高等学校工業 工業材料/工業材料の性質

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化学結合と結晶構造[編集]

機械的性質[編集]

  • 硬さ

硬さ(かたさ、hardness)とは、材料が異物によって変形や傷を与えられようとする時の、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさである。 工業的に硬さを試験する方法を 硬さ試験法 (かたさ しけんほう)と呼ぶ。

  • 展性および延性

展性(てんせい、malleability)とは、圧縮力などによって素材を板状に加工しようとする際に、素材が破断せずに薄い板に広げることが出来る性質である。 塑性(そせい)の一種でもある。

延性(えんせい、ductility)とは、引っ張り力などの外力によって素材を細く引き伸ばせる性質である。塑性の一種でもある。 延性の例は、ゴムである。金属でいうと、軟鋼、アルミ合金、銅合金が延性に富んだ材料である。 延性に富む材料が必ずしも展性に富むとは限らない。

  • じん性

外力の方向は特にかぎらず塑性加工をする際、圧縮や引っ張りなどの方向に限らない場合の、塑性加工をする際の破断や破壊のしにくさを、じん性(じんせい、toughness)という。粘り強さとも言われる。じん性には延性や展性も必要になる。


物理・化学的性質[編集]

  • 電気伝導率

金属は電気を伝えやすい。 電気の伝えやすさを表す物性値として、電気伝導率(「でんきでんどうりつ」、導電率とも言う、electrical conductivity)は以下のように定義される。 単位は、毎オーム毎メートル [Ω-1・m-1] またはジーメンス毎メートル [S/m] である。 電気伝導率σは次の式で定義される。

j は電流密度、σは電気伝導率、E は電場(電界)である。 このため、電気伝導率σは電気抵抗率ρの逆数になり、

の関係式が成り立つ。

一般に、金属結合の場合は、導電率の高い物質は熱伝導率も大きい。また、金属の場合、温度Tが高くなるほど抵抗率ρが高くなる。ただし、半導体の場合は温度が高くなるほど導電率 が高くなる。これは半導体回路の熱暴走の原因にもなる。


  • 熱伝導率

熱の伝わる度合いのことを熱伝導率という。金属は熱伝導率が高い。中でも銀Agが最も高く、Cu、Au、Al、などがこれに次いでいる。

  • 膨張率

いっぽう、一般に物体は温度が上がると、わずかだが体積が大きくなることが知られており、温度上昇で大きくなる度合いのことを膨張率(ぼうちょうりつ)という。 温度が1[℃](あるいは1[K])上昇するに連れて体積の増加する割合を 体膨張率 という。

長さが、温度の1℃増加あたりに、長さの膨張する割合を 線膨張率 という。 線膨張率はプラスチックが最も高い。

線膨張率をαとして、長さをL、加熱後の長さの変化量をΔL、加熱後の温度上昇をΔTとすると、定義より

の関係式が成り立つ。

膨張量が小さい場合の近似式として、線膨張率αと体積膨張率βとの間に、以下の近似式が知られている。

  • 導出

導出は、物体の体積をV、その変化量をΔVとすると、

および

の関係より、

さらに、近似式

により、

両辺から1を引き、この問題設定では体積膨張率βが、

であり、線膨張率αが

なので、結局は

となる。(以上、導出。)

熱伝導率は、原子間の結合の強さで決まる物性値なので、材料の融点と相関がある。 なお、熱膨張率の異なる材料を組合せて使う場合、温度変化による熱膨張率の違いから、熱応力と呼ばれる内部負荷が生じる。 この熱応力により、材料にクラックなどが入って壊れることがあり、様々なものの故障原因のひとつとなっている。

  • ヴィーデマン=フランツ則(Wiedemann-Franz law)

金属の熱伝導率κと、電気伝導率σの比が、温度Tに比例することが多いことが知られている。 すなわち金属の熱伝導率κ[W・m-1・K-1]と電気伝導率σ[Ω-1・m-1]との比は、絶対温度T[K]に対して、

である。ここで比例定数Lは ローレンツ数 とよばれる定数であり、単位は[]である。 金属の場合、熱伝導と電気伝導の両方の大部分を自由電子が担うので、この関係が成り立っている。


