高等学校 地理探究/ラテンアメリカ

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※後日、本文を大幅加筆する予定です。

参照:中学校社会 地理/南アメリカ州

ブラジル[編集]

経済発展するブラジル[編集]

ブラジルの奇跡[編集]

 工業化される以前のブラジルは、単一作物による農業国でした。輸出の約7割がコーヒーでした。現在も世界最大のコーヒー輸出国ですが、ブラジルの全輸出量のうちコーヒーは3%程度に過ぎません。

 ブラジルは1960年代末から1970年代初めにかけて、年率10%以上の経済成長を遂げました。これはブラジルの奇跡と呼ばれました。外国資本の援助と輸入代替工業化政策を取って、工業を近代化したからこそ実現出来ました。ブラジルは、安価な労働力を利用して産業構造を変え、重化学工業を発展させました。その結果、それまで多くの重化学工業製品を輸入していたブラジルは、自国で製造を開始しました。

南アメリカの経済大国[編集]

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 ブラジルの経済は急成長しました。しかし、物価が年間25〜30%上昇し、累積債務問題、金融危機もあったため、不況も経験しました。その都度、政府は輸入を自由化し、国有企業を売却しました。これによって物価の上昇が止まり、経済が再び成長するようになりました。また、1995年にはMERCOSUR(南米南部共同市場)が設立され、ラテンアメリカの経済が立ち直れるようになりました。その後も経済成長に大きく貢献しています。MERCOSUR(南米南部共同市場)は、経済を改善するための地域経済統合です。アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ボリビアが加盟しています。ブラジルはMERCOSURで重要な役割を果たす一方、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国とともにBRICsに加盟し、世界経済への影響力を強めています。

ラテンアメリカの農業[編集]

熱帯の近くの農業[編集]

赤道付近を流れるアマゾン川の流域の気候は熱帯雨林気候である。なお、アマゾン川流域の熱帯雨林や、ラテンアメリカの熱帯雨林のことをセルバという。


アマゾン川流域の地域の農業では、キャッサバなど熱帯の作物を栽培するのが盛んである。

(※ アフリカの熱帯でのキャッサバ栽培と類似。)

焼畑農業が主流。(※ アフリカの熱帯と、類似。)

そして、ラテンアメリカの熱帯雨林の周辺にあるブラジル高原カンポ)やオリノコ川流域リャノ)の気候は、サバナ気候である。(※ アフリカの熱帯の周辺にもサバナ気候がある。類似。)

ブラジル高原あたりをカンポという。 オリノコ川流域をリャノという。

ブラジルの農業[編集]

1960年以前のブラジルではコーヒー豆の生産が有名だった。しかしブラジルでは1970年代ごろから、サトウキビ大豆の生産が盛んである。とはいえ、ブラジルのコーヒー豆の生産量は世界1位である。(コーヒー豆生産の2位はベトナム、3位はコロンビア)

ブラジルは大豆の生産量で世界2位。(大豆生産の世界1位はアメリカ合衆国、3位はアルゼンチン)

ブラジルの大豆生産地は、赤道からは、やや外れた、ブラジル高原南部にある。

バナナは、ブラジルが世界でも有数の生産量。(バナナ生産量はエクアドルが世界1位。)

このように、ブラジルの農業は多角化が進んでいる。

アルゼンチン[編集]

アルゼンチンでは、ラプラタ川流域に、パンパと呼ばれる草原地帯がある。パンパでは肥沃な黒色土(パンパ土)が分布している。

また、ラプラタ川流域で、大豆の生産が盛ん。

パンパには、降水量の比較的多い湿潤パンパと、降水量の少ない乾燥パンパがある。乾燥パンパは農業に向かず、羊などの放牧などに利用される。

湿潤パンパが農業に利用される。湿潤パンパで、小麦やトウモロコシやアルファルファなどが栽培される。

大土地所有制のエスタンシアが残っている。

なお、アルゼンチンの住民には、ヨーロッパ系白人が多い。

チリ[編集]

チリ沖合は寒流であるペルー海流が流れるため、上昇気流が生じにくく、降水量は少ない。

そのために北部は砂漠気候でありアタカマ砂漠が分布するが、南部は偏西風域内にあるためその影響が強く、西岸海洋性気候である。

なお、アルゼンチン南部のパタゴニアにも砂漠があるが、これは、偏西風の、山脈の風下側にあるため。(チリ北部の砂漠と、アルゼンチン南部の砂漠は、発生原因が違う。)

降水量の少ないチリ中部では、ブドウの栽培が盛ん。(ブドウは降水量が少なくても育ちやすい。日本の甲府盆地などを思い出そう。)

