高等学校古文/漢詩/涼州詞
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涼州詞(りょうしゅうし)
- 王翰(おうかん)
概要
[編集]主人公は兵士。西域の辺境の戦場で、警備に当たる兵士の心境を詠んだ歌。
本文
[編集]書き下し文
[編集]- 葡萄(ぶどう)の美酒(びしゅ) 夜光(やこう)の杯(はい)、
- 飲まん(のまん)と欲すれば(ほっすれば) 琵琶(びわ) 馬上(ばじょう)に催す(もよおす)
- 酔うて(ようて)沙場(さじょう)に臥す(ふす)とも 君(きみ)笑ふ(わらふ)こと莫かれ(なかれ)
- 古来(こらい)征戦(せいせん) 幾人(いくにん)か 回る(かえる)
訳
[編集]ぶどうで作ったうまい酒を、夜中も光る杯(さかづき)に注ぐ(そそぐ)。
飲もうとすると、(誰かが)馬上で琵琶を弾いていて、酒興(しゅきょう)をそそる。
(たとえ私が)酔っぱらって、この砂漠(さばく)(=戦場)に倒れ伏しても、君(きみ、(二人称))よ、(私を)笑わないでくれ。
昔から、この辺境の地に遠征して、いったい何人が(生きて)帰ってこれただろうか。(私は生きては戻れないかもしれない。)
形式
[編集]七言絶句
解説
[編集]ぶどうの酒や、「夜光杯」は、西域の特産物。「沙場」も、砂漠が多いのは、西域の特徴。
この誌に異国情緒(いこくじょうちょ)を出すための、作者(王翰)の工夫だろう。
しかし、詩を読みすすめていくと、戦場での不安を酒で紛らわしている(まぎらわしている)ことが分かり、情緒どころか刹那的(せつな てき)な快楽で紛らわしているのであり、その落差や対比によって、われわれ読者をゆさぶり、また、その落差や対比が、戦場の悲惨さを演出する表現にもなっている。
重要語句
[編集]- 莫笑 - 笑わないでおくれ。「莫」は禁止を表す。
- 幾人(いくにん) - 「幾」(いく)は、もともとは数量を表す疑問詞だが、この文ではそれだけではなく、反語である。文脈から考えて、反語の意味だと解釈しなければならない。
韻
[編集]「杯」(はい)、「催」(さい)、「回」(かい)が、すべて発音が二文字で、読みが「い」で終わる。つまり、「杯」(はい)、「催」(さい)、「回」(かい)が、韻(いん)をふんでいる。
発音について本来は、中国の当時の発音で検証する必要があるのだが、日本の学校教育の漢文では、日本語でも分かる韻(いん)が取り上げられるため高校生は気にしなくて良い
語釈
[編集]- 琵琶(びわ) - 西域から伝えられた弦楽器の一つ。
- 夜光杯(やこうのさかづき) - 西域の工芸品の杯か。検定教科書や参考書の説明では、この杯は「白玉」で作られたとされている。
- 沙場(さじょう) - 砂漠のこと。この詩では、この砂漠が戦場でもある。