高等学校古文/漢文の読み方/返読文字

返読文字とは、先に述べた「ヲ・ニ・ト・ヨリ」がなくとも返り点を打つ文字のことである。 (目的語を示す「～ヲ」、補語を示す「～ニ」「～ト」「～ヨリ」の送り仮名のつく文字には原則として返り点が付く。「ヲニト会ったらそこヨリ返れ(鬼とあったらそこより返れ)」と覚えるとよい。) なお、返読文字の横にはカッコで読み仮名と送り仮名を記載してある。読み仮名は平仮名、送り仮名は片仮名で書いている。また、返り点と送り仮名も漢文の読み方と同様にしている。漢字は新字体(現代の漢字)に直している。留意点として、これは訓読において便宜的に名付けられたものであり、漢語に返読文字という概念は存在しない。

返読文字

有(あリ)

• 有_レ^リ人。→人有り。
• 人生有_二^リ生死_一。→人生生死有り。ヤッホー

無・莫(なシ)

• 無_レ^シ人。→人無し。
• 人莫_レ^キ不_二^ザルハ飲食_一^セ也。→人飲食せざるは莫きなり。

無・勿・毋・莫(なカレ)

• 寧為_二^ルトモ鶏口_一^ト、無_レ^カレ為_二^ルコト牛後_一^ト。→寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為ること無かれ。
• 慎^ンデ勿_二^カレ与^ニ戦_一^フコト。→慎んで与(とも)に戦ふこと勿かれ。
• 毋_二^カレ従^ヒテ倶^ニ死_一^スル也。→従ひて倶(とも)に死する毋かれ。
• 莫_レ^カレ愁^フル。→愁ふる莫かれ。

不・弗(ず)

※書き下し文では平仮名にする。

• 於_レ^ヒテ物^ニ無_レ^キ不_レ^ルコト陷^サ也。→物に於いて陷さざること無し。
• 其^ノ人弗_レ^ル能_レ^ハ応^フル也。→其の人応ふる能はざるなり。

非(～ニあらズ)

※必ず前に読む言葉に「に」をとり、送り仮名「ず」をつける。

• 君非_二^ズ崔護_一^ニ耶。→君崔護(人名)に非ずや。

多(おほシ)・少(すくなシ)

• 多_二^クシテ大言_一、少_二^シ成事_一。→大言多くして、成事少なし。

難(かたシ)・易(やすシ)

• 少年易_レ^ク老^ヒ、学難_レ^シ成^り。→少年老い易く、学成り難し。

可(べシ)

※書き下し文では平仮名にする。

• 君努力^シテ生_レ^ズレバ天^ニ即^チ可_レ^シ見^ル。→君努力して天に生ずれば即ち見るべし。
• 匹夫不_レ^ル可_レ^カラ奪_レ^フ志^ヲ也。→匹夫も志を奪うべからざるなり。

能(あたフ)

• 殺_レ^スコト人^ヲ如_レ^シ不_レ^ルガ能_レ^ハ挙^グル。→人を殺すこと挙ぐる能はざるが如し。

如・若(ごとシ)

• 如_二衣_レ^テ繡^ヲ夜行_一^クガ→繍を衣(き)て夜行くが如し。
• 傍^ニ若_レ^シ無_レ^キガ人→傍らに人無きが若し。

所(ところ)

• 項王^ノ所_レ^ノ殺^ス漢軍数百人^ナリ。→項王の殺す所の漢軍数百人なり。

所以(ゆゑん)

※ハイフンを伴うことが多い。

• 是^レ百獣^ノ所_二以走_一^ル也。→是れ百獣の走る所以なり。

自・従(より)

※書き下し文では平仮名にする。

• 先^ヅ従_レ^り隗始^メヨ。→先(ま)づ隗(かい)より始めよ。
• 有_レ^リ朋、自_二^ヨリ遠方_一来^タル。→朋有り、遠方より来たる。

与(と)

※書き下し文では平仮名にする。

• 与_二諸侯_一慎_レ^マン之^ヲ。→諸侯と之を慎まん。

為(ためニ・たリ)

※「たり」と読むときには平仮名にする。

• 吾羞_レ^ヅ為_二^ルヲ之^ガ下_一。→吾(われ)之が下たるを羞(は)づ。
• 人為_二^リ動物_一。→人動物たり。

毎(ごとニ)

• 毎_レ^ニ戦^フ必^ズ勝^ツ。→戦ふ毎に必ず勝つ。

雖(いへどモ)

其^ノ身不_レ^レバ正^シカラ、雖_レ^モ令^スト不_レ従^ハ。→其の身正しからざれば、令すと雖も従はず。

例文の縦書き

これまでの例文を縦書きにしたものを画像ファイルとして掲載する。これまでの例文が見難かったらこちらを見てほしい。

• 
  「有」から「難」「易」まで
• 
  「可」から「為」まで
• 
  「毎」「雖」