アンデスの山地の農業[編集]

ペルーなど、アンデスの山岳地帯での農業は、低地ではトウモロコシや周辺諸国の農産物と同じような作物を栽培しているが、しかし標高が高くなるにつれて小麦ジャガイモやトウモロコシなどが栽培される。

さらに標高が上がり、さらに寒冷になると、耕作限界をこえるので、リャマアルパカなどの家畜を放牧する。

なお、ペルーの住民には先住民のインディオが多い。

民族、人種[編集]

(※ 定期試験レベルの基礎知識)

ラテンアメリカの先住民のインディオはモンゴロイド黄色人種)。

ラテンアメリカには混血人種が多い。白人(コーカソイド)とインディオとの混血をメスティソという。白人と黒人との混血をムラートという

ラテンアメリカの黒人の先祖は、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人(ネグロイド)である。

つまり、ラテンアメリカの黒人は、アフリカ系黒人である。

ラテンアメリカには、白人とインディオとの混血であるメスティソや、白人と黒人との混血であるムラートも多い。

西インド諸島のハイチやジャマイカに、黒人が多い。この理由は、サトウキビなどのプランテーションの労働力として、黒人がハイチやジャマイカなどに移住させられたからである。


人種の詳細[編集]

(※ 入試で問われやすい) キューバは白人の割合が高い国であり、キューバでは全人口のうち65%が白人である(スペイン系の移民が多かったので)。また、キューバの人口の残り35%のほとんどは、黒人よびムラートである。つまりキューバにインディオおよびメスチソは、ほぼゼロ%である。

(キューバの黒人は、日本ではマスコミ報道などで比較的にキューバ白人よりも話題にはなりやすいかもしれないが、じつはあまりキューバ黒人の人口比は多くない。)

キューバなどのカリブ海諸国を除くと、ラテンアメリカの大陸側の国(ブラジルやペルー、アルゼンチンなど)は、じつは黒人はあまり多くなく、白人以外の人種は、先住民およびメスチソ(先住民との混血)がほとんどである。

例外的に(大陸側では)コロンビアは、黒人およびムラートが合計20%ほどである。日本人の視点からはコロンビアが地理的にアメリカ合衆国に近いので目立つので、ついつい「ラテンアメリカは黒人も多いかも?」と錯覚いがちだが、じつはコロンビアが例外的に黒人が多いのである。

ブラジルは人口の40%ちかくが混血であるが、白人系の混血なのか黒人系の混血なのか、ハッキリしない。


アルゼンチン、ブラジルは、白人の割合が高い。(統計の取り方によっては、チリも白人の割合が高い国に含める場合もある。)

特にアルゼンチンは白人の割合が高く、全人口の97%ほどを占める(2010年統計)。

同じくアルゼンチンの隣国のブラジルは、白人の割合が高く、48%である。


隣国のチリはメスチソの割合が高いが、このメスチソも白人と先住民との混血のことであり、チリのメスチソおよび白人の割合は、ほぼ95%である。


また、アルゼンチン、ブラジルは先住民・インディオが少ない国でもある。(ただしブラジルはメスチソが多い。つまり、混血が進んでしまっており、純度の高い先住民は残ってない。)

アルゼンチン、ブラジル、チリとも、先住民の人口は10%未満である。

まとめると、

アルゼンチン、ブラジル・チリは、白人の割合が高い。
さらに、アルゼンチンは、先住民・インディオおよびメスチソ(白人と先住民との混血)も少なく、3%以下である。・・
ブラジル・チリは、先住民・インディオが少ない国が、メスチソが多く、混血が進んだだけでもある。


いっぽう、(アルゼンチンの北隣にある)ボリビアや(ボリビアの隣の)ペルーは、先住民・インディオの割合が高い国であり、人口の50%ほどがインディオ系である。

ラテンアメリカでアルゼンチン、ブラジル、チリ以外の国は、白人の割合が少なく、白人は全人口の10〜20%ほどである。

たとえばボリビア・ペルーで、その国の全人口のうち白人の占める割合が15%ほどである。エクアドルやコロンビアも同様に、全人口のうち白人の占める割合が10%〜20%ほどである。

アンデス諸国[編集]

ペルー[編集]