  • 磁性

磁性(じせい、magnetism)とは、物質が原子レベルで磁場に反応する性質であり、他の物質に対して引力や斥力を及ぼす性質である。 永久磁石のように、自ら持続的な磁場を生み出し得る物質は 強磁性 (きょうじせい)を持つ。 持続的では無いが、物質が磁場に引き付けられる場合を 常磁性 (じょうじせい、paramagnetism)といい、磁場に反発する場合を 反磁性 (はんじせい、diamagnetism)という。 磁石などにも使われる強磁性物質としては、ニッケルNi、鉄Fe、コバルトCo、およびそれらの合金がある。 常磁性は、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性を指す。 反磁性とは、磁場をかけたとき、物質が磁場の逆向きに磁化され(=負の磁化率)、磁石に反発する方向に生ずる磁性のことである。 反磁性体は自発磁化をもたず、磁場をかけた場合にのみ反磁性の性質が表れる。

  • 磁化率

常磁性の物質の磁化率(帯磁率)χは、Mを物質の磁化、Hを外部磁場とすると、定義より、 である。

では、物質の内部の磁化を、どのように外部の測定機器から測定するのだろうか。原理的には、次のような原理で測定する。 材料に穴を開ける。この穴は、十分に短いとする。単磁極が存在しない以上、通常の物質で磁束は消滅しないから、磁束の連続性が成り立つ。穴が短いので、ほとんど外部に磁束はもれない。したがって、その穴の磁場は材料内部の磁場に近いものと考える。その穴に測定機器を差し込む。もっとも、実用上では、電気回路でのコイルの相互誘導現象を用いて、相互リアクタンスから求めた 実効透磁率 (じっこう とうじりつ)を、そのまま透磁率としても用いることが多い。

磁化率(帯磁率)χは温度T[K]に反比例する。これを キュリーの法則 (Curie's law)と呼ぶ。

比例定数Cは キュリー定数 (Curie constant)と呼ばれる。

  • 磁性材料の分類

磁性材料を分類すると、いわゆる永久磁石である 硬磁性材料 (hard magnetic material)と、 電磁石コイルの鉄芯などに用いられる 軟磁性材料 (soft magnetic material)がある。

状態図と結晶組織[編集]

結晶構造[編集]

金属・合金の結晶構造[編集]

合金について、これから考える。まず、結晶構造について考える。 なお読者の想定知識として、すでに原子や分子の高校化学での定義や、体心立方格子や面心立方格子については、読者は知っているとして説明を進める。 知らない場合は高校化学についての書籍などを参照して頂きたい。

  • 合金

合金 (ごうきん、alloy)とは、1種類以上の金属に別の元素を、望ましい性質を得る目的で意図的に添加し、材料同士の融合が分子ほどの大きさで考えた場合に、ほぼ材料均一に混和して出来たものである。 合金のイメージとしては青銅や炭素鋼を考えれば良い。

合金でないものの例を挙げる。

  • 鉄鉱石などのような自然物は、たとえ金属が含まれていても、通常は「合金」とは呼ばない。
  • 単に鉄板に溶接で、銅などの異金属を溶接したものは「合金」とは呼ばない。
  • 鉄粉や銅粉やアルミニウム粉などを混合したものは、「合金」とは呼ばない。
  • 高純度の金属を得ようとしたが精製が不完全な結果、異物が混合してる金属材料も合金とは呼ばない。

一般にある溶解した金属に別の元素を添加して固化すると、たとえ金属であっても溶解限度までは元の金属の中に溶解する。このような材料を「固溶体」(こようたい)という。

固溶体[編集]

合金などのように固体の結晶中に異なる元素や化合物を混合させていて、しかも化合物を作っていない物の相を 固溶体 (こようたい、solid solution)という。 具体的な材料をあげれば、炭素鋼や黄銅・青銅など、各種の合金も固溶体である。 (説明のため、常温・常圧の条件下での話をする。たいていの金属は、常温では固体であり、液体ではない。)

このように固体の2種類以上の原子、分子が混合しているものを固溶体という。

合金も一般的に固溶体の一種として分類される。(なお、地球科学や岩石学などでも固溶体はでてくる。複数の鉱物成分が固溶している岩石も固溶体である。)

