高等学校情報/社会と情報/通信とネットワーク
ネットワーク
[編集]- LAN
家庭内や学校内などで複数のパソコンでデータを共有したり、わざわざ全世界に開かれたインターネットを用いるのは手間がかかるしセキュリティ上にも問題があるので、家庭内などの狭い組織内での通信を行う際、パソコン用の通信機器はインターネットとは別にLAN(「ラン」、Local Area Networkの略)というネットワークを構築できるようになっている。
LANには、LANケーブルを使って接続する有線LANと、ケーブルを使わず電波をつかって通信する無線LANがある。
一般に有線LANのほうが、少ない電力で多くの情報を通信できる(日本文教出版 I)。
無線LANは、携帯電話のサービスとは別物であり、また、無線LANの電波も10メートル程度しか届かない(※ 第一学習社)。
無線LANは、ルータに接続されたアクセスポイント(access pont)が、パソコンなど自分のコンピュータと通信する仕組みである。 (※ 数研が英訳)
市販の家庭用の無線LAN製品では、無線LAN用のルータとアクセスポイントが一体化した製品も多い(※ 開隆堂、数研(P123 下図にある)、第一学習社)。
無線LANはその性質上、近くにいる人のコンピュータで無線を受信できてしまうので(傍受(ぼうじゅ)されてしまうので)、暗号化などをしてないと内容を見られてしまう。なので、セキュリティ確保のため通信の暗号化の設定をしておく必要がある。
また、パスワードなどの認証も設定しておく必要がある。そうしないと、勝手に回線を使われかねない(日本文教出版 I)。
こういったセキュリティ対策のためか、会社などでは有線LANのほうを中心的に使うことも多い(第一学習社)。
なお、公衆無線LANという、勝手に近くにいる人に回線を使わせる、公共機関や飲食店などの用意した無線LANもある。
無線LANの技術名として wi-fi (ワイファイ)という呼び方が普及しており、これは本来は、他社製品とも相互に接続できるという認証を受けた機器が wi-fi を名乗ることを業界団体に許されている(※開隆堂、日本文教出版)。なお、業界団体の Wi-fi Alliance が認定しており、また、無線LANの登録商標になっている(日本文教出版 I)。
無線LANの規格としては、IEEE 802.11 というのがある。なおIEEEとは、アメリカ合衆国に本部がある米国電気電子学会のことで、この学会が定めた規格にも IEEE の呼び名が使われている。
- ※ ほか、数研出版が有線LANの規格のイーサネットや、ケーブルの「ツイストペアケーブル」のノイズ耐性を紹介。
- ※ 第一が、光回線のFTTH、放送網のCATVを紹介。
- ※ 開隆堂が、Bluetooth(ブルートゥース)を紹介。
、
- WAN
いっぽう、まったく離れた建物どうしのコンピュータを、公衆回線などで結んでる通信ネットワークなどをWANという。Wide Area Network の略。
インターネット自体が、世界規模のWANの一つだと解釈してよい(第一学習社『情報I』)。
- インターネット
一般に、インターネットとのアクセスは、WWWというサービスを用いて行われてる。WWWのサービスを提供するサーバは各所にある。
WWWとはworld wide web(ワールド・ワイド・ウェブ)の略である。
WWWは、世界規模のWAN(Wide Area Network)である、と見なしてよいだろう。
家庭用のパソコンからインターネットにアクセスするには、まず「プロバイダ」と呼ばれるインターネット通信サービスを提供する業者との契約が必要である。プロパイダのことは正確にはインターネットサービスプロパイダ(Internet Service propider)といい、英語表記の頭文字をとってISPと略される。
- ルータ
通信信号に関する制御機器で、通信信号を必要な場所にだけ流し、情報が不必要な場所には流れないようにするための制御機器。 インターネット接続をするには、まずパソコンをLANケーブルなどでルータ(router)という装置に接続し、ルータが通信回線を介してインターネット回線につながっているのが一般である。
- ※ 「情報I」時代ではブラウザは中学範囲。かつて「社会と情報」時代は高校範囲だった。
パソコンからインターネットを閲覧するにはウェブ・ブラウザ(Web browser)というソフトウェアを起動する。単にブラウザ(browser)とも呼ばれる。 ウェブブラウザには閲覧先のウェブページを表すURL(ユー・アール・エル、Uniform Resource Locatorの略)の表示欄がある。 URLの表示欄は、たいていブラウザの上の方にあり、「http://www.」などで始まる文字列がURLであることが多い。
