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高等学校数学A/場合の数と確率

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

はじめに

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おはじきを一列に並べることについて考えてみる。その並べ方の数にはいくつもの方法があることがわかる。実際に全ての並び方を試すことも、樹形図を用いて紙に書き起こして数えることも時間さえあれば可能である。

このように、「全部で何通りがあるか」という、その「何通り」の「何」にあたる数字を、場合の数と呼ぶ。

このように事柄には、それらのやり方が全部で何通りあるかを計算する技術がある。


ある事柄について(そのことが起こりうる)場合の数を正確に数えることが理解の基礎であり、その事柄について、どのことが起こりやすくどのことが起こりづらいかを見分けるための基礎となる。 つまり、場合の数は事柄が起こりうる確率と密接な関係にある。

例えば、ポーカーなどのカードゲームでは集めることが難しい役は高いランクが与えられているが、 これは起こりにくい役が出来るトランプの組み合わせの現われる確率が小さいことによる。 このことは、52枚のカードから5枚を引いて来たときに全てのカードを引く確率が同じであるとしたとき、ある役に対応するカードの組み合わせを引く場合の数がより少ないことに対応する。

このように、場合の数は事柄が起こりうる確率と密接な関係にある。

カードゲームのように確率が具体的に計算できる場合の他にも、確率の考え方を用いて計算される事柄は多くある。

  • 例:保険

例えば、「保険」はある事柄に値段を付けるものであるが、保険を下ろさなくてはならない事柄が起こり難いと客観的に思われるものほど値段が下がるという特徴がある。 例えば自動車保険に加入するのに必要な代金は若者では高く、年齢を重ねるごとに低くなっていく。 これは、若者は自動車の免許を取得して時間が短い場合が多く、保険金の支払を必要とする自動車事故を起こす可能性が高いことによる。 一方、年齢を重ねた者については運転の伎倆が時とともに上達すると一般に考えられるので保険を掛けるための代金は少なくなるのである。 また、同じ若者でも既に何度か事故を重ねた者は同じ年代の他の若者よりも保険料が高くなる傾向がある。 これは、何度か事故を重ねた者は運転の仕方に何らかの問題がある傾向があり、それによって再び事故を起こす可能性が通常の者と比べてより高いと考えられることによる。

  • 例:銀行の融資

銀行の融資でもやはり確率の考えを用いて高い利益を出すことが実践されている。 融資でもやはり保険業と同じく、より貸倒れになる可能性が高い相手に対しては高い金利で資金を貸し付け、 より安定した資金を持っている相手に対してはより低い金利で資金を貸し付けることを実行して来た。

  • 例:株式市場の分散投資

利益を安定的に稼ぐ方法として、幾つかの会社が発行する互いに性質の異なった株などを合わせて購入先を分散することで、株の値段が下がったときでも値段があまり減ることが無いようにする方法が考案されている。 (ただし、値段が減りづらいのと同様に値段は上がりづらい。) これは、性質の異なった商品を合わせて扱うことで値段が急変する確率を下げることが出来ることを表わしている。


しかし、確率では必ずしも予測した通りに事が進むわけでは無いことに注意する必要がある。

この章では場合の数と確率の計算法を紹介する。まず先に様々な事柄の場合の数の計算法を扱い、その結果を用いてある事柄が起こる確率を計算する方法を紹介する。

なお、数学Iの集合と論理及び数と式の先行履修を前提としている。

この分野を応用した分野として、数学Bの確率分布が存在する。

集合の要素の個数

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2つの集合の和集合の要素の個数

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ここでは、有限集合Aの要素の個数をn(A)で表す。

例えば、10以下の自然数の集合をUとしてそのうち偶数の集合をAとする場合、

A={2,4,6,8,10}

Aの要素の個数は5個なので

n(A)=5

である。

なお、 U={1,2,3,4,5,6,7,8,9,10} で要素の個数は10個なので

n(U)=10

である。


次のような問題を考えてみよう。

100までの自然数のうち、2または3の倍数は何個あるか?

このような問題の解法を考える準備としてまず10までの自然数で考えてみよう。

先程の例題で2の倍数については考えたので、今度は10までの3の倍数の個数について考えよう。

10以下の自然数の集合をUとして、そのうち 3の倍数の集合をBとする場合、

B={3,6,9}

Bの要素の個数は3個なので

n(B)=3

である。

さて、

A={2,4,6,8,10}
B={3,6,9}

には共通して 6 という要素が含まれている。


自然数10までにある2または3の倍数にあたる要素を取り出した集合は

A∪B={2,3,4,6,8,9,10}

であり、要素の個数を数えると 7個である。

一方、

n(A)+n(B)=5+3=8

であり、1個多い。

このように1個多くなってしまった原因は、 集合Aと集合Bに共通して含まれている要素 6 を重複して数えてしまっているからである。


一般に、2つの集合A,Bの要素の個数n(A),n(B)を用いてA,Bの和集合の要素の個数を数えたい場合には、A,Bの積集合の要素の個数を差し引かなければならない。

このことを式で表すと

n(A∪B)=n(A)+n(B)−n(A∩B)

となる。


では、この公式を参考にして

100までの自然数のうち、2または3の倍数は何個あるか?

