病理学/皮膚
詳細を述べる前に、まず概要を述べよう。
皮膚の炎症を起こすものは多い。
外来のものによる炎症としては、
細菌の感染による炎症、アレルギーによる炎症、さらにはウルシやギンナンなどの物質による炎症もある。
ある種の化粧品や、金属などにより、アレルギー的な炎症が起こる人もいる事も、忘れてはならない。
虫刺されや、ダニなどによる炎症も忘れないように。
感染症
[編集]ウイルス性
[編集]単純ヘルペスウイルス
[編集]単純ヘルペスウイルス1型は、幼児(5歳まで[1]の程度)の口唇に水疱の病変を生じる。いわゆる「水疱瘡」(みずぼうそう[2])。
イボ
[編集]いわゆる「イボ」のことを、医学用語では「疣贅」(ゆうぜい)という。
イボの原因には、ウイルス性のものもある。
ウイルス性疣贅の中では、特にヒト乳頭腫ウイルスによるイボが最も多いとされる[3]。
皮膚にイボを起こすのは、2型などの低リスク型である。
ヒト乳頭腫による疣贅は、手足に発生しやすい、
ヒト乳頭腫ウイルスの低リスク型によるイボのことを「尋常性疣贅」という。
尖圭コンジローマ
[編集]なお、性感染症などで有名な尖圭コンジローマも、ヒト乳頭腫ウイルスの6型と11型の感染によるものである。尖圭コンジローマでは、陰茎や陰唇に、カリフラワー状の潰瘍が多発する。
- ※ HPV 2型が、性器周辺に出来た場合、それをなんと言うかの記載は医学書に無い。
伝染性軟属腫
[編集]伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルスの一種)による。
幼児に多い。いわゆる「水いぼ」である。
麻疹ウイルス
[編集]「蕁麻疹」(アレルギー症状の一種)とは異なる。 いわゆる「はしか」が、麻疹ウイルスによるものである。
細菌性
[編集]その他
[編集]結核、ハンセン病(らい菌による)、梅毒も、それぞれ皮膚に病原を起こす。
真菌性
[編集]白癬
[編集]白癬菌による感染。
白癬菌のことを、皮膚糸状菌ともいう。なので、白癬症のことを「皮膚糸状菌症」ともいう。
いわゆる「いんきん」、「たむし」、「みずむし」などは、発生部位が異なるだけであり、同じ白癬菌による病気である。
なお、発生部位および正式名称はそれぞれ、
である。
ケルスス禿頭(ケルススとくとう[6])は、頭部の白癬により脱毛をきたした病態である。 「ケルスス禿瘡」(ケルススとくそう)[7]ともいう。ケルスス禿頭は学童に多い[8][9]。
乾癬
[編集]尋常性乾癬
[編集]尋常性乾癬では、銀白色の鱗屑(りんせつ)をともなった紅斑が、四肢や頭部に好発する。
単に「乾癬」と言った場合、尋常性乾癬のことである[10]。
特徴として、下記のアウスペッツ現象、およにケブネル現象がみられる。
- アウスピッツ現象
- 鱗屑(りんせつ)を剥がすと点状出血がみられ、これをアウスピッツ現象という。
- ケブネル現象
- 皮膚を刺激すると、その部位が、・・・・(※ 調査中)。
また、角化部分では、好中球が浸潤しており、これをマンロー微小膿瘍[13][14]という。
- ※ 『シンプル病理学』では「ムンロー」微小膿瘍。
「うおのめ」、「たこ」など
[編集]※ 「うおのめ」(鶏目 clavus)や、「たこ」(callus)も疾患であり、角化症に分類されるが、病理学的には重要視されておらず、『標準病理学』以外は扱っていない。
水疱
[編集]皮膚に水疱が出来た場合、様々な可能性が考えられる。
- ・単純ヘルペス(いわゆる「みずぼうそう」)、
- ・虫刺され、
- ・尋常性天疱瘡、
など。
尋常性天疱瘡
[編集]中高年に多い。全身の皮膚と粘膜に、弛緩性水疱 と 難治性びらん。
ニコルスキー現象という、健常な皮膚をこすると水疱の生じる現象が、陽性である。
蛍光抗体法でIgG沈着が確認できる。
水疱性類天疱瘡
[編集]- 水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)
高齢者に、緊満性水疱が多発する。好酸球の浸潤をしめす。
多形滲出性紅斑
[編集]「多形紅斑」とも言う。
アレルギー[15]、細菌感染、薬剤などの複合的な病気[16][17]。
若い女性にみられる。 重症化すると、眼や粘膜にも病変がみられ、スティーブン・ジョンソン症候群という。
強皮症
[編集]総論
[編集]皮膚の硬化をする、原因不明の疾患。免疫関係が原因という学説もあり、特に後述の汎発性(全身性)の強皮症が、免疫疾患である可能性が高そうだと考えられている[18][19]。
強皮症には、皮膚のみが硬化する限局性のものと[20][21]、
皮膚以外にも消化管、肺、心臓、腎[22][23]などの臓器の硬化する汎発型[24][25]がある。(※シンプル病理学では「汎発型」ではなく「全身性」という表現。)
- ※ 『標準病理学』でも、P123で「全身性強皮症」という表現。著者どうしの連携が取れてない。
