大学受験小論文の勉強法

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

はじめに[編集]

本記事では、大学受験における典型的な小論文の書き方を示す。 典型的な小論文とは、ここでは、何らかの課題文が示され、自分の考えを90分で800字以内で述べる論述を想定する。 実際には、このような形式に当てはまらない場合も多いが、基本的な小論文の練習としては欠かせない。

勉強の方針[編集]

大学の教員は当然、研究者である。なので、学術論文を書くことを仕事にしている職業である。

なので、小論文で書くべき文章の構成も、学術論文と類似であるのが普通である(ただし、大学や学科によって異なる場合がありうる)。

「小」論文なので文章量こそ(学術論文と比べれば)短いという差異はあるが、しかし(小論文の)文章構成は学術論文と類似であるのが一般に望ましい。

よく世間では、エッセイスト(随筆家)や小説家や新聞記者などが小論文の書き方をアピールする場合があるが、しかしそういう国文学の学科でもないかぎり、そういうエッセイスト的な文章構成は不要である。


大学は受験生に何を求めているのか[編集]

大学の募集要項などには、「知識、理解力、分析力、構想力、表現力を問う」などの説明がされているように、大学において求められている総合的な能力が問われる。 大学、あるいは就職してからは、レポートの作成やプレゼンテーションを行う機会が多い。 こういった表現力を問うのである。

また、「高等学校の特定の教科とは直接には関わらない」という説明があることがあるが、これは「知識がなくてもよい」という意味ではない。 大学においては、特定の学部/学科に所属することになるが、これが高校の教科に対応しないためである。 ここで重要なことは、東大など一部を除き、小論文は学部/学科単位で出題されることである。 これはすなわち、小論文の問題を出題しているのが、その学部/学科である、ということを示唆している。 つまり、その学部/学科に関連する基本的な知識は必要とされているのである。

以上からわかるように、受験生は、「自分こそがこの大学/学部/学科に入るべき受験生である」ことをアピールすることが重要である。

何を書くべきか[編集]

小論文は、800字で自由に表現をすることができる。 しかし、90分(あるいは60分)という時間を考えると、いくつかのパターンには習熟しておくことが好ましい。

パターンを修得していない初学者は、おおよそ300字から400字程度で書く内容がつきてしまうことが多い。

小論文の典型パターン

  1. 導入 (課題文と設問文から見つけ出す。)
  2. 自分のアイデア、仮説
  3. 具体的事例
  4. よくある反対意見と、それへの反論
  5. 結論 自分の仮説が正しいかどうか、あるいは新たに発見された知見などを述べる。


これは、学術論文の構成も、ほぼそうである。学術論文の場合、学会にもよるが、

学術論文の典型パターン

  1. 自分のアイデア、仮説
  2. その研究テーマの動機
  3. 仮説を証明できそうな具体的事例
  4. よくある反対意見と、それへの反論
  5. 結論 自分の仮説が正しいかどうか、あるいは新たに発見された知見などを述べる。

というのが、学術論文のよくある構成である。(「アイデア・仮説」と「動機」の順序は学会誌によっては入れ替わることがある。)

論文を読む人というのは、新しい学説を読みたくて論文を読んでるのであるから、だったら先に学説を述べるのが読者にも親切である。


さて、小論文の場合、研究テーマの動機は設問者から与えられるので、よって小論文では研究動機の記載は不要だろう。

さて、小論文の導入では、これから論ずるべき内容の目的や背景を(必要なら)述べる。 小論文としては最初にあるものだが、書く順序としては最後にする方が良い。

自分のアイデアや仮説は、最初に提示する。 ここですでに結論であるかのように断定して述べることは、この段階では避ける方がよい。 仮説の場合は特に、疑問の形にすると、展開しやすくなる。

事例は、重要な要素になりうる。 なぜなら、具体的な事例の存在は、確かな根拠となりうると同時に、字数をコントロールしやすいためである。 事例を詳しく書く練習は、小論文成功の秘訣となりうる。

反対意見は、あなたの議論をより強固にする。 反対意見とは、単なるYes/Noの問題ではない。 例えば、外国ではどうか、極端な条件ではどうなるか。などの知識や考察をすることも有効である。

結論では、自分のアイデアや仮説を検証する。 また、そこから生じる、新たな疑問や、より深淵なテーマが見つかると、さらによい。

誰に添削を頼むべきか[編集]

小論文は、自己採点がしづらい試験形式であるばかりではなく、評価者によって評価が変わることのある試験形式でもある。 そのため、小論文の添削は、その専門分野で小論文に慣れている人であるか、小論文指導を専門にしている人であることが望ましい。

これら以外の人に添削を求めると、以下のような弊害が考えられる。

  • 受験生の中での相対的な位置づけがなされない。すなわち、30点の論述なのか、70点の論述なのか、わからない。
  • あら探しに終始する。上の項目と関連するが、たとえ70点の良い答案であっても、悪い点が目につき批判してしまう。
  • 受験する学部の常識から外れる、あるいは関係のない話になる。

逆に、適切な人に添削を求めると、以下の用な利点が考えられる。

  • 受験生の中での相対的な位置づけがなされる。点数の予想ができるだけではなく、今後の学習プランなどにも大きく影響する。
  • 伸ばせる点を探す。小論文は、「広く浅く」ではなく「狭く深く」であるほうが良いことが多い。
  • 受験する学部の常識に沿う。常識とは「当たり前」な「つまらない」モノではない。常識を知り、常識を超えることが小論文の醍醐味である。

小論文を入試科目に課す大学の一例[編集]

国公立大学

私立大学