httpとは通信方式を表している。
- プロトコル
番号 | 名称 | 例 |
---|---|---|
4層 | アプリケーション層 | HTTP, SMTP, FTP, POP, SSH,など |
3層 | トランスポート層 | TCP, UDP |
2層 | インターネット層 | IP |
1層 | インターネット層 | イーサネット |
インターネットの通信には、どのようなOSのコンピュータでも通信がし合えるように、通信の際の約束事が決められている。このような通信の規約をプロトコルという。インターネット用いられるプロトコルにはTCP/IP(ティーシーピー・アイピー)という通信プロトコルがあり、表のような4階層のモデルがよく使われている。
TCP/IPによって、次章以降に説明するようなパケット交換の仕組みが、規定されている。
なお「TCP/IP」とは、「 Transmission Control Protocol / Internet Protocol 」の略である。
またなお、国際標準化機構 ISO の定める「OSI参照モデル」では7層まで規定されている。インターネットではそのうち表に紹介した4つの層が使われている。
上手のように、送信側では各層でそれぞれの層でヘッダ(header)と言う情報が追加されていく。そして受信側では逆の操作が行われ、各層でそれぞれのヘッダ情報が取り除かれていき、最終的にもとのデータが復元されていく。
トランスポート層のプロトコルには、TCPのほか、UDPというのもある。動画や音楽などのストリーミング(streaming)配信で使われるプロトコルが、UDP(ユーディーピ、User Datagram Protocol)である。
音声通話や動画や音楽のストリーミング配信では、構造以外の情報では少しくらいデータにエラーがあっても良いので、速く送信するリアルタイム性に意義があるので、UDPでもエラーチェックなどは基本的にはしない(※ 日本文教出版、第一学習社)。
いっぽう、TCPでは、通信したデータが正しく届いているかをチェックし、もし誤ったデータや不足したデータがあれば送信元に再送をさせる。
ほか、SMTPやPOPはメール関係のプロトコル。
FTPはファイルサーバ関係のプロトコル。
第2層と第3層には、あまりプロトコルの種類が無い。第1層と第4層が、比較的にプロトコルの種類が多い(※第一学習社)。
※ なお、右図の呼び方だが、特に決まっておらず、日本文教出版「4階層モデル」、東京書籍「TCP/IP 参照モデル」など、色々と呼ばれている。
パケット交換方式
[編集]インターネットでデータを送信するときは、データを分割して送信している。このようなデータの分割の一個一個の単位をパケット(packet)という。パケットのひとつずつには、ヘッダ(header)と呼ばれる、送り先とパケットの順序についての情報がついている。パケットは、そのヘッダの送り先の情報に従って、運ばれていく。
「パケット」(packet)とは、もともとは小包(こづつみ)という意味。
パケットごとに分割することで、もしデータが破損しても、その破損したデータだけを再送信すればよく、効率的になる。また、空いている通信網を効率的に利用できる利点が有る。
ヘッダにある、送り先の情報の中身は、後述する「IPアドレス」などである(※参考: 実教出版、『情報の科学』)。
受信側で、分割されたパケットを組み合わせて元のデータを復元している。パケットは、かならずしも順番どおりに届くとは限らないが、しかし順番についての情報がパケットのひとつずつに付いているので、受信側で、ヘッダのその情報に従って、元のデータを復元していく。
このような、インターネットにおける、パケットを用いたデータの通信の方式を、パケット交換方式という。
なお、電話は、これとは異なる方式である。電話は、送信側と受信側とを結ぶ回線を確保してから通話するため、通話中は、この2人が回線を占有するので、他の人はその回線を使えない。電話のような方式は、回線交換方式という。
一方、パケット交換方式では、ひとつの回線でも、同時に複数の人がデータを送ることが出来る。
インターネット通信のプロトコル
[編集]IPアドレス
[編集]わたしたちの住居には住所が割り当てられていて、郵便物が住所にとどくような仕組みが、現実にはある。
インターネットでも、各家庭のルーターにIPアドレス(発音:「アイピーアドレス」、Internet Protocol adress の略)というインターネットにおける住所のような意味をもつ番号が割り当てられている。