漁獲高が高い。アンチョビ(かたくちいわし)を、魚粉(フィッシュミール)にしてから輸出する。

住民の多数がインディオインカ帝国があった場所はペルーのあたり。 ペルーの首都はリマ

ペルーはの産地。

ペルー海流の影響で、太平洋側が砂漠気候。しかしペルー東部には森林などが広がる。

ペルー中央に、アンデス山脈が走る。

ブラジルやペルーは、他のラテンアメリカ諸国と比べ、日系人の割合がやや多い。ペルーでは、日系人のフジモリが大統領になったこともある。

(※ 範囲外 :)治安はあまり良くない。貧富の格差は大変大きい。

ボリビア[編集]

ボリビアの首都のラパスは標高4000m以上。ラパスは世界一標高の高い首都といわれている。ボリビアは内陸国。スズの産出地。住民の多数がインディオ

ボリビアのウユニ塩原の地下に、大量のリチウムが存在している事が分かっており、開発などが進められている。

国民の多くは貧しく、経済的格差は世界の中でも大きい。 

(※ 範囲外 :)治安も良くない。

チリ[編集]

チリの国土は南北に細長い。南北で気候が違う。

チリ北部は砂漠気候。チリ南部は、偏西風の影響を受けるため、西岸海洋性気候。そのあいだのチリ中部は地中海性気候であり、ブドウの栽培が盛ん。 政治や経済は良い状態にある。

(※ 範囲外 :)治安もラテンアメリカの中では良い国。但し貧富の差は大きい。

ベネズエラ[編集]

ベネズエラは産油国であり、OPEC加盟国。

(※ 範囲外 :)治安は異常なほど(←要出典)悪く、経済危機の最中である。

貧富の格差は非常に大きい。

エクアドル[編集]

エクアドルは赤道直下に位置する。バナナの輸出国。また、エクアドルからは原油も算出し、産油国であり、OPEC加盟国である。

エクアドルの首都キトは標高2000m以上の高山都市。

コロンビア[編集]

コーヒーの輸出国。

コロンビアの首都ボゴタは標高2000m以上の高山都市。

コロンビアはエメラルドの世界的な産地である。

(※ 範囲外: )反政府ゲリラがはびこり、殺人や誘拐が多く大変治安が悪い。コカインの産地でもある。貧富の格差も相当大きく、失業率も高い。

ブラジル[編集]

ブラジル[編集]

ブラジルの公用語はポルトガル語である。(スペイン語ではない。)

第二次大戦後に、開発のおくれた内陸部を開発させるため、1960年にブラジルは首都をそれまでのリオデジャネイロから、内陸部のブラジリアに移転させた。つまり、現在のブラジルの首都はブラジリアである。

さらにアマゾンの熱帯雨林を開発するため、1970年代にアマゾン横断道路(トランスアマゾニアンハイウェー)を建設した。

ブラジル高原南部の土壌は、玄武岩が風化してできたテラローシャである。テラローシャは肥沃であり、コーヒー栽培に適している。 テラローシャは、赤紫色。ポルトガル語で「テラローシャ」とは「紫の土」という意味。

いっぽう、ブラジルの熱帯雨林地帯では、雨が強すぎて養分を流してしまうので、ブラジルの熱帯の土壌のラトソルは養分がすくない。

近年の農業では、サトウキビの生産が盛んであり、またバイオエタノールの生産も盛ん。バイオエタノールの原料は、サトウキビやトウモロコシなどである。

バイオエタノールは、エタノール車の燃料。

メルコスールは、域内の関税撤廃と、域外との共通関税をしている。

ブラジルやペルーは、他のラテンアメリカ諸国と比べ、日系人の割合が多い。ブラジルは世界で一番日系人が多い。 (※ 範囲外: )治安はとても悪く世界的に見ても犯罪が多い国である。貧富の格差は極端である。 白人はイタリア移民の子孫が多い。

ブラジルの工業[編集]

ブラジル南東部のサンパウロリオデジャネイロで工業が盛ん。

機械類自動車鉄鉱の生産が、ブラジルの工業では盛ん。

ブラジルは鉄鉱石の産地。カラジャス鉄山イタビラ鉄山で、鉄鉱石が産出。


また、ブラジルはボーキサイトの産地でもある。一般に、ボーキサイトは熱帯雨林の地帯で産出することが多い。熱帯のつよい雨が、ボーキサイト以外のさまざまな成分を流してしまうが、ボーキサイトは流されずに、残るからである。

マンガンも産出する。

アルゼンチン[編集]

白人が多く特にイタリア系が多い。首都はブエノスアイレス

草原のパンパには、温暖湿潤気候湿潤パンパと、ステップ気候乾燥パンパがある。年間降水量500mmの境界線が目安。 パンパ東部は、湿潤パンパ。 パンパ西部は、乾燥パンパ。

