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社会主義経済とは
[編集]20世紀には資本主義の矛盾をとこうという試みがありました。それが社会主義経済(socialism)です。社会主義の特徴は次の通りです。
- 資本家が労働者を搾取する仕組みをやめることをめざします。
- 私有財産を否定:生産手段は社会(国家や協同組合など)の所有としています。
- 国家による資源・労働力の計画配分:何をどれだけ作るかを国家が決めます。
社会主義経済の理論と実践史
[編集]空想的社会主義
[編集]近代的な社会主義論が生まれたのは産業革命以降です。その代表的な理論家・実践者がフーリエ、サン=シモン、オーウェンの三名です。
彼らは後にエンゲルスから「空想的社会主義」と呼ばれました(『空想から科学へ』)。そのため、現代でも彼らは空想的社会主義者と呼ばれているのですが、ソ連型社会主義の崩壊・中国の社会主義市場経済が事実上の新自由主義経済へと舵を切っている現在、再評価が始まっています。
マルクスとエンゲルス
[編集]1867年、ドイツの経済学者・哲学者カール・マルクス(Karl Heinrich Marx)は著書『資本論』で、資本主義の持つ固有の矛盾が将来新しい社会体制を生むと指摘しました。同じくドイツの経済学者・哲学者のフリードリヒ・エンゲルス(Friedrich Engels)も著書『家族・私有財産・国家の起源』などで社会主義・共産主義を唱えました。
ロシア革命と社会主義諸国の成立
[編集]マルクスらの理論を背景として、1917年にロシア革命でソビエト社会主義政権が誕生しました。ロシアは1921年から新経済政策(ネップ、Новая экономическая политика)を推進し、1928年にソビエト連邦は第一次5カ年計画による社会主義経済の導入を進めました。これに続き、1945年に次々と独立したアジアや東ヨーロッパの国々、さらに1949年に成立した中国でも社会主義経済が導入されました。
社会民主主義
[編集]現在の社会主義経済
[編集]社会主義経済の国は減ってるの?
[編集]減っています。世界で最初の社会主義経済の国だったソビエト社会主義共和国連邦が、不景気から脱出できなくなってしまったため1991年に社会主義経済をやめました。ヨーロッパで社会主義経済をとる国はもうありませんが、朝鮮民主主義人民共和国やキューバ共和国では社会主義経済体制が続いています。また、中華人民共和国やベトナム社会主義共和国、ラオス人民民主共和国も社会主義国ですが、市場経済も取り入れ近年はその割合が高まっています。
ただし、中南米ではアメリカ合衆国による新自由主義に基づく政治・経済への介入への反発から、21世紀に入ると反米左派政権が成立し、主要企業(特に石油などの鉱産資源)の国有化や格差是正など、経済政策の一部に社会主義政策を導入している国も現れるようになりました。それらの国々の中には、チリのように政治の安定と経済成長に成果を上げたところもあれば、ベネズエラのように政治経済の混乱に陥っている国もあります。
中国の経済体制
[編集]1997年、香港がイギリスから中国に返還されました。このときから中国は一国二制度という制度が続いています。一国二制度は、中国という1つの国でありながら香港を資本主義経済の区域として同居させる制度のことです。
中国は1978年からトン・シアオピン(鄧小平)による社会主義国でありながら市場経済化を徐々に進め、積極的に海外資本を導入する開放政策を進めています。これは1993年の憲法改正で社会主義市場経済と明文化されました。ソビエト連邦が政治改革から経済改革を目指したのに対し、中国は経済改革から政治改革を目指しているといえます。ただ、社会主義市場経済の位置づけは、社会主義経済や資本主義経済に並ぶ経済体制のひとつなのか、社会主義経済から資本主義経済へ移行する途中の形なのかで意見が分かれています。
