高等学校公共/裁判所Ⅲ

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本節は裁判所3回目です。本節の内容は司法制度改革について学習します。

このうち、2009年に設立された裁判員制度の目的や仕組みがよく問われ、実際の裁判員裁判の実情にも気を配る必要があります。

裁判員制度[編集]

 裁判員制度には、市民だけで有罪か無罪かを決める陪審制と、裁判官と市民が協力して行う参審制があります。どちらも裁判員制度とは異なりますが、裁判員制度は参審制に近い制度です。

裁判所法廷の様子

 裁判員の参加する裁判は、死刑、無期懲役、禁錮刑になるかもしれないような重大な刑事事件に対して行われます。民事事件や行政事件では実施されません。障害致死罪(ただし過失致死傷罪は除く)、危険運転致死罪、通貨偽造・行使罪など、死刑や無期懲役にならない犯罪でも、国民の関心が高いと判断されるため対象になります。ただし、対象になる事件でも、裁判官や裁判官の家族に身体的危害が及ぶ恐れがある場合は、地方裁判所の同意がなければ裁判官と協力して裁判出来ません。しかし、被疑者には裁判官だけの裁判を選択する権利はありません。

 裁判員は裁判官と一緒に、被告人が有罪か無罪か、そして量刑をどうするかを決めます。ただし、法令の解釈や訴訟手続に関する判断は裁判官の仕事です。一般的には、3人の裁判官と6人の裁判員が協力して、多数決で決定します。裁判員には、職権行使の独立、証人尋問権、被告人質問権などが認められています。しかし、公判前整理手続で公訴事実について争いがなく、検察官、被告人、弁護人から反対意見が出ず、裁判所が適切と認めた場合、裁判官1人と裁判官4人が裁判を行います。

 裁判官と裁判員は、一緒に決めた内容に基づいて「事実の認定」、「法令の適用」、「刑の量定」を行う権限を持っています。評決は、裁判官と裁判員の両方の意見を含む過半数がどう考えるかが判断の基準になります。裁判官と裁判員だけの多数決では、判断出来ません。

 裁判員は、衆議院議員の選挙権を持つ者の中から抽選で選ばれます。学生や70歳以上の人はもちろん、仕事上大きな損失を受ける人、育児や介護など社会生活上やむを得ない事情がある人は、参加しないという選択もあり得るでしょう。

 裁判員の違法行為には罰則があります。裁判官が評議の秘密や職務上知った秘密を漏らした場合、6か月以下の懲役か50万円以下の罰金になります。裁判官が正当な理由なく裁判所に来なければ、10万円以下の罰金となりますが、これは懲役刑と同じではありません。

 日当や交通費、宿泊料は支払われますが、参加に伴う損失補償はありません。

日本の陪審制度[編集]

 陪審制には、大陪審と小陪審があります。大陪審は、一般市民から構成されており、刑事事件で正式に起訴するかどうかを決定します。小陪審は、民事事件と刑事事件の両方で事実を決定する一般の人々で構成されています。

 陪審制は大日本帝国憲法に盛り込まれ、刑事事件を小陪審で決定出来るようになりました。しかし、1943(昭和18)年以降、陪審制は停止されています。この結果、陪審制は15年間で484件にとどまりました。

 日本国憲法の規定で陪審制をとれるかどうかについて、反対意見を持っていても、被告人が裁判員を拒否する自由があります。つまり、裁判官が裁判員に拘束されなければ、陪審制を設置出来るというのが最も一般的な意見です。裁判所法第3条第3項にも、「刑事に関する陪審制の創設は、別に法律でこれを停止してはなりません。」と規定しています。

裁判員制度の合憲性(最高裁判所大法廷判決平成23年11月16日)[編集]

 裁判員制度の合憲性が問われた覚醒剤密輸事件で、最高裁判所大法廷は2011年11月、国民の司法制度への参加と裁判員制度の合憲性を認める判決を裁判官全員の一致で言い渡しました。