中年の女性に多い。特に、汎発型(全身側)が中年の女性(30~50歳代[26])に多く、男女比は1:10である。
初期症状は浮腫、およびレイノー症状[27](レイノー現象[28][29])である。
- ※ 「レイノー現象」とは、手足の指が白くなる現象。
初期の指の浮腫は、よくソーセージにたとえられる[30]。
中期には、硬化をする。
末期には萎縮する。
- ※ つまり、 浮腫 → 硬化 → 萎縮 という順番。
それぞれの段階の名称に、浮腫期、硬化期、萎縮期、という呼び名がつけられている。
全身性強皮症
[編集]で説明済み。
円形脱毛症
[編集]先行病変はなく、突然頭皮で、円形または卵円形の脱毛巣が出現する[31][32]。 原因不明。一説としてストレスや栄養障害、遺伝などが原因として提唱されているが、実は原因不明である[33]。
尋常性白斑
[編集]境界明瞭に、色素のメラノサイトが減少・消失し、皮膚の一部が白くなる[34][35]。原因不明。俗称として「しろなまず」と言われている。
結節性紅斑
[編集]下腿部の伸側に好発する、痛みをともなう紅斑。若い女性に多い。[36][37]
※ 未分類
[編集]※ 文献不足により、下記が未記述.
ダリエー病、ダリエー兆候
[編集]- ※ 『標準病理学』、P759に「ダリエー病」
- ※ 『シンプル病理学』、P324に「ダリエー兆候」
セザリー症候群
[編集]- ※ 『標準病理学』、P773
- ※ 『シンプル病理学』、P324
リンパ球関係。腫瘍関係。
フォン・レックリングハウゼン病
[編集]- ※ 『標準病理学』、P769
- ※ 『シンプル病理学』、P324
皮膚に神経線維腫がみられる症状[38]。 カフォオレ斑もみられる。常染色体優性遺伝性疾患。
眼病変、骨病変、神経系腫瘍などをともなう。
ランゲルハンス細胞組織球症
[編集]従来、「組織球症X」と呼ばれていた。
次の3病型のいずれかに分類される。
- レッテラー・シーベ病
- ハンド・シュラー・クリスチャン病
- 好酸球性肉芽腫
レッテラー・シーベ病
[編集]乳児に発症。広範囲な皮疹。予後不良。
ハンド・シュラー・クリスチャン病
[編集]2~6歳に好発、眼球突出、頭蓋骨欠損という3主徴。慢性に進行。
好酸球性肉芽腫
[編集]成人期に好発。骨に肉芽腫性の病変。予後良好。
※ 共通事項
[編集]上記3つのいずれも腫瘍細胞は淡い好酸性の比較的良好な細胞質と腎臓形のくびれた核を有する。電子顕微鏡的にはハーベック顆粒を認める。
- ※ 「いずれも」~「有」まで、標準病理学とシンプル病理学で、文言が一致。
腫瘍
[編集]日光角化症
[編集]「老人性角化症」[39][40]ともいい、高齢者において、顔面や頭部、手など、露出している部分に発生しやすい腫瘍である。 表皮を中心に、異形細胞が存在する。
長年の紫外線被曝が原因である[41]と考えられている。
扁平上皮癌である[42]。
- ※ 『標準病理学』『シンプル病理学』は、これが扁平上皮癌の前段階という立場。
ボーエン病
[編集]体幹、四肢などの非露光部に、表皮の癌。
基底細胞癌
[編集]日本人の[43]皮膚癌では最も頻度が高い。
腫瘍細胞の胞巣[48][49]の辺縁部に、「柵状配列」と言われる特異な組織がみられ、また、健常な間質との間に裂隙[50][51]が観察される。
パジェット病
[編集]- 単元『病理学/運動器#パジェット病』
- 単元『病理学/生殖器#乳房外パジェット病』
胞体の明るい大型のパジェット細胞が特徴の表皮内癌で[52][53]、乳房パジェット病と乳房外パジェット病に分けられる。
- ※ 『標準病理学』と『シンプル病理学』で、「胞体の」~「表皮内癌で」まで、文章が一致。
- 乳房パジェット病
乳房パジェット病では、中高年女性の片側乳房に浸潤性の紅斑、びらんを認める。
- ※ 『標準病理学』と『シンプル病理学』で、「中高年女性の」~「らんを認める」まで、文章が一致。
乳房パジェット病は、乳癌の特殊型とされ、乳管癌が表皮内に浸潤したものとされる[54][55]。
- 乳房外パジェット病
乳房外パジェット病は、アポクリン汗腺由来と考えられ、高齢者の外陰部、肛門、腋窩などにみられる[56][57]。
- ※ 『標準病理学』と『シンプル病理学』で、文章が上記の通りに一致。
メラノサイト系腫瘍
[編集]悪性黒色腫
[編集]メラノサイト由来の悪性腫瘍である。予後が非常に悪い。色は黒色[58][59]。 白人に多い[60]。
リンパ行性または血行性に転移しやすく[61][62]、肺や骨に[63]転移しやすい。
いくつかの型に分類され、
- 悪性黒子型、
- 表在拡大型、
- 結節型、
- 末端黒子型、
形状は通常、左右非対称。
- ※ 大きさは、直径6mm以上が、いくつかの医学書では基準になっている[66][67]。
