高等学校政治経済/経済/労働問題と労働市場

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近代イギリスの労働運動[編集]

欧米で産業革命以降資本主義が進行してくると、しだいに資本家は価格競争のため低賃金で労働者を働かせるようになり、児童労働や長時間労働などの問題が発生していった。

イギリスでは、労働者が、団結して資本家と交渉しようとしたが、イギリス政府が資本家の味方にたち、労働者の団結が、契約の自由や営業の自由などの自由競争を阻害するという主張もなされ、1799年に団結禁止法を制定し、労働者の組合や団結交渉などを禁止した。

このような労働運動の弾圧に対して、労働者の側は、初期は、イギリスのラダイト運動のような機械打ち壊し運動で対抗した。そして労働運動が進展していき、イギリスでは1824年に団結禁止法が廃止され、労働者は、しだいに組合を作って団結して資本家に対抗するようになった。

日本の労働運動[編集]

日本の労働運動の歩み[編集]

日本では、日清戦争ごろから労働運動が起きるようになっていたが、労働組合は公認されなかった。そして、しばしば運動は弾圧された。 日本では1897年に労働組合期成会が結成され、鉄鋼組合などが結成されたが、しだいに消滅した。

1911年、工場法の制定によって労働時間が制限されたが、一方で治安警察法(1900年〜)や治安維持法(1925年〜)などによって労働運動・労働組合は取り締まりを受けた。

第二次大戦後、GHQの意向もあったし、日本の経済民主化政策として、労働組合・労働運動は公認され、1945〜47年に労働三法(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)が制定された。

法律ではないが、毎年、春に、産業ごとに労働組合が賃上げ要求をする「春闘」(しゅんとう)という運動が、日本では定着している。春闘の習慣は、1950年代から始まった。

労働基準法[編集]

労働基準法は、つぎのことを定めている。

最低賃金、労働者の選挙権などの公民権をさまたげないこと、強制労働の禁止、労働時間、男女同一賃金など。

法定労働時間は1日8時間、週40時間以内。しかし、労働組合との書面の協定(三六協定、さぶろくきょうてい)があれば、第36条にもとづき、時間外労働も可能。

公務員の労働三権の制限[編集]

公務員の労働三権の制限
  団結権 団 体
交渉権
争議権
一般職の公務員  ○  △   × 
国営企業など(国有林野・特定独立行政法人含む)  ○  ○   × 
警察・消防・刑務所など  ×  ×   × 

日本では、公務員は、すべての業種で、ストライキなどの争議権が禁止されている。

また、警察・消防・自衛隊・刑務官・海上保安庁では、労働組合の設立すら認められてなく、労働運動の団体交渉の権利も認められていない。公共の重要な利益にかかわる職種だからだろう。

その他の一般の公務員では、労働組合は認められているが、団体交渉権が認められてない。

このように、公務員では、労働運動に関係する権利がいくつか規制されている。

かわりに人事院が、公務員の労働条件の改善のための勧告を出している。

なお、公立高校教員には団結権が保障されている(※ 過去のセンター試験では、この問題に関して出題、あるいは記述されている)。

労働争議[編集]

労働者側は、ストライキ(同盟罷業(ひぎょう))、サボタージュ(消極的怠業(たいぎょう))ができる。

一方、使用者側は、対抗措置としてロックアウト(作業所閉鎖)ができる。

労働関係調整法[編集]

  • ※『中学校社会 公民/労働者の権利と保護』にも、関連する記述がある。ただし。 Wikibooks は完全な大多数に執筆が開かれているし、一方である程度の人員により内容のチェック、検討はされているが、基本的に記述の妥当性有益性については何ら保証されていない。少なくとも現編集者はある程度以上の深さのリンク先は、一切見ることもないので、前編集を継承してこの注を記述しているのみである。

労働委員会は、斡旋(あっせん)・調停仲裁(ちゅうさい)の3種類の方法を通して、労働争議の調整にあたることが、労働関係調整法により定められている。

また、労働委員会は、使用者代表・労働者代表・公益代表という3者の委員から構成されることが定められている。

また、電力・ガスなどの公益事業での争議や、規模が大きくて国民の生活を害する恐れのある争議では、内閣総理大臣が緊急調整として50日間だけ争議行為を禁止できる。

斡旋とは、労働委員会が選んだ斡旋員が労使双方の言い分を聞いて、話し合いの場を提供するなどして、労使双方に争議の自主的解決を促すこと。

調停とは、労働委員会に設けられた調停委員会が調停案を作成し、労使双方に受諾を勧告する。

仲裁とは、仲裁委員会が、法的に拘束力のある仲裁裁定を下す。

労働組合法[編集]

