆる学問と通じているという大学側のメッセージとも解釈できる。

入学後の履修分け

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慶應経済学部は入試方式によって入学後の履修タイプが分かれる。A方式(数学受験)で入学した者・附属高校推薦入学者(内部進学者)・留学生の一部は高校数学1A・2Bの知識を前提とした講義でカリキュラムが組まれた「タイプA」とし、B方式(歴史受験)で入学した者・留学生の一部、内部進学者のごく一部はそれらを前提としていない「タイプB」となる。「タイプA」から「タイプB」への変更は認められないが、「タイプB」から「タイプA」への変更は可能。「タイプB」の学生で、高度な数学を多く使う分野(金融論・金融工学・ゲーム理論・計量経済学・数理経済学・応用ミクロ経済学・応用マクロ経済学・統計学・解析学・情報処理など)を学びたい場合は「タイプA」に変更したほうがよい。履修タイプの変更は第1学年の4月初旬に受けられる標準レベルのテスト(範囲は数学1A・2B)である一定の基準を超えれば認められる。B方式合格者で数学色のより一層深い分野を専攻したい者にはお勧めである。逆に、経済体制論・財政社会学・経済地理学・経済史・経済学史・経済思想史・社会政策論・社会福祉論・経営学・会計学・商法など数学色がそこまで強くない分野に興味がある者は「タイプB」のままでもいい。 ただ、一つ重要なことは、「タイプB」の学生は高度ではないものの高校数学の初歩レベル(微積、確率、三次関数、ベクトルなど)の計算をある程度行うようになっているため、中学時から数学が苦手な受験生は注意が必要である。ちなみに、内部進学者は基本的に数学3まで高校時に勉強している。また、慶應附属高校では、経済学部「タイプB」のほうが経済学部「タイプA」より人気が高い傾向にある。