コンテンツにスキップ

高等学校古文/漢詩/涼州詞

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

涼州詞(りょうしゅうし)

王翰(おうかん)

概要

[編集]

主人公は兵士。西域の辺境の戦場で、警備に当たる兵士の心境を詠んだ歌。

本文

[編集]



スレバマント
ウテストモケレフコト

書き下し文

[編集]
葡萄(ぶどう)美酒(びしゅ)  夜光(やこう)(はい)
()まんと(ほっ)すれば  琵琶(びわ)  馬上(ばじょう)(もよお)
()うて沙場(さじょう)()すとも  (きみ)(わら)ふこと(なか)
古来(こらい)征戦(せいせん)  幾人(いくにん)か (かえ)

[編集]

葡萄(ぶどう)で作ったうまい酒を、夜光(やこう)(さかづき)(そそ)ぐ。

飲もうとすると、(誰かが)馬上で琵琶(びわ)を弾いていて、酒興(しゅきょう)をそそる。

(たとえ私が)酔っぱらって、この沙場(さばく)(=戦場)に(たお)()しても、(きみ)(二人称)よ、(私を)(わら)わないでくれ。

昔から、この辺境の地に遠征して、いったい何人が(生きて)(かえ)ってこれただろうか。(私は生きては戻れないかもしれない。)

形式

[編集]

七言絶句

解説

[編集]

葡萄(ぶどう)の酒や、「夜光杯」は、西域の特産物。「沙場(さじょう)」も、砂漠が多いのは、西域の特徴。

この()異国情緒(いこくじょうちょ)を出すための、作者(王翰(おうかん))の工夫だろう。

しかし、詩を読みすすめていくと、戦場での不安を酒で(まぎ)らわしていることが分かり、情緒どころか刹那的(せつなてき)な快楽で紛らわしているのであり、その落差や対比によって、われわれ読者をゆさぶり、また、その落差や対比が、戦場の悲惨さを演出する表現にもなっている。

重要語句

[編集]
莫笑⸺笑わないでおくれ。「莫」は禁止を表す。
幾人(いくにん)⸺「(いく)」は、もともとは数量を表す疑問詞だが、この文ではそれだけではなく、反語である。文脈から考えて、反語の意味だと解釈しなければならない。

[編集]

」(はい)、「」(さい)、「」(かい)が、すべて発音が二文字で、読みが「い」で終わる。つまり、「」(はい)、「」(さい)、「」(かい)が、韻(いん)をふんでいる。

発音について本来は、中国の当時の発音で検証する必要があるのだが、日本の学校教育の漢文では、日本語でも分かる韻が取り上げられるため高校生は気にしなくて良い

語釈

[編集]
琵琶(びわ)⸺西域から伝えられた弦楽器の一つ。
夜光杯(やこうのさかづき)⸺西域の工芸品の杯か。検定教科書や参考書の説明では、この杯は「白玉」で作られたとされている。
沙場(さじょう)⸺砂漠のこと。この詩では、この砂漠が戦場でもある。