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高等学校古文/名詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

漢字表記は複数通りあり、このページに記したのみとは限らない。

名詞

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自立語で活用がなく、単独で主語になることのできる語を名詞という。実体を表す言葉であることから体言ともいう。

普通名詞

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同じ種類に属する事物に共通して用いられる一般の名詞を普通名詞という。

人 花 水 朝 月 松 梅 遊び あはれ

固有名詞

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人名・地名・作品名など、特定の事物を表す名詞を固有名詞という。

清少納言 大和国 仁和寺 源氏物語

数詞

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人や事物の数量・数による順序を表す名詞を数詞という。 「一」「百」「那由多」のような数そのものを表す語を本数詞、「年」「人」「匹」のように本数詞に添えて単位の役割を果たす語を助数詞という。数詞は本数詞と助数詞が組み合わさったものが多い。

一つ 三位(さんみ) 百代(はくたい) 幾億 第一 何人

主な本数詞
漢字 指数表記
不可説不可説転(ふかせつふかせつてん) 1037218383881977644441306597687849648128
無量大数(むりょうたいすう) 1068
不可思議(ふかしぎ) 1064
那由多(なゆた) 1060
阿僧祇(あそうぎ) 1056
恒河沙(ごうがしゃ) 1052
(ごく) 1048
(さい) 1044
(せい) 1040
(かん) 1036
(こう) 1032
(じょう) 1028
𥝱(じょ)() 1024
(がい) 1020
(けい)
※「きょう」とも読む
1016
(ちょう) 1012
(おく) 108
(まん)(萬)
※「よろず」とも読む
104
(せん) 103
(ひゃく) 102
(じゅう) 101
(いち) 100
() 10−1
(りん)(釐)  10−2
(もう)(毫) 10−3
()(絲) 10−4
(こつ) 10−5
() 10−6
(せん) 10−7
(しゃ) 10−8
(じん) 10−9
(あい) 10−10
(びょう) 10−11
(ばく) 10−12
模糊(もこ) 10−13
逡巡(しゅんじゅん) 10−14
須臾(しゅゆ) 10−15
瞬息(しゅんそく) 10−16
弾指(だんし) 10−17
刹那(せつな) 10−18
六徳(りっとく) 10−19
虚空(こくう)空虚(くうきょ) 10−20
清浄(せいじょう) 10−21
古典で重要な助数詞
助数詞 数える対象
(はしら) 神仏
(かさね) 衣服
(しゆ) 和歌
() 俳句
(さを) 箪笥(たんす)
(たい) 仏像
(ちやう) 和装本の紙数
(でふ) 紙の束
(ちやう) 弓・琵琶(びわ)
(めん) 鏡・(すずり)

形式名詞

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非自立語的機能を持つ名詞を形式名詞という。名詞本来の実質的な意味を失っており、常に連体修飾語を上に必要とするのが特徴である。形式名詞ではない名詞は総称して実質名詞という。形式名詞は平仮名で書くのが望ましいとされる。

こと もの ところ ため ほど とき かぎり


形式名詞を用いることで、多くの語を名詞化することができる。

補助動詞が本動詞の用法を持つのと同様、形式名詞は実質名詞の用法も持つ。

ク語法の起源は形式名詞「あく」による転成とみられている。

代名詞

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人や事物の名の代わりに、直接それらを指し示す名詞を代名詞という。人物を指すものを人称代名詞、事物・場所・方向を指すものを指示代名詞という。

主な人称代名詞
自称 対称 他称 不定称
近称 中称 遠称
あ あれ わ われ おのれ それがし な なれ なんぢ きんぢ おんみ おのれ そこ そち こ これ こなた そ それ そなた か かれ あなた た たれ なにがし それがし
主な指示代名詞
近称 中称 遠称 不定称
事物 こ これ そ それ か かれ あ あれ  いづれ なに
場所 ここ そこ あそこ かしこ いづこ いづく いづら
方向 こち こなた そち そなた あち かなた あなた いづち いづかた
- - - いつ


人称代名詞のうち、「おのれ」のような自称・対称・他称の区別なくそのもの自身を指し示す代名詞を反照代名詞(反射代名詞・再帰代名詞)という。

補:転成名詞

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他の品詞から名詞化したものを転成名詞という。

動詞の連用形由来

遊び (かすみ) (よば)

動詞の終止形由来

(かをる) (とまる) (ひかる)(人名であることが多い)

形容詞の連用形由来

多く 遠く (さや)けく

形容詞の終止形由来

辛子 寿司

感動詞由来

あはれ

接尾辞による転成

高み 悲しみ 深さ 清明(さや)けさ

ク語法による転成

曰く 恋しけく をしけく 思惑

連体詞

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自立語で活用がなく、体言を修飾する語を連体詞という。連体詞は全て他の品詞や連語からの転成であり、語数も少ない。

させる ある さんぬる あらゆる いはゆる さる さしたる いんじ なでふ

「そこにいる」という意味の「ある」は連体詞ではなく動詞の連体形である。

副詞

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自立語で活用がなく、主に用言を修飾する語を副詞という。

「昔、男ありけり」の「昔」のように、名詞が副詞的に働く場合がある。

また、格助詞「の」を伴って体言を修飾する場合もある。

状態の副詞

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主に動詞を含む文節を修飾し、その事物の状態や動作・作用が行われる有様を表す福祉を状態の副詞(様態の副詞・指示の副詞)という。擬声語や擬態語もこれに含まれる。