の答えを求めよう。


100までの自然数のうち2の倍数の集合をA、3の倍数の集合をBとすると、

1002=50なのでAの要素の個数(2の倍数の個数)は50個、つまりn(A)=50である。
993=33なのでBの要素の個数(3の倍数の個数)は33個、つまりn(B)=33である。


更に、2の倍数でもあり3の倍数でもある数の集合A∩Bは(2と3の最小公倍数をとった)6の倍数の集合に等しく、 966=16なので、A∩Bの要素の個数は 16 個、つまりn(A∩B)=16である。

そして、公式

n(A∪B)=n(A)+n(B)−n(A∩B)

を適用すると、

n(A∪B)=50+33−16=67

である。

よって、100までの自然数のうち2または3の倍数の個数は67個 である。


なお、A∩B=∅のときはn(A∩B)=0として考える。


これを用いると、補集合の要素の個数は以下のようにして求まる。

n(U)=n(A)+n(A‾)−n(A∩A‾)
A∩A‾=∅よりn(A∩A‾)=0なので、
n(U)=n(A)+n(A‾)
∴n(A‾)=n(U)−n(A)

また、A‾=U∖Aより差集合の要素の個数を考えることで

n(A‾)=n(U∖A)=n(U)−n(A)

と容易に求まる※。

※この等式はA⊂Uであるため成り立つ。一般に、A⊄Bのときはn(B∖A)=n(B)−n(B∩A)≠n(B)−n(A)である。


発展: 3つの集合の和集合の要素の個数

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3つの有限集合の和集合の要素の個数については、次の公式が成り立つ

n(A∪B∪C)=n(A)+n(B)+n(C)−n(A∩B)−n(B∩C)−n(C∩A)+n(A∩B∩C)

問題

右の図を参考に、上の公式を証明せよ。


例題

100以下の自然数のうち、2の倍数または3の倍数または5の倍数であるものの個数を求めよ。


(解法)

まず、100以下の自然数のうち2の倍数の集合をA、3の倍数の集合をB、5の倍数の集合をCとする。

1002=50なので、100は50番目の2の倍数であり、よって100以下の2の倍数は50個である。同様に考えて要素の個数を求めると、 {n(A)=50n(B)=33n(C)=20 である。

一方、100以下の自然数のうちA∪Bは6の倍数の集合、B∪Cは15の倍数の集合、C∪Aは10の倍数の集合となる。

よって、先ほどと同様に考えると {n(A∩B)=16n(B∩C)=6n(C∩A)=10

また、100以下の自然数のうちA∩B∩Cは30の倍数の集合となる。

よってn(A∩B∩C)=3である。


よって、

n(A∪B∪C)=50+33+20−16−6−10+3=74

なので、100以下の自然数のうちの2の倍数または3の倍数または5の倍数であるものの個数は 74個である。

場合の数

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場合の数

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例えば、大中小3個のサイコロを振って目の和が5になる目の組は何通りあるだろうか。


このような問題を解く方法の一つとして、図のように組合せを総当たりで書く方法がある。

大中小の合計3個のサイコロをそれぞれA,B,Cとして表し、それらの文字に、どの目が出れば合計5になるかを考えると、結果は図のようになる。

このような図を 樹形図という。

問題

3個のサイコロを振るとき、目の和が6になる場合は何通りあるか、樹形図を用いて求めよ。


2つの事柄A,Bは同時に起こらないとする。Aの起こり方がa通りあり、Bの起こり方がb通りあるとき、次の和の法則が成り立つ。

AまたはBが起こる場合はa+b通りである。

和の法則は3つ以上の事柄でも成り立つ。


事柄Aの起こり方がa通りあり、その各々について事柄Bの起こり方がb通りあるとき、次の積の法則が成り立つ。

AとBが共に起こる場合はab通りある。

積の法則は3つ以上の事柄でも成り立つ。


  • 問題
    • 以下の場合の数を求めよ。
      1. 2個のサイコロを投げるとき、出る目の和が10以上になる場合
      2. (a+b)(p+q+r)(x+y+z+w)の展開式の項の個数
      3. 200の正の約数の個数

階乗

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最初に、n個の異なったものを並べ換える場合の数を数える。 まず最初に並べるものはn個、次に並べるものはn−1個、その次に並べるものはn−2個 ... と次第に選べるものの数が減って行き、最後には1個しか残らなくなることに注目すると、積の法則よりこの事柄に関する場合の数は

n(n−1)(n−2)⋯3⋅2⋅1

となり、1からnまでの自然数の積になる。 これを 階乗(かいじょう) (factorial)と呼び、記号 n! で表す。

すなわち、階乗は

n!=n(n−1)(n−2)⋯3⋅2⋅1

と定義される。

n!=n×(n−1)!という関係式が成り立つが、1を代入すると1!=1×0!なので、成り立たせるため0!=1と定義する。

つまり、階乗は

0!=1

n!=n×(n−1)!