パケットの送り先として使われる情報が、このIPアドレスである。
- (※範囲外・参考) Windows のターミナル(新しめwindowsバージョンでのコマンドプロンプト)なら、コマンド
IPconfig
で、使用しているネット環境でのIPアドレスを確認することができる。文科省の動画教材 『【情報Ⅰ】情報通信ネットワークとデータの活用(2)「意外と簡単!?自分でできるネットワークの構成」』でも紹介済み。
ドメイン名
[編集]IPアドレスは数字だけの並びなので、人間には覚えにくい。
そこで、たとえば文部科学省のホームページにアクセスするなら、文部科学省のIPアドレス(ちなみに 202.232.86.81 が文部科学省のIPアドレスである)を入力するかわりに、ブラウザの検索先の入力欄に「 http://www.mext.go.jp/」と入力して決定すれば、目的の文部科学省のホームページにアクセスして閲覧できるようになっている。
この仕組みは、文部科学省のIPアドレスに、対応する「mext.go.jp/」という名前をつけるという仕組みになっている。
この文部科学省のホームページの場合、「mext.go.jp/」のぶぶんがドメイン名(domain name)である。
「www」の部分もふくめてドメイン名という場合もある。たとえば、「www.mext.go.jp/」を、文部科学省のドメイン名と見做す場合もある。
- (※ なお、「http」とかは、プロトコルの種類を表している。)
ドメイン名とは、IPアドレスに対応している部分だけ。なので、たとえば、
- 『文部科学省の紹介』 https://www.mext.go.jp/b_menu/b003.htm
というページは、おそらく専用IPアドレスは用意されてはいないので、「mext.go.jp/b_menu」とか「mext.go.jp/b_menu/b003.htm」はIPアドレスではない。
たとえば、もし、専用IPアドレスが「mext.go.jp/」だけでなく「mext.go.jp/b_menu」にも別のIPアドレス用意されていたら、理論上は「mext.go.jp/b_menu」もドメイン名になるが、慣習的にそういう事はしないのが普通。
- 背景事情
たとえば、
にwebブラウザでアクセスしようとする場合、webブラウザの内部的には、実はまずドメイン名 www.mext.go.jp/ に対応するIPアドレスをDNSサーバという場所で探してきて、文部科学省サーバのIPアドレスが分かりさえすればwebブラウザは文部科学省サーバにアクセスできるようになるので、そしてwebブラウザは文部科学省のサーバにアクセスする。
アクセス後、今度はwebブラウザからIPアドレス先の文部科学省サーバに、送信メッセージで
- 「GET /b_menu/b003.htm」
のようなメッセージが送られる仕組みである。
そして、文部科学省のサーバにこのGETメッセージが届くと、今度は文部省科学省サーバがwebブラウザに、ページ内容のHTMLファイルを送り返す。
そして、webブラウザは受け取ったHTMLファイルを解釈してブラウザ画面で表示しているという仕組みである。
つまり、webブラウザのURLアドレス欄に表示される文字列(たとえば「https://www.mext.go.jp/b_menu/b003.htm 」)の書式は実は、
のような仕組みになっている。(詳しくは、「telnet」(テルネット)や「ソケット通信」と言う用語をネット検索すれば調べられる。)
ウェブブラウザとWebサーバの やりとり のプロトコルがHTTP(発音:「エイチティーピーピー」)である。「http://」の「http」とは、このHTTPのプロトコルのこと。
- (※ 範囲外: )サーバには、webサーバの他にも種類があり、FTPサーバなどのファイル共有サーバなどもある。FTPサーバは、FTPというプロトコルが使われているので、FTPサーバという。FTPは、HTTPとは別のプロトコルである。このように、プロトコルには、色々な種類がある。
「http://www.mext.go.jp/」のように http://ドメイン名 を URL (発音:「ユーアールエル」)という。
このURLによって、個々のWebページが指定されている。
なお「URL」とは、ユニフォーム・リソース・ロケータ、Uniform Resource Locator の略。
これらのように、IPアドレスにドメイン名を対応させるシステムのことをドメインネームシステム(Domain Name System)といい、DNS(発音:ディーエヌエス)と略す。
また、このドメインネームシステムを行っているサーバーのことをDNSサーバまたは「ネームサーバ」という。