金属を含む固溶体の例をあげれば、たとえば、青銅Cu-Sn系合金)や黄銅(Cu-Zn系合金)、炭素鋼なども固溶体である。


  • 固溶体の分類
侵入型固溶体 
(図の白丸○が溶媒原子、黒丸●が溶質原子)
(炭素鋼(Fe-C)なら○が鉄Fe原子、●が炭素C原子)
置換型固溶体 
(図の白丸○が溶媒原子、黒丸●が溶質原子)、銅合金(Cu-ZnまたはCu-Sn)なら○が銅Cu、●が亜鉛ZnまたはスズSn
溶媒原子のサイズなどに対する溶質原子のサイズによって、固溶体は膨張または収縮する。

溶解の仕方によって、侵入型固溶体と置換型固溶体とに別れる。(図の白丸が溶媒原子、黒丸が溶質原子)

侵入型固溶体(しんにゅうがた こようたい)は、溶質原子が溶媒原子の結晶構造のすき間に侵入する固溶体である。したがって、溶質原子の大きさが溶媒原子の大きさに比べて著しく小さい場合に出来やすい。具体例は、炭素鋼が、侵入型固溶体の例として、よく挙げられる。

置換型固溶体(ちかんがた こようたい)は、溶質原子と溶媒原子の原子の大きさに違いがない場合に出来やすい。具体例は、黄銅が、置換型固溶体の例として、よく挙げられる。

(※ 東京書籍の高校科学の資料集などでは「侵入型合金」「置換型合金」という用語を使う場合もある。「侵入型合金」の意味は、侵入型固溶体で、固溶元素のひとつが金属の場合である。「置換型合金」の意味は、置換型固溶体で、固溶元素のひとつが金属の場合である。)


一般に侵入型、置換型にかかわらず以下の性質が成り立つ。

  • 析出をしない限り、固溶によって金属は硬化をする。
  • 固溶によって電気抵抗Rは上昇する。(電気抵抗率の上昇を、「導電率がさがる」ともいう。導電率は抵抗率の逆数である。)
(※ 範囲外:) 固溶体の理論とは異なるが、準結晶(ダニエル・シェヒトマンが2011年のノーベル化学賞)も電気抵抗が高く、普通の金属の数万倍もの抵抗をもつと言われる。固溶体の電気抵抗の上昇と、もしかしたら何か関係があるかも? また、固溶体と準結晶のことを合わせ論理的帰結として、固溶体において電気抵抗の高まる原因は、おそらく原子配列の並進対称の結晶構造が乱れるから、とみて、ほぼ間違いないだろうと思われるだろう(参考文献などは無く、保証は無い)。
(※ 範囲外:) 高校で習う固溶体の理論の場合、おそらく説明の簡略化のためか、準結晶やアモルファス合金など、特殊な結晶配列の金属合金は除外されている。


  • 侵入型固溶体

侵入型固溶体について説明するため、鋼(こう、steel)について説明する。炭素鋼は、侵入型固溶体の代表例でもある。

  • 炭素鋼

鉄Feに炭素Cを混ぜこませたものを 炭素鋼 (たんそこう)という。 炭素鋼の製法の大まかな原理は、製鉄を行うときに木炭などと反応させて炭素を混合させる。  工業的には炭素濃度が0.02%以上2.1%以下の程度のものを炭素鋼という。ある濃度までなら鋼中の炭素濃度が高くなるほど鋼は硬くなり、電気抵抗も上昇する。

  • 固溶限

具体的に炭素鋼を例に上げて説明する。 室温では炭素濃度がある濃度を超えると、固溶しきれなくなった炭素Cが鉄Feと反応して  という セメンタイト と呼ばれる化合物が析出するか、または炭素Cが単体として析出する。固溶できる濃度の限界を 固溶限 (こようげん)という。 固溶限よりも低い濃度の範囲では析出しない。この固溶限以上に他元素を添加すると、しばしば化合物ができる。

けっして、固溶している炭素原子Cは、鉄Feと化学反応をして「化合している」のではない。 なぜなら、固溶限の以内なら濃度を増減できることから、つまり組成比が一定でないからである。 そうだとすると、化合物だと考えるのは困難であろう。 また、もし仮に固溶体を化合物と考えると、固溶限以上で析出することも説明しづらい。 なお、一般的に固溶限は温度によっても変わる。

