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民法第378条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第2編 物権

条文

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代価弁済

第378条
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

解説

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本条以下第387条までは、抵当権の追及効(第三者に対する効力)を定めたものである。
本条においては、まず、抵当権者が第304条及び第372条の規定(物上代位の準用)に基づいて抵当不動産の代価を請求した場合には、その追及効を失うことを定めている。
本条がなければ、抵当権者は物上代位の準用により代価を受け取った後も、抵当権を消滅させる義務はなく、不足があれば、不動産を競売して、優先権による不足額の弁済を受けることができる。しかしこれは、代価を請求して回収したうえにさらに競売により弁済を求めるもので、事実上二重に抵当権を行使することとなり、不当である。
そこで本条は、抵当権者が第三取得者に代価の支払いを請求した場合には、第三取得者がその代価を弁済した時点で、その第三者に対して抵当権が消滅するものとした。
ただし、次に述べる三点に注意が必要である。
  1. 第三取得者の範囲と趣旨
    本条の「第三取得者」とは、抵当不動産について所有権または地上権を取得した者でなければならない。他の権利、たとえば永小作権・地役権などを取得した者は、この条文の保護を受けることはできない。
    1. 所有権を譲渡した場合
      一方、抵当権設定者(債務者)が不動産の所有権を売却したとき、その代価は通常、不動産の価格とほぼ等しい。したがって、もし抵当権者がこの代価の支払いを請求すれば、抵当権者はその満足を得たものと認めるべきである。
    2. 地上権の場合
      抵当権設定者が地上権を設定した場合をみると、地上権者が地代を支払うかどうかが問題である。たいていの場合、地上権者は代価の一括払いをしないので、この条文は適用されない。ただし抵当権者は地上権者に地代を請求できる。そして債務者が弁済しないなら、抵当権の実行に際して、地上権を残す必要はない。ただし、地上権者が一定の代価を払って地上権を設定している場合には、話が異なる。このときの代価は通常高額であるから、抵当権者がその代価を受け取った場合は、満足を得たものとみなされ、地上権の存在を認めたものと扱うのが公平である。したがって、この場合、抵当権の実行・競売に際しても、地上権を存続させたまま不動産を売却すべきである。つまり、競落人は地上権が残ったまま所有権を取得する。
    3. 所有権譲渡・地上権設定以外の場合
      永小作権は小作料を支払うものなので(第270条)、代価を支払って取得する例はまれであり、仮に支払うとしてもわずかである。地役権の場合も同様で、それは所有者の権利をごくわずかに制限するものにすぎず、その代価も小さい。したがって、抵当権者がこれらの場合に物上代を準用して代価や小作料の支払いを請求できるのは当然だが、それにより抵当権を放棄したとみなすことはできない。そもそも抵当権は、弁済があれば行使されない留保的な担保権にすぎず、他の物権の設定を当然に妨げるものではない。したがって、抵当権設定後に永小作権や地役権を設定すること自体は有効とされるが、債務不履行により抵当権が実行されれば、後から設定されたそれらの物権は抵当権に劣後し、消滅することを覚悟しなければならない。つまり、抵当権者は永小作権や地役権をあえて残したまま競売する必要はなく、競落人は完全な所有権を取得できる。
  2. 代価弁済の要件と効果
    本条の適用には、第三者が抵当権者の請求に応じて代価を支払うことが必要である。もし第三者が自発的に代価を払ったにすぎない場合は、それは単なる債務の一部弁済とみなされ、抵当権者は残額について依然として抵当権を行使できる。
    これに対し、抵当権者の請求に応じて代価を支払った場合には、第三者は自分の権利(所有権や地上権)を守る目的で支払っていることになり、その代価は債務の弁済ではなく、抵当物の価値の支払いである。この場合には、抵当権は消滅する。
    抵当権者の請求なく( ≒ 抵当権者の意思に反して)、代価を支払うことにより抵当権を消滅させるためには、抵当権者に対する抵当権消滅請求(旧.滌除)によることとなる。すなわち、抵当不動産の第三取得者が抵当権者の請求に基づいて代価を支払う場合(本条)と、抵当権者の請求がなくとも自ら抵当権の消滅を求めて支払う場合(抵当権消滅請求)とは、異なる制度として整理されている。
  3. 代価支払い後の処理
    いずれの場合も、抵当権者が第三者から金銭を受け取ったときは、その受け取った金額を限度として債権は消滅する。したがって、すべてを回収していない場合でも、受領額の限度で債務は消滅する。その後、抵当不動産を売却できる場合は、残額のみを受領できる。売却できない場合(第三取得者から代価支払いを受けた場合)や、売却しても満額回収できなかった場合は、その残額について債務者の他の財産で弁済を受けられる。
    代価を支払った第三取得者は、債務者に代わって債権者に弁済したことになるから、第500条第502条により、抵当権について法定代位が認められる。
    • 地上権・永小作権が抵当権の目的の場合における準用
      本条は、不動産そのもの(正確には所有権)を抵当権の目的とした場合を想定している。しかし、抵当権は地上権や永小作権に設定することもできる(第369条第2項)。その場合には、この章(抵当権の章)の規定を準用する。
      本条および次条以下は、そのままでは地上権や永小作権を目的とする抵当には直接適用できない。したがって、「抵当不動産の所有権を取得した第三者」を、「抵当目的である地上権または永小作権を取得した第三者」と読み替える必要がある。これがいわゆる準用の準用である(当時の立法技術としては、抵当権を地上権・永小作権に設定する場合の射程を明示する趣旨をもつ)。

参照条文

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抵当権の追及効(第三者に対する効力)

判例

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  1. 建物収去土地明渡等請求 (最高裁判所判決昭和39年02月04日)
    1. 建物買取請求権行使によつて成立する売買と民法第577条適用の有無
      借地法第10条(現、借地借家法第13条)に基づく建物買取請求権行使によつて成立する売買についても民法第577条の適用がある。
      • 民法第577条 - 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶
    2. 買取請求権行使の対象たる建物に抵当権が設定されている場合と当該建物の時価
      建物買取請求の対象たる建物の時価は、建物に抵当権の設定があつても減額されるべきではない。
    3. 滌除権の取得と所有権所得登記の要否
      抵当不動産の買主が売主に対する関係で滌除権の取得を主張するためには、右不動産の所有権取得登記を経ることを要しない。

前条:
民法第377条
(抵当権の処分の対抗要件)
民法
第2編 物権

第10章 抵当権

第2節 抵当権の効力
次条:
民法第379条
(抵当権消滅請求)
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