たとえばウェブブラウザの検索先の入力欄に「http://www.mext.go.jp/」と入力した場合、普通のブラウザなら、まずは、ブラウザがDNSサーバーにアクセスして、このドメイン名のIPアドレスをさがし、そしてそのIPアドレスのホームページを表示する、という順序で、最終的にブラウザに目的のホームページが表示される、という仕組みになっている。
単語 | 種類 |
ac | 大学 |
co | 企業 |
go | 政府機関 |
or | 非営利組織 |
ne | プロパイダなどの ネットワークサービス |
ed | 小中高などの教育機関 |
末尾 | 種類 |
jp | 日本 |
uk | イギリス |
de | ドイツ |
fr | フランス |
ru | ロシア |
kr | 韓国 |
ホームページによっては、ドメイン名に国名が無く、かわりに、企業なら「com」、教育機関なら「edu」、 などが書かれている形式もある。
かつてIPアドレスには32ビットで構成されているIPv4(アイピー ブイフォー)というプロトコルが使われた。このIPv4を用いれば、約43億個(232個)までIPアドレスが区別できる。しかし、世界的にインターネットユーザーが増えてきたことによりIPアドレスが足りなくなってきたので、近年はアドレスが128ビットで構成されたIPv6(アイピー ブイシックス)というプロトコルに移行していっている。IPv6では理論的に2128個(約340澗。「澗」は「かん」と読み、1036のこと。)までのIPアドレスの区別に対応できる。
電子メールのネットワーク
[編集]電子メールの場合、まず、送信者のメールは、一般にSMTPサーバという種類のサーバに送られる。なお「SMTP」とはプロトコルの名前。( Simple Mail Transfer Protocol の略。英語は覚えなくて良い。)
そして、SMTPから、一般に、メール受信者用のサーバーであるPOPサーバという種類のサーバに送られる。なお「POP」とはプロトコルの名前。( Post Office Protocol の略。英語は覚えなくて良い。)
つまり、一般に、
- 送信者 → SMTPサーバ → POPサーバ
というふうに、メールが送られる。
受信者がメールソフトなどで自分あての電子メールを確認するときは、自分の所属するPOPのサーバに新着メールがあるかどうかを確認している。
もし、POPサーバに自分あての新着メールがあれば、その新着メールを自分のコンピューター(クライアント)に送ってもらうようになっている。
つまり、
- 送信者 → 送信者用のサーバ → 受信者用のサーバ
というふうに送られ、受信者が受信者用サーバーから電子メールを受け取っている。
送信者がメールを送信した瞬間に自動的に送られる先は、POPサーバまで、である。送信した瞬間には、受信者の手元のコンピューターにはメールが自動的には送られない。
POPやSMTP以外にも、電子メールのプロトコルがあり、そのような場合、サーバーの種類や経路が違う場合もある。
もし読者が「アップロード」や「ダウンロード」という言葉を知ってるなら、POPとSMTPによる電子メールの流れる仕組みは、
- ・ まず、送信者がメールを出す行為は、SMTPサーバに電子メールをアップロードするという行為になる。
- ・ そして、SMTPサーバから、宛先アドレスに対応するPOPサーバへと、アップロードされた電子メールが移動する。
- ・ 最終的に受信者は、POPサーバーから自分あての電子メールをダウンロードする。
というような流れになる。
SMTPサーバやPOPサーバなど、電子メール用のサーバをまとめて、「メールサーバ」などという。
メールのきまり
[編集]電子メールの宛先を一般に「メールアドレス」または「電子メールアドレス」という。
メールアドレスの書式は、たとえば「foo@example.com」のような書式になっている。
メールアドレスは
- ユーザ名@ドメイン名
の書式になっている。
メールアドレスには、ユーザ名とドメイン名のあいだに@(アットマーク)が入っている。
たとえば「foo@example.com」の場合なら、「foo」がユーザ名であり、「example.com」がドメイン名である。
その他
[編集]- ※ 教科書ではコラムなどになってる話題。暗記は不要。
メールがエラーで相手に届かない場合などに、自動的に途中のメールサーバーにより送信者名に「MAILER-DAEMON」(メーラー デーモン)などと入力されて返信される場合がある。けっして悪魔を名乗るイタズラのメールではないので、勘違いしないように。(※ 実教出版の教科書にある話題らしい。)