  • 侵入型固溶体の結晶構造

炭素鋼の結晶構造はどうなっているのか。 答えは、ほぼ規則的な、原子半径の大きい鉄Feの結晶格子の間に、鉄よりも原子半径の小さい炭素Cの原子が侵入している、と考えるべきである。 このように1種類の個体の結晶のすきまに、ほかの元素あるいは化合物が侵入してきた固溶体を侵入型固溶体(しんにゅうがた こようたい)という。 侵入型固溶体は、溶媒に相当する結晶を作る側の原子半径が大きいほど、できやすい。 また溶質に相当する侵入する側の原子の大きさが小さいほど、できやすい。

  • 置換型固溶体

固溶体の結晶中の結晶格子の元素が、異なる元素に置き換わっている固溶体を 置換型固溶体 (ちかんがた こようたい)という。置換型は侵入型とは別の結晶構造である。一般に金属元素どうしで固溶体を作るとき場合に、置換型固溶体になる。


具体的に、銅合金の黄銅で説明する。 銅Cuと亜鉛Znの合金を黄銅(おうどう)という。

銅Cuと亜鉛Znの重量濃度比を7:3で混合させたものを 七三黄銅 (しちさん おうどう)という。 濃度比6:4のものを 六四黄銅 (ろくよん おうどう)という。

周期表では銅Cuと亜鉛Znは元素番号が近いことからわかるように原子半径が近い。 なので、結晶構造は、けっして侵入型ではない。けっして、一方の結晶格子中にもう一方の元素が侵入したとは考えにくい。したがって侵入型固溶体とは別の結晶構造が必要になる。 黄銅では銅Cuと亜鉛Znがともに結晶構造を作っていると考えたほうがよい。 両元素とも単体では結晶が面心立方構造である。なので、合金である黄銅もそれに近い構造をしている。 だとすると銅Cuの結晶格子の一部分が亜鉛Znに置き換わっていると考えられる。このように結晶中の結晶格子の元素が異なる元素に置き換わっている固溶体を 置換型固溶体 (ちかんがた こようたい)という。   黄銅は、銅や亜鉛の単体よりも硬い。黄銅は合金を作ることによって、もとの元素より硬化する。 銅Cuは金属元素の中ではやわらかく、延性が3番目に延性が高い。(金Au、銀Agについで、銅Cuが三番目。)  また亜鉛Znも黄銅より、やわらかい。 しかし黄銅は、これ等の単体の状態よりも硬い。つまり黄銅では合金を作ることによって、もとの元素より硬化したことになる。  

  • 化合物と固溶体との相違

間違えてほしくないのは、固溶体は、いわゆる化合物ではない。(書籍によっては、固溶体を化学変化の一形態とみなす場合もあるが、本書では区別する。)

固溶体における侵入原子と結晶原子は、液体のおける溶質と溶媒に対応する。よって、固溶体でも、「溶質原子」、「溶媒原子」のような表現をする場合もある。

※ ただし、名前が似ていて混同しやすいので、混同をふせぐために別の呼び方をする場合もある。たとえば、炭素鋼(Fe-C系)なら、Feを「母体金属」と呼ぶ場合もある。(※ 科目『機械工作』で、炭素鋼(Fe-C系)のFeや銅合金(Cu-SnまたはCu-Zn)のCuを、実教出版の教科書では「母体金属」と呼んでいる。)
固溶体以外の重要知識[編集]
  • 非晶質金属

一般に金属は結晶体であるが、ある種の合金では、溶融した金属を冷却ロールなどの回転体で急冷しながら製造することで、結晶構造が整わないままに固化した不規則な構造の金属を得ることが出来る。このような溶融状態のままの原子配列で、固化した構造を 非晶質 とかアモルファス (amorphous)とかという。

なお、非晶質金属を得るのに必要な冷却速度は数万~数百万 ℃/秒 である(※ 工業高校『機械工作』で習う)。比較のため鋼の焼入れの冷却速度を述べると、鋼の焼入れの冷却速度はせいぜい およそ千 ℃/秒 である(※ 参考文献: 関口春次郎『要説 機械工学 第4版』、理工学社、119ページ)。

熱に対して不安定であり、加熱すると性質が変わってしまう。

非晶質金属そのものの製造では、大型のものをつくるのが難しく、薄板または細い線材しか得られない。

追記
「超急冷」
(※ 追記 :)通説では、「ある種の合金を超急冷することでアモルファスになる」と言われているが、しかし、鋼の焼入れは急冷だがアモルファスではない。
板材を得るには冷却ロールを使う。2個のロール間で圧延する双ロール法のほか、1個の単ロール法でも非晶質金属が得られるので、必ずしも圧延する必要は無い。
線材を作る場合、回転する水槽などの水流中での紡糸をする方法である水流流紡糸法により、非晶質金属の線材が得られる(※ 参考文献: 関口春次郎『要説 機械工学 第4版』、理工学社、119ページ)。


