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聖書ヘブライ語入門/名詞文・主述統合・冠詞・名詞の型/冠詞/冠詞の型

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

4.4.1 冠詞の形

冠詞はその前に ‏בְּ‎(bə), ‏כְּ‎(kə), ‏לְ‎(lə) が立った場合(これについては後述)以外は,子音本文では常に ‏ה‎ と書かれている. しかし伝承学者はこれに様々の母音符号を配した. この課でみた ‏הַ‎, ‏הָ‎ は,最も代表的ではあるけれども,その一部にすぎない. 前にも述べたように,ティベリア式母音表記はいわばかなり 精密な音声表記であって, 意味の違いとは無関係な発音の違いまでも表記し分けようとしている.例えば日本語の サンバイ,サンダイ,サンカイ を sambai, sandai, saŋkai と書き分けるようなものである. このことは当然,冠詞に限らず,これから次々に学んでいく殆どすべての単語の「語形変化」に伴う現象であって,我々を悩ますことになるわけであるが,しかし,テクストを読むことだけが目的なら,母音の変化を一々憶える必要はなく,形の認定―例えば冠詞の場合なら,子音表記がまったく等しい疑問詞の ‏הַ‎ (これも ‏הֲ‎, ‏הֶ‎ という異形を持つ)との区別.実際には名詞の頭に付く ‏ה‎ は殆どすべて(98%以上)冠詞である―が出来さえすればよい. 冠詞の形は後続の音の影響で変化し, 大体次の規則に従う.

(4.4.1.1) 基本形は ・‏הַ‎ ・は強ダゲシュ,haC-(C は直後の語の語頭子音),例: ‏הַדָּבָר‎, ‏הַמֶּלֶךְ‎

(4.4.1.2)だたし喉音とrは重複することができない,すなわち ‏א‎ ‏ה‎ ‏ע‎ ‏ח‎ ‏ר‏ はダゲシュを取りえない (2.3) から,

(4.4.1.2.1) ‏ה‎ ‏ח‎ の前では ‏הַ‎ 例: ‏הַהוּא‎, ‏הַחֶ֫רֶב‎, ‏הַהֵיכָל‎

(4.4.1.2.2) ‏א‎ ‏ע‎ ‏ר‎ ‏הָ֫‎ の前では ‏הָ‎ 例: ‏הָ֣אָדָם‎ hā-'ādām, ‏הָעִיר‎, ‏הָעָ֫יִן‎, ‏הָרׂאשׁ‎, ‏הָהָ֫ר‎.

(4.4.1.2.3) ただし ‏חָ‎, ‏חֳ‎ および無強勢の ‏הָ‎, ‏עָ‎ の前では ‏הֶ‎.例: ‏הֶחָכָם‎ הֶחָג הֶחֳדָשִׁים הֶעָפָ֫ר

(4.4.1.2.4) 三人称複数人称代名詞の前では ‏הָ‎ .例: ‏הָהֵם‎, ‏הָהֵמָּה‎, ‏הָהֵנָּה‎

(4.4.1.3) 喉音以外では,‏יְ‏および分詞接頭辞 ‏מְ‎ の前でも,子音は重複しない. 例: הַיְאׂר הַיְלָדִים הַמְדַבֵּר

(הַמְּלָכִים hamməlākīm《王たち》は分詞でない).

(4.4.1.3.1) これにも הַיְּהוּדִים hayyəhūdīm 《ユダヤ人たち》等の例外がある.

(4.4.1.4)若干の名詞(主に CaC 型)は休止形(3.2.3)を取った後で上記の規則に従った冠詞をつける.

‏הַר‎→‏הָר‎→‏הָהָר‎(規則 4.4.1.2.2)《山》、 ‏עַם‎→‏עָם‎→‏הׇעׇם‎(規則 4.4.1.2.2)《民》、 ‏חַג‎→‏חׇג ‎→‏הֶחׇג‎(規則 4.4.1.2.3)《祭》、 ‏גַּן‎→‏גָּן‎→‏הַגָּן‎(規則 4.4.1.1)《庭》、 ‏אֶ֫רֶץ‎→‏אׇ֫רֶץ ‎→‏ הָאׇ֫רֶץ‎(規則 4.4.1.2.2)《地》