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気候学/熱力学と大気運動

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

熱力学の第一法則と第二法則[編集]

熱力学は、仕事の関係を扱う物理学の一分野です。熱力学には、以下の二つの基本法則があります。

  • 熱力学第一法則:エネルギーは創造も消滅もせず、ある形態から別の形態に変換されるだけである。
  • 熱力学第二法則:閉鎖系において、時間の経過とともに、エントロピーは常に増加する。

熱力学第一法則は、エネルギー保存則とも呼ばれます。この法則は、エネルギーが常に一定量に保たれていることを意味します。例えば、熱エネルギーが仕事に変換されたり、仕事が熱エネルギーに変換されたりしても、全体のエネルギー量は変化しません。

熱力学第二法則は、エントロピー増大の法則とも呼ばれます。この法則は、閉鎖系において、時間の経過とともに、乱雑さが増していくことを意味します。例えば、熱いお湯と冷たいお湯を混ぜると、温度が均一になり、エントロピーが増加します。

大気熱力学[編集]

大気熱力学は、熱力学の原理を大気現象に適用する学問です。大気熱力学では、大気の温度圧力密度湿度などの状態量を熱力学量を用いて表現します。

大気熱力学で重要な概念として、以下のものがあります。

  • 状態方程式:大気の状態量である圧力、温度、密度を結びつける式
  • 断熱過程:熱の出入りがない過程
  • 非断熱過程:熱の出入りがある過程
  • 潜在熱:液体が気体に変化したり、気体が液体に戻ったりする際に必要な熱量
  • エンタルピー:熱エネルギーと圧力エネルギーの和

大気熱力学は、雲の発生降水対流などの気象現象を理解するために重要です。

大気循環[編集]

大気循環は、地球上の大気が水平方向垂直方向に移動する大規模な運動です。大気循環は、太陽放射、地球自転、地形などの影響によって起こります。

大気循環には、以下の主要な循環があります。

  • 熱帯収束帯:赤道付近で上昇気流が発生し、貿易風が吹く
  • 亜熱帯高気圧帯:大陸上空で下降気流が発生し、高気圧帯を形成する
  • 温帯低気圧帯:大陸西岸で上昇気流が発生し、低気圧帯を形成する
  • 極地高気圧帯:極地付近で下降気流が発生し、高気圧帯を形成する

大気循環は、地球全体の気候に大きな影響を与えます。例えば、熱帯収束帯は降水量の多い地域である一方、亜熱帯高気圧帯は乾燥した地域です。

風と圧力系[編集]

は、大気圧のによって発生します。大気圧の高い場所から低い場所へ、空気が移動するのが風です。

圧力系は、大気圧の高い場所や低い場所を中心とした大規模な気圧分布です。主な圧力系としては、高気圧低気圧前線気団などがあります。

  • 高気圧:中心付近の気圧が周囲よりも高い圧力系
  • 低気圧:中心付近の気圧が周囲よりも低い圧力系
  • 前線:異なる性質の気団が接する境界
  • 気団:ある程度の水平範囲にわたって、ほぼ同じ性質を持つ大気の塊

風と圧力系は、天気気候に大きな影響を与えます。例えば、低気圧が接近すると、悪天候になることが多くなります。

熱力学と大気運動は、気象学や気候学を理解するために重要な分野です。これらの分野を学ぶことで、地球の気候システムについてより深く理解することができます。