高等学校化学I/炭化水素/鎖式炭化水素/アルケン
炭化水素 | 有機化合物 | 鎖式炭化水素 | 環式炭化水素 |
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アルカン | アルケン | アルキン |
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アルケンの構造[編集]
分子式 | 名称 | 構造式 | 沸点(℃) |
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CH2=CH2 | エチレン (エテン) |
![]() |
ー104℃ |
CH2=CHCH3 | プロピレン (プロペン) |
![]() |
ー47℃ |
CH2=CHC2H5 | 1-ブテン | ![]() |
ー6℃ |
一般に、炭素間の結合に二重結合を1つ含む構造で、分子式がCnH2nと書ける炭化水素をアルケン(alkene)という。アルケンは不飽和炭化水素である。右におもなアルカンの分子式と名称、構造式を示す。
エチレンの水素原子1個をメチル基 CH3- に置き換えると、プロピレン(プロペン)になる。
「エチレン」はエテンの慣用名である。IUPAC(国際純正および応用化学連合)による正式名称は「エテン」である。慣用名の「エチレン」の使用もIUPACで認められている。(※ つまり高校生は、慣用名「エチレン」を使用してもよい。検定教科書でも「エチレン」の呼称を使用している。)
一般的な性質[編集]
幾何異性体[編集]
アルケンは二重結合が含まれているが、一般に二重結合の部分は回転ができないため、そのため、いくつかのアルケンでは、異性体が存在する。このような異性体を、幾何異性体(きか いせいたい、geometrical isomer)という。
たとえば 2-ブテン では、異性体として、つぎに述べるシス形(cis form)とトランス形(trans form)という2種類の幾何異性体が存在する。
- シス形
- トランス形
幾何異性体のことを、シス-トランス異性体ともいう。 CnH2n の数式で、炭素原子数nが4以上のときに、幾何異性体が存在しうる。
付加反応[編集]
アルケンには二重結合が含まれているため、ハロゲンなどと反応して二重結合の1つを切って、そこと単結合をつくる。このような反応を付加反応(ふか はんのう、additional reaction)という。(反応例を下図に示す。)
たとえばエチレンは、臭素と反応すると、付加反応により、1,2-ジブロモエタンになる。
また、エチレンは、触媒として白金PtまたはニッケルNiの条件下で、エチレンは水素と付加反応をして、エタンになる。
なお、付加反応はアルケンに限らず不飽和化合物で見られ、炭素間の二重結合や三重結合に対しておこる反応である。いっぽう、アルカンのような単結合のみの飽和炭化水素では起こらない反応である。
酸化[編集]
また、不飽和炭化水素は酸化剤と反応して酸化される。赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液にたとえばエチレンを通じると、エチレンは酸化され、二酸化マンガンの黒色沈殿を生じるとともに赤紫色が消える。このような反応は、メタンをはじめアルカンでは起こらない。
その他[編集]
その他、アルケンは次のような有機化合物一般の性質をもつ。
- 水に溶けにくい。
- エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。
- ススを少し出しながら燃えて、二酸化炭素と水を生じる。
エチレン[編集]
エチレン(ehtylene)は分子式C2H4の、もっとも炭素数が少ない基本的なアルケンである。常温では無色の気体である。二重結合で結びついている炭素原子と、それに直接結合した原子はすべて同一平面上にあるため、右図のようにエチレン分子は全ての原子が同一平面上にある。
エチレンは、実験室ではエタノールの分子内脱水により得られる。エタノールに濃硫酸を加え、160℃程度で加熱するすると、エタノールの分子内で脱水反応がおこり、エチレンが生成する。(下図に例を示す。)
また、エチレンは二重結合を含むため、赤褐色の臭素水に通じると、付加反応により臭素の色が消え無色になる。(下図に例を示す。)
さらに、赤紫色の過マンガン酸カリウム水溶液に通じると、エチレンは酸化され、黒色の二酸化マンガンの沈殿が生じる。
工業的には、ナフサの熱分解でエチレンが得られる。エチレンは様々な薬品の合成原料であり、工業的に重要な物質である。
エチレンは、植物ホルモンでもある。
シクロアルケン[編集]
高等学校化学I/炭化水素/環式炭化水素を参照せよ。