高等学校化学II/染料

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この章での色の定義については、まずは直感的に理解していれば良い。(正確に色覚を説明すると生物学など他分野が絡み、広範かつ専門的になる。) 読者には、まずは色素の分子構造と電磁波との関係について、理解をしてもらいたい。

可視光に関する予備知識

また、特に断らないかぎり、「白色光」といった場合、波長の比率割合が、地表に到達した昼間の太陽光に含まれる比率に近いとする。一般に色の議論をする際の、太陽光の波長割合を観測する場所は、特に断りがなければ、もちろん観測場所は地球であり、地表であり、緯度や経度なども特に偏りが無く、年間の平均的な昼間の太陽光とする。また、太陽活動には、とくに異常な活動は無いとするのが一般的である。


物質の色[編集]

Linear visible spectrum.svg

波長 エネルギー
380-450 nm 2.755-3.26 eV
450-495 nm 2.50-2.755 eV
495-570 nm 2.175-2.50 eV
黄色 570-590 nm 2.10-2.175 eV
橙色 590-620 nm 1.99-2.10 eV
620-750 nm 1.65-1.99 eV
円の正反対に位置する色が補色。


色素の定義は明確ではないが、材料に添加した場合に色を加える物質を色素(しきそ、coloring material)という。 繊維に染色できる色素を染料(せんりょう、dye stuff)という。

物質には、外部からの電磁波の波長を吸収するものがある。そのうち、吸収する波長が、ヒトの可視光の特定波長の光を吸収していると、ヒトの目に映ったときに色づいて見える。

白色光で照らされた物体が色づいて見える仕組みは、その目に映っている物体が、物質の種類ごとに可視光の特定の波長を吸収して、反射しているからである。 したがって物質が吸収する波長と、反射光の波長は、反対の色になる。

たとえば、赤色に見える物体は、光源の白色光から、青色や緑色や紫色などの、赤色以外の色の波長を吸収して、赤色のみを反射したので、ヒトの目には赤色に見えるのである。

赤色に対する、青緑色のように、反対側の色を補色(ほしょく)という。(紫は、赤と青が混じったいろなので、赤の補色ではない。)つまり、赤は青緑の補色である。同様に青緑は赤の補色である。

白色光に照らされた物質に色を感じる仕組みは、物質が吸収した色の補色を、色として感じるのである。

色素[編集]

色素には炭素化合物などの有機化合物からなる有機系の色素と、無機化合物からなる無機系の色素がある。本節では有機色素について説明する。

化合物に色を付けるには、その構造中に可視光を吸収できる官能基が必要である。 可視光を吸収できて、物質に色を付けられる官能基を発色団(はっしょくだん、chromophore)という。 有機色素の発色団は、-C=Oや、-N=N- などのように共役ニ重結合を持った官能基である。 共役ニ重結合によりπ電子が動けるようになっているので、電磁波と電子が相互作用ができるようになり、外部からの光を吸収できるようになっている。(たとえば、金属などの自由電子を持つ物質は不透明だったのを思い出そう。)

発色団以外の官能基で、発色団の作用を強めたり、親水性を高め染色しやすくする官能基を助色団(じょしょくだん、auxochrome)という。助色団には、たとえば、-OHや-COOHや-NH2などがある。

発色団
>C=C<
>C=O
>C=N-  (ケチミド基)
-N=N-  (アゾ基)
-N=O  (ニトロソ基)


助色団
-OH (ベンゼン環につき、フェノール化している場合が多い。)
-NH2
-COOH   (極性を持ち、親水性を与える。)
-SO3H   (極性を持ち、親水性を与える。)
-X  (ハロゲン原子)

アゾ化合物[編集]

アゾ基 -N=N- を発色団として持った染料をアゾ染料(azo dye)という。アゾ染料としてコンゴーレッド(congo red)やメチルオレンジ、メチルレッドなどが有る。コンゴレッドやメチルオレンジなどは染料の他の用途でも、pH指示薬として用いられることがある。

ジアゾカップリング[編集]

ジアゾ化

アニリンC6H5NH2などの芳香族アミンを希塩酸に溶かしたのち、亜硝酸ナトリウム水溶液を加える事で、ジアゾニウム塩を作ることができる。このジアゾニウム塩が、アゾ染料の原料となる。また、芳香族アミンをジアゾニウム塩にする処理をジアゾ化(diazotization)という。

アニリンC6H5NH2をジアゾ化する場合は、まずアニリンを希塩酸に溶かしてから、亜硝酸ナトリウムを加えることで、塩化ベンゼンジアゾニウム C6H5N2Clができる。

ジアゾニウム塩は水に溶け、陽イオンのベンゼンジアゾニウムイオン[C6H5-N≡N]+と、陰イオンの塩素イオンCl-とに電離する。 なお、-N≡N-の左側のNは4価である。これはイオン化のためである。

この4価を意識した構造式の書き方として、塩をC6H5N+≡N-Cl-と書いたり、陽イオンをC6H5-N+≡Nと書く場合もある。



カップリング

この塩化ベンゼンジアゾニウムC6H5-N≡N-Clと、ナトリウムフェノキソドC6H5-ONaとから合成によってp-フェニルアゾフェノールC6H5-N≡N-C6H4-OHが作られる。

これは発色団-N≡N-と、助色団-OHを持つように、色素や染料として使えることから、一般に染料として p-フェニルアゾフェノールは用いられる。 これは共役二重結合が2個のベンゼン環と窒素部分とつながっていて、共役二重結合が長い。


フェノキシドとして用いたフェノールの代わりに、ナフトールやアニリンなどでもカップリング反応は可能である。

染料の分類[編集]

アイの葉

天然に作られた色素の染料を天然染料(natural dye)と言い、合成によって得られた色素を用いた染料を合成染料(synthetic dye)という。


  • 天然染料
    • 植物染料
      • アカネ(茜)・・・・・・植物のアカネの根から色素のアリザニンという紅色の色素が得られる。
      • アイ(藍)・・・・・・植物のの葉から、色素のインジゴという藍色の色素が得られる。
    • 動物染料
      • コチニール・・・・・・サボテンに寄生する虫のコチニール虫から色素のカルミン酸という赤色の色素がとれる。この色素をコチニール色素とも言う。
      • 貝紫・・・・・・アクギガイ科の貝の分泌物から色素のジブロモインジゴという紫色の色素が得られる。