と定義することもできる(このような定義を「再帰的な定義」や「帰納的な定義」といったりする。)


この階乗の記号を使えば、この問題のときの場合の数はn!であると言うことが出来る。


  • 問題例
    • 問題
3!,4!,5!,6!

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答
n!=1⋅2⋅⋯n

を用いて計算すればよい。 答えは、

3!=6
4!=24
5!=120
6!=720

となる。


    • 問題

それぞれに1から5までの数字が書かれた5枚のカードが置いてある。 このカードを並べ換えたとき、 (I)カードの並べ方の数、 (II)偶数が得られるカードの並べ方の数、 (III)奇数が出るカードの並べ方の数を、それぞれ計算せよ。

    • 解答

(I) カードの数が5枚でそれぞれが区別できることから、カードの並べ方の数は

5!

となり、120となる。

(II) 偶数を得るためには一の位である最も右に出るカードが、偶数となればよい。 このようなカードは2と4であり、それぞれに対して後の4枚は自由に選んでよい。 このため、このようなカードの並べ方は、

2×4!=48

となる。

(III) 奇数を得るためには一の位である最も右に出るカードが、奇数となればよい。 このようなカードは1,3,5であり、それぞれに対して後の4枚は自由に選んでよい。 このため、このようなカードの並べ方は、

3×4!=72

となる。一方、5枚のカードを並べ換えて得られる数は必ず偶数か奇数の どちらかであるので、(I)の結果から(II)の結果を引くことによっても (III)の結果は得られるはずだが、実際にそれを計算すると

120−48=72

となり、確かにそのようになっている。


    • 問題

0,1,2,3,5が書かれた5枚のカードがある。これを並び換えたとき、

(I)5桁の数が得られる数、 (II) 5桁の偶数が得られる数、(III) 5桁の奇数が得られる数、(IV) 5桁の5の倍数が得られる数

をそれぞれ求めよ。

    • 解答

(I) 先頭が0になったときには5桁の数にならないことに注意すればよい。求める場合の数は

4×4!=96

となる。

(II) 最初が0でなく最後が0か2である数を数えればよい。まず、最後が0であるときには、残りの4枚は任意であるので

4!=24

通りの組み合わせがある。

次に、最後が2であるときには最初は0であってはいけないので、

3×3!=18

通りある。 2つを合わせた数が5桁の偶数が得られる場合の数である。答えは、

24+18=42

となる。

(III) (I)の結果から(II)の結果を引けばよいが、ここではその結果が正しいかどうか 確かめるためにも5桁の奇数が得られる組み合わせを数え上げてみる。 5桁の奇数を得るためには最後の数は1,3,5のいずれかでなくてはならない。 このうちのどの場合についても5桁の数を得るためには最初の数が0で 合ってはならないのでそれぞれの場合の数は、

3×3×3!=54

となりこれが5桁の奇数を得る場合の数である。 (II)の結果と足し合わせると確かに(I)の結果と等しい96を得る。

(IV) 5の倍数を得るためには最後の数が0か5であればよい。 このとき最後が0になる場合の数は他の4つが任意であるため

4!=24

存在する。次に、最後が5になる場合の数は最初の数が0であってはならないため

3×3!=18

だけ存在する。 よって答えは

24+18=42

となる。

順列

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幾つかのものを順序を付けて一列に並べる配列の仕方を 順列(英:permutation) という。

n個の異なったものからr(≦n)個を選んで、順序を付けて並べる場合の数をn個からr個とる順列といい、nPrと書く。


最初に並べるものはn通り、次に並べるものはn−1通り 、その次に並べるものはn−2通り ,... 最後にはn−(r−1)通りというように、次第に選べるものの数が減って行くことに注目すると、積の法則より順列の総数として

nPr=n(n−1)(n−2)⋯(n−r+1)⏟r個 の 数 の 積=n×(n−1)×⋯×(n−r+1)×(n−r)×⋯×2×1(n−r)×⋯×2×1=n!(n−r)!

が得られる。

nPnはn個からn個取って順序付きで並べる場合の数、すなわちn個の異なるものを並び替える場合の数に等しいのでn!である。先ほど0!=1と定義したので、上の式でr=nを代入するとnPn=n!(n−n)!=n!0!=n!1=n!と、同じ値を得た。


  • 問題例
    • 問題

(I)

5P3

(II)

4P2

(III)

7P3

(IV)

10P5

(V)

10P1

(VI)

7P0

をそれぞれ計算せよ。

    • 解答

それぞれ

nPr=n(n−1)(n−2)⋯(n−r+1)=n!(n−r)!