- 『スタンダード病理学』では、6mm基準を紹介せず。(おそらく、5mmの悪性黒色腫の場合、どうするかという問題かと・・・)
形状は、類円形~紡錘形と さまざま[68]。
腫瘍細胞は免疫染色でS-100タンパク陽性、HMB-45陽性である[69][70]。
間葉系腫瘍
[編集]瘢痕、およびケロイド
[編集]- ※ 瘢痕やケロイドは、分類上、腫瘍に分類される場合もある。『標準病理学』および『シンプル病理学』が、瘢痕およびケロイドを腫瘍に含める立場。
- 『スタンダード病理学』では、腫瘍に含めていない。
- 瘢痕
傷が修復される際、当初はやや盛り上がっており、それが最終的に収縮する。 この結果、のこった跡を、瘢痕 (英:scar) という。
特に、結合組織の増殖による扁平隆起のことを肥厚性瘢痕[71][72]という。
肥厚性瘢痕は創部を超えては拡大しない。
創部を超えて拡大するケロイドとは区別される。
皮膚線維腫
[編集]皮膚線維腫とは、成人の[75][76]四肢に好発する、ドーム状に隆起した腫瘍[77][78]。
皮膚線維腫のことを、「良性線維性組織球腫」[79]ともいう。
隆起性皮膚線維肉腫
[編集]- ※ 標準病理、スタンダード病理、シンプル病理のどれにも書いてあるが、微妙に説明が食い違っているので、本wikiでは説明をパスする。
カポジ肉腫
[編集]AIDS患者、または免疫抑制者に好発し、四肢に好発する。
紡錘形細胞が増殖する。
患者の多くが、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)に感染している[80]。 そのため、ヒトヘルペスウイルスが発癌[81]に関与している[82]。
- ※ 分類上、「癌」。スタンダード病理学では「発癌」。『標準病理学』では「発症」。
歴史的にはエイズの発見前から、腎移植によってカポジ肉腫が発生する事が知られていた[83]と言われている。
- ※ 臓器移植では一般的に免疫抑制剤を使う。
- ※ 免疫抑制剤によってカポジ肉腫が増加しているとも考えられており、参考文献『第4版 スタンダード免疫学』では、免疫抑制剤の使用をやめると、カポジ肉腫やある種のガンの症状が改善する傾向がある[84]と言われている。(ただし、移植がどうなるかは参考文献には書いてない。)
菌状息肉腫
[編集]かつて菌によるものと考えられていたが[85]、現代ではT細胞性の悪性リンパ腫であることが明らかになっている。
紅斑、および扁平浸潤が、数年~20年程度[86]の長い期間をかけて進行する[87][88]。
- 紅斑期 → 扁平浸潤期 → 腫瘍期
の順序で進行する。
組織像として、リンパ球の異形に集合したポートリエ微小膿瘍が形成される。
脚注
[編集]- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』、P766
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P123
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P124
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『標準病理学』、P758
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』、P123
- ^ 『スタンダード病理学』、P118
- ^ 『標準病理学』、P763
- ^ 『シンプル病理学』、P325
- ^ 『標準病理学』、P763
- ^ 『標準病理学』、P762
- ^ 『シンプル病理学』、P325
- ^ 『標準病理学』、P756
- ^ 『シンプル病理学』、P325
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『図解ワンポイントシリーズ3 病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『標準病理学』、P771
- ^ 『シンプル病理学』,P323
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『シンプル病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』、P240
- ^ 『標準病理学』
- ^ 小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.100
- ^ 小林芳郎 ほか著『第4版 スタンダード免疫学』、丸善出版、平成25年3月30日、P.100
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『スタンダード病理学』
- ^ 『標準病理学』