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日本語/非母語話者むけ/文法

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

語順

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英語の語順がSVO(主語→動詞→目的語)であるのに対して、日本語はSOV型(主語→目的語→動詞)の言語です。日本語では必ず動詞が文末・節末に表れます。また、日本語の単語に対して「助詞」がついてマークします。助詞によって、文における語句間の関係が分かります―例えば、主題、主語、直接目的語、間接目的語、および動作の場所などを表します。

日本語は助詞を使うため、語順が自由です。しかし、一般的な文は以下の構造を持ちます。

主題、時間、場所、主語、間接目的語、直接目的語、動詞

文脈依存性

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日本語は「文脈依存性」が高い言語です。話し手・聞き手にとって明らかである語句は省略されることが多いです。「ミニマリスト」的言語と考えることもできます。例えば、「映画をみる」と言ったとき、話者(私)が述べていることから、「私が」が省略されていることが暗示されます。しかし、文脈しだいでは「○○さんが映画をみる」、「私たちが映画をみる」という意味にもなります。

日本語には丁寧性のレベルが何段階もあり、何を言うかだけではなく誰が誰に言うかよっても変わります。日本語は社会的な線引きが非常にあるため、男性の話し方・女性の話し方というものが存在します。

品詞

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日本語の品詞は、他の言語よりも複雑というわけではありませんが、動詞や名詞、形容詞といった典型的ラベルに上手く当てはまらないことがあります。

名詞と名詞相当語句

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名詞

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くわしい説明は名詞にあります

日本語の名詞は変化しません。定冠詞・不定冠詞や性がつくこともなく、数によって変形することもありません。

日本語に純粋な複数形というものはありませんが、一部の語句には集団を表す接尾辞がつくことがあります。

タナカさん→タナカさんたち

特定の語句には丁寧さを表す接頭辞がつくことがあります。多くの場合、和語(日本古来のことば)には「お」、漢語(中国由来の語)には「ご」がつきます(どちらも漢字で書くと「御」です)。主な使用目的は丁寧さや距離感を表現することですが、語句の中には、他語よりも現れるのが一般的なものがあり、場合によっては必ず付くものもあります(例:お茶)。

多くの名詞は語末に「する」をつけることで動詞に変えることができます。

勉強→勉強する

名詞は、助詞の「の」やナ形容詞の語尾の「な」をつけることで、形容詞として使うことができます。

  • 病気→病気"の"人
  • 元気→元気"な"人

代名詞

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くわしい説明は代名詞にあります

他の言語とは異なり、日本語には純粋な代名詞は存在しません;文脈から明らかな語句は省略されるので、必要性が他言語と比べて少ないのです。一般的にいえば自然に聞こえる日本語は、明示する必要があるときを除いて、人を指す名詞は避ける傾向にあります。このため、初心者は混乱することが多いです。代名詞は普通名詞とは文法的に異なる点はありません:ですが、名詞には形容詞がつく一方、代名詞にはつかないという特徴があります。

一人称
わたし、ぼく、おれ、わたくし
二人称
あなた、きみ、きさま、おまえ

ナ形容詞

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くわしい説明は形容詞にあります

ナ形容詞は、「な」などのコピュラが後に続く名詞的語句です。ナ形容詞として現れるのが一般的なので、「~な」の形で載せる辞典も多いです。ナ形容詞は一般的に意味のうえで形容詞的で、修飾する対象なく文脈に存在することがほとんどありません。しかし、「元気(な)」は会話の文脈上省略されている主語に対して使うことがあります(このような状況は、ある程度インフォーマルあるいはカジュアルな会話に限られます;目上の人と話すときはほぼ必ず、完全な文にする必要があります)。

下手な、元気な、オリジナルな

活用語

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動詞

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くわしい説明は動詞にあります

動詞は、日本語の文において、ほとんどの動作が起こる箇所です。丁寧さの段階を調整するときにの主たる手段です。

日本語の動詞は直接的には、時制や否定、法 (mood)、相 (aspect)、丁寧さ、および敬意によって活用します。

英語とは異なり、活用は極めて規則的で、例外はごくわずかです。慣れるにはある程度時間がかかるかもしれませんが、かな文字を勉強したらすぐに、統一的パターンが見えるはずです。動詞は、五段動詞・一段動詞・不規則動詞の3種類に分類できます。

一般的には、現代語における不規則動詞は2つだけと考えられています。不規則動詞は「来る」と「する」です。しかし、不規則動詞の中にさえもいくらか規則性があります。

イ形容詞

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くわしい説明は形容詞にあります

イ形容詞も、時制や丁寧さ、敬意に応じて活用します(ただし、状態を表す動詞的語句なので、相や法による活用はありません);イ形容詞の語尾は必ずイで終わります。(また、uで終わる状態動詞もあります)

うつくしい、いい、すごい、うれしい

繋辞

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繋辞 (copula) は厳密には動詞ではありませんが、ほとんどの形は「である」に由来します。しかし、活用は不規則です。「連体形」ナはその語の前の名詞を修飾するために使います:しかし、この形は、ほぼナ形容詞の直後でのみ使われます。

その他

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くわしい説明は基本助詞にあります

助詞:助詞(後置詞ともいわれます)は名詞の格を表します:つまり、名詞を主語や目的語、あるいは間接目的語などとしてマークします(英語では概して語順や前置詞を使います)。助詞はその対象の名詞の直後につきます。

  • (主題)
  • (主語)
  • (直接目的語)
  • (所有、同格など)
  • (間接目的語、目的地など)
  • から(起点)
  • まで(終点)
  • (手段、地点)

一部の助詞は、文末に置かれます:

副詞:副詞は一般的に文全体を修飾します。ただし、英語の数量詞は形容詞ですが、日本語のほとんどの数量詞は実のところ副詞です。

  • 相変わらず
  • 少し
  • もうすぐ
  • そう

接続詞:日本語の接続詞は、名詞や述語につきます。ただし、andのように名詞・述語の両方につくものはほとんどなく、exceptのように名詞のみにつくもの、whenのように述語のみにつくもののいずれかです。

感動詞:どの言語においても一般的です。

  • わあ
  • あれ?
  • ええと
  • あのう

文例

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遅い。
遅い
オソイ
イ形容詞
綺麗だ。
綺麗
キレイ
ナ形容詞 is
これは本です。
これ です
コレ ホン デス
指示詞 助詞(主題) 名詞 繋辞
富士山は美しい。
富士山 美しい
フジサン ウツクシイ
主語 助詞(主題) イ形容詞
今日はあまり寒くないです。
今日 あまり 寒くない です
キョウ アマリ サムクナイ デス
名詞 助詞(主題) 副詞 形容詞の否定形 is
海を見ました。
見ました
ウミ ミマシタ
名詞 助詞(対象) 動詞の過去形
母は店に行きました。
行きました
ハハ ミセ イキマシタ
名詞 助詞(主題) 名詞 助詞(場所) 動詞の過去丁寧形
夏が来ました。
来ました
ナツ キマシタ
名詞 助詞(主語) 動詞の過去丁寧形