労働組合法は、ストライキなどの争議行為を行う権利を認めている。また、労働組合を結成する権利も認めている。

また、使用者は、労働者が労働組合を結成することを認めなければならないと定めている。使用者が、労働組合の活動を妨げたり団体交渉を拒否することを、不当労働行為として禁止している。組合に加入しないことを条件に雇用する黄犬契約(おうけんけいやく)は、不当労働行為として禁止されている。

労働運動により損害が発生しても、その労働運動が適法な活動であるかぎり、労働者は刑事上および民事上の責任を問われない(刑事免責・民事免責)。

なお、使用者が労働組合に経済援助をすることは不当労働行為に当たり、禁止されている(※ 過去のセンター試験では、この話題に関して出題、あるいは記述されている)。労働組合の運営は、労働者が自主的に行わなければならない。

また、使用者側が、不況などの理由によって賃金引下げを提案する事自体は、使用者の正当な権利である(※ 過去のセンター試験に記述あり)。

発展: 労働審判法[編集]

2004年より、労働審判法による労働審判制度が開始している。この手続きは、裁判によらない、迅速な労働問題の解決を目指している。 裁判官による審判官と、専門家からなる審判員からなる労働審判委員会による審理であり、地方裁判所で行われる。

労働問題[編集]

女性の労働問題[編集]

国勢調査のデータによると、日本の全就業者のうち女性の割合は、 1970年、 1980年、 1990年、 2000年、 2010年、 2015年で、それぞれ 39.187%、 37.921%、 39.617%、 40.854%、 42.814%、 43.859% で、増加傾向がみられる。

1970年以降この国では、男女ともに高学歴化が進んでいった。このデータに関して、女性の高学歴化による職場進出の進展とみる考え方もある。一方日本式の終身雇用のシステムが崩壊していった結果、共働きの夫婦が増えていることを示している、ようにも見える。

また、同じく国勢調査で日本の女性人口のうち就業者の割合は、 1970年、年代別で、それぞれ 15歳から 19歳が 35.129%、 20歳から 24歳が 69.220%、 25歳から 29歳が 44.300%、 30歳から 34歳が46.799%、 35歳から 39歳が 55.952%、 40歳から 44歳が 63.319%、 45歳から49歳が 64.332%、 50歳 から 54歳が 60.560%、 55歳から 59歳が 53.420%、 60歳から 64歳が 43.103%、 65歳以上で 19.610%。

1970年のこのデータでは、女性の年齢別就業者の割合は、20代前半では70%ちかく、25歳頃から結婚退職などにより、25歳〜35歳くらいの期間の就業人口の率が大きく減って45%ほどになり、40歳ごろからは再就職によって、また女性の就職者の率が60%超えるという、「M字カーブ」と言われる現象が見られる。

2015年になると、 15歳から 19歳が 12.879%、 20歳から 24歳が 58.573%、 25歳から 29歳が 68.244%、 30歳から 34歳が63.301%、 35歳から 39歳が 64.108%、 40歳から 44歳が 67.935%、 45歳から49歳が 70.347%、 50歳 から 54歳が 70.317%、 55歳から 59歳が 65.049%、 60歳から 64歳が 49.122%、 65歳以上で 15.890% になっている。

近年、M字の落ち込みは30歳〜40歳の60%ちかくと、落ち込みが緩やかになっている。と、言うか、落ち込みがほとんど目立たなくなっている。また、若年層と高齢者の就職者が少なくなっている上、中間年齢層の就職者は増えている傾向が読み取れる。

独立行政法人労働政策研究・研修機構のまとめによると、 1984年の女性の雇用者のうち、非正規の職員・従業員の割合は29.0%、 2019年では 56.0 %になっている。この数字は、役員を除く女性の雇用者のうち、非正規の職員、従業員(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託、そのほか非正規と見なせる形態)を示したものである。

1972 (昭和47)年の勤労婦人福祉法に起源をもつ男女雇用機会均等法が平成 9年(1997) に改正、平成 11年に施行され、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇において、男女差をつけることが禁止された。1997年の労働基準法の改正と連動して、女性に対する深夜労働・残業や休日労働の制限(女子保護規定)が撤廃される。

この法律は現在(2021/5 執筆時点)令和1年(2019)改正法が施行されているが、職場におけるセクシャルハラスメント(英語:sexual harassment、性的嫌がらせ)防止の義務が、事業者に課せられている。

また、1991年に成立した育児休業法が、1995年に育児介護休業法に改正された。しかしどちらも略称・通称で、記憶する必要はないだろうが、「育児休業等に関する法律」→「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」と、変遷している。

高齢者の雇用問題[編集]

日本では、求人の条件に年齢制限があり、中高年の再就職は難しいのが現状である。

企業や公務員の定年制は、 1994年の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正で60歳未満定年制が禁止( 1998年施行)されたので、それ以降は 60歳が日本の定年の標準となっている。日本の企業の正社員と公務員の多くは定年制を導入しているが、企業の態度として、定年を定めない、この規則を採用しないという選択も可能だ。