アモルファス金属の特徴として、力学的には強靭性(きょう じんせい)であることがあげられる。(※ 科目『工業材料』では「粘性」と表現しているが、金属材料でいう「粘性」とは流体力学で習う「粘性」とは意味が違う。なので当wikiでは「靭性」と表現した。)

(※ この単元の範囲外: )アモルファス金属の特徴として、強靭性、磁気異方性が無いこと、軟磁性が挙げられる。靭性の理由として、アモルファスでは金属結晶のようなすべり面がないため、強度と粘りを両立することができると考えられている。アモルファスには結晶方向が乱雑なため磁気異方性が無いと考えられている。軟磁性の理由として、磁壁の移動を妨げる結晶粒界が存在しないためと考えられている。(科目『工業材料』では範囲外だが、電気系の科目などで似たようなことを習う可能性があるので、紹介しておく。)


(※ 範囲外: )また、アモルファス合金は、引っ張り試験をしても、ほとんど塑性(そせい)変形をしないと報告されている(※ 参考文献: 関口春次郎『要説 機械工学 第4版』、理工学社、119ページ)。(※ 変形をしないのではなく、弾性変形の範囲内に納まる。なのでアモルファス合金は「粘性」または「靭性」が高いと言われる。) このことから分かることとして、つまり一般の金属で塑性変形の起きる理由は、結晶粒界の存在が理由であると予想されている。(後述の「転位」の理論などともツジツマが合う。)

アモルファス磁性体

(※ この単元の範囲外: )「アモルファス磁性体」というのも、このアモルファス合金と似たようなものである。アモルファス磁性体の製法の一例として、FeやNiなどの磁性体をベースにしてB(ボロン、※ ホウ素のこと)やSi(シリコン)やP(リン)などを混ぜた材料を溶かし、ノズルなどで噴出し、銅などの熱伝導のよい材質でできた回転ローラーで加工するなどして急冷して、アモルファス磁性体は作られる。

(※ 『工業材料』科目の後半で、アモルファス磁性体について習う。)

日本では、テープなどリボン状のものとして過去にアモルファス磁性体が生産されたようである。(※ 検定教科書にも、「リボン」がどうこう書いてある。)



「アモルファス半導体」とは違う

半導体のいっしゅで「アモルファス半導体」というのがあるが、この節で述べている「アモルファス金属」とは製法や特性がだいぶ違うので、混同しないように。アモルファス半導体は、蒸着などで得られる。

『工業材料』科目でもアモルファス半導体についても習う(別の単元だが)。

※ 大学生むけの電子材料工学の教科書を読んでも、なんと、アモルファス半導体の製法やアモルファス磁性体の製法は書かれてない本ばかりである。読者は、もしも、工業高校の『工業材料』の教科書を持っているなら、すてないようにしよう。
加工と変形について[編集]
  • 塑性変形(plastic deformation)

金属材料はある程度の荷重までなら、変形しても荷重を取り除けば元に戻る。このような性質を 弾性 (だんせい、elasticity)という。しかし、限度以上の荷重を加えると、力を取り除いても元には戻らない。このような性質を 塑性 (そせい、plasticity)という。

  • 加工硬化(work hardning)

加工により変形をした金属材料は、より硬くなる。この現象を 加工硬化 (かこうこうか、work hardning)という。 この現象を利用した加工法として、たとえば鍛造やショットピーニングによる硬化がある。 加工硬化の結果、硬さは増すが靭性は低下する。

  • 再結晶(recrystallization)

塑性変形をした金属材料に、加熱をすると、加工によって安定状態から外れた原子が元の安定の場所に戻る 再結晶 (recrystallization)を起こす。これにより、材料に軟らかい性質が戻る。再結晶により、加工硬化が取り除かれる。 塑性変形で加工硬化が進み過ぎた材料に対して、再結晶のための加熱が用いられる。


