正方行列
に対して、 行列の
行目と
列目を取り除いて得られる行列を
と表す。このとき、
を
の
余因子という。
- 例
の
余因子は、
である。
次のように、余因子を利用することで、行列式を求めることができる。
ただし、
は
次正方行列である。
これを、余因子展開という。
証明
とする、このとき、
![{\displaystyle |A|={\begin{vmatrix}a_{11}&\cdots &a_{1j}&\cdots &a_{1n}\\\vdots &\ddots &\vdots &\ddots &\vdots \\a_{n1}&\cdots &a_{nj}&\cdots &a_{nn}\end{vmatrix}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/8a313e873e16a96434bd8f2b1756c85d405e838e)
である、ここで、行列
の
列目
は、
と表すことができ、
(1)式は、
と、表すことができる。これに、行列式の性質を使えば、
である。
ここで、
について考える。
この行列の
行目と、
行目を入れ替る。
行目と、
行目を入れ替える。・・・
行目と、
行目を入れ替える。という操作をすると、次のような行列になる。
行列の行または列を入れ替えると、行列式の値は
倍されるのだった。この操作では、
回の入れ替えを行うので、この式は、
倍されている。
次に、同じように、
列目と、
列目を入れ替える。
列目と、
列目を入れ替える。・・・
列目と、
列目を入れ替える。という操作をする。すると、次のような行列になる。
であることについての説明は不要であろう。
これを、行列式の定義に従って展開する。
一行目で、(1,1)要素を選ばない項は、いずれ、一列目の0を選ぶので、0となる。
なので、一行目で、(1,1)要素を選ぶ項だけを考えれば良いが、これは、
と一致する。
よって、この行列式は、
である。
これを、(2)式に代入すれば、
となり、証明された。
これと同様の議論を行にも行えば、もう一方の式も導くことができる。
をAの余因子行列という。
余因子行列には、以下の性質がある。
![{\displaystyle A{\tilde {A}}={\tilde {A}}A=|A|E}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/2843887b520de50dea4e0cfe12c437538560e093)
証明
なので、
行列
の
成分は、
である。
(i)
のとき
- (1)式は、行列
の
列目に関して余因子展開をした式と一致するので、(1)式は
のとき、
である。
(ii)
のとき
- 行列
の
列目が行列
の
列目になっている行列の行列式について考える。この行列式は以下のようになる。
![{\displaystyle {\begin{vmatrix}a_{11}&\cdots &a_{1,i-1}&a_{1j}&a_{1,i+1}&\cdots &a_{1j}&\cdots &a_{1n}\\a_{21}&\cdots &a_{2,i-1}&a_{2j}&a_{2,i+1}&\cdots &a_{2j}&\cdots &a_{2n}\\\vdots &\ddots &\vdots &\vdots &\vdots &\ddots &\vdots &\ddots &\vdots \\a_{n1}&\cdots &a_{n,i-1}&a_{nj}&a_{n,i+1}&\cdots &a_{nj}&\cdots &a_{nn}\\\end{vmatrix}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/a0e66ddc85536cef3ba8f7b079e3a2e1c6741379)
- この行列のi列目について、余因子展開を行うと、(1)式と一致する。
- 同じ列がある行列の行列式は0になるのだった。なので、(1)式は、
のとき、0である。
まとめると、
である。
よって
である。同様の議論を行えば、
も導くことができる。
のとき
が存在するので、
に
を右からかけ
で割れば、
である事がわかる。