を用いて計算すればよい。

結果は、 (I)

5P3=5×4×3=60

(II)

4P2=4×3=12

(III)

7P3=7×6×5=210

(IV)

10P5=10×9×8×7×6=30240

(V)

10P1=10

(VI)

7P0=7!7!=1

となる。

(V)と(VI)については一般的に自然数nに対して

nP1=n
nP0=1

が得られる。

このとき

nP0=1

は元々の順列の定義からすると"n個のものの中から1つも選ばない場合の数"に対応している。

「何も選ばない場合」は1通りしかありえないので、感覚的にも妥当である。


円順列

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A, B, C, D, E の5人が円形に手をつないで輪をつくるとき、その並び方は何通りあるか。

このような問題の場合、図のように、回転すると重なる並びは同じ並びであると考える。


解き方の考え方は数種類ある。

1つの考え方として、5人が円形に並ぶとき、図のように回転すると同じになる並びは、5通りずつあるという考え方により、 5!5 とする考え方である。


もう一つの考え方として、Aを固定して、残りの4人の並びを考えれば、別々の並びが作れるという考え方で、 (5−1)! とする考え方である。


どちらにせよ、結果は

4!=4⋅3⋅2⋅=24 (通り)

である。

一般に 異なる n個 のものを円形に並べたものを円順列という。

円順列の総数として、次のことが成り立つ。

異なる n個 の円順列の総数は (n−1)! である。


円順列のうち、裏返したら一致するものを同じと見做す場合の順列を数珠順列という。

異なるn個の数珠順列の総数は、(n−1)!2である。

ここで、円順列のときに左右対称であるものは数珠順列にしたときも1通りとして、左右非対称であるものは数珠順列にしたとき2通りが1通りとして数えられる。


重複順列

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異なるn個のものから重複を許してr個を取り出して並べる順列をn個からr個取る重複順列といい、nΠrと表す(ただし、通常の順列とは異なりr>nであっても良い)。

この場合、各個のものの選び方は他のものの選び方とは無関係にそれぞれn通りあるため、順列の総数はnΠr=n×n×⋯×n⏟r個=nrである。


有限集合{x1,x2,x3,⋯xn}が与えられたとき、その部分集合の要素はn個のそれぞれの要素を選ぶ/選ばないの2通りの選択によって決まる。そのため、n個の要素からなる集合の部分集合の個数は、2個からn個取る重複順列の総数(2Πn)に等しい。


組合せ

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幾つかのものを順序を付けず一列に並べる配列の仕方を 組合せ(combination)という。

n個の異なったものから異なるr(≦n)個を選んで順番をつけずに並べる場合の数をn個からr個とる組合せといい、nCrと書く。

例えば、幾つもあるボールに番号が振ってあるなどの方法で、それぞれのボールが区別できるn個のボールが入った箱の中からr個のボールを取り出す時、取り出したボールを取り出した順に並べるとすると、この場合の数は順列nPrに対応する。

一方、取り出したボールの種類が重要であり取りだした順番が特に必要でないときには、この場合の数は組み合わせnCrに対応する。これらの数は互いに異なった場合の数であり、互いに異なった計算法が必要となる。

nCrは、nPr通りの並べ方を作った後にそれらの並びを無視したものに等しい。ここで、r個を取りだして作った並びについて、並べ方を無視するとr!個の並びが同一視されることがわかる。

これは、r個のお互いに区別できる数を自由に並び換える場合の数はr!であり、それらが全て同一視されるとすれば全体の場合の数は r!の分だけ減ることになることによる。

よって、

nCr=nPrr!=n!(n−r)!r!

が得られる。

r=0の時を考えると、nC0=nP00!=11=1,nC0=n!(n−0)!0!=n!n!⋅1=1と、いづれの式を用いてもnC0=1を得る。これは順列の場合と同様、「n個のものから何も選ばない」場合は1通りしかありえないので、感覚的に妥当な結果である。


演習問題

次の値を計算せよ

(I)

5C2

(II)

7C3

(III)

10C1

(VI)

8C0



演習問題

5個のボールが入ったボール入れから2つのボールを取りだすとき(ボールはそれぞれ 区別できるものとする。)2つのボールの選び方は、 何通りあるか計算せよ。



演習問題

6個の互いに区別できるボールが入った箱がある。 この中から (I)3つのボールと2つのボールを取りだす方法の場合の数、(II)2つのボールを取り出すことを2回くり返し、それぞれを別の互いに区別できる袋にいれる場合の数、(III)2つのボールを取り出すことを2回くり返し、それぞれを別の互いに区別できない袋にいれる場合の数、をそれぞれ計算せよ。



nCrについて以下の式が成り立つ。

nCr=nCn−r(0≦r≦n)
nCr=n−1Cr+n−1Cr−1(1≦r≦n,n≧2)


導出

nCr=n!(n−r)!r!

を用いると、

nCn−r=n!(n−(n−r))!(n−r)!
=n!r!(n−r)!
=nCr

が得られ、示された。

同様に

nCr=n!(n−r)!r!