農業については、湿潤パンパでは小麦、大豆、とうもろこし、アルファルファなどを生産。乾燥パンパでは、羊の放牧が行われている。


パタゴニアは砂漠気候。パタゴニアが乾燥する理由は、偏西風がアンデス山脈にさえぎられて、パタゴニアは(偏西風の)風下側になるため。

1950年代まで裕福な先進国だった過去を持つ。

ウルグアイ[編集]

住民のほとんどが白人。小麦や大豆や肉類などを生産する農業国。政治や経済はチリに次ぐ水準である。

(※ 範囲外 :)治安も比較的良い。かつては南米のスイスと言われ福祉制度が充実していた時期がある。


日系移民[編集]

1908年頃からブラジルに、日本人が農場などの労働者のための移民として、移住した。そのため、ブラジルには日系移民が多い。ペルーでは、日系人のフジモリが大統領になったこともある。

ブラジルやペルーは、他のラテンアメリカ諸国と比べ、日系人の割合がやや多い。

メキシコおよびカリブ海諸国[編集]

キューバやジャマイカなどと、南アメリカ大陸とのあいだの海を、カリブ海という。

いっぽう、キューバやジャマイカなどと、メキシコと、アメリカ合衆国の南部とのあいだの海は、メキシコ湾である。

キューバやジャマイカなどを「カリブ海諸国」という。

メキシコ[編集]

住民にメスチソが多いが、インディオも多い。 なお、メスチソとは、白人とインディオとの混血のこと。(つまり、キューバなどカリブ海諸国と比べたら、メキシコでは黒人系(ムラートなど)の人口の割合は少ない。)

(※ 入試で問われるのは、どの人種が多いかだけでなく、どの人種が少ないか、が問われやすい。)

首都はメキシコシティ。メキシコシティは、人口2000万人を超える大都市で、世界有数のプライメートシティである。

メキシコシティでは、人口の増加や流入などに、政治が追い付かず、不法占拠によるスラムが拡大している。このスラム街は都心から離れた山の斜面や、大都市の郊外に形成されている。ちなみに発展途上国のスラム街は郊外、先進国のスラム街は都心部に形成される傾向がある。

また、メキシコシティは、周辺を山に囲まれた、盆地状の地形である。 メキシコシティ自体も、標高2000m以上の場所にある。

メキシコシティで、自動車の排気ガスなどによる大気汚染が悪化してる。原因として、盆地状の地形であるため、空気が滞留(たいりゅう)しやすいことも一因だろうと考えられている。


メキシコの経済については、1994年に、NAFTA(読み:ナフタ、北米自由貿易協定)を、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコの3か国が結成した。

メキシコ湾岸から原油が産出されるため、メキシコは産油国。ただし、OPECには、メキシコは加盟していない。

輸出品は、機械類、自動車、原油。

(※ 範囲外 :)国の治安は大変悪い。世界的に見ても犯罪の多い国である。 貧富の格差も大きいとされる。

キューバ[編集]

1959年にキューバ革命が成功し、それ以降から社会主義国。現在も社会主義国のまま。 また、このキューバ革命により、それまで企業や地主などが所有していたサトウキビ農園が、国有化された。

また、このキューバ革命により、ソビエト連邦の勢力圏に入り、いっぽうでアメリカ合衆国との関係は悪化。

人口は、黒人系の混血(ムラート)の人口が多い。(つまり、メスチソ(先住民と白人との混血)は少ない。)

現在も、アメリカとの関係は悪い。 2015年1月アメリカ合衆国と国交回復交渉 同年7月国交回復


キューバやバハマは観光地として有名であり、地理的近接性も相まってグレナダなど周辺国よりも観光客は多い。(※ 範囲外:)キューバは治安が良いとされる。貧富の差も少ない。

フロリダ半島から離れるほど、観光客が減少するという統計的な傾向が知られている。(2017年度センター試験で、カリブ海諸国の観光客の2010年度の統計がある。)

(※英語教科書) 日本のある英語教科書でキューバが紹介されたことがある。医療費の安さ(ほぼ無料)、医師の人口が比較的に多い、大学などの教育費の安さ、などの特徴があった(掲載当時。掲載時期は未確認)。キューバの公用語はスペイン語。

ハイチ[編集]

1804年にフランスから独立。黒人が多い。公用語はフランス語。近代最初の、黒人による独立国。 国民の80%は貧困層である。

ジャマイカ[編集]

ブルーマウンテン山などの場所で、ブランド名も「ブルーマウンテン」で、コーヒー栽培が盛ん。 黒人が多い。ボーキサイトの産地。公用語は英語

(※ 範囲外: )国の治安は世界の中でも最も悪い。