 以下、最高裁判所大法廷の判決を要約します。

  • 裁判員制度は、公平な「裁判所」で法と証拠に基づく公正な裁判を行うために充分保障されている上、憲法に定められている刑事裁判の様々な原則を守るのは特に問題はありません。また、被告人の権利も考慮されています。
  • 高等裁判所や最高裁判所への上訴もあり、裁判官や判事で構成される裁判所は特別裁判所ではありません。裁判官の職務などから、国民には投票と同じような権利が与えられています。
  • 裁判官は正当な理由があれば事件を放棄出来るなど柔軟な制度になっているので、日本国憲法第18条後段が禁止している「苦役」には当たりません。
裁判員の年齢制限
 公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18歳以上となりました。しかし、当面は20歳以上で選挙権のある人が審査員として選ばれます。

検察審査会[編集]

 2009年に検察審査会法が改正され、検察審査会はより大きな権限を持つようになりました。

検察審査会制度[編集]

 検察審査会は、地方裁判所や支部に設置される機関です。検察官が独占している起訴を国民の意向に沿うようにし、不当な起訴を阻止するのが仕事です。

 検察審査会は、衆議院議員の選挙権を持つ20歳以上の市民(検察審査員)11人で構成されています。衆議院議員の選挙権を持つ人の中から抽選で選ばれます。

 検察審査会の仕事は、検察官の不起訴処分に納得出来ない人の求めに応じて、その判断の正当性を見極めます。

検察審査員の年齢制限
 公職選挙法が改正され、18歳以上から投票が出来るようになりました。当面は、検察審査員も裁判官と同じように20歳以上で選挙権を持つ人の中から選ばれます。

2009年の法改正[編集]

 2009年5月、検察審査会法が改正されました。改正前は、検察は検察審査会の議決に従う必要はなく、再び不起訴処分になる場合もありました。改正後は、検察審査会が「起訴相当」と議決した事件について、検察官が再び不起訴を議決しても、検察審査会が再捜査して再び「起訴相当」と議決すれば、「起訴議決」となります。

 起訴議決が行われると、裁判所が指定した弁護士が検察官の役割を果たします。被疑者の死亡や起訴猶予期間の終了など、起訴出来ない理由がない限り、公訴され公判が行われます。

刑事裁判への被害者参加制度[編集]

 被害者参加制度によって、犯罪被害者等の保護・救済のあり方がどのように変わったのか知っておきましょう。

 犯罪被害者などを保護・支援するため、2008年12月、刑事裁判の被害者参加制度、被害者参加者の国選弁護人制度、損害賠償命令制度が開始されました。裁判所が、被害者が弁護士をつける方法と、被害を受けた人が損害賠償を受ける方法を整えました。

 被害者参加制度とは、殺人や傷害などの刑事事件の被害者が、裁判所の許可を得て「被害者参加人」として刑事裁判に参加出来る制度です。被害者参加人は、検察官側に座り、被告人に質問したり、感想を述べたり出来ます。

 損害賠償命令制度では、殺人や傷害などの刑事事件が地方裁判所で進行している場合、刑事事件を担当する裁判所は、刑事損害賠償命令事件として、犯罪被害者からの民事損害賠償請求も審理することにしています。被告人が有罪になったら、すぐに裁判が始まります。

日本司法支援センター(法テラス)[編集]

 法テラスのサービスは多岐にわたりますが、ここでは被害者参加制度や民事法律扶助のような支援の種類に着目して、その変遷を見ていきたいと思います。

 司法制度をより身近に使いやすく、適正・迅速に、そして信頼出来るようにしなければならないとして、2004年6月に「総合法律支援法」が成立しました。

 2006年4月に成立した総合法律支援法に基づき、独立行政法人日本司法支援センター(法テラス)が設立されました。

 法テラスでは、地方自治体や弁護士会などの関係団体が行う相談窓口の案内する情報提供、弁護士費用などを負担する民事法律扶助、犯罪被害者支援、国連弁護等関連など、幅広い業務を行っています。

 また、ここ数年は、自然災害で被害に遭われた方の支援や、ハーグ条約に関連する民事法律扶助の活動も行っています。