  • 加工

塑性加工時の加熱の有無により、加工法が2つに分類される。

  • 熱間加工(hot working) :再結晶温度以上を加えて塑性変形させる加工法
  • 冷間加工(cold working) :再結晶温度以下で塑性変形させる加工法


  • 冷間加工

冷間加工では、加工硬化がおこる。また、結晶粒が加工方向に引き伸ばされる。 また、結晶粒の大きさと数については、一般に加工によって結晶粒は砕かれる。そのため、加工後は結晶粒の数が多くなる。そして加工によって結晶粒は小さくなる。 電気抵抗については、金属材料の加工の結果、一般に電気抵抗は増す。原因として、結晶粒の界面が増えたことから電導を乱されたことが、原因とされる。

  • 熱間加工

一般に再結晶温度より以上では材料は硬さが下がる。そのため、塑性変形に要する荷重が小さくなる。加工のさい、加工硬化はするが、再結晶も起こるので、硬さが下がる。


  • すべり変形
すべりによる変形
(a)が変形前の板材の状態。通常、金属の板材(a)を強い力で引っ張ると(b)のように すべり が起きる。

たとえば、棒状あるいは長方形板状の細長い金属材を塑性変形するまで引っ張る事を考える。 金属材の中央部分がくびれるが、このとき中央部分のあたりに、軸方向に直交する水平断面に対して、斜め方向に、変形面が現れる。 このように金属を引っ張ると、特定の方向の結晶面にそって、ずれ変形を起こす。 この変形を すべり (slip)という。このずれ変形をおこした特定の面を、 すべり面 (slip plane)という。試料表面には すべり線 (slip line)と呼ばれる段が生じる。 すべり面に平行な方向は、原子密度が最大となる方向か、それに近い面である。 原子密度が最大の面ということは、つまりその面に直角な方向が原子密度が最小ということである。 したがって、その最小方向の直角方向をせん断する方向に変形が起こる。 その結果、原子密度が最大の面に平行にすべり面が生じる。 そして、このすべり面と平行な、すべり線が観測される。   この滑り面に、せん断力が かかる。


  • 転位
上図 右: 刃状転位.
下図 右: らせん転位.

塑性変形の現象を、結晶レベルのミクロな視点で見たらどうなるのか? 力学的に結晶原子にかかる力学的な力を想定する。 原子配列の乱れが最初から存在すると考える。この配列の欠陥は、 転位 (てんい、dislocation)と呼ばれる。

塑性変形のしやすさは、この転位の移動のしやすさであると考える。

金属の硬さは、この転位の移動のしづらさにより決まると考える。

合金で硬化するのは、合金元素が転位の移動を妨害するためと考える。

ある線や面を境に結晶原子の数に、少しだけ差があり乱れていたとする。 そうすると、本来は密度が違うのにそれを結晶構造になっているから、その乱れの周囲にひずみがかかる。 具体的には、材料内に、線状に配列の抜け(あるいは過剰)、あるいは面上に配列の抜け(あるいは過剰)が最初から存在して、材料内部に段差があると考える。

塑性変形とは、この転移が外力を加えられて、表面に移動して、表面の段差になった結果、結晶そのものが原子間距離で一段ずつ変形してしまい、また、段差が表面に出た結果、内部にはもはや段差がないことから、表面に段差が生じた状態で安定してしまい、もはや復元できなくなったことの帰結と考える。

加工硬化の原因は、加工によって転位密度が増大すると考える。 そして、転位同士はお互いに干渉し、転位を動きづらくさせると考える。加工が進めば進むほど硬くなるのは、転位のそのような機構のためと考える。

この転位と硬化の関係はすべての金属に共通である。けっして、鉄鋼だけに特有でないし、軽金属だけに特有でもない。

セラミックの結晶構造[編集]

陶磁器やガラスなどの焼き物のような材料はセラミックスである。セラミックスは共有結合によって結合した材料によって作った個体状の材料である。

土や粘土を焼いて固めたものは、セラミックの一種だと思ってもらいたい。これらのセラミック材料と金属との違いは、セラミックスは金属光沢をもたずに、また一般に自由電子をもたない。つまりたいていのセラミックスは、誘電体である。セラミックスは高分子とも違い、燃えにくいし、プラスチックと比べて、硬く、融点も高い。また、食塩NaClとも違って、一般のセラミックスは、水に入れても、溶けない。