仄々(ほのぼの)と のつと (あらかじ)()(かつ)(しか) () 屢々(しばしば) (たちま)(つひ)()べて ふと (やが)

状態の副詞は助動詞「なり」「ごとし」を伴って述語となる場合がある。

程度の副詞

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主に形容詞・形容動詞を含む文節を修飾し、その状態・性質の程度を表す副詞を程度の副詞という。

(いささ)か いと いとど 愈々(いよいよ) 全て (あや)(あまね)()(はなは)だ やや

程度の副詞は名詞・副詞を含む文節も修飾できる。

陳述の副詞

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修飾される語に一定の言い方を要求する副詞を陳述の副詞(呼応の副詞・叙述の副詞)という。

陳述の副詞を受けて一定の言い方で結ぶことを副詞の呼応という。

副詞の呼応一覧
分類 副詞 呼応する表現 現代語訳
打消 (あへ)
大方(おほかた)
更に
絶えて
(つゆ)
打消の助動詞「ず」
打消推量の助動詞「じ・まじ」
打消の接続助詞「で」
否定の形容詞「無し」
全く〜ない
決して〜ない
をさをさ 殆ど〜ない
未だ まだ〜ない
ず・じ・まじ・で とても〜できない
よも
よもや
まさか〜まい
いさ
いざ
知らず さあ〜わからない
禁止 禁止の終助詞「そ」 〜するな
〜してくれるな
(ゆめ)
勤々(ゆめゆめ)
禁止の終助詞「な」 決して〜するな
仮定 仮令(たとひ)
()
逆接仮定条件の接続助詞「とも」 たとえ〜ても
順接仮定条件・順接確定条件の接続助詞「ば」 もし〜ならば
(よし)
(よし)
とも たとえ〜ても
推量 (あるい)
(けだ)
推量の助動詞「む・けむ・らむ・べし」 もしかしたら〜だろう
如何許(いかばか) どれほど〜だろう
恐らく たぶん〜だろう
必ず
定めて
きっと〜だろう
(むべ)
(うべ)
なるほど、〜だろう
比喩・比況 (あたか)
(さなが)
比喩・比況の助動詞「ごとし」 まるで〜のようだ
当然 (すべから)
(まさ)
当然・義務の助動詞「べし」 当然〜べきだ
希望・願望 (いか)
何卒(なにとぞ)
(ひとへ)
自己希望の終助詞「ばや・てしがな・にしがな」
推量・意志の助動詞「む」
願望の終助詞「もが・もがな」
なんとかして〜たい
ひたすらに〜たい
疑問・反語 ()
争で
何ぞ
など
なでふ
(いづく)んぞ
疑問・反語の係助詞「や・か」
活用語の連体形
<疑問>どうして〜だろう
<反語>どうして〜か、いや、〜ない
如何(いかが)
何如(いかん)
<疑問>どのように〜か
<反語>どうして〜か、いや、〜ない


転成副詞

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呼応の副詞「恐らく」は四段動詞「恐る」の連体形に形式名詞「あく」がついた転成名詞「恐るらく」の縮約形(ク語法)「恐らく」が副詞に再度転成したものである。

このように、名詞をそのまま副詞として転成するケースは多い。(ときどき 今 etc.)

他には、「絶えて」「兼ねて」のような『動詞+助詞』パターンや「たちどころに」のような『動詞+名詞+助詞』パターンの転成副詞が存在する。

接続詞

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自立語で活用がなく、文同士、文節同士、語同士を結びつける語を接続詞という。接続詞は連体詞と同様、全て他の品詞や連語からの転成である。

接続詞には以下のようなものがある。

  1. 前後を対等に結びつけるもの(主に文中に位置)
    1. 並列の接続詞(及び 並びに 又た etc.)
    2. 添加の接続詞(()つ しかうして しかも etc.)
    3. 選択の接続詞(或いは はた 若しくは etc.)
  2. 前の条件を受けて後に続けるもの(主に文頭に位置)
    1. 順態接続の接続詞(斯かれば 斯くて 然れば 故に etc.)
    2. 逆態接続の接続詞(斯かれども 然るは しかし (しか)るに etc.)
  3. その他(必ず文頭に位置)
    1. 補足の接続詞(但し 即ち etc.)
    2. 転換の接続詞((そもそ)も さて それ 然る程に etc.)


感動詞

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自立語で活用がなく、独立語として感動・呼び掛け・応答などを表す語を感動詞(間投詞)という。単独で文をなすことができるのが最大の特徴である。

感動を表す感動詞

あな (あつぱ)れ あはれ あら いで すは

呼び掛け・勧誘を表す感動詞

いかに いざ いざや いで なう なうなう ものまう や やよ

応答を表す感動詞

いざ いな えい おう しかしか どれ


最後に

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ここまで、自立語である動詞・形容詞・形容動詞・名詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞を見てきた。残りは付属語の助動詞・助動詞のみである。この他、接尾辞・接頭辞を品詞とみなす考え方もあるが、ここでは紹介しない。