修正資本主義
[編集]他方、資本主義経済の体制でも、貧富の格差・失業などに代表される「市場の失敗」の解消のため社会主義的政策を導入することがあります。例としては、以下のようなものがあげられます。
- 電気・ガス・水道や鉄道に代表される公共交通機関やその他の社会的インフラなど、国民生活に欠かせない財やサービスを提供する企業は国営ないし公営企業とする。
- 経済政策における計画経済の導入(例:戦前日本におけるw:経済新体制確立要綱)。あるいは、省庁による業界のコントロール(例:w:護送船団方式)。
- 直接税における累進課税の強化と再分配。
- 福祉政策の充実。
こうした試みは1980年代に入るとアメリカのレーガノミクス、イギリスのサッチャリズムに典型的な新自由主義政策によって転換していきました。しかし、2000年代には格差の拡大などを背景として新自由主義が批判されるようになると、福祉政策や富裕層への課税などの政策が見直される国もあります。
理論
[編集]マルクス経済学
[編集]現在の社会主義経済とその理論は、大なり小なりマルクス経済学の影響下にあります。そのため、社会主義経済について知るために、まずマルクス経済学の理論を押さえておきましょう。
また、参考までに以下のリンクも掲載します。
『資本論』
[編集]意外かもしれませんが、『資本論』にて社会主義や共産主義についてはほとんど語られていません。そのため、「『資本論』は社会主義・共産主義の経典 云々」のような記述があるテキストや書評は「私『資本論』読んだことありません」宣言です。そういう本を買ってしまったら速攻で古本屋に叩き売るか資源ごみとしてリサイクルに出した方がいくらかマシです。
そもそも、『資本論』の第一の目的は資本主義の仕組みの分析です。そして資本主義の終焉も資本主義に内在する矛盾の増大による「自壊」として論じられています。
宇野学派
[編集]宇野学派は宇野弘蔵の弟子たちによって形成された研究学派です。マルクス経済学から社会主義イデオロギーを排除したものであるため、厳密には社会主義経済学には含めませんが、マルクス経済学を語るうえでは欠かせません。そのため、ここで紹介しておきましょう。
社会主義論
[編集]政治、社会、哲学など、経済以外の点については次が基礎文献となるでしょう。
- 『経済学・哲学草稿』『ドイツ・イデオロギー』など、初期マルクスの著作
- 『経済学批判要綱』
- 『ゴータ綱領批判』
- 『空想から科学へ』『家族・私有財産・国家の起源』などエンゲルスの著作
初期マルクス
[編集]『経済学批判要綱』
[編集]通称「グルントリッセ」(独: Grundrisse)。ある意味、初期マルクスと後期マルクスをつなぐものであり、これを非常に重視する研究者もいます。
『ゴータ綱領批判』
[編集]マルクスの社会主義論が語られているのは、この『ゴータ綱領批判』の方です。『ゴータ綱領批判』とは、当時のドイツ社会民主労働党が作成した綱領案をマルクスが批評した「ドイツ労働者党綱領評注」、およびそれに関連する手紙をさします。
エンゲルス
[編集]ソ連型社会主義論
[編集]レーニン
[編集]スターリン
[編集]中国
[編集]毛沢東主義
[編集]鄧小平理論
[編集]参考文献
[編集]古典
[編集]- マルクス『資本論』
- マルクス『ゴーダ綱領批判・エルフルト綱領批判』
- レーニン『帝国主義論』
宇野理論
[編集]- 宇野弘蔵『経済原論』
- 宇野弘蔵『経済学』
- 大内力『国家独占資本主義』
その他
[編集]- 小澤光利「理論経済学――マルクス経済学入門」[1]
- 崎山政毅『資本』(岩波書店, 2004年)
- デヴィッド・ハーヴェイ『〈資本論〉入門』(森田成也・中村好孝訳, 作品社, 2011年)
- デヴィッド・ハーヴェイ『資本の〈謎〉――世界金融恐慌と21世紀資本主義 』(森田成也・大屋定晴・中村好孝・新井田智幸訳, 作品社, 2012年)