セラミックは硬いので、ゴムとは違って伸びにくいし、曲がりにくい。傷がつきにくい。しかし、衝撃に弱くてもろい。また、高分子とは違い、融点が高いことと、金属のような縁性が無いことから、成型が困難である。また金属とは違い、セラミックスは、酸・アルカリに溶けにくい。 たいていのセラミックスは化学的に安定であり、さびない。 焼き物の化学的性質が、金属とも、イオン性結晶とも、有機高分子とも、性質が大きく異なるので、これらの材料とは化学結合の仕組みが異なっていると考えるべきである。 古代では、粘土をこねて、土器の形にしてそれを乾燥させたあとに、焼くことで固くした焼き物を使っている。このままだと、土器は水分を通すので水を蓄えることができないので、うわぐすりを使う。うわぐすりは主にケイ素(砂に多く含まれている。)を主成分としている。

セラミックスの結合は、より正確に述べれば。共有結合または共有結合とイオン結合の中間の結合と考えられている。

  • イオン結合性セラミックス

セラミックスの中でも、CaやMgのような、軽金属の酸化物のCaOやMgOはイオン結合の要素が強い。 ただし、共有結合としての性質も持っているので、区別して食塩NaClなどのイオン結晶とは区別が必要である。イオン性セラミックスといっても、水には溶けない。ほかにもなどがイオン性セラミックスである。 金属の酸化物は電気陰性度が高く、金属原子の電子が酸素側へと強く引き寄せられる。 そのため、イオン性の強い結合を酸化物セラミックスは持ちやすい。

  • 共有性セラミックス

いっぽう、炭化ケイ素SiCなどは共有結合の要素が強い。炭素、ホウ素、窒素は電気陰性度が中程度でありイオン性を持ちにくい。そのため、これらの化合物は共有結合性を持ちやすい。


セラミックの化学結合の格子欠陥は電気物性や化学的物性に大きな影響を与える。この点がセラミックスの結合が、共有結合とイオン結合の中間の結合である特徴である。もし、単純な金属結合なら、そもそも欠陥の影響が自由電子により材料全体に分散されてしまうだろう。もし、単純な共有結合なら、炭素やシリコンなどの高分子化合物を除けば、そもそも結晶を作れないだろう。もし、単純なイオン結合なら、格子欠陥があれば、その部分は化学結合の結合力が無く、結晶粒界になるだろう。

結晶全体として、電荷の正負の電気的中性が保たれる必要があるので、格子欠陥と同時に電子や正孔が伴われる。

セラミックの欠陥は次の2種類に分類される。

  • フレンケル欠陥(frenkel defect)
  • ショットキー欠陥(schottky defect)


  • フレンケル欠陥(frenkel defect)

結晶中において、格子点イオンが、正規の位置を離れ移動し、その後に空孔と移動した格子間イオンとが残った欠陥のこと。このフレンケル欠陥の生成は、密度に関しては変化はないが、電気伝導性を増加させる。

  • ショットキー欠陥(schottky defect)

結晶中において、陽イオンと陰イオンがともに表面に移動して格子点イオンが結晶の外に出た後に、結晶内部に両イオンの空孔が残った欠陥のこと。ショットキー欠陥の生成により、密度が変化するが、電気伝導性は増加しない。


本書では、フレンケル欠陥やショットキー欠陥の説明図に、塩化ナトリウムを例にして、(塩化ナトリウムはイオン結合でありセラミックではないが、)フレンケル欠陥を説明する。

  • 固溶体

不純物イオンが溶媒イオンと同じ程度の大きさであれば置換型固溶体となり、不純物イオンがかなり小さければ侵入型固溶体をとる。

状態図[編集]

参考文献[編集]

  1. 日本機械学会編、『機械実用便覧』改訂第6版、丸善株式会社、2006年。
  2. 文部科学省 、『工業材料1』、実教出版、平成16年(西暦2004年)。文部科学省検定済教科書。
  3. 文部科学省 、『工業材料2』、実教出版、平成16年(西暦2004年)。文部科学省検定済教科書。
  4. 井形直弘編 本橋嘉信・浅沼博著、『金属材料基礎工学』初版、日刊工業新聞社、1996年。


1.『機械実用便覧』は用語の確認や機械学会での見解の確認に使用した。2.『工業材料1』および3.『工業材料2』は高校での教育範囲の確認および、文部省の見解の確認に使用した。