そしてこの法律の 2020改正 2021施行法では、定年の延長を意図して定年が64 以下の企業に対して以下の 3つの対応のうちの一つを講ずることを義務づけている。

  1. 定年の引き上げ
  2. 定年後の継続雇用制度の導入
  3. 定年制の廃止

今現在この国では、出生率の低下と平均寿命の増大が同時に進行していて、少子高齢化が問題になっている。この現象が進行しているときに、一般的に定年が固定され、その後年金が支払われるなら、社会全体の労働力は低くなるうえ社会維持のコストは大きくなっていく。このバランスを取り戻すために、定年の延長、高齢者の就職の推進、年金支給年齢の引き上げ、などの政策がとられていくことになるだろう。

老齢厚生年金の定額部分(国民年金)の支給はすでに 60歳から 65歳に引き上げられているし、報酬比例部分の支給も、 2025年までに段階的に 65歳に引き上げられることになっている。

長時間労働[編集]

労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較2019」によると、1990年の日本の就業者の1人当たり平均年間総実労働時間は2031時間、一方2018年は、1680時間、最近になって労働時間は減少しているように見える。

一日に8時間、週に5日勤務して、50週過ごすと2000時間だ。365日で52週と1日、2000時間を一日8時間労働の指標と見ることはできるだろう。そこから2031は8時間7.44分、1680は6時間43.2分、と、数字が出てくる。

今回の元資料では海外各国の労働時間も同様に示されている。そしてそこでは「データは一国の時系列比較のために作成されており,データ源及び計算方法の違いから特定年の平均年間労働時間水準の各国間比較には適さない。フルタイム労働者, パートタイム労働者を含む。」と注釈が書かれている。

そこでその注意書きを考慮しつつあくまでもただの参考として、海外のデータを引用すると、まずアメリカでは1990年が1833時間、2018年が1786時間である。フランスでは1990年が1645時間、2018年が1520時間。

では同じ資料の中に、各国間比較に適したデータがないかと見てみると、週労働時間に関する数字が記述されている。ここには前述のような注釈は書かれていないが、真っさらな意味で国別比較が意味を成すかどうかは断言出来ない、が、このデータを示してみよう。

一日8時間、週に5日働いたとして40時間、この数字が基準になるだろう。

2017年の数字で、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本の5か国を比べると、時間の長さもこの順になっていて、アメリカ42.3時間、イギリス41.2時間、ドイツ40.9時間、フランス39.0時間、日本38.9時間。

この数字、データは、フルタイム労働者だけのデータと、パートタイムなどの非常勤労働者を含む場合とでは数値が違ってくるだろう。

ちなみに今回示した統計数値は、年労働時間のほうはパートタイム含む、週労働時間のほうはフルタイム労働者のみを対象にしている。

長時間労働の問題に関しては、サービス残業という、そもそも労働時間の統計の意味自体を棄損させるような慣行もあるし、現編集者の実感としても、ここで示した数字が現実の状況を妥当に示しているようには思えない。

職場の長時間労働は過労死といった社会問題にもつながっているし、そもそも時間の問題だけではなく、職場、労働環境の質自体が、現実には多くの場所で、かなり劣悪なものになっているだろう。

外国人の労働[編集]

日本では、外国人の単純労働は原則として禁止されている。在留期間を越えての就労はできない。

しかしこのことに関して記述する前にいくつか、より基本的な議論、解説が必要だろう。

まず端的に外国人という場合、どういう人のことを言うのだろうか?

我々が、日本人、外国人という言葉を考えるときは、まず人種的特徴や民族、地域集団としての生活様式を考えるだろう。しかし法律の議論では、日本人とは日本国の国籍を持っている人物のことだろう。

出入国管理及び難民認定法により、日本に滞在する外国人には、個別の在留資格が与えられている。在留期間中は、その在留資格の種類によって日本国内の活動の内容が制限されている。特に収入を伴う労働活動に関しては、様々な限定、指定がある。

しかし一方様々な労働活動に関して、労働基準法や最低賃金法は、日本人と同様、外国人にも適用される。

経済が地球レベルで動くようになった現在、世界普遍的な貨幣の価値を考えた場合、特定の国の特定の地域の労働対価より、日本での収入のほうがはるかに多い場合も多い。そのため、不法入国や(単純労働などの)不法就労をする外国人は多い。そのような不法就労の外国人は、不当な低賃金で働かされる事もあるが、それでも、日本で就労することに大きな価値があるとみなされている。

一方、合法的に日本で就労する外国人労働者の数も、近年は増加している。

近年の労働環境の変化[編集]