を用いると、

n−1Cr+n−1Cr−1
=(n−1)!(n−1−r)!r!+(n−1)!(n−r)!(r−1)!
=(n−r)nnCr+rnnCr
=nCr

となり示された。

最初の式は、異なるn個のもののうちr個にXというラベルをつけ、残りのn-r個にYというラベルをつける場合の数から求めることができる。異なるn個のもののうちからr個を選びラベルXをつけ、残りにラベルYをつける場合の数はnCr であり、異なるn個のもののうちからn-r個を選び、ラベルYをつけ、残りにラベルXをつける場合の数はnCn−r である。当然、前者と後者の場合の数は等しいので、ここから、nCr=nCn−r が求められる。

2つ目の式は、 "n個のものからr個を選ぶ仕方の数は、次の数の和である。 最初の1つを選ばずに他のn-1個からr個を選ぶ仕方の数と、最初の1つを選んで他のn-1個からr-1個を選ぶ仕方の数との 和である。" ということを表わしている。


  • 問題例
nCr=nCn−r

を用いて (I)

5C3

(II)

7C4

(III)

10C9

(VI)

8C5

をそれぞれ計算せよ。

  • 解答

上の式を用いて計算することが出来る。もちろん直接に計算しても 答えを得ることが出来るが、通常は簡単化してから計算した方が楽である。 (I)

5C3=5C5−3=5C2=10

(II)

7C4=7C7−4=7C3=35

(III)

10C9=10C10−9=10C1=10

(VI)

8C5=8C8−5=8C3=56

となる。


  • 問題

図のようなルートを左下の点から右上の点まで歩いて行く人がいる。 ただし、この人は右か上にしか進めないとする。このとき、

(I) 左下から右上まで進む仕方の数
(II) a点を通過して右上まで進む仕方の数

を計算せよ。ただしa点は*と書かれている点のすぐ下の通路のことをさしている。 それぞれのルートは途切れていない縦4つ、横5つの碁盤目上のルートに なっていることに注意せよ。

___________

|_|_|_|_|_|

|_|_|*|_|_|

|_|_|_|_|_|

|_|_|_|_|_|


  • 解答

(I) 左下にいる人は9回進むことで右上の点に辿り着ける。そのため、左下にいる人が選びうるルートの数は9回のうちのどの回で右ではなく上を 選ぶかの場合の数に等しい。このような場合の数は、9回のうちから自由に4つの場所を選ぶ方法に等しく、組み合わせを用いて書くことが出来る。実際に9回のうちから自由に4つの場所を選ぶ方法は、

9C4

で書かれる。この量を計算すると、

9C4=126

が得られる。

(II) a点を通過して進むルートの数はa点の左の点までいってからa点を通過し、a点の右の点を通って右上の点までいく仕方の数に等しい。 それぞれのルートの数は(I)の方法を用いて計算することができる。この数を実際に計算すると、

4C2×4C2=6×6=36

となり、36通りであることが分かる。

演習問題

rnCr=nn−1Cr−1を示せ


演習問題

正六角形の6個の頂点のうち、3点を結んで三角形を作るとき、三角形は何個作れるか



同じものを含む順列

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10個の文字a a a a b b b c c dを一列に並べる順列の総数を求める。 文字を置く場所は全部で10箇所あり、その中からaを置く4箇所を選ぶ方法は10C4通り。残りの6箇所からbを置く3箇所を選ぶ方法は6C3通り。残りの3箇所からcを置く2箇所を選ぶ方法は3C2通り。dは残りの1箇所に置けば良いので1通り。

積の法則より、求める順列の総数は10C6×6C3×3C2×1=10⋅9⋅8⋅7⋅6⋅56⋅5⋅4⋅3⋅2⋅1×6⋅5⋅43⋅2⋅1×3⋅22⋅1×1=210×20×3×1=12600

変形前の式で、組合せの積を次のように変形する。 10C6×6C3×3C2×1C1=10!6!(10−6)!×6!3!(6−3)!×3!2!(2−1)!×1!1!(1−1)! これを変形すると、式は最終的に10!4!3!2!1!となる。(当然、計算すると上で求めた答えと一致する。)


一般に、n個のもののうちp個が同じもの、q個が別の同じもの、r個がまた別の同じもの・・・であるとき、これらn個のもの全てを一列に並べる順列の総数は以下の式で得られる。

n!p!q!r!⋯(ただしp+q+r+⋯=n)


重複組合せ

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異なるn個のものから重複を許してr個とる場合の数を重複組合せといい、 nHr で表す。

重複組合せについて次のように考察する。

x1,x2,⋯,xn,r を非負整数とし、方程式 x1+x2+⋯+xn=r の解の個数について考える。この解の個数は x1,x2,⋯,xn に r 個の1を分配する場合の数と考えることができるので、重複組合せの定義から、nHr である。

