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日本国憲法第72条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

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条文

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【内閣総理大臣の職権】

第72条
内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

解説

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Wikipedia
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ウィキペディア日本国憲法第72条の記事があります。
本条と内閣法第6条との関係
ロッキード事件最高裁判決における園部逸夫裁判官他の補足意見より抜粋、一部文言調整)
内閣総理大臣は、本条に基づき、行政各部を指揮監督する権限を有するところ、この権限の行使方法は、内閣法第6条の定めるところに限定されるものではない。
内閣総理大臣の指揮監督権限は、行政権の主体たる内閣を代表して、内閣の統一を保持するため、行使されるものであり、その権限の範囲は行政の全般に及ぶのである。そして、行政の対象が、極めて多様、複雑、大量であり、かつ常に流動するものであることからすると、右指揮監督権限は、内閣総理大臣の自由な裁量により臨機に行使することができるものとされなければならない。したがって、その一般的な行使の態様は、主任の国務大臣に対する助言、依頼、指導、説得等、事案に即応した各種の働き掛けによって、臨機に行われるのが通常と考えられ、多数意見が「指示を与える権限」というのは、右指揮監督権限がこのような態様によって行使される場合を総称するものと理解することができる。
内閣総理大臣の指揮監督権限が右のような通常の態様で行使される場合、それは、強制的な法的効果を伴わず、国務大臣の任意の同意、協力を期待するものである。
これに対し、内閣総理大臣が、内閣法六条の定めるところにより、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部の長たる主任大臣を指揮監督する場合には、主任大臣はその指揮監督に従う法的義務を負い、もしこれに従わない場合には、閣議決定に違反するものとして、行政上の責任を生ずることとなる。このように、内閣法第6条は、内閣総理大臣が本条に基づく指揮監督権限の行使について右のような法的効果を伴わせる場合の方法を定めるものであって、本来前項で述べたような性質を有する憲法上の指揮監督権限を制限するものではなく、もとより制限できるものでもない。
そもそも、内閣法6条の規定は、基本的には、内閣の行政各部に対する統制権を内閣の首長(憲法第66条第1項)としての内閣総理大臣と他の国務大臣(主任の大臣)との関係に着目して定めたものであって、組織法としての意義が大きいものと考えられる。すなわち、憲法上、国の行政権は内閣に属するものとされているが、内閣が一体となって行政権を行使するために、内閣法は、内閣の職権行使は閣議によるとし(内閣法第4条第1項)、内閣総理大臣が閣議を主宰するものとし(同条第2項)、行政各部は、行政について統合調整の責任を有する内閣総理大臣の指揮監督の下に置かれる(同法第6条)としている。これは、国家行政組織法第2条の規定とあいまって、内閣の統轄の下に、国の行政機関がすべて一体として行政機能を発揮すべきことを保障しているものである。
しかしながら、内閣法第6条には作用法としての側面があり、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督する場合の要件として、閣議にかけて決定した方針の存在が必要であることを定めているのである。右規定の目的は、内閣と行政各部の一体性を保持するため、行政各部が閣議の決定した方針に従って行政を執行するよう、これを監視する権限を内閣総理大臣に付与したものと解することができる。閣議にかけて決定した方針は、本来、内閣総理大臣の個々の指揮監督権限の行使をまつまでもなく、当然に行政各部によって実施されるのであるから、右規定の実際的意義は、行政の統轄調整を図るため特に必要が生じたときに、内閣総理大臣が、右規定に基づき、内閣の首長として、行政各部の主任の大臣に対し強制的な法的効果を伴う指揮監督権限の行使をすることができる点にあるといえる。内閣法第6条に基づく内閣総理大臣の職務権限の発動は、右のような性格のものと理解されるべきものである。
以上を要するに、内閣総理大臣の指揮監督権限は、本来本条に基づくものであって、閣議決定によって発生するものではない。右指揮監督権限の行使に強制的な法的効果を伴わせるためには、内閣法6条により、閣議にかけて決定した方針の存在を必要とするが、右方針決定を欠く場合であっても、それは、内閣法第6条による指揮監督権限の行使ができないというにとどまり、そのことによって内閣総理大臣の憲法上の指揮監督権限のすべてが失われるものではなく、多数意見のいわゆる「指示を与える権限」は、何らの影響を受けずに存続するものといえる。

参照条文

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判例

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  1. 外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件w:ロッキード事件 最高裁判決平成7年2月22日)
    1. いわゆる刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書の証拠能力
      刑訴法はいわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して得られた供述を録取した嘱託証人尋問調書を事実認定の証拠とすることは許容されない。
      →詳細は、刑事訴訟法第317条判例参照
    2. 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることと賄賂罪における職務行為
      内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる。
      • 内閣総理大臣は、憲法上、行政権を行使する内閣の首長として(66条)、国務大臣の任免権(68条)、内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(72条)を有するなど、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして、内閣法は、閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(4条)、内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(6条)、行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(6条)。このように、内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務にっいて一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。したがって、内閣総理大臣の運輸大臣に対する前記働き掛けは、一般的には、内閣総理大臣の指示として、その職務権限に属することは否定できない。

脚注

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前条:
日本国憲法第71条
【総辞職後の内閣による職務執行】
日本国憲法
第5章 内閣
次条:
日本国憲法第73条
【内閣の職権】
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