また、この方程式の非負整数解の個数は、r個の○にn-1個の区切りを置く場合の数とも考えられる。つまり、○○○...○○(r個)にn-1個の区切り|を並べると○|○○|...○|○のようになる。ここで、左から順に区切りで区切られた○の個数をそれぞれ、x1,x2,⋯,xn とすると、これは方程式の解となる。

この場合の数は、r個の○とn-1個の区切り|を並べえる場合の数なので、n+r−1Cr である。方程式の非負整数解の個数について2通りの方法で求まったのでこれらは等しく、 nHr=n+r−1Cr が成り立つ。

確率

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確率の計算

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ある場合の数が実際に現われる割合のことを確率(英:probability)と呼ぶ。

試行と事象

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同じ状態の下で繰り返すことができ、その結果が偶然によって決まる実験や観測を試行といい、その結果として起こる事柄を事象という。

ある試行に於いて起こりうる場合全体の集合をUとするとき、Uで表される事象を全事象という。この試行において起こりうる事象は全てUの部分集合として表される。空集合∅で表される事象を空事象という。全事象はその試行に於いて必ず起こる事象であり、空事象は決して起こらない事象である。Uの要素のうちただ一つの要素からなる部分集合で表される事象を根元事象という。1つの試行に於いて、根元事象のどれが起こることも同程度に期待できるとき、これらの根元事象は同様に確からしいという。


例) 2枚のコインA,Bを同時に投げる試行に於いて、表が出る場合を1, 裏が出る場合を0と表すことにする。例えば、Aが表でBが裏ならば(1,0)と表す。

この試行の全事象は

U={(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)}

で表される。

また、この事象の根元事象は

{(0,0)},{(0,1)},{(0,1)},{(1,1)}

で表される。


2つの事象A, Bについて、AまたはBが起こる事象を和事象、AとBが共に起こる事象を積事象という。これらはそれぞれ集合A,Bの和集合A∪B, 積集合A∩Bで表されるので、「事象A∪B」「事象A∩B」のように書くこととする。

A∩B=∅のとき、事象A, Bは互いに排反(英:exclusive)である、または事象A, Bは排反事象である、という。

全事象をUとしたとき、「事象Aが起こらない」という事象は集合Aの補集合A‾で表される。この事象を事象Aの余事象といい、「事象A‾」と書く。

以下、事象と集合は区別せずに記す。


事象と確率

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1つの試行に於いて、ある事象Aの起こることが期待される割合を事象Aの確率といい、P(A)で表す。

全事象Uのどの根元事象も同様に確からしいとき、事象Aの確率は以下のように求まる。

事象Aの確率
P(A)=n(A)n(U)
  • 問題例
    • 問題

赤玉2個と白玉3個が入った袋から、玉を2個同時に取り出す。このとき、2個とも白玉が出る確率を求めよ。

    • 解答

赤白あわせて5個の玉から2個を取り出す方法は

5C2=5×42×1=10(通り)

このうち、2個とも白玉になる場合は

3C2=3×22×1=3(通り)

よって求める確率は 310


確率の性質

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確率の定義から、次の性質が得られる。

確率の性質
(1)どんな事象Aについても、 0≦P(A)≦1
(2)空事象∅の確率はP(∅)=0
(3)全事象Uの確率はP(U)=1
(4)和事象A∪Bの確率はP(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)
(5)排反事象A,BについてP(A∪B)=P(A)+P(B)
(6)余事象A‾の確率はP(A‾)=1−P(A)
  • 証明
(1)
どのようなAに対してもA⊂Uなので集合の要素の個数について0≦n(A)≦n(U)が成り立つ。
不等式の各辺をn(U)(>0)で割って、
0≦n(A)n(U)≦n(U)n(U)
確率の定義よりn(A)n(U)=P(A)なので、
0≦P(A)≦1//
(2)
P(∅)=n(∅)n(U)=0n(U)=0//
(3)
P(U)=n(U)n(U)=1//
(4)
n(A∪B)=n(A)+n(B)−n(A∩B)
両辺をn(U)(>0)で割って、
P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)//
(5)
(4)の式でA∩B=∅と(2)を利用して
P(A∪B)=P(A)+P(B)−0=P(A)+P(B)
(6)
A∪A‾=U,A∩A‾=∅より(3)と(5)を利用して
1=P(A)+P(A‾)
∴P(A‾)=1−P(A)


  • 問題例
    • 問題1
    男子7人、女子5人の中から、くじ引きで3人の委員を選ぶとき、3人とも同性である確率を求めよ。
    • 解答
    12人の中から3人の委員を選ぶ場合の数は
    12C3=12×11×103×2×1=220(通り)
    ここで、「3人とも男子である」事象をA、「3人とも女子である」事象をBとすると、「3人とも同性である」事象は、和事象A ∪ Bであり、しかも、AとBは排反事象である。
    P(A)=7C3220=35220
    P(B)=5C3220=10220
    よって求める確率は P(A∪B)=P(A)+P(B)=35220+10220=45220=944
    • 問題2
    赤玉5個、白玉3個の計8個入っている袋から3個の玉を取り出すとき、少なくとも1個は白玉である確率を求めよ。
    • 解答
    8個の玉から3個の玉を取り出す場合の数は
    8C3=8×7×63×2×1=56(通り)
    いま、「少なくとも1個は白玉である」事象をAとすると、A‾は「3個とも赤玉である」という事象だから
    P(A‾)=5C356=1056=528
    よって求める確率は
    P(A)=1−P(A‾)=1−528=2328


3つの事象の和事象の確率について、

n(A∪B∪C)=n(A)+n(B)+n(C)−n(A∩B)−n(B∩C)−n(C∩A)+n(A∩B∩C)

より

P(A∪B∪C)=P(A)+P(B)+P(C)−P(A∩B)−P(B∩C)−P(C∩A)+P(A∩B∩C)

である。

特にA,B,Cが互いに排反であるときはA∩B=B∩C=C∩A=A∩B∩C=∅なので、上の式の第四項以降が全て0となり、

P(A∪B∪C)=P(A)+P(B)+P(C)

が成り立つ。

一般に、n個の事象X1,X2,⋯,Xnのいづれもが互いに排反であるならば、上と同様の議論により

P(X1∩X2∩⋯∩Xn)=∑k=1nP(Xk)=P(X1)+P(X2)+⋯+P(Xn)

が成り立つ(確率の加法定理)。

(記号「Σ」は総和記号である。詳しくはこちらを参照。)


同じ誕生日の人がいる確率

閏年を無視すれば、集まったn人の中に同じ誕生日の2人がいる確率は以下のように求まる。

1年は365日なので、n人の誕生日のリストとしてありえる組の場合の数は365nである。

このリストのうちn人の誕生日が異なる場合の数は365個からn個とる順列の総数に等しく、365Pnである。

よって、n人全員の誕生日が異なる確率は365Pn365nなので、余事象を考えると求める確率は1−365Pn365nである。

n=40の確率は0.89である。

つまり、一般的な高校の1クラスの中には約9割の確率で誕生日の同じ2人がいる。

自分と誕生日が同じ人がいる確率は、上で求めた確率を更に365で割ればよい(365日の中から自分の誕生日に絞るため)。

この確率が100%となるのは最低でも366人集まったときである(鳩ノ巣原理も参照)が、確率が50%を超すには僅か23人で事足りる。この事実は「w:誕生日のパラドックス」と呼ばれる。また、これは暗号解析に悪用されている。

上の計算と同様にして、「高額当たりくじの販売所が一致する確率」も求めることができる。それにより、「1年間に2枚以上の高額当たりくじを売る販売所は、ほぼ毎年のように全国のどこかに出現する」という結論を得る。


独立な試行と確率

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独立な試行の確率

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互いに他の結果に対して影響を及ぼさない操作を繰り返すとき、それぞれの試行は独立(英:independent)であると言う。独立な試行については、ある試行の起こる確率が定められていて、それをn回繰りかえしたとき、それらが起こる確率は、それぞれの試行が起こる確率の積となる。

独立な試行の確率

2つの独立な試行S,Tについて、Sでは事象Aが、Tでは事象Bが起こる確率は

P(A)×P(B)
  • 証明
S, Tの全事象をそれぞれU,Vとする。
S, Tを行うとき起こりうる全ての場合の数は、積の法則よりn(U)×n(V)である。
Sでは事象Aが起こり、Tでは事象Bが起こるという事象をCとすると、積の法則よりn(C)=n(A)×n(B)である。
確率の定義よりP(C)=n(C)n(U)×n(V)=n(A)×n(B)n(U)×n(V)であるが、
これはn(A)n(U)×n(B)n(T)と分解できるので、
n(A)n(U)=P(A),n(B)n(T)=P(B)より
P(C)=P(A)×P(B)


  • 問題例
    • 問題
    赤玉3個、白玉2個の計5個入っている袋がある。この中から1個の玉を取り出して色を確かめてから袋に戻し、再び1個を取り出すとき、1回目は赤玉、2回目は白玉を取り出す確率を求めよ。
    • 解答
    1回目に取り出した玉を袋に戻すので、「1回目に取り出す」試行と「2回目に取り出す」試行とは互いに独立である。
    1回目に取り出した1個が赤玉である確率は 35
    2回目に取り出した1個が白玉である確率は 25
    従って求める確率は
    35×25=625


一般に、独立な施行T1,T2,⋅,Tnについて「T1では事象X1, T2では事象X2, ・・・, Tnでは事象Xnが起こる」事象をYとすると、

P(Y)=∏i=1nP(Xi)=P(X1)×P(x2)×⋯×P(Xn)

が成り立つ。

(記号「Π」は総乗記号である。)


反復試行の確率

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同じ試行を何回か繰り返して行うとき、各回の試行は独立である。この一連の独立な試行を纏めて考えるとき、それを反復試行という。

反復試行の確率

ある試行で、事象Eの起こる確率がpであるとする。この試行をn回繰り返すとき、事象Eがそのうちr回だけ起こる確率は

nCrprqn−r
ただしq=1−p
  • 問題例
    • 問題

1個のさいころを5回投げるとき、3の倍数の目が4回出る確率を求めよ。

    • 解答

1個のさいころを1回投げるとき、3の倍数の目が出る確率は

26=13である。

よって、1個のさいころを5回投げるとき、3の倍数の目が4回出る確率は

5C4(13)4(1−13)5−4=10243


演習問題

数直線上を動く点Pが原点にある。1個のサイコロを投げて1または6の目が出たときPは正の向きに2だけ進み、他の目が出たときは負の向きに1だけ進む。サイコロを9回続けて投げたとき、点Pが原点に戻っている確率を求めよ



条件付き確率

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各根元事象が同様に確からしい試行において、全事象をUとする。2つの事象A, Bについて、一般に「事象Bが起こる確率」と「事象Aが起こった後に事象Bが起こる確率」は異なる。 そこで、「事象Aが起こった後に事象Bが起こる確率」を「事象Aが起こったときの事象Bが起こる条件付き確率」と呼び、PA(B)と書くことにする。


注意:PA(B),P(A∩B)ともに「AとBが共に起こる確率」を表すが、PA(B)はAが起こらなかった場合は除外して考えており、P(A∩B)の方はAが起こらなかった場合も含めて考えているという違いがある。混同しないように区別して覚えよう。


n(A)≠0であるとき、条件付き確率PA(B)は「Aを全事象と見做した場合の事象A∩Bが起こる確率」と考えられるので、PA(B)=n(A∩B)n(A)である。右辺の分子と分母をn(U)で割ると、n(A)n(U)=P(A),n(A∩B)n(U)=P(A∩B)なので、最終的に等式PA(B)=P(A∩B)P(A)が得られる。

最後の式を変形すると、次の定理が得られる。


確率の乗法定理

P(A∩B)=P(A)PA(B)

事象Eが起こる原因として事象A, Bの2つが考えられるとき、事象Eが起こったと知って原因Aから起こったと考えられる確率はPE(A)である。この確率を原因の確率という。

演習問題

抗原検査において、感染しているのに誤って陰性と判定する確率が1%、感染していないのに誤って陽性と判定する確率が2%であるという。全体の1%が感染している集団から一つの標本を取り出すとき、「陽性判定だったが実際には感染していない」事象の確率を求めよ。


なお、数学Bで扱う仮説検定においては、正しい仮説を誤って棄却してしまうことを第一種の過誤、間違った仮説を棄却できないことを第二種の過誤と呼ぶ場合がある。


モンティ・ホール問題

モンティ・ホール問題とは、アメリカのテレビ番組「Let's make a deal」で行われたゲームに関する問題である。具体的には、以下の問である。

プレイヤーの前に閉じた3つのドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。プレイヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレイヤーが1つのドアを選択した後、司会のモンティ・ホールが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。
ここでプレイヤーは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。
ここでプレイヤーはドアを変更すべきだろうか?

直感で考えると「変えても変えなくても確率は12のままであるからどっちでも良い」という答えになるが、実際の答えは「変えると確率が2倍になるから変更すべき」となる。つまり、この問題は「直感的な答えと論理的な答えが異なる」ことの典型例である。

ここで、この問題を数学的に議論するために、全ての事象は同様に確からしい状況に近いものと見做す。

3つのドアをa, b, cとしてプレイヤーが選んだドアがa, モンティが開けたドアがcである状況を考える。 a, b, cが当たりである事象をそれぞれA,B,Cとすると、A,B,Cはそれぞれ互いに排反でありP(A)=P(B)=P(C)=13である。

モンティがcのドアを開く事象をXとするとPA(X)=0,PB(X)=1,PC(X)=0なので、

P(X)=P(A)PA(X)+P(B)PB(X)+P(C)PC(X)=12
∴PX(B)=P(B∩X)P(X)=P(B)PB(X)P(X)=23

同様にPX(A)=13となるので、上で述べた答えが正しいとわかる。

なお、○×表を書いても上の答えは得られる。

この問題に対する厳密な回答にはベイズ統計と呼ばれる分野の知識が用いられる。


期待値

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ある試行があったとき、 その試行で得られると期待される値のことを期待値(英:expected value)という。期待値は、n個の事象rk (k=1,2,⋯,n)に対して、各々vkという値が得られ、事象rkが起こる確率がpkで与えられているとき、

E=∑k=1nvkpk

によって与えられる。

例えば、さいころをふったとき出る目の期待値は、

16×1+16×2+16×3+16×4+16×5+16×6
=16(1+2+3+4+5+6)
=72

となる。

景品を得られるあるゲームにおいて、料金設定が得られる景品の期待値よりも安ければ、そのゲームに参加することは得だと判断する。

このように、期待